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作・斯波

大事なものはいつだって
たった一つしかなかった
おまえをこの手に抱けるなら
他に何も要らないんだ



ONLY YOU



―――その日、キンタローと何度目かの喧嘩をした。


「だから、何で俺に隠し事すんだよ!?」
「別に隠している事など無い」
「だったらちゃんと俺を納得させろよ。おまえがアラシヤマを自分の部屋に呼びつけてるなんて、どう考えたっておかしいだろ?」
そう、事の発端は俺のことを心友だと言い張る根暗な№2のせいだった。
あいつは伊達衆の筆頭で、形の上では俺直属になっている。そのアラシヤマを、最近ちょくちょくキンタローが自分の部屋に呼んでいるという話が俺の耳に入ってきたのだ。
キンタローは俺の補佐官だが本業は開発で、実戦部隊のアラシヤマとは関わりがない筈だ。
それも就業時間ならともかく、夜遅くなってからだというから俺の心中は荒れ狂っていた。
「アラシヤマは何の用事でおまえの部屋に来るんだ」
冷静に、冷静に。
必死で自分に言い聞かせながらデスクの前に立つキンタローを見据える。
嫉妬するなんてみっともないと自分では分かっているからだ。
なのにキンタローの奴は、眉一つ動かさずしゃあしゃあと言いやがったのだ。
「それはおまえには関係ない」
その一言でブチ切れた。
「・・・あーそお。俺には関係無いんだ?」
「おい」
「じゃあ俺はもう何にも訊かねェよ」
「おい、シンタロー! 落ち着け、冷静に―――」
「今日からもう俺の部屋には来るな」
「・・・!」
「俺とおまえは従兄弟同士、仕事では総帥とその補佐官。それで文句ねえよな?」
初めてキンタローの顔色が変わる。
(もう遅ェよ)

いつだって俺が一方的におまえを好きなんだ。
おまえには俺の知らないことがありすぎて、それが悲しい。


「俺はもうおまえに疲れたよ、キンタロー。―――」


(対等じゃない恋人なんか、俺は要らないから)

零れ落ちた最後の言葉は、あっけないほど穏やかだった。



総帥室に軽いノックの音がする。
返事も待たずに入ってきた男を見て、俺は思わず手の中の万年筆を折っていた。
涼しい顔で俺の前に立ったのは、今一番見たくない顔だった。


「この書類、今日中に決裁して欲しいのどすけど」
「―――出ていけ。首の骨折られたくなかったらな」
「へえ、その万年筆みたいにどすか?」
「そうだ。出ていけ、アラシヤマ」
「八つ当たりはみっともないどすえ、シンタローはん」
「てめえ・・・!」
「良かったやないどすか、男同士の恋愛なんて非生産的やし」
「・・・おまえ、キンタローの部屋で何を」
「キンタローに訊かはったら宜しいやろ」
「・・・」
「あんさんには関係無いとでも言われたんどすか」
「!」
「ほなら関係ないことなんどす」

―――あんさん、よっぽどキンタローを信用してはらへんのどすなあ―――


躊躇無く放った眼魔砲を、アラシヤマは身体の周りに渦巻いた炎で難なく相殺した。
呆然とする俺に、炎の中からニッと笑ってみせる。
「そんな揺らいだ目ェしたお人には、わては殺れまへんよ?」
「アラシヤマ・・・」
「あんさんはわての大事な心友どすさかい、ここでとどめ刺すんは止めときましょ」
「―――!!」
「ああそや、キンタローから伝言どす」
「・・・なっ」


