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afg



 ☆ハロウィンSS☆



 「あのさぁ、シンちゃん」
 「それ以上言うな!」
 何か物言いたげに自分を見上げたグンマに向かって、シンタローは眉間に皺を寄せ、不機嫌な様子でそう言い捨てた。
 「だって、さっきからあの角っこのところで、ずーっと、シンちゃんのこと待ってるみたいだし…」
 「いいから、無視」
 「おーい!アラシヤマくーん!」
 「しろ」
 シンタローが言葉を言い終わらないうちに、グンマがそう叫んで手を大きく振ると、
 「ばばばば、バレてしもうては、そらもう仕方おまへんわなぁ…」
 廊下の曲がり角から、少し体をくねらせながら、嬉しそうにアラシヤマが二人の前に姿を現した。
 「おい、グンマっ!」
 「えーっ?だってシンちゃんも気づいてたんでしょ?だったら無視するのはよくないじゃない☆じゃあ、僕はもう行くからvまた後でね、シンちゃんv」
 グンマはバイバイ、と2人に手を振ると、上機嫌で去って行った。
 「あのー、シンタローはん」
 「ぁあ゛?」
 シンタローが睨みつけると、アラシヤマは嬉しそうな顔になったが、
 「なんといいますか、その眼魔砲の構えはやめてくれまへん?わて、あんさんと話がしとうてずっと待っていたんどすが」
 すぐに表情を改め、真剣な声でそう言った。
 渋々、と言った様子でシンタローは手の中の光球を消し、
 「何だよ?聞きたかねーけど、またロクでもねー話か?そんで、何オマエ、その格好?」
 アラシヤマを上から下まで見たところ、彼は死神のような黒い長マントを羽織っており、小脇に目鼻がくりぬかれたカボチャを抱えていた。
 「ジャック・オ・ランタンどすえ。ところで、シンタローはん。わて、ついにハロウィンをマスターしたんどす…!つまり、南瓜提灯を持って、罪人供養の秋祭りでっしゃろ!!」
 いかにも自信ありげな様子のアラシヤマを眺めつつ、シンタローは何事か考えていたが、
 「―――アラシヤマ、お前、よくぞハロウィンを極めたナ!つーことで、今から即、托鉢に行って来い!」
 と笑顔で言った。
 「し、シンタローはんッツ!わての努力を分かってくれはったんどすナ…!!わて、ぎょうさん菓子をもろうてきますさかい、後から一緒に食べまひょvvv」
 「はーい、はいはい。どうでもいいから、とっとと行けヨ?」
 「や、約束どすえ…!」
 アラシヤマが頬を染めて何度も自分の方を振り返るのを無視して、シンタローは歩き出した。


