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はじまりの物語(サービス編)
アオザワシンたろー
六月になって、マジックから、息子の顔を見に来いという連絡が入った。
兄貴の息子だから、俺にとっての甥ということになる。
一族の長の子の誕生は、長にとってはさほど喜ぶべきことではないことを俺は知っている。
それをわざわざ見に来いとは、何か裏にあるのだろうか。秘石眼を失ってからは、失う前よりも安全で役に立たないこの弟を呼び寄せる理由が、他に何か……。
二つの秘石眼を持つ男マジック。
一族の長にしてガンマ団の総帥である兄さんにとって、必ず秘石眼を持って生まれてくる息子は、一番自分の地位を脅かす存在でしかない。
周りは必ず子供を総帥の後継者として見るだろう。やがて反逆が生まれる。
もっともマジックなら、そうなる前に息子といえども戦地へ送り込むくらいのことはするだろう。実の弟である俺を、激戦区へ追いやったように。
そして自らの力で仲間を傷つける苦汁を嘗めるのだ。
マジックの子として生まれた以上、その悲劇は約束されたも同然のことだ。
いや、弟の俺よりも息子であるほうが苦しいかもしれない。
兄さんは自分が、世界を手にする気でいるのだから。
マジック 「見ろ見ろ見ろー!サービス、これがシンタローだよ!!愛らしい瞳、桃色の頬っぺた、天使の笑顔、なぁんて可愛いのだー !! 」
サービス 「に…兄さん?」
水色のベビー服にくるまれた、息子シンタローに頬擦りをする父親。
顔が緩みっぱなしで、そこにはガンマ団総帥の威厳はカケラもない。
マジック 「ほぉーらシンちゃん、あそこにいるのはシンちゃんの叔父さんだよー」
マジックに抱き上げられた小さな赤ん坊は、こちらを見て無邪気に笑っている。もう顔の区別はつくのだろうか。
うう?
可愛い。
あの兄貴の子とはとても思えん !! それとも血の繋がった赤ん坊というのは、格別可愛らしく見えるものなのだろうか。
マジック 「かわいーだろー」
サービス 「ああ、驚いた」
赤ん坊の可愛らしさと、兄貴の態度に。
おおよそ敵らしい敵の無いマジックにとって、最大の敵となりうるのが、その息子だというのに、この可愛がりようはどうだ。
ちょっとだけだぞ、泣かせたら許さないぞ、と言いつつ、その手の感触を知って欲しがるマジックが、息子を預けてくれた。
とても軽い。
赤ん坊なんだから当然か。
きゃきゃと、シンタローと名付けられた赤ん坊は初めて見る顔に笑い掛ける。
サービス 「うわー」
なんだか不思議だ。こんな小さな手足が、生きている証拠にばたばたと動く。
一番不幸なはずの子供。長の子であるがゆえに、一番愛を貰えないはずの子供。
しかしシンタローは……。
マジック 「さぁ、シンゃん、ミルクの時間だヨ」
シンタローは、そうはならないかもしれない。
今まで、一族最強の者がもつ遺伝子情報は何ものにも優性だった。
けれど、シンタローをみてみろ。
あのマジックの持つ姿を、彼は受け継いではいない。
彼の持つこの黒髪と、黒い……双の普通の瞳は母方のものだ。
だからマジックは息子を受け入れられた。愛せないはずの息子は、生涯に渡って彼の敵にはなれないと分かったから。
秘石眼の威力は守られた。
もう誰にも、マジックを止めることはできない。
おそらく一族の中で真に愛される子供。
………この子が、何の力も持たないなんて信じられるだろうか。あのマジックをただの父親に変えてしまったこの不思議な子供が。
血筋の運命をただ一人逃れた小さなマジック・ジュニア。
マジック 「おい、サービス、そこのカメラを回すのだっ。いいか、ちゃんと撮らないと許さないぞ。二人の愛の記録にするのだー」
サービス 「兄さん、シンタローだっていつまでも子供ではいないよ。自分の眼で物を見、自分の頭で考えるようになる。反抗だってするだろう。その時、兄さんはシンタローを手放せるのか」
マジック 「手放す?」
マジックはシンタローを抱き締め、口元を歪ませる。