普段決して目を合わさないアラシヤマの瞳に初めて真っ直ぐ見据えられて凍りつく。
だが両手が小刻みに震えているのは、こいつのせいじゃない。


「今までおおきに、て言うてましたわ。―――」

それは、キンタローから伝えられた訣別の言葉のせいだった。


シンタローはん、とアラシヤマが囁く。
ちりちりと熱い炎が俺の首筋を焼いている。

「キンタローは、わてが戴いていきます」

俺に口づけたアラシヤマの唇は、ぞっとするほど冷たかった。



グンマは今日何度目になるか分からない溜息をついた。
そっと見遣った視線の先には、同じ開発課の従兄弟の背中。
(・・・またシンちゃんと喧嘩したのか)
キンタローが総帥である従兄弟のシンタローと恋仲になったとき、いちばん喜んだのはグンマだった。グンマはシンタローのこともキンタローのことも大好きだったからだ。
男気があって潔くて、まるで野生の獣のようなシンタロー。
頭が良くて冷静で、完璧な紳士でもあるキンタロー。
その二人がお互い惹かれあうのは、グンマには当然のことのように思えた。
とはいえやはり気性の激しい青の一族であるこのカップルは、まるで呼吸をするように自然に喧嘩をする。根本的にキンタローがシンタローに甘いので、それは大抵シンタローが駄々を捏ねているようにしか見えなかったが、今回のはどうも違うようだと見た目よりも聡明なグンマは感じていた。
普段ならシンタローの我が儘に目を細めて嬉しそうに愚痴をこぼすだけのキンタローが、今日は朝からまるで彫刻のように無表情な顔で仕事をしている。一言も口を利かず、笑いもしない。
(シンちゃんの方も黄色信号か・・・)
いつも鳴りっぱなしの総帥室からの直通電話が、今朝からリンとも言わず沈黙している。
おかげで朝から開発課の空気はこれでもかといわんばかりに重苦しい。
グンマは仕方なく立ち上がった。



「―――えっ、そんなこと言ったの!?」
「・・・・」
最初頑強に黙秘を貫いたシンタローだったが、グンマの果てしない『ねえどうしたのシンちゃんキンちゃんが怖いよう僕のことも考えてよシンちゃんシンちゃん』攻撃についに口を割った。
「そりゃキンちゃんショックだよ~・・・」
キンタローにとって、シンタローは全てなのだから。
「仕方がねえよ、隠し事をされるのが俺は一番嫌いなんだ」
「でもきっと何か理由があるんじゃない?」
「アラシヤマに宣言されちまったよ。キンタローは貰っていく、ってな」
「あ、そう・・・」
グンマは言葉もなかった。
何とか仲を取り持とうと思っていた彼を思いとどまらせたのは、意外にも穏やかなシンタローの眼差しだった。
「いいんだよ、グンマ」
それは全てを既に諦めた人の、優しい瞳だった。
「あいつは俺のこと好きなんだろうかとか、将来はどうしたらいいんだろうとか、そんなこと考えてくの、もう疲れたんだ」
「シンちゃん・・・」
「俺は子供だからさ」

半分なら要らない。
俺以外の奴を心に住まわせてるキンタローなんか、最初から要らないんだ。

欲しいのは、あいつの全てだったから。



「―――報告は以上どす」
「分かった」
言葉が途切れ、重い沈黙が落ちる。破ったのは俺の方だった。
「・・シンタローに喧嘩を売ってきたそうだな」
「何や、もう耳に入ったん?」
シンタローと同じ色の瞳をすいと伏せ、薄い唇を邪悪な形につりあげて№2は笑った。
「余計なことをするな」
あれから二週間が過ぎていた。言葉通り、シンタローは完璧に俺を拒絶していた。仕事上では変化は無いが、決して顔を合わさない。電話もなし、メールもなし。
喧嘩をした次の日シンタローを訪ねていったというグンマから話を聞かされた時には、本気でアラシヤマを殺してやろうかと思ったが、そんなことをしても事態が変わる訳ではないと気づいてやっと思いとどまった。
なあ、と物憂い声で呼ばれて視線を上げた。
「何でシンタローはんに言わへんかったんどす? わてがここに来てんのは、純粋に仕事の為やいうこと」
そうだ、シンタローは誤解をしている。
アラシヤマを深夜俺の部屋に呼んでいたのは、極秘の任務を言い渡す為だった。部屋への出入りを見られていたのは迂闊だったが、決してあいつが思っているようなことじゃない。
だが素直にそう言えなかったのには訳がある。
「―――言える訳がないだろう。ガンマ団がまだ暗殺をしているなどと」
新総帥の下でガンマ団は生まれ変わった。しかし、いきなり全ての依頼を中途で断る訳にはいかなかったのだ。引き受けてまだ遂行していない依頼実行のために俺とマジック伯父が選んだのがアラシヤマだった。こいつは腕も確かだし口も堅い。シンタローにも嫌われているから時々本部から姿を消しても支障はないだろう。
そんな訳で順調にその任務は片づいているのだが、それをシンタローに言うことは出来ない。
悲壮なまでの決意に燃え、己の運命を全て潔く受け止めて戦っているあの男に、それを裏切っているのは他でもない自分だと、どうして告げることが出来よう。
「―――あいつには余計な負担を負わせたくない」
あいつがどこまでも真っ直ぐでいられるように。
信じた道をひたすら進むことが出来るように。
その為だけに、俺は居る。
「お優しいことどすなあ」
アラシヤマは目を伏せたまま煙草を咥えた。
「わてには手ェ汚させてるくせに」
「そうだ」
俺はアラシヤマを見返した。
「俺にとって大事なのはシンタローだけだ。守りたいのも泣かせたくないのも、あいつだけだ。おまえの感情などどうでもいい」
「はあ、そこまで言い切られるといっそ清々しいどすな」
アラシヤマは呆れたように言って立ち上がった。
吸いかけの煙草を俺に渡し、入り口のところで振り返る。
「そやったら余計に、シンタローはんに言わなあかんことがあるんちゃうの?」
「貴様、何を―――」
「今頃、きっと一人で泣いたはりますえ」
閉められた扉と一緒に残された言葉が、まるで残光のように俺の心に突き刺さった。



