現実味に欠けた、淡い夢を見た。
彼を、この腕に抱く夢だった。
想い人になんとも思われていないというか、むしろ嫌われていることなんて、自分でもわかっているし。
今さら自分を卑下するつもりもなければ、性格を変える努力をするつもりも、ないけど。
(コージはんみたいに、誰とも物怖じせず気安く喋れる性格だったら)
(ミヤギはんみたいに、なんだかんだ言って面倒見のいい好かれる性格だったら)
(トットリはんみたいに、素直で親しみやすい性格だったら)
そんなことをぼんやりと思う。
惜しむべきことに、夢が現実になるわけはない。
だけどせめて、少しでも彼に近い場所にいたい。
あの島にいた時にはなかった、重い疲労の表情を頻繁に見せる彼の、傍に。
完璧なまでの自己満足と、思い上がりと呼ばれようとも、力になりたいのだ。
決意しながら廊下を進んでいると、前方に赤い背中が見えて、幸先がいいな、と。
思わず頬を緩めて駆け寄ろうとした、直後、その背中ががくりと崩れた。
咄嗟に腕を伸ばす。
助けるまでもなく自力で体勢を直した彼は、それでも腕だけを、預けて。
「・・サンキュ、アラシヤマ」
浅い吐息が、胸に。
「・・あんさん、ちょお身体鈍っとりませんか?」
「まったくだよな」
「冗談どす。働きすぎでっしゃろ」
鋭い目元にうっすら浮かぶクマが、寝不足だということを証明している。
(わてやなくとも、もっと部下を使うたらええのに)
「で、アラシヤマ?もう離せよ」
言われて、はたと気付く。
好きな人を両腕の中に抱えた(とまではいかなくとも、わずかに体重はかけられている)おいしい状況。
「あ、ちょっとだけ正夢・・」
「は?」
「え、いや、なんでもないどす・・」
こんなことに幸せを感じてしまうなんて、まったく。
恋、なんて、馬鹿みたいなもので。
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彼を、この腕に抱く夢だった。
想い人になんとも思われていないというか、むしろ嫌われていることなんて、自分でもわかっているし。
今さら自分を卑下するつもりもなければ、性格を変える努力をするつもりも、ないけど。
(コージはんみたいに、誰とも物怖じせず気安く喋れる性格だったら)
(ミヤギはんみたいに、なんだかんだ言って面倒見のいい好かれる性格だったら)
(トットリはんみたいに、素直で親しみやすい性格だったら)
そんなことをぼんやりと思う。
惜しむべきことに、夢が現実になるわけはない。
だけどせめて、少しでも彼に近い場所にいたい。
あの島にいた時にはなかった、重い疲労の表情を頻繁に見せる彼の、傍に。
完璧なまでの自己満足と、思い上がりと呼ばれようとも、力になりたいのだ。
決意しながら廊下を進んでいると、前方に赤い背中が見えて、幸先がいいな、と。
思わず頬を緩めて駆け寄ろうとした、直後、その背中ががくりと崩れた。
咄嗟に腕を伸ばす。
助けるまでもなく自力で体勢を直した彼は、それでも腕だけを、預けて。
「・・サンキュ、アラシヤマ」
浅い吐息が、胸に。
「・・あんさん、ちょお身体鈍っとりませんか?」
「まったくだよな」
「冗談どす。働きすぎでっしゃろ」
鋭い目元にうっすら浮かぶクマが、寝不足だということを証明している。
(わてやなくとも、もっと部下を使うたらええのに)
「で、アラシヤマ?もう離せよ」
言われて、はたと気付く。
好きな人を両腕の中に抱えた(とまではいかなくとも、わずかに体重はかけられている)おいしい状況。
「あ、ちょっとだけ正夢・・」
「は?」
「え、いや、なんでもないどす・・」
こんなことに幸せを感じてしまうなんて、まったく。
恋、なんて、馬鹿みたいなもので。