はじまりの物語(アラシヤマ編)
アオザワシンたろー
わてがガンマ団日本支部から本部へ移籍するよう言われましたのは、わてが十五になる前のことどす。
当時の本部には年若い訓練生はわてと…あの男しかおりまへんのどした。
あの男…マジック総帥の一人息子で、態度が大きうて口が悪うて顔が良くないこともないあの…シンタローという男です。
シンタロー 「なんだおめェ」
アラシヤマ 「わては今日付けで本部コースに編入するアラシヤマどす。あんさんこそ何者」
本部に着いた時、わてが何にもしてないのに寄ってきてじろじろ見はるのんが、シンタローはんどした。
その時は総帥の息子だなんて知りまへんから、失礼な奴の鼻っ柱折ってやるつもりで足ひっかけてやったんどすわ。したら奴さん、初め自分が転んだことが信じられないというふうどしたが、直ぐに真っ赤になって怒りだし、ついに取っ組み合いになってしまったんどす。
シンタロー 「てめェ新入りのくせに態度デカいぞ!」
アラシヤマ 「礼儀知らずに教えてあげとるんどす」
本部に日本人がいるとは聞いとりまへんどしたが、そいつの見かけは日本人で、年も背格好もわてと同じ位で、嫌味なことに強さまで似通っとりました。
こう見えてもわては日本支部の訓練生内ではトップ成績を誇るエリート、格闘技は常に上の学年を相手にしてたんどすえ?それなのに苦戦してもぅたんどす。
シンタロー 「脇が甘ぇーよッ」
アラシヤマ 「なんですて !? 」
手刀、というのがあります。実践で使うことは余り無いと教官が以前ゆうてはりましたが、使いこなせれば負けはありまへん。
その手刀の、奴の肘から先がまさに刃のように空を裂き、わての懐に飛び込んできたんどす。
後方にステップすることで直撃を避けられたんは、わての反射神経あってのことやと思います。
自分の技が通用しないとわかったときの奴の悔しそうな顔!
その時は、教官殿の采配で勝負はお預けになりました。
奴の正体を知ったのもこの時どす。
黒髪に驚きましたが、総帥の奥方が日本人だったので奴のような子が生まれたと、後から噂を耳にしました。総帥が溺愛してはると、恐れをもって語られとるんどす。
本部の設備は日本とは比べ物にならず、演習場も広く、より実践的な訓練ができはるようどした。
そこでは近々本部コースの下にジュニアコースを作りはるというので、わてはそれの寮長だとか委員長だとか色々面倒臭い肩書きを貰いました。
ジュニアコースのメンバーが選任されるまでの間は、シンタローと一緒に本部コースにまじって訓練に参加しました。
その中ではっきりわかりましたわ。
シンタローという男は、ただものではおまへん。
総帥のお子という立場に違わず、ジュニアコースなどというレベルではありまへんのどす。
もちろん、わてもどすけどな!
わてが総帥に呼ばれたんは、本部の生活にもなれた頃のことどした。
映像や肖像画で顔は知っとったんどすが、本物の総帥はなかなか迫力モンどしたわ。ひっくーい声で、情熱的な赤い制服と対照的に、冷たい青い眼をしてはりました。
マジック 「良く来た。お前を本部へ呼んだのはこの私だ。貴様にひとつ、任務を与えようと思ってな」
初めに断っておくと、総帥がわてのような訓練生に御会いになるのは異例のことなんどす。まして直々に任務を与えようなどとは…!
ええどす。わての任務のためにここまで手間隙かけてくれはったんどすから、うかがおーではおまへんか。
マジック 「今のお前とシンタローの実力はほぼ互角。お前の任務は正当な手段であれを抜くことだ」
アラシヤマ 「御子息を…ですか。もちろん、誰であろうと手を抜くつもりはありませんが…」
マジック 「あれは私の息子だぞ。取り入った方が利口だとは思わないか」
総帥は、穏やかな口調で任務を辞退させるようなことを言わはる。わても子供や思てなめられたもんどすな。
アラシヤマ 「わての目的は強くなることどす」
マジック 「シンタローは我が一族の後継者だ。それがどういう意味を持つかわからないわけではあるまい」
アラシヤマ 「わてが御子息を抜いても、そんな彼を後継者として指名できはるんどすか」
マジック 「フン。報告通り、頭も悪くないようだ。よかろう、今後シンタローと組め。ただしお前の任務を悟られるな。今後シンタローに取り入ろうとする者が増えても、だぞ」
ふいに、わてにはわかったんどす。総帥の考えてはることが。
マジック総帥は、わてにシンタローを育てるための手駒になれと言うてはるんどす。
同じ年頃で、実力も突出しているどうしで、仲よぅのうて、……そんな奴が側におったら、否が応でも強うなりますわな。
まだほんのちょっとしか話したことありまへんが、シンタローはんは、そない悪い奴でもないようどしたが。
なんや、ハラたちますな。
父親の手のなかで何の心配も無く育ちはって、あの強さゆうんは…なんやハラたちます。
シンタロー 「よぅ、アラシヤマ、いつかの決着をつけようぜ」
シンタローがそう声かけてきはったんは、総帥に呼ばれた日の夜のことどす。夜間訓練場が使えるゆうことどした。
なんやハラたつんどす。自分の将来になんの心配ものぅて、黙ってれば全部総帥がしてくれはって、それでいてわてと同じくらい強いなんて。
アラシヤマ 「…ええどす。お相手しまひょ」
叩きのめしてやろう。そういうつもりで返事しましたんどすけど、シンタローはんたら、嬉しそうな顔、しはったんどす。そないに決着つけたかったんどすやろか?
わて、ホントは頭だって良いんどすよ。
だからわかってしまったんどす。
シンタローはんて、総帥の息子ゆうんで、結構苦労してはるんやないかって。
ここにはわてらより強いんの、他にもおるんですもん。でも、わての所に来はった。
ふうん。ライバル、ゆわはる、それも、ええねえ。
アラシヤマ 「手加減するつもりはないどすよ」
ほしたらシンタローはん、やっぱり嬉しそうに言うん。
シンタロー 「できる余裕があるならやってみな!」
わてらの付き合いゆうのは、こうして始まったんどす。
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ええ京都弁なんててでたらめですとも!そこ!注目しないように!!
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