いやだと言ったのは、きらいだと言ったのは、自分だ。
じりじりと空気は重くのしかかってくる。
椅子に沈み込んでしまった身体。
ひたすらの沈黙、時間だけは刻々と過ぎて。
なんとか指を動かして冷めたコーヒーを飲み干せば、その苦味に、胃がさらに痛んだ。
「・・・シンちゃん、大丈夫?」
コンピューターに向かって自分の仕事をこなしていたグンマ(そう、ここはグンマの研究室であって)は、俺をそうっと窺うようにして、首を傾げた。
突然訪れた俺を(そう、俺はここに逃げてきたわけで)グンマはなにも聞かずに招き入れて、放っておいてくれた。
「わりィな。邪魔か?」
「僕は久々にシンちゃんといれて嬉しいけど」
「ああ・・久々か」
「月単位でね。でもシンちゃん、本当は僕じゃない人と一緒にいたいんじゃないの?」
「・・オマエ、どこまで知ってる?」
拗ねた子供のような口調にグンマはふっと微笑んで、おもむろに立ち上がった。
備え付けのキッチンに立ち、待つこと数分。
ふんわりと部屋中に広がる、甘い匂い。
「怒ってる時は甘いものがいいよ」
差し出されたココアは見るからに甘ったるそうで、俺を見るグンマの目も甘ったるくて、俺は心底情けなくなる。
今の俺は、正真正銘の子供だ。
そしてグンマは大人なのだ、きっと。
「怒ってなんか」
「疲れてる時も、悲しい時もね」
それ以上はもうなにも返せずに、ゆっくりとカップに口をつける。
甘くて温かな飲み物は、俺のちくちくとささくれた心に、確かに深く染み込んでいった。
じりじりと空気は重くのしかかってくる。
椅子に沈み込んでしまった身体。
ひたすらの沈黙、時間だけは刻々と過ぎて。
なんとか指を動かして冷めたコーヒーを飲み干せば、その苦味に、胃がさらに痛んだ。
「・・・シンちゃん、大丈夫?」
コンピューターに向かって自分の仕事をこなしていたグンマ(そう、ここはグンマの研究室であって)は、俺をそうっと窺うようにして、首を傾げた。
突然訪れた俺を(そう、俺はここに逃げてきたわけで)グンマはなにも聞かずに招き入れて、放っておいてくれた。
「わりィな。邪魔か?」
「僕は久々にシンちゃんといれて嬉しいけど」
「ああ・・久々か」
「月単位でね。でもシンちゃん、本当は僕じゃない人と一緒にいたいんじゃないの?」
「・・オマエ、どこまで知ってる?」
拗ねた子供のような口調にグンマはふっと微笑んで、おもむろに立ち上がった。
備え付けのキッチンに立ち、待つこと数分。
ふんわりと部屋中に広がる、甘い匂い。
「怒ってる時は甘いものがいいよ」
差し出されたココアは見るからに甘ったるそうで、俺を見るグンマの目も甘ったるくて、俺は心底情けなくなる。
今の俺は、正真正銘の子供だ。
そしてグンマは大人なのだ、きっと。
「怒ってなんか」
「疲れてる時も、悲しい時もね」
それ以上はもうなにも返せずに、ゆっくりとカップに口をつける。
甘くて温かな飲み物は、俺のちくちくとささくれた心に、確かに深く染み込んでいった。
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