マジック 「いきなり何の話だ。こんなに私に懐いているのに、何故手放す必要があるのだ?サービス」
サービス 「……っ…」
マジック 「私は、反抗なんかできないように育てるつもりだよ」
ガンマ団総帥であるその男の言葉に、嘘はない。
やるといったらやる男だ。既にシンタローの一生はシンタローのものではない。
数年後、シンタローと再び会う機会があった。
格段に可愛らしくなって叔父に飛びつき、言ったものだ。
シンタロー 「僕ねっパパのお嫁さんになるのっ」
サービス 「シンタロー、男の子は、お嫁さんにはなれないんだよ」
サービス 「にいさん。一体どういう教育をしているんだ。日本で学校にやるんじゃなかったのか」
マジック 「やるとも。私は勉強も運動もできる子がいい。しかしそこで余計な知識を吹き込まれると困るな。シンちゃんと、ちゅーできなくなってしまう」
サービス 「(日本ではできないほうがシンタローの身のためになるんだぜ兄さん)」
マジック 「何か言ったか」
サービス 「いや、何も。(シンタロー、腑甲斐無い叔父を許せ)」
シンタロー 「おじちゃ、痛いの?」
瞬間的に落ち込んだとき、それをめざとく見つけたシンタローが寄ってくる。
ああ転ぶ転ぶ、どうしてもっとしっかり歩けないんだ、この子は。
まだ体に対して頭が大きいのか。高い重心にはらはらする。
マジック 「サービス、お前ももちろん私の教育方針には賛成だろう?」
シンタローに与えられるのは、檻の中の自由と、愛情という名の鎖。
サービス 「(何か間違ってる。だがどうすればいい)」
シンタロー 「おじちゃ、ちゅう、したげる」
サービス 「お、俺はどうしたら…ッ !! 」
ここで終わりなんだな。
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たぶん、原作設定と一番食い違っちゃった話ですね。これを書いた当時はまだ原作には獅子舞サマすら出てきてませんでしたからねぇ・・・。しかも実はこれ、漫画と小説の一人リレー作品だったんです。ほら、文章の繋がりとか流れが段落細切れでしょう?さら~と読み流してくださいませ。
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はじまりの物語(サービス編)
アオザワシンたろー
六月になって、マジックから、息子の顔を見に来いという連絡が入った。
兄貴の息子だから、俺にとっての甥ということになる。
一族の長の子の誕生は、長にとってはさほど喜ぶべきことではないことを俺は知っている。
それをわざわざ見に来いとは、何か裏にあるのだろうか。秘石眼を失ってからは、失う前よりも安全で役に立たないこの弟を呼び寄せる理由が、他に何か……。
二つの秘石眼を持つ男マジック。
一族の長にしてガンマ団の総帥である兄さんにとって、必ず秘石眼を持って生まれてくる息子は、一番自分の地位を脅かす存在でしかない。
周りは必ず子供を総帥の後継者として見るだろう。やがて反逆が生まれる。
もっともマジックなら、そうなる前に息子といえども戦地へ送り込むくらいのことはするだろう。実の弟である俺を、激戦区へ追いやったように。
そして自らの力で仲間を傷つける苦汁を嘗めるのだ。
マジックの子として生まれた以上、その悲劇は約束されたも同然のことだ。
いや、弟の俺よりも息子であるほうが苦しいかもしれない。
兄さんは自分が、世界を手にする気でいるのだから。
マジック 「見ろ見ろ見ろー!サービス、これがシンタローだよ!!愛らしい瞳、桃色の頬っぺた、天使の笑顔、なぁんて可愛いのだー !! 」
サービス 「に…兄さん?」
水色のベビー服にくるまれた、息子シンタローに頬擦りをする父親。
顔が緩みっぱなしで、そこにはガンマ団総帥の威厳はカケラもない。
マジック 「ほぉーらシンちゃん、あそこにいるのはシンちゃんの叔父さんだよー」
マジックに抱き上げられた小さな赤ん坊は、こちらを見て無邪気に笑っている。もう顔の区別はつくのだろうか。
うう?
