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ガ キ

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「お前、ガキっぽいって言われてるぞ」
 唐突に背後から投げかけられた言葉に、シンタローは、眉間のシワを一つ増やして振り返った。
「あん?」
 その先にいたのは、キンタローだった。ガンマ団本部の廊下を歩いていたところを声をかけられたのだ。
「誰が、んなこと言ってんだよ」
 総帥である自分をガキなどと称す不届き者は、激戦区へ左遷だ、と冗談にもならないことを考えているシンタローに、けれど、キンタローは相変わらず表情の乏しい顔で正直に言い放った。
「知らん。通りすがりの人間だ」
「通りすがりだぁ?」
「見覚えのない人間だったな。さっき廊下を歩いていたら耳にしたんだ。『あの人は、ガキっぽいところがある人だ』とな」
(なんだって?)
 キンタローの言葉に、シンタローは、いまだに寄せていた眉間のシワをもう一本追加した。
「それ、本当に俺のこと言ってたのか?」
 状況から言うと、その可能性は、なにやら低そうである。
 自分の名前をその会話中に言っていれば確かにそうかもしれないが、今の時点ではそうは思えない。
 キンタローが、どういうのかと思っていれば、相手は、あっさりと頷いて見せた。
「知らん。ただ、ガキっぽいと言ってたから、お前だろうと判断した」
「判断するなっ!」 
 即効に否定してやる。 
 失礼極まりない言葉である。
「お前、俺のことをそんな風に思っていたのか? つーか、ガキっていうなら、グンマの方だろうが」
 ガキと聞いて、シンタローがすぐに思いついたのは、グンマである。
 色々あって、現在マジック元総帥の長男としているグンマは、シンタローの目から見れば、十分幼稚な人間なのだ。
 が、どうやらキンタローの見解は違うようだった。
「グンマは、あれで結構しっかりしてるぞ。最近は、とくに落ち着いてきたしな」
 昔のグンマならいざしらず。確かに、最近は前のような女々しさは消え、大人の落ち着きを備えてきだした。それは、シンタローも認めている。
「まあ、そうかもしれないが……でも、な」
 だからといって、総帥の自分が『ガキっぽい』と認識されても困る。
 キンタローは、そう言う目で自分を見ていたのか、とむっとしたように少しばかり、唇をとがらせてみれば、すぐにそれを指摘された。
「そう言う風にすぐむくれたり怒ったりするのが、ガキっぽいっていうんだ」
(うっ…!)
 即座に言い放たれて、ばつの悪そうに、シンタローは、キンタローから顔を背ける。
「うるさい。だいたい、お前よりも俺の方が、大人なはずだろうが。経験値からいって」
 24年間自分の中にいた彼は、当然ながら経験したことになると乏しい。
 元来の正確なのか、わだかまりが消えた後は、大人しい様子を見せているが、中身は決して大人ではない―――とシンタローは、思っている。
「そんなお前が、俺を『ガキ』だというのはおかしいだろがっ!」
 絶対に自分が『ガキ』だとは認めない。
 頑として言い放ったシンタローに、だが、相手は柔らかな笑みを浮かべて頷いた。
「そうだな。おかしいかもしれないな」
 あっさりと肯定される。だからと言って素直に喜べない。
 なぜか、言いように宥められているような気がするのだ。
 子供の意地の張り合いに、大人が寛容に受け止めているような―――そんな気分になる。
「――――なんかむかつく」
「どうかしたのか?」
「やっぱ俺って、ガキっぽいのか?」
 キンタローのように、さらりと会話を流せないところが、自分でやってるくせに、癪に障る。
 それが性分なのだといえば、それまでだが、だからといって、『ガキ』の自分を放置しているわけにはいかない。
 大人に憧れていた。
 立派な大人になりたいと思っていた。
 なのに、いまだに自分の中には『ガキ』が存在するのだ。
 それを自覚するたびに、矛盾していると思うけれど、ガキっぽく、唇を尖らせる
「かっこわりぃ」
 大人ぶっていても、所詮は『ガキ』なのだと思い知らされる。
 全然成長してない。
「そうか? 俺は、別にいいと思っているがな」
「ああ?」
「お前のガキっぽいところは、好きだぞ」
 行き成り真面目な顔で告げられたその言葉に、シンタローは、思わず顔を赤く染めた。
「お、お前はなんでそんなに恥ずかしいことをさらって言うんだよ」
 自分と同じ年でしかも男に、好きだと言われても、戸惑ってしまう。
 だが、
「大人だからかな」
 眉一つ動かすことのなくそう言った『大人』なキンタローに、顔を真っ赤にさせたままのシンタローは、恥ずかしくて、ふいっと横をむいた。
「っ! ………お前なんか、嫌いだ」
 我ながら、ずいぶんと子供っぽい言動である。
 そう思いつつも、ついついやってしまったそれに、相手の反応はどうかと盗み見してみれば、動じぬままに、シンタローに視線を向け、そうしてくるりとそのまま踵を返した。
「わかった」
 それだけ言うと、あっさりとシンタローから離れて行く。
 それに、慌てて、シンタローは声をあげた。
「ちょっとまてっ」
 呼び止めてしまってから、しまったと思うがもう遅い。相手は、止めていた足を動かし、自分の前まで、やってきた。
「なんだ?」
 気まずい思いが漂うものの、シンタローは、躊躇いがちに口を開いた。
「う、嘘だからな……さっきの言葉」
 嫌いだというのは、ただの言葉のあやだ。
 つい出てきてしまった言葉である。
 真に受けられては困るのである。
 どう、困るのかと問い返されれば答えにこまるシンタローだが、それでもそう言えば、相手は、笑いをこらえるように口元を押さえて頷いた。  
「ああ。知ってる。――――俺は、ガキの言葉を真に受けてはいない」
 その言葉に、再び顔の温度があがり、赤くなる。
「うがぁ! やっぱり、てめぇなんて、嫌いだ、大っ嫌いだっ!!」
 目の前のキンタローに蹴りをいれようとしたが、あっさりとそれはかわされた。
 その代わりに、隙をつかれて頭に触られたその手が、くしゃくしゃとシンタローの髪をかきみだした。
「ああ。俺は好きだからいいぞ」
「くっ………」
 べしっと即座にそれをはたき落としたものの、撫でられてしまったという行為はなくなりはしない。
 すっかり子供扱いされたシンタローは、思いっきりむくれた顔をして、キンタローに向かって「べー」と舌をだしてやった。
「ガキ」
「うるせぇ!」
 しっかりと開き直ってしまった総帥は、そのままドカドカと廊下を歩いていってしまう。
 その後をくつくつと笑いをこぼしつつキンタローは、ついていく。
「好きだな、やはり」
 ―――あいつをからかうのは。
 さて、どちらがガキなのか。
 本心を知れば、怒り狂うこと間違い無しのことを思いつつ、キンタローは、ゆっくりとその後を追いかけていった。

















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