俺は足早に廊下を歩いていた。
途中で秘書課のティラミスに出会った。
「あ、キンタロー補佐官―――」
「シンタローは何処だ」
二週間ぶりにシンタローの名前を口にした俺に戸惑ったのか一瞬言いよどんだ後、ティラミスは背後を振り返った。
「実は―――」


俺はバン、と音を立ててシンタローの部屋の扉を開いた。
二週間振りに見るシンタローの部屋は気味が悪いほど片づいていた。
(いつもあんなに散らかしているのに)
口煩く言ってやっと渋々片づけられる部屋の清潔さは、それ自体が何か不吉なものを思わせる。
ベッドでは、シンタローが眠っていた。
―――総帥は今日の午後倒れられまして。
ティラミスの言葉が甦る。
―――補佐官にはお知らせするなときつく命じられましたので・・・申し訳ありません。
あれからずっと見ていなかった懐かしい顔は疲れ果て、やつれていた。
それは、ずっと眠っていなかったのであろうということが一目で分かる痛々しさだった。
サイドテーブルに置かれたメモがふと目に入る。
『キンちゃんへ』
グンマの字だった。
『取り敢えずベッドへ運びました。高松が言うには睡眠不足と過労と精神の緊張が重なったのだそうです。今は薬で眠っているけど、ずっと寝てなかったみたい。このままだとシンちゃん、本当に倒れちゃうよ』
(シンタロー・・・)
―――俺はもうおまえに疲れたよ、キンタロー。
溜息のように吐かれた言葉に、傷ついたのはおまえの方だったというのか。
おまえを苦しめるくらいなら諦めようと、この二週間ずっと努力していたのに、かえって俺はおまえを追い詰めていたというのか。
大切な人につらい思いをさせた。ただそれだけだった。
(どうして一つになれないんだろう)
目の前のやつれた顔が、不意にぼやけた。
ぱたり、とシンタローの顔に滴が落ちる。
―――もう行こう。
(これ以上、シンタローを悲しませる前に)
そう思って立ち上がりかけた俺の上着が、強く引かれた。
よろめいてバランスを崩した俺をもう一度引っ張る。
―――まさか。
振り返った俺の眼に映ったのは、青ざめた顔で俺を見上げているシンタローの顔だった。
「キン・・タロ・・・?」
もつれる舌でそう呼ばれた瞬間、涙が溢れた。
「おまえも・・・泣くんだな」
そう言って懸命に微笑んだシンタローを、俺はきつく抱きしめた。
涙が、どうしても止まらなかった。



何でキンタローは泣いてるんだろう。
まだぼんやりした頭で、そう思った。


これは夢かもしれないと考えた。
だって俺はキンタローにあんな酷いことを言って拒絶してしまったのに、そのキンタローが目の前にいるなんてそんな都合のいい話ないだろう。
だけどキンタローは涙をぽろぽろ流していた。いつも冷静で、喧嘩の時だって表情を変えないキンタローの涙を、俺は初めて見たんだ。
「おまえも・・・泣くんだな」
そう言ったら、キンタローは俺を抱きしめてさらに激しく泣いた。
「シンタロー・・・シンタロー!」
それしか言葉を知らない子供のように、繰り返し俺の名前を呼んで泣く。
俺が金色の頭を撫でると、びくっとして俺の顔を見つめた。
その目がすでに真っ赤になっているのを見て、何だか俺まで泣きたくなった。