可愛い。
あの兄貴の子とはとても思えん !! それとも血の繋がった赤ん坊というのは、格別可愛らしく見えるものなのだろうか。
マジック 「かわいーだろー」
サービス 「ああ、驚いた」
赤ん坊の可愛らしさと、兄貴の態度に。
おおよそ敵らしい敵の無いマジックにとって、最大の敵となりうるのが、その息子だというのに、この可愛がりようはどうだ。
ちょっとだけだぞ、泣かせたら許さないぞ、と言いつつ、その手の感触を知って欲しがるマジックが、息子を預けてくれた。
とても軽い。
赤ん坊なんだから当然か。
きゃきゃと、シンタローと名付けられた赤ん坊は初めて見る顔に笑い掛ける。
サービス 「うわー」
なんだか不思議だ。こんな小さな手足が、生きている証拠にばたばたと動く。
一番不幸なはずの子供。長の子であるがゆえに、一番愛を貰えないはずの子供。
しかしシンタローは……。
マジック 「さぁ、シンゃん、ミルクの時間だヨ」
シンタローは、そうはならないかもしれない。
今まで、一族最強の者がもつ遺伝子情報は何ものにも優性だった。
けれど、シンタローをみてみろ。
あのマジックの持つ姿を、彼は受け継いではいない。
彼の持つこの黒髪と、黒い……双の普通の瞳は母方のものだ。
だからマジックは息子を受け入れられた。愛せないはずの息子は、生涯に渡って彼の敵にはなれないと分かったから。
秘石眼の威力は守られた。
もう誰にも、マジックを止めることはできない。
おそらく一族の中で真に愛される子供。
………この子が、何の力も持たないなんて信じられるだろうか。あのマジックをただの父親に変えてしまったこの不思議な子供が。
血筋の運命をただ一人逃れた小さなマジック・ジュニア。
マジック 「おい、サービス、そこのカメラを回すのだっ。いいか、ちゃんと撮らないと許さないぞ。二人の愛の記録にするのだー」
サービス 「兄さん、シンタローだっていつまでも子供ではいないよ。自分の眼で物を見、自分の頭で考えるようになる。反抗だってするだろう。その時、兄さんはシンタローを手放せるのか」
マジック 「手放す?」
マジックはシンタローを抱き締め、口元を歪ませる。
マジック 「いきなり何の話だ。こんなに私に懐いているのに、何故手放す必要があるのだ?サービス」
サービス 「……っ…」
マジック 「私は、反抗なんかできないように育てるつもりだよ」
ガンマ団総帥であるその男の言葉に、嘘はない。
やるといったらやる男だ。既にシンタローの一生はシンタローのものではない。
数年後、シンタローと再び会う機会があった。
格段に可愛らしくなって叔父に飛びつき、言ったものだ。
シンタロー 「僕ねっパパのお嫁さんになるのっ」
サービス 「シンタロー、男の子は、お嫁さんにはなれないんだよ」
サービス 「にいさん。一体どういう教育をしているんだ。日本で学校にやるんじゃなかったのか」
マジック 「やるとも。私は勉強も運動もできる子がいい。しかしそこで余計な知識を吹き込まれると困るな。シンちゃんと、ちゅーできなくなってしまう」
サービス 「(日本ではできないほうがシンタローの身のためになるんだぜ兄さん)」
マジック 「何か言ったか」
サービス 「いや、何も。(シンタロー、腑甲斐無い叔父を許せ)」
シンタロー 「おじちゃ、痛いの?」
瞬間的に落ち込んだとき、それをめざとく見つけたシンタローが寄ってくる。
ああ転ぶ転ぶ、どうしてもっとしっかり歩けないんだ、この子は。
まだ体に対して頭が大きいのか。高い重心にはらはらする。
マジック 「サービス、お前ももちろん私の教育方針には賛成だろう?」
シンタローに与えられるのは、檻の中の自由と、愛情という名の鎖。
サービス 「(何か間違ってる。だがどうすればいい)」
シンタロー 「おじちゃ、ちゅう、したげる」
サービス 「お、俺はどうしたら…ッ !! 」
ここで終わりなんだな。
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たぶん、原作設定と一番食い違っちゃった話ですね。これを書いた当時はまだ原作には獅子舞サマすら出てきてませんでしたからねぇ・・・。しかも実はこれ、漫画と小説の一人リレー作品だったんです。ほら、文章の繋がりとか流れが段落細切れでしょう?さら~と読み流してくださいませ。
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