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ひんやり冷たい口唇は好きかもしれない。

こんな時ばかり真直ぐに合わせてくる目は、嫌いだ。

なにを考えているのか、と尋ねられて素直にそう言ってやったら、アラシヤマはひどく情けなく、顔を崩した。

そしてまた、キス。

凭れるようにかかる体重も腰に回された腕の力も、十分にセーブされていて、苦痛はまったくない。

あっさりしすぎて、拍子抜けするほどに。

「シンタローはん」

何度も何度も、俺という存在を確かめるかのように耳に注がれる、低い囁き。

「シンタローはん、好きどす」

伝えたところで俺がなにも言わないのはわかっているくせに、いや、だからこそなのか、アラシヤマはただ繰り返す。

ふわりふわりと、柔らかく笑いながら。

「ほんまに、好きどすえ」

答えを待たない言い種になんだか苛ついて、少し、驚かせてやろうと思った。

「ん」

「え?」

軽く頷いてみせただけで、アラシヤマはぴたりと動きを止めた。

「シンタローはん、・・今、もしかして返事してくれはりました?」

信じられない、と言いたげな口調に無言で手をかざすと、ホールドアップの体勢で、アラシヤマは後ずさる。

それでも、さっき以上に蕩けた、馬鹿みたいな笑顔で。
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