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8

月の雫


最後のねじを締め、ほっと一息ついた。
2ヶ月前に大爆発を起こしてしまったが、そんな些細なことを気にしていては成功することも出来ない。
数ヶ月前にシステム点検に借り出され、一時ガンボットの製作を中断せざるを得なかった。
システム点検の際にはまさか自分がちょくちょくマザ・コンに介入していることがばれたのかと思ったが、シンタローが逃げたことが噛んでいたらしい。
マジックもシンタローがコタローの行方を知らぬまま逃げたとは考えなかったらしい。そのため何らかの方法でマザ・コンに侵入して情報を得たのではないかと踏んだらしい。
しかし、事実を知っているグンマにしてみれば見当違いもいいところだということを知っている。だからといって教えてしまえば高松の身に何が起きるかは想像が出来るため、その命令に従い、丁寧に調べた。
流石に心臓部ともいえるマザ・コンを任せられる人間は限られており、そのためグンマ一人で行うことになった今回の作業。それでもその間、外からの情報は滞ることなくグンマの耳に届いていた。
そして、ハッキングされた形跡が無いこと、セキュリティの強化が終了したことを報告したときには、送られた刺客――ミヤギとトットリという名前らしい――が帰ってきていないという事態にマジックが荒れているという話も聞いた。
それでもそんなことを気にせずに、ガンボットの製作に取り掛かった。
久し振りすぎて、配線を繋ぎ間違えてショートしたことを除けば、順調であったといえるだろう。


南の島にいるというシンタロー。コタローの居場所がわかっているというのに、何故そんなところにいるのかがグンマには理解できなかった。もしかしたらその情報は偽者で、南の島に向かった刺客は帰ってこないのではなく、帰ってくることが出来ない状態なのかもしれない。シンタロー自体は別の場所でコタローを救出するための準備を図っている可能性もあるのではないのか?
そんな疑問も、このガンボットが完成するころにはわかることだろう。
先日、マジックがシンタローを迎えに行った際にグンマも同行する様に言われたのだが、ガンボットが後一歩で完成するということを言い訳に残った。
最新の情報では団内ではシンタローの次に強いというアラシヤマという刺客を送ったらしいが、彼からの連絡も無い。


「まだ、大丈夫」


グンマは信じていた。
抜け出したシンタローは、自らの幸せを掴むことが出来ると。ここに、ガンマ団に戻ってくるときは、コタローの傍にいると。
刺客からの連絡が無いのは、総帥が怖いからだろうと安易に予想された。
失敗は赦されない以上、連れ戻すことが出来ないのにも関わらず、連絡を入れるという命知らずなことはしないだろう。
大体、シンタローの同期である以上敵うはずが無い。
そして、全くの連絡が無いことに苛立った総帥自らが出向いたのだ。
良くも悪くも、父親であり総帥であるマジックが出向いたのならば詳しい詳細がわかるだろう。力の差は圧倒的であるからこそ、もしそこにシンタローがいるのならば連れ戻されるのだろうから。
必要最低限の物以外置いていないこの部屋は無機質で、壁にぶら下がっているコルクボートだけが色彩を放っている。
昔のものから最近のものまで無秩序に写真が貼られている。その中にはシンタローと一緒に何枚もある。
幼い頃に一緒にとった写真は二人でにっこりと笑っていて、高松とマジックが鼻血を流していたことを憶えている。
そのときのような笑顔を取り戻して欲しいと願いながら、グンマはガンボットの起動スイッチを入れる。
とたんに眼のところに設置したランプが灯る。
一先ずは起動したことにほっとしつつ、動作確認を行う。
左右の腕を動かすたびに、ギギギ、という機械音が響く。音の割にはスムーズに動くことに満足すると次は左右の足を動かしてその場で足踏みをさせる。これもこちらが指示したように動くことを確認すると電源を再び落とした。
「とりあえず、充電しておかないとね」
コンセントに充電コードを差込んでおく。動ける時間はただ動かすだけならば1時間程。この後でテストを重ねて正確に測る必要があるだろう。
と、そこでアラームが最新の情報が入ってきたことを報せた。
慌てて端末を立ち上げ、手馴れた仕種で易々と介入する。どうやら南国へと向かった総帥の戦艦が数日中に帰還するとのこと。
そして、シンタローがその島にいること。
グンマは十分過ぎる事実を手に入れたことをほっとすると、ガンボットを動かす手はずを整えた。


