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月の雫

コタローが幽閉されてから、早くも数日が過ぎた。
グンマは日に日にやつれてゆく。
高松はそのことが自分のせいであるとわかっているから胸が痛い。


『ねえ、高松ならなにか知っているんでしょう?』


皮肉なものだった。
まさか、幽閉されたその日にグンマがシンタローと、そしてマジックに会うことになるとは…
釘をきちんと刺しておくべきたっだと思うも、いつかはわかってしまうことだったのだからと諦めにも似た感情があった。
夕飯の時間になっても連絡がこないことに不審に思った高松が、グンマの研究室に行くとドアは硬くロックされたまま。
屋敷のほうに戻ったのかと思ったが、その形跡は無い。
しかし、代わりに数時間前に司令塔へと向かったことがわかった。
その時間は奇しくも、マジックがシンタローを呼び出したときだった。
もしかしたら、いつものように研究に没頭しているのかもしれない。ガンボットの研究がようやくできるようになったのだからと高松は自分を納得させようとした。
だが、昨日まで苦手分野の研究に取り組んでいたグンマが、いくら自分の好きな研究だからといってすぐに取り掛かるだろうか?
一抹の不安を抱きながらも、高松は翌日になっからもう一度グンマの研究室を訪れた。
すると、うんともすんとも言わなかったドアが開いた。
そのまま中に入ると、涙によって目を腫らしたグンマが椅子に座ったままこちらを見ていた。


そして言われた台詞が核心を突いたもので、思わず高松は黙ってしまった。
しかし、グンマはそれ以上何も言わない。
ただ、そのまま高松から視線を外して一言呟いただけだった。


『もう、僕には何も残ってないや』







高松がその計画を聞いたのは、ずいぶん前のことだった。


「コタローを幽閉する」


極秘に呼び出された高松は、マジックが苦渋に満ちた顔でそう切り出されても、ただ頷いただけだった。
ただ、喜劇が目の前で起きていることだけはわかった。
実の息子より、偽者の息子を取るという、その行動にただ笑ってしまった。
その任務は誰にも知られないように、高松が日本支部に向かったときに直接指示を出して、行われた。
出来上がるまで、いや、完成してからもコタローがその部屋に幽閉されるまで誰もその部屋を何に使うかを知らなかった。


シンタローがk-3地区に向かったと聞き、高松は計画が遂行されると思った。
しかし、その報せは一向に来ない。
不審に思って、直接問いかけたところ一冊の書類を渡された。
そこには具体的の指示が記されており、これさえあれば今すぐにでも決行できるだろう。
「未だに迷っているんですか?」
平常よりも深い皺を刻んだ眉間が、表情を更に険しくさせている。
「シンタロー様に嫌われることが嫌なのですか」
覇王とも謳われてるマジックに歯に衣を着せぬ物言いが出来るものはそうそういない。
しかし、それぐらい出なければ若くしてガンマ団の幹部にはなれなかったであろう。たとえ、ルーザーの秘蔵っ子であったとしても。
「……計画はシンタローが帰ってきてから行う」
あまりの言葉に、一瞬高松は言葉を失う。
それは、つまり。
「目の前で、引き離されるのですか」
いまさらながらに、自分の認識が甘かったのかと心の中で舌打ちをする。
あれほど溺愛していた息子よりも、ガンマ団を取るとは予想できない事態だ。
一度、そのような行動を取るのならば今後も同じような事態が起こると考えられる。
一番安全な場所に避難させたと思ったのだが、それは間違いだったのだろうか?


しかし、次の一言でその考えは打ち消された。


「あの子を私は失うつもりは無い」
声に淀みは無く、淡々と語られる。
「コタローが両目とも秘石眼だと知ったとしたならば、シンタローは絶対に離れようとしないだろう。それこそ自分は傷ついても構わないと」
しかし、その眼はこれから失うであろう家族の、シンタローとの絆に対する想いが浮かんでいた。
「シンタロー様に恨まれても、ですか」
それを知っても、高松は傷を抉るかのように質問を投げかける。
高松にとって大切なのは、ただひとつだけ。
「――ああ」
満足のいく回答をもらい、高松は頷いた。
「なら私は構いませんよ。途中で命令を変更されては困りますから」
相変わらず、人を食ったような答えであったが、マジックは何も言わず退出を促した。





それから高松は、コタローの幽閉をうまく進めるために微調整を行い、そのときを待った。
ことは順調に進んだ。
実の息子だと信じていたものに恨まれ、本当の息子を幽閉する。なんと愚かな行いなのだろう。
その事実だけで、高松の心を愉悦に浸らせるには十分だった。
ただひとつ、いやふたつばかり気になることがあった。
それは、そのことによって傷つくものの存在。
どちらも高松にとっては大切なもの。
しかし、今さら引くことは出来ない。





総てが完了し、あっという間に一年が過ぎた。
初めこそ、何をするでなくぼんやりとしていたグンマだがここ数ヶ月、ガンボットの研究をしていた。
マジックもグンマを気にかけ、多少のことには眼を瞑りそれ程、他の研究を押し付けることは無くなった。


そして、シンタローは。


「ガンマ団日本支部で大爆発があってね」



止まったままの時間が、動き出せばいい。
大切な、者達の…






<後書>
高松がでずっぱり…
月の雫はグンマさんメインなお話のはずなのですがねぇ。
この頃の高松は、シンタローさんもグンマと同じくらい好きなはずだと思い、書いてみました。

日記にも書いたのですが、高松はシンタローさんには実験まがいの事をしたということが漫画には書いてなかったので…

嘘予告はもうやめます、すみません…(パプワ君を出したかったよ…)


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