好きな男の涙は見たくないと思った。
俺の前では笑顔でいて欲しかった。
だから、もう泣かないでくれ―――。



キンタローから手渡されたカップを、俺はおとなしく受け取った。
中身はミルクがたっぷり入ったカフェオレだった。
「倒れるまで無理をする奴があるか、馬鹿」
キンタローは泣いたことが恥ずかしかったのか、顔を背けてベッドの上に腰を下ろしている。
「ティラミスとグンマが騒ぎすぎなんだよ。―――何でてめえまで来やがった」
つい素っ気無い口調になってしまう。
二週間ぶりに顔を見せたキンタローに、どんな声で話しかけていいのか分からない。
「・・・アラシヤマが、心配してんじゃねえのか」
そう言った瞬間、キンタローが物凄い形相で振り向いた。
声を上げる間もなく喉を掴まれて押し倒される。
「その名前を口にするな」
「ちょ・・・苦し―――」
俺よりも大きな手が、喉を掴んでぎりぎりと締め上げる。
「何故分からない。俺が愛しているのはおまえだけなのに」
「だって・・・アラシヤマが・・・」
「あいつは関係ない。仕事のことで話をしただけだ」
「でも、おまえを貰っていくって」
「そんなのはいつもの嫌がらせに決まっているだろう!」
キンタローは大きくため息をついて俺を抱きしめた。
「嫌がらせ・・・?」
「俺が悪かったんだ。おまえに負担をかけたくなくて黙っていた。それで不安にさせたんだ・・・済まなかった、シンタロー」
「何で謝るんだ」
「え?」
「アラシヤマのことを誤解して突っかかって、勝手にキレて別れるっつったのは俺だぜ。おまえは何も悪くないのに、何でそうやっていつも謝んだよ!?」
「シンタロー・・・」
「おまえはいつもそうだ。俺に優しくして甘やかして、俺に謝らせてもくれない。俺がおまえをどれだけ愛しているか、言わせてもくれない」
俺をまじまじと凝視めていた青い瞳がふっと微笑った。
「そうか、分かった。―――」
俺より大きいのに器用な長い指が、シャツのボタンにかかる。
はだけた胸をその指でつっと撫でられて、それだけで俺は声をあげそうになった。
「ここから先はおまえのせいだからな。俺は謝らないぞ」
「・・・上等だ」
俺は手を伸ばしてキンタローの首を抱いた。
「来やがれ、キンタロー」



「んんっ・・・!」
唇が首筋を舐め上げる。慣れた指に正確に急所を探り当てられ、冷えていた身体が急激に燃え上がり始めていた。
「・・っ・・」
二週間ぶりに触れられた身体は自分でも恥ずかしいほど反応して、思わず零れる声を抑えようと口に当てた手までが無情にひきはがされる。
「駄目だ、声が―――俺、抑える自信なっ・・・」
「抑えなくていい」
耳許で囁く声も熱く濡れていた。
「おまえの声が聞きたいんだ」
いつもより性急な愛撫が、キンタローにも余裕が無いことを教えてくれる。
「あっ・・・はあっ・・・」
呼吸もままならないほどの快楽に身体がびくびくと跳ねる。
いつも大人で自分を見失わなかったキンタローが初めて晒した生身の感情に、俺の気持ちもひきずられるように昂ぶっていた。
「キンタロー・・・も、早く―――」
「まだ駄目だ」
焦らされて、追い上げられて、泣かされて。
この男との恋愛は、セックスとまるきり同じだ。
高みに昇りつめた頃には、もうどうして欲しいのかすら分からなくなっている。
何も解らなくなって見えなくなって、でもこいつが愛おしいという気持ちだけは残っている。
おまえが欲しい、とねだる俺に、キンタローは欲望に揺らめく瞳で笑った。
「独占欲じゃ俺の気持ちは受け止めきれないぞ」
「独占・・欲なんかじゃな・・・」
「俺のすべてをぶつけたら、きっと俺はおまえを壊してしまう」