 研究室のドアを開けると、そこには彼の従兄弟達が何やら分厚い紙束を見ながら議論していた。
 「あれ?シンちゃん、早かったねv」
 「待っていたぞ、シンタロー」
 シンタローが部屋に入ると、グンマとキンタローは、顔をあげた。
 「ねぇねぇ、アラシヤマくんはどうしたの?」
 「さァ?知らねーケド」
 「今までアラシヤマと一緒だったのか…」
 「もォー、そんなことぐらいで簡単に落ち込まないでよォ~!キンちゃんッツ!!」
 グンマがグイグイとキンタローの服の袖を引っ張ると、
 「別に、落ち込んでなどいない」
 彼はますます浮かない顔つきになった。
 「ねぇねぇ、シンちゃんも来たことだし!休憩にしない??僕、お茶を入れてくるから待っててネv」
 そう言って、鼻歌を歌いながら、グンマは流しの方に消えた。
 「珍しくお前とグンマが共同研究だなんて、どうしたんだ?」
 「高松の昔の生物化学研究の一部をロボット工学に応用して、新システムを構築しようという試みなのだが、理論上では可能でも、なかなかうまくいかない」
 「へぇー、大変だナ」
 「いや、これはすぐに役立つというものではなく、半ば遊びだが…。シンタロー、」
 キンタローは、シンタローを見ると、何か決意したような顔つきになり、口を開こうとしたが、
 「おっ待たせーv」
 という明るい声に出鼻を挫かれたようであった。
 「キンちゃんとシンちゃんはコーヒーでよかったよネ?このパンプキンプリン、高松が今朝持ってきてくれたんだヨv」
 なんだかガックリしているキンタローと、その隣に座って嬉しそうにプリンを食べているグンマの姿を胡散臭げに見ながら、シンタローはコーヒーに手を伸ばした。
 一口飲むと、彼は顔をしかめた。
 「…グンマっ!てめぇ勝手に俺の分に砂糖入れんなヨ!?」
  怒鳴られたにも関わらず、グンマは上の空で、向かいに座っているシンタローの顔の上方を見ていた。
 シンタローは、何だか頭が2箇所むずがゆい気がしたのでおそるおそる手をやってみると、毛の生えた三角形の突起状のものが手に触れた。引っ張ると、痛い。
 「わーいv実験大成功ッ☆シンちゃん可愛いー!!」
 「………」
 パチパチパチ、とグンマが手を叩いている。
 「はい、鏡v」
 シンタローは現実を認識したくなかったが、渡された手鏡を見ると、頭上には黒い猫耳がしっかりと生えていた。
 「グンマてめぇッツ!!」
 立ち上がりざま、問答無用でグンマの胸倉を掴んで2・3発殴ると、
 「うわーん!シンちゃんのバカー!ケチンボっ!!今日はハロウィンだし、どーっしても、猫シンちゃんが見たいっておとーさまが言ってたから、仮装のお手伝いをしてあげようと思っただけなのにッ!!殴ること、ないじゃないかッツ!?」
 現状に加え、バカだのケチだの言われて怒り心頭状態のシンタローはグンマを突き放し、
 「おい!キンタロー!!お前、この大馬鹿に何とか言えよ!!それと早く解毒薬を作ってくれ!!」
 キンタローの傍に行くと、立ち上がったキンタローに、
 「シンタロー、可愛い…!!」
 抱きすくめられた。逃れようと思っても、全く身動きがとれない。
 「オイ、グンマっ!!何とかしろッツ!!」
 キンタローを殴るのも気がひけたので、グンマに助けを求めると、
 「えーっ、さっきシンちゃん、僕を殴ったし、大馬鹿って言ったからヤダ!それに、その耳、明日の朝になったら自然に消えるよ?」
 と言いながら、プリンを食べていた。
 「ねぇねぇ、このプリンおいしいから、シンちゃんの分ももらっていい?」
 抱き上げられ、ソファの上でキンタローに抱えられているシンタローが、
 「ざけんな、コラ!?」
 と様にならない格好で睨むと、グンマは、
 「シンちゃんのケチー!じゃあ、今から高松のところにもらいにいこーっと!キンちゃんは…、それどころじゃないみたいだよネ?」
 数秒考え、
 「じゃあ、行ってきまーすvキンちゃんもシンちゃんも後からおいでよv」
 と言って研究室から出て行った。


 「俺は、猫シンタローもすごくかわいいと思うぞ」
 「―――あのよぉ、キンタロー。いくらなんでも、そろそろ離してくんねぇか…?」
 小一時間、シンタローは抱えられたまま、幸せそうなキンタローに頭を撫でられていたが、そう言うと、
 「わかった」
 キンタローは悲しそうな顔をして、体を離した。
 「ったく、馬鹿グンマのせいで、とんだ災難だぜ」
 立ち上がったシンタローは伸びをして、ため息を吐いた。
 「シンタロー、今から高松のところに一緒にいかないか?あそこなら解毒薬の材料がそろっている」
 「うーん…」
 シンタローは考えていたが、その時、インターホンが鳴った。
 「はい」
 「あっ、キンちゃん?ねぇねぇ、シンちゃんそこにいる?さっきグンちゃんから、シンちゃんがかわいいニャンコになったって聞いたんだ☆もう、首輪も鈴も猫じゃらしもパパ準備万端だよシンちゃんvということで、早く開けてヨvvv」
 「伯父貴・・・」
 どうする?、と確認するようにシンタローを振り返ると、シンタローは引きつった顔で、
 「悪ィ、キンタロー。俺は逃げる!」
 と小声で、言った。
 「眼魔砲で片付けるなら手伝うが?」
 「いや、面倒くせーからいい。そんじゃ、すまんが後は頼むゾ」
 シンタローは脱兎のごとく駆け出した。


