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3

月の雫


大した怪我を負うことも無く、帰還できることにほっとする。
自分以外に実戦経験の少ない兵士は、他にいない。
それでも、自分以上に戦果を上げたものはいない。
誰もが自分を認める、シンタローは高揚感に包まれながら、飛行艇の揺れに体を任せ浅い眠りに着いた。


その話を聞いたのは、結構前からだった。
K地区自体、元々対立の激しい部隊が存在していることで有名であり、ついには特戦部隊が出動するのではないかと噂されていた。
日を増すごとに戦況は激化していく。
そんなある日、シンタローは部隊長に呼び出しを受けた。
たった一人だけの呼び出しに不審を抱きながらも指定された部屋に向かうとそこには部隊長の他に、数名の仕官が待っていた。
「これが、君に与えられる次の任務だ」
言葉と共に一枚の書類を渡され、内容を確認する。
「これは、お前の実力を買われての任務だ」
その声が遠く聞こえる。
今までも何度も前線に送り込まれたことがあった。
しかし、今回の任務では今までのように同期と組んでチームとして動くのではなく、先鋭といわれる、いずれもベテラン達の中に紛れて行われる。
少しでも実力が無ければ容赦なく置いてゆかれるだろう。
「拝命しました」
それでも何とか敬礼をして部屋を後にしたことに気が付いたのは、自分の部屋に戻ってからだった。


瞬く間に、準備は進んだ。
今の部隊には、今後戻ることは無いという。
成果があろうが無かろうか、シンタローは総帥直属の部下に昇進する。
今後は、自らが部隊を率いることになる。
しかし、シンタローは単純に地位が上がることを喜んでいるわけではない。
昔から、強くなることが目標だった。
勝つこと、それが手段。
「絶対に強くなってみせる」


理由は思い出せないのだけれども。


コタローが生まれたから、マジックの様子がおかしいことにシンタローは気付いていた。
特に、シンタローがコタローの傍にいるときに険しい顔をしている。
加えてコタローの周りでは、不可思議なことが良く起こった。
例えば、気が付くとコタローの周りの物が良く壊れていたりするのだ。
誰かに害をなすことが無いので、それ程危険視はしていないのだが、任務に就く時にはやはり不安になる。
「いいか、危険な場所には近づくんじゃないぞ」
「うん」
出立前の朝にシンタローはコタローの頭を撫でながら、話しかける。
この時期の子供は、一ヶ月もあれば驚くほどの成長を見せる。それを見ることが出来ないのが残念でならない。
だからこそ、こうしてどこかに行くときはしっかりとその顔を忘れないように、忘れられないように目線を合わせて、いってきますの挨拶をする。
いつものように天使のようなその笑顔に、頬が緩むのを抑えることが出来ない。
「帰ってきたら、いっぱい遊んでやるからな」
自分がコタローくらいの時には、その言葉に喜んでいたことを憶えている。
案の定、嬉しそうな顔をするコタローに鼻血が出そうになったその時、視線を感じた。
冷たい、視線だった。
コタローに気が付かれるように、そちらに目線をやるとマジックがこちらを見ていた。
「どうかしたの?」
不安を感じたコタローがシンタローの袖を引っ張ると、慌ててシンタローはコタローを抱き上げた。
「なんでもないから」
そして、そのまま抱きしめる。
一度も抱きしめたことの無い、父親の分まで。



機体が揺れる。
すぐさま目を開けると、他の者達が立ち上がっていた。
シンタローもそれに続いて立ち上がると、出口へと向かう。
本部へ、帰還したのだ。
写真ではなく、本物の笑顔を見ることが出来ることにシンタローは知らず知らずのうちに顔が綻んでいた。




惨劇を、予期することが出来ずに。






<後書>
なにか、クッションばかり入れている気がします…
この次のお話は、またグンマさんに戻る予定。

本当に、気長にお待ちいただけるとありがたいです…
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