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「決して、消したりしてはあきまへんえ」
できたばかりの火傷の痕を指先でなぞって、アラシヤマはシンタローの耳元で甘く囁いた。ひり、と熱を持った痛みが、脇腹に走る。
「あ」
びくり、と小さく震えたシンタローの肩を抱きしめて、アラシヤマは耳朶に軽く唇を落とす。
「わてがどこか遠くの戦場でくたばっても、あんさんだけはわての事忘れんで」
この男は、いつもそんなことを言う。
「…死ななきゃ、いいだけだろ」
「そやかて」
シンタローを見つめる左目が、揺れる。
「わては、シンタローはんとは違いますさかいに」
戦場であっても、なくても、誰しもが明日死ぬかもしれないという可能性を持って生きていて、
それはシンタローも同じであるというのに、
「俺だって、いつ死ぬかわかんねーだろ」
「あんさんが死んだら、わても死にますさかい」
なのに、またそんな事を言うんだ。
「シンタローはんは、死ぬそのときまでわての事を覚えていてくれればええんどす
 その痕が消えないであんさんの身体に在り続けるように、
 わての事もあんさんの中に存在させておくれやす」

白いよれたシーツの上でのやりとりは、
いつも、同じような言葉を繰り返し、
シンタローの心に、黒い痕を残す。

(04/06/13)

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