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ass

気に食わない。
まず、彼の態度。自分が強いことが、さも当たり前のような。
それに、彼の目つき。意志の強い黒い瞳が、全てを拒んでいて。
けれど、適当に人当たりが良くて。
総帥の息子だという立場も手伝って、彼を慕う奴や彼に取り入ろうとする奴にいつも囲まれていた。

どんなに努力しても、彼には勝つことができない。
いつかはきっと、彼が総帥の座に着き、そして自分はその下で働くことになるのだろう。もしも自分が彼を超えられたとしても、彼が総帥の息子であることには変わりないのだから。


(…あないに取り巻きはべらせて、笑顔振りまきはって)
遠目に、一団をちらりと見た。
訓練終了後、いつものように他愛の無い会話を口にする彼ら。
(やかましいわ…静かに生きれんのかいなアイツらは)
彼の笑顔が、知らぬ間に心の底の炎を燃やす。それは酷く嗜虐的で、師が時々自分を見る瞳の中に覗かせていた感情に近いものだ。
(……殺したい)
あの時のように、今度は意思と殺意を持って彼を燃やしたい。
そんなに火力は強くなくてもいい。じわじわと嬲り炙る。
悲鳴を上げるだろうか?父親に助けを求めるだろうか?許しを乞うだろうか?
薄く、口元に笑みを浮かべて、ハッと意識が現実に引き戻される。彼の黒い瞳が、人ごみの中からこちらを射抜いていた。
慌てて目を逸らすと、向こうも何事も無かったかのように視線を逸らす。
「どしたべ?シンタローさん」
「あァ、なんでもねー」
またざわめきの中に埋もれる彼の姿。
鼓動が、やけに高鳴っていた。


いつからか、何度も思い描いていた姿。
怯える彼の制服を焼き、肌に火傷の痕を残し、足を開かせて、犯す。涙を流し、総帥の名を呼び、助けを求め許しを乞って歪める顔を、白く精液で汚す。快感を覆い消し去るほどの痛みに、また涙を流す彼に罵声を浴びせて。両手で首を絞めながら、彼の体を焼いて、水分を失いながら果てていく体の中に欲望を放つ。
そんな叶わない──今のところ実行する気もない妄想を浮かべて、性器を扱く。
左掌に吐き出された熱に、熱い吐息を漏らして、ティッシュ・ボックスに右手を伸ばす。シーツにも、白い飛沫が飛んでいた。洗わなくてはならないだろう。
殺意は、それに似た熱い暴力的な感情に変わり、その炎は心を焦がした。
師にあれだけ、如何なるときも冷静であれと言われていた筈だが、絶対である筈のその言葉は薄れ、熱情が己を突き動かす。
強くなるということに、初めて、理由が生まれた。
(シンタロー、あんさんは)
戦場で生き残る以外の理由が。
(わてが殺したるわ)


慌てるように、足早に去る複数の人影を見た。
上級生だろうか…見覚えが無い、否、覚える必要も無いと思っていただろう雑魚が6人。ニヤニヤと下卑た笑いを浮かべて、士官学校の廊下を歩くそいつらが、ふと目に付いた。
普段より幾分潜められている様な会話の中に、「シンタロー」の名を聞きつけて。
(…陰口にしちゃあ、随分と楽しそうなこって)
彼等が現れた廊下の角を曲がり、普段使われていない薄汚れた倉庫に向かう。使い古されたトレーニングマシーンが埃を被って転がっているこの倉庫は、この人の多いガンマ団士官学校の数箇所ある一人きりになれるスポットのひとつで、その薄暗さがアラシヤマにとって居心地がよく、とても落ち着く場所だった。
その扉は珍しく開いており、来訪者がいるのかと軽く舌打ちする。
そっと隙間から中を覗くと、ぼんやりと窓からの小さな光の筋に照らされて、人影が見えた。
──彼だった。座り込んだまま、肌蹴た制服を手繰り寄せ、何か小さく呟いている。
「俺は、負けられない、泣けない、強くなければならない」
外気に触れている肌には、大小様々な打撲の痕や、切り傷、煙草か何かを押し付けられたのだろう小さな火傷の痕。
「俺は、親父の──マジックの息子だ」
それは、幾度も屈服させたいと夢見た彼の、自分以外のものに暴行を受けた姿。
「俺は……俺はッ」
彼は、放心しているのかと思えば、瞳はいつものように強く輝いていて。けれど、肩が小さく震えていた。
ふっと、彼が視線を上げてこちらを、見る。
「…誰だッ!!?」
声を上げられたのと同時に、地を蹴って、走る。
何を逃げることがあるのだろう、と疑問にも思ったが、一度駆け出した足を止める理由にはならない。数分走って、やっと立ち止まる。別に、追ってはこないだろうけれど、それでも周囲の視線が気になって、周りを見回した。


今、自分はどんな顔をしているだろう?
殺したいとも、犯したいとも思えなかった。
ただ、声をかけてやりたかった。何を言うかなんて、思いつきもしないのに。
どんな顔で、そんな阿呆らしい事を考えているのだろう?

鼓動が高鳴る。短い距離ではあるが全力疾走をしたせいだろうか。
アラシヤマの複雑な心中は置いてけぼりに、士官学校の陽は沈んでいくところだった。


(04/07/14)


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