 「よっこらせっと。結構、菓子が集まりましたナ…。シンタローはん、喜んでくれますやろか」
 アラシヤマは、大量に菓子の入った黒い袋を担ぎ、人気の無い暗いガンマ団内の公園をテクテクと歩いていた。
 (『燃やされるか、大人しく菓子を出すかどっちがええどすか?』って笑顔で聞いただけやのに、何でみなはん怖がったり迷惑そうな顔をしはったんやろ?西洋の祭りが理解できへんとは、とんだ田舎者で不粋な奴らどすなァ…)
 「あ、そうそう。提灯にも灯ぃ入れな、供養になりまへんナ」
 アラシヤマは南瓜の中のろうそくに火を灯した。
 彼の周りだけ、薄ボンヤリとした光に照らされている。
 しばらく行くと、闇の中に光る2つのものが突如現れ、少々驚いたアラシヤマは立ち止まった。
 (―――猫?にしては、地面からの位置が高すぎどす)
 

 (やっと撒けたか?このクソ忌々しい耳、切っちまうわけにもいかねーし)
 夕闇に紛れ、人気の無い所を移動していたシンタローであったが、暗くなると気温が下がり、肌寒くなってきた。
 (見世物にはなりたかねーし、どこに行っても迷惑がかかるよナ…。かといって、あのクソ親父に首輪とか無理矢理つけられんのは、ぜってー嫌だし)
 思わずため息を吐くと、頭上の猫耳も気持ちと連動しているのか力なく伏せられる。
 しばらく行くと、低い位置でフラフラと揺れる不安定な光が突如現れたので、シンタローは立ち止まった。
 気配を完全に消し、身動きせずにその場に佇んでいると、人魂のような光はザクザクと枯葉を踏む音と一緒に近づいてきた。


 「あれ?シンタローはんやおまへんの。どないしはったんどすか?その目と猫耳」
 南瓜提灯を掲げ、シンタローの顔を確認すると、アラシヤマは驚いたようであった。
 「あっ、わかりました!あんさん、仮装してわてを探しにきてくれはったんどすナ!うれしおす~vvvほな、今からわての部屋に行きまひょか!ぎょうさんお菓子ももろうてきましたえvvv」
 アラシヤマはどうやら嬉しさのあまり、シンタローの目が光っていたことについての疑問は脳内から消し飛んでしまったらしい。
 (アラシヤマの部屋か…。嫌だけど、誰も近寄んねぇから意外と盲点かもナ。それにもし親父に見つかってもコイツ、多少のことじゃくたばんねーし、いいか)
 「…絶っ対!人に見つかるようなヘマはすんなよ!?」
 「えっ?それって逢引ってことどすかっ??どうしまひょ、シンタローはん!わて、ドキドキしすぎて不整脈がッツ…!」
 「未来永劫逢引じゃねーから。さっさと歩けよオマエ」
 「もう、嬉しおますぅ~vvv」
 「超ウザイ」
 提灯を持って浮かれているアラシヤマに続いて歩きながら、シンタローは何の準備もなく野宿せずにすんだことに関してだけは、ほんの少し安堵していた。