帰還早々、マジックはグンマを呼び出した。
手が届く位置にあったものを逃がしてしまったことが応えており、すぐさま仕事をする気になれなかった。そこにグンマが新作ロボットが完成したという報告がなされていたので、休憩がてらに聞いてみようと思ったのだ。
「お久し振りです」
ティラミスにこの部屋に通されると、開口一番に挨拶をしてグンマはマジックに会釈をした。
「元気にやっていたかい?」
いつもの優しいマジックであることにほっとしつつ、グンマは頷く。
ある程度、恐れていたこととして以前のように威圧感で圧倒されているのではないかと思っていたのだが、そのような事態に陥らずにすんだことに緊張が解れる。
「これが今回開発したガンボットです」
この数日で一生懸命纏めた報告書には詳しい数字が記載されている。寝る暇を惜しんで取られたデータは完璧に近いといえるだろう。
それもこれも、目的のため。
「ふ~ん、ならこのロボットは完璧なんだね」
「はい」
2,3質問をされ、資料と照らし合わせながら答えると、マジックはおもむろに一枚の書類を取り出した。
「じゃあ、グンちゃんにはシンタローを連れ戻してもらおうかな」
「わかりました」
さらりと重要なことを言ったというのに、グンマは驚くこともせず、はっきりと頷いた。
こうなることを、予期していたかのように。
「今度こそ、シンちゃんに勝ってみせます」


一枚の通達書と共に研究室に帰ってくると、早速準備を進めた。
ガンボットのメンテナンスをするために必要な道具を纏めていると、インターフォンが鳴った。
まだなにかあったのかと思い、ドアの鍵を開けると、そこには見覚えのある顔があった。
「私、Dr高松の研究室にて助手を務めているものです」
敬礼と共に自己紹介する彼は、現在、研究室に不在の高松の変わりに留守を預かっているものだった。
「なに?どうかしたの?」
高松からなにか連絡があったのかと首を傾げる。
「シンタロー様を連れ戻しに行かれるというのは本当でしょうか?」
「うん、そうだよ」
にっこりと笑ってそう答えるとさっさと部屋の中に戻ってゆく。
その様に慌てた彼は、そのまま研究室内に入ってゆくと、荷物の整理に追われているグンマの説得を開始した。
「せ、せめてDr高松がお帰りになってからでも遅くないのではないのでしょうか?」
「駄目だよ、叔父様から直接受けた命令だし」
暗に、逆らったらどうなるか解るでしょ、と匂わすと流石に彼も押し黙る。
命令を破ったものへの厳しい処罰は有名であるため、いくら高松が恐ろしかろうと思わず躊躇してしまうほどだ。
「大丈夫。ただシンちゃんに会いに行くだけだし」
ガンボットを積んでゆくということはおくびにも出さずに朗らかに答える。
元々、ここには資料などが置いてあるだけなので、ただシンタローを追いかけていくということしか聞いていない彼はしぶしぶ引き下がった。
大体、青の一族であるグンマに逆らうことなど、一介の研究員が出来るわけではない。
「それに、なにかあったらちゃんと僕から高松に言うよ」
それでは遅いのだが、結局、彼は自分の研究室に帰っていった。
なんとか説得できたことに安堵すると、申し訳なさそうに去っていった彼に頭を下げる。たとえ、どう言おうとも保護者である高松は彼に酷い仕打ちをすることだろう。しかし、それでもグンマはその島に行かなければならない。
今回、連れてゆくガンボットは、3年前とはパワーもスピードも段違いだ。きっといい勝負が出来るだろう。
しかし、そんなことはグンマには関係なかった。





さあ、望むものは見れるだろうか?

















<後書>
まだまだ、先は長いと見せかけて、実は短い(かな?)
マジックさんはきっと、久し振りにシンちゃんとスキンシップが取れたからそんなに怒ってないじゃないかなと。しかも久し振りにご飯も食べれたことだしね。

つーか、絶対このグンマさん強いって(パプワ島に行って変わったんじゃなくって、元の素がでてきたってことですか?)
さてはて、ようやく、ようやく次はシンタローさんとグンマさんのツーショットになるか?

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