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不覚、だった。

「あ、シンタローはん。肩にゴミが」

ふいに伸ばされた指が、首を掠めた瞬間。

つい、かなり思いっきり、それを振り払ってしまった。

しまった、と反射的に思いはしたのだから、驚いた表情のまま固まったアラシヤマは、追い討ちをかけて俺の胸をちくちく責める。

咳払いを、1つ。

「アラシヤマ」

反応、ナシ。

「オイ、・・アラシヤマ」

静かな空調の音だけが、空々しく廊下に響く。

とりあえずアラシヤマの向こう脛を蹴って、踵を返して。

すぐに聞こえる悲痛な叫びは無視して、総帥室にダッシュ。

「シ、シンタローはんっ!!わてが、わてがなにしたっていうんどすか~~~!?」

小さな返事は、部屋に逃げ込んで、情けなくも床に崩れてから。

「・・自覚がねーのが悪いんだっ」

あの、指の感触。

皮膚に残って、じんじんと痺れる。
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