◆03:さぐる指◆
「…ッ、ちょっ、お前どさくさに紛れてどこ触ってんだっ!」
不甲斐無くも跳ねる肩が不本意極まりない。
が、身動きの取れないシンタローは、笑いを噛殺している相手にされるがままになるだけだった。
良いか悪いかは別として、後に立つキンタローの顔は見えない。
両腕の手首をしっかりと掴まれ壁に縫い付けられてしまい、自由を奪われた。
見なくても楽しんでいるに違いない事はシンタローにも背中から感じる。
背中に程よく付いた筋肉を確かめるように指や口唇がなぞっていく。
だが、快感の中枢には程遠い。
シンタローも最初の内は、どうせただの悪ふざけに過ぎない、すぐに飽きるだろうと好きにさせていた。
しかし、背中どころか、躰を弄る指先は腹から胸の飾り、遂には徐々に反応し始めたシンタロー自身を取り出され、ゆるゆると扱かれだした。
あッ…と思わず甘い声が漏れる。
シンタローはしまったと、ひとつ舌打ちを零すと、すかさず耳元で低い声が囁いた。
「隅々まで知っている仲だ。今更どこということも無いだろう?」
含みを持った声が微笑う。
唇が耳に触れそうで触れないギリギリの距離を保ったまま、キンタローは焦らすような吐息でシンタローの熱を誘った。
「ッテメ…いい加減にしろ」
長々と続く愛撫は、依然として焦らすものばかりだが、時折触れるイイ所が憎たらしい。
「そう喚くな。背中の傷は自分じゃ看れないだろ?大体、お前は普段から無茶をし過ぎる。組織の先頭に立つ者が先陣切って前線で暴れることがどれだけ危険な事か分かっているのか?危険なのは、お前の身だけじゃない…─────」
「うるせー。大体、背中に傷なんてねぇだろうがっ!そもそもてめぇの手があるのは背中じゃねぇっ!!」
何とか首だけで振り返ると、フッ…と口角を上げたキンタローがいた。
シンタローの背中に残る紅い痕は、たった今キンタローが付けたばかりの証。
傷など何処にもない。
脇腹を撫で、薄っすらと浮かぶ肋骨を弄ぶようになぞり辿り着いた下腹部で扱かれる自身を見るだけで、シンタローはさらに熱を増した。
「熱いな…」
「うっせーよ!ったく、誰の所為だ…」
「気にするな。言う事を聞かないどっかの新総帥への当て付けだ。もう少し付き合え…」
巧みな動きを見せる無骨な指先が欲情を掻き立てる。
身悶える躰も、押さえ切れない淫らな啼き声も、何処にどう触れたらそうなるのか全て知られている気がすると思うと、シンタローはぞっとした。
否…なんて言えるはずが無い。
「チッ…好きにしろ…今だけだからな」
シンタローは、嬉しそうなキンタローの顔を見るのが癪で、宣戦布告とばかりに口唇を塞いだ。
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◇赤裸々な5のお題◇
配布元:Vanira@恋愛中毒
http://vanira.nobody.jp/