暗い夜。
広い部屋。
熱い息。
放たれる欲望。
「――――っ!あ、あッツ!!!!!」
「…………ッ!!」
身体の奧から頭の中が真っ白になってく―――…。
ぬるま湯に浸かっているような感覚が徐々に霧を晴らしていく。
背中に小さなくすぐったさを感じた。
「………ん、…あ…?」
「起きたか」
意識を飛ばす前まで聞いていた声が、頭の上から聞こえた。
背中のくすぐったさはキンタローがあやすように撫でていたからだった。
抱き締められる体温が気持ちイイ。
「……起きた」
ふぁ、と欠伸が漏れる。
「まだ大分眠そうだな。まだ起きるには早い。寝ておけ」
眠りを促すようにキンタローの手に頭の後ろを撫でられる。
あー、確かに眠い。すっごく眠ぃ…。
「つーか、オレが気絶するのって久し振りー…。オマエ相当溜まってただろ。超手加減無かったな」
ま、誘ったのはオレだけど。
「今回の遠征先はとても出来る環境ではなかったからな。自分では気付かなかったが、確かに些かタガを外し過ぎたか」
すまないなと謝られてぷっと笑った。
オレが寝てる間にきっちり身体は綺麗にされている。
途中でオレが起きないように慎重にしてくれたんだろう。
昔のコイツからはちょっと想像つかねえ………てか、流石にこんな関係になるとは予想つかなかったな。
当たり前だろーけど。
「何だか楽しそうに見えるな」
「あー?そう見えるか?」
「さっきからずっとニヤニヤしてるからな」
……ニヤニヤってオマエな…。間違えじゃねぇけど言い方がな~…。確かに楽しいけどさ。
「まァナ。逆にオマエは楽しそうな顔ってしないよな」
「そうか?」
「それが地顔だからしょうがねぇだろうけど、笑顔っていうのは見た事ないぜ?微笑止まりで」
「そうか、なら改善するか」
「いらねえだろ。“大輪のような笑顔”のキンタローってのも想像するだけ似合わねえ」
それに、知っているから。
表情のレパートリーが乏しいようだが、そのちょっとしたところでキンタローが見せるさりげない言葉や仕草の気遣い、
優しさをオレだけは知っているから。
愛してると前触れも無く言ってきたり、常に周囲に害をなす者がいないか気配を伺っていたり、
二人で談話して会話が静かになると肩を近付けてオレの髪を弄ってみたり、キスの仕方、キンタローは無自覚天然。
オレに向けられるさりげないそれらは、キンタローも知らない。
オレだけが知っている。
お気遣いの紳士の他者には見せない姿を独占出来ている心地良さを改めて感じて、また笑みが漏れた。
「どうした、さっきから」
変なヤツだと呆れたような溜息の割には、キンタローの口の端が上がっている。
「楽しいから……ナァ?」
キンタローと居る全てがキラキラと楽しい。
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