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+ 触 浸 +

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 まさか、本当にやってくるとは思わなかった。いや、だって、思わねぇーだろ。
 部屋に引き込まれて壁に押し付けられた瞬間、ヤバイ、とは思った。
 キンタローは普段から飄々としたヤツで、あんまり感情が顕わになったりしねぇーんだけど、時々アイツの青い眼はその時の心情を物語っているときがある。
 だから、今回もそうだと思った。意地の悪い光が見えたから、ゼッテェからかってんだコイツと思って、負けじと挑発してやった。そう出ればさすがのキンタローも後込みすると思ったからだ。オメェはまだまだ甘いなって笑ってやるつもりだった。
 だけど、俺は今、何されてる?
 まさか、コイツが本当にキスしてきやがるとは思わなかった。重ねられたキンタローの唇を感じた瞬間、完全に時が止まった。
 いくら冗談でも、普通なら出来ねぇーだろ?男相手に。
 そんな言葉が頭の中に浮かんだけど、それ以上何も考えられなかった。コイツの行動で度肝抜かれたことの方が大きかった。
 キンタローのことだから、きっとまた何かを勘違いして曲がった方向に行ったんだと考えて、思考回路に再起動がかかったところで、俺は逃れようと身を捩った。
 なのにコイツは俺を離そうとしない。キンタローの胸を押したら、強い力で抱き締められた。
 なぁ、違うだろ、キンタロー。
 引き返せる内に戻れよ。
 今なら、まだ、ギリギリ冗談の範囲で考えてやるから。
 キンタローが戻れないのなら、俺が引き戻すつもりで、密着した体から離れることに努めると隙をつかれて舌を入れられた。これは冗談なんかじゃねぇと俺は狼狽えて、何も考えずに逃げようとしたけど、それがキンタローを煽ったのか執拗に舌を絡められた。
 まだまだ世間知らずのお子様だと思ってた。
 こういうことには興味を示さないストイックなやつだと思い込んでた。
 でも、俺は知っていたはずだ。
 クールに見えても心の内側に熱い感情を秘めていることや、感じたものをストレートにぶつけてくることを。
 キンタロー、お前、今、何を感じてんだよ?
 今まで微塵もそんな素振りを見せたことはなかったのに、今のキンタローが俺を求めているのは明かで、コイツが感じたものを素直にぶつけてくると俺も衝撃を受けて流されていきそうになる。
 ただの口付けだとは思えないほど情熱的で、とても無視なんか出来ないくらい甘く激しく絡みついてきて、俺はキンタローに酔わされていった。体が快楽の刺激を受けて熱くなっていく。感じさせられている場合じゃねぇーのに、コイツが与えてくる刺激は抗い難くて、理性なんてものは簡単に吹き飛ばされていく。
 俺は自分がキンタローを拒むことが出来ないということを、初めて知った。
 苦しい、キンタロー。
 酸欠でクラクラしてるのか、それともコイツに酔ってクラクラしてるのか、判らないけど確実に受け入れてる。でも感情が追いつかなくて、俺はいつの間にか苦しさの余り必死になって耐えるようにコイツの上着を握りしめていた。
 キンタローが一度唇を離してくれると、俺はやっとの思いで呼吸をする。快楽で目に涙が浮かんでいることに気付くと間近でそれを見られるのが嫌で、少し俯いたままただ息を吸い込んだ。今ここにある雰囲気に惑わされてキンタローの腕の中から動けない。
 きっと、頭が上手く働かないのは酸素が足りてねぇからだ。
 そんな言い訳を考えたけど、俺はキンタローの顔を見ることが出来なくて俯いたままでいた。
 そしたら名前を呼ぶもんだから、仕方なく顔を上げる。
「シンタロー…」
 そんな声で俺を呼ぶんじゃねぇ…。
 聞き慣れたはずの声なのに、名前を呼ばれるなんて珍しいことじゃないのに、ゾクリと感じる。
 また壁に体を押し付けられた。更にキンタローは自分の体を押し付けるようにくっつけてきて、俺は逃げる気すら起こせずに、いとも簡単に再度口付けられていた。
 触れられたところから、何かがわき起こりそれに浸っていく。俺は陶然となって、足元から崩れていった。
 ダメだ、引き戻せ。
 判っているはずなのにキンタローを押し返すことが出来なくて、でも引き寄せることなんてもっと出来なくて、ただぶつけられる感情が起こす荒波の中に不安定な状態で立ちすくむしか出来なかった。
 だけどコイツがそんな生易しい状態で放ってくれるはずもなく、腰を抱かれてその手にまさぐられると、迷いながらももう降参するしかなかった。
 どうにも立ってらんなくて、俺は参ったと思いながらその場に崩れ落ちていった。
 留まろうとした努力なんて泡のように消えていった。
 壁に背中を預けたまま重力に身を任せて落ちていくことで俺はキンタローの腕から逃れる。格好悪ィとか降参なんてしゃくだなんて思いながらも、もう他に方法がなかった。
 でも、甘かった。
 キンタローは膝をついて俺の傍に屈むと体勢が崩れたままの俺に被さるようにして尚も求めてくる。
 キンタローが自分を押さえられなくなっているのが伝わってきたけど、そんなことよりも完全に退路を断たれた俺はここからどうすればいいのかが判らない。
 手繰り寄せた理性には混乱の糸が絡みつき、沸き起こる快感に少しずつ浸っていく。

 よせ、キンタロー。

 そう思ったのに、もう俺は、キンタローしか感じられなかった。


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(FROM...「Deep Kiss」)[BACK]


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