そんなにやわじゃない。
おまえを受け止めたくらいで壊れたりしない。
その優しさも冷たさもそれは全部俺のためだって、今の俺は知ってるから。



シンタローが喘いでいる。引き締まった筋肉や低く掠れたその声は、俺が相手にしているのが男だということを嫌でも思い出させる。
だがそんなことはどうでもいいくらい、俺は興奮していた。
膝を割ると、来るべき痛みを予想してかシンタローがぎゅっと拳を握りしめる。
一気に貫くと、シンタローは背中を反らして俺にしがみついてきた。
俺以外を見るな。
一生俺から離れるな。
切れ切れにそう訴えるシンタローの唇を噛みつくように奪った。
「あ・・ああ・・っあ!」
シンタローはもう声を殺そうとはしない。そんな余裕など無いようだった。
突き入れた時には俺の二の腕を痛いほど掴んでいた両手も、今はシーツの上で揺れている。
ざわざわと締めつける内部の熱さと柔らかさに、俺の脳髄も早や溶けかけていた。
俺の下で乱れるシンタローの艶は、女など較べものにならないほど凄まじいものだった。
「や・・キンタロ・・俺、もう・・・」
目尻から透明な涙が流れている。俺はその涙を吸った。
「―――いいぜ、イッても」
びくびくと身体を震わせ、シンタローは精を吐き出した。その煽りでさらにきつく締めあげられ、危うく俺まで達しそうになる。
「も・・駄目だ・・・っ」
シンタローが懇願する。普段は人を睨み殺しそうな瞳に、霞がかかっていた。
「何を言っている。これからが本番だぞ」
ふっと笑って思い切り突き上げた。シンタローがひっと悲鳴をあげて仰け反った。
自身が吐露したもののせいでシンタローのそこは俺を易々と呑み込んでしまっている。淫らな音を立てながら、もっともっとというようにきつく食い締める。
「ほら・・まだ欲しがっているだろう?」
「や・・もう、堪忍―――」
とうとう泣き出した。ぽろぽろと涙が頬に零れる。
「可愛いな、シンタロー」
さっきはみっともないところを見せたが完全に形勢逆転だ。
しゃくりあげながら俺にしがみつくシンタローの腰を引き寄せると、弾みで結合が深くなり、シンタローががくりと崩折れる。
「シンタロー、俺を見るんだ」
キンタロー、キンタロー、キンタロー。
突き上げるたびに、うわ言のようにシンタローは呼び続けた。
涙と快楽に霞んだ瞳に、たぶん俺はもう映っていなかっただろう。
シンタローの中で、俺のものが震えるのが分かった。
「シンタロー・・・いいか?」
「キン――――――」
どくり、と熱い塊を吐き出す。同時にシンタローも二回目の絶頂を迎えていた。
そのままふっと意識を失っていくシンタローの涙に濡れた頬に俺はキスをした。


「・・・愛している、シンタロー」

この想いが、どうぞあなたに届きますように。



「―――急に呼びつけるから何や思たら」
アラシヤマは腕を組んだまま、呆れたようにため息をついた。
「これはどう見ても見せびらかしどすなあ・・・」
「何か文句でもあるのか?」
全裸のキンタローが煙草を咥え、不敵に笑っている。
鍛え上げられた見事な裸体をさらしているその隣では、精も根も尽き果てたと言わんばかりのシンタローがシーツをかけられて眠り続けていた。
「シンタローはん、大丈夫どすか」
「今日は起きられないだろうから休むとティラミスに伝えてくれ」
「―――・・・鬼畜」
「何か言ったか?」
「別に。―――ま、ええわ。とにかく仲直りしたんやね」
出て行きかけて名前を呼ばれ、アラシヤマは振り返った。
「・・これ以上シンタローにちょっかいをかけるなよ。次は殺すぞ」
俺は本気だぞ。―――アラシヤマを見据える冷たく澄んだ青い瞳はそう言っていた。
陰気な№2は、相変わらず視線を微妙に外したままニッと笑った。
「心配無用どす。わてにかて、大事な御方がおりますさかいになあ」
やや乱暴に扉が閉まった後、キンタローは煙草を揉み消してシンタローの隣に身を横たえた。
やがて静かな寝息が聞こえてきた。
目覚めたときにはもう、いつもどおりの日常が始まっているはずだ。



「―――だけどアラシヤマは何でわざわざ事態をややこしくしてくれたの?」
「まあ別に理由は無いけど」
ここは開発課。クッキーを摘みながら楽しそうに笑うグンマにアラシヤマは投げやりに答えた。
「喧嘩でもしたら面白いかな、て思たから」
「キンちゃんとシンちゃんが?」
「てゆうか世の中のバカップルへの呪いどす。すぐ側に一番大事な人がいてるくせにそれにも気づかんと遠回りするやなんて、わてから見たら贅沢もえとこどすわ」
グンマは紅茶を淹れている。
「優しいんだねー、アラシヤマは」
「はあ? 何言うてはりますのん?」
「だっておかげであの二人、自分の本心に気づけたじゃなーいv」
「あんさん、ほんまは全部お見通しやったんどすやろ。あのバカップルのこと」
「んー、僕はね、キンちゃんもシンちゃんも大好きだから。二人が仲良くしてくれればそれでいいの♪」
「・・・そうどすか」
「特戦部隊も、早くガンマ団に戻ってくればいいのにね」
「―――あんさん、ほんま何処まで見えてはりますの・・・」
「いいからいいから」


(愛している)


―――たった一人、おまえだけを。



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キンちゃんは何だか妙にエロいのが似合う気がします。
…気のせいでしょうか。

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