 「ようこそ!シンタローはんvvvどうぞゆっくりしていっておくんなはれ!お風呂にします?それとも、わ・て??もう、猫耳もよう似合うてて、ほんま可愛ゆうおますえー!!」
 アラシヤマが一歩シンタローに近づくと、ペタンと耳が伏せた。
 「え…、それってまさか、本物、なんどすかぁ!?カチューシャとかやなくて??そういや、さっき目が光ってたのも…」
 ものすごく不機嫌そうな顔つきのまま返事をしないシンタローを見て、
 「ということは、また、あんさん、従兄弟らに一服盛られはったんどすナ!?ほんまにもっと警戒してくれはらんと、心配どす…」
 なんとはなしに、力が抜けたようにアラシヤマは椅子に座り込んだ。
 「うるせぇ」
 シンタローも疲れたように、ドサリ、とソファに座った。


 「シンタローはん、お茶いれてきましたし、今から菓子を一緒に食べまへん?」
 アラシヤマはマグカップを乗せた盆を運んでテーブルの上に置いた。
 黒い袋を渡されたシンタローは、その中から飴を1つ取って包みをとり、口に放り込んだ。
 「そういや、シンタローはん。あんさんもわてに菓子をくれまへんか?」
 「あ、もってねーわ、俺。こんなにあるし、別にいんじゃねぇの?」
 「いや、ハロウィンの決まりどすし…。でも、シンタローはんを燃やすわけにもいきまへんしなぁ…」
 「燃やすって、何だよお前?」
 悩む様子のアラシヤマを不審気に見遣ったが、急にアラシヤマが
 「そうや!その手がありましたわ!!わてって天才どすーvvv」
 と大声で叫んだので、耳がピンと立ち、目が丸くなった。
 アラシヤマはチラッとシンタローを見て、
 「…あの、そのー、ホラ!シンタローはん、今丁度飴を舐めてますやん。そそそそそれを一寸わてに」
 「死ね」
 眼魔砲、ではなく、右ストレートであった。
 「すみまへん!ほんのちょっとしたハロウィン・ジョークなんどす~!!」
 土下座して平謝りに謝るアラシヤマに、
 「冗談で済んだら、警察、いらねぇよナ?」
 と冷たくシンタローが言うと、
 「せやかて、シンタローはん!『トリック・オア・トリート』って呪文、“あくどいやり方か、菓子か”どっちか選べってことやおまへんの??となると、シンタローはんに酷いことをしとうありまへんし、残るは菓子の方のみですやん…!!」
 泣きながら弁解するアラシヤマにシンタローは呆れた。
 「オマエなぁ、トリック・オア・トリートのトリックって普通“悪戯”って訳すんだけど?大体、ガキが言う台詞だゾ…」
 「ええっ!?犯罪者の台詞やおまへんのー!!」
 「犯罪者が菓子を要求するか?」
 「いや、そう言われると…」
 床に座ったまま何やら悩んでいる様子のアラシヤマを放って置いて、シンタローは、空になったマグカップを洗うために流しに立った。カップは2つだけだったので、すぐに洗い終わった。
 (アイツ、超今更だけど、どうしようもねぇナ…)
 非常に疲れた気分で部屋に戻ろうと振り返ると、すぐ背後にアラシヤマが居た。
 「うわっ!何、気配まで消してやがんだ、オマエ!?」
 「あの…、シンタローはん。あんさん、結局菓子をわてにくれまへんでしたから、トリックの方ということでよろしおますか?」
 おずおずとアラシヤマはシンタローの腰を引き寄せ、キスをした。
 が、キスを解いた瞬間、今度はボディブローを腹に叩き込まれ、尻餅をついた。
 「―――テメェ、まさかそれが悪戯のつもりか?どさくさに紛れてひとの尻を撫で回しやがって…」
 「ち、違うんどす!誤解どすえー!今回、あんさんの猫尻尾はどうなってはるんか、わて、えらい気になりまして…!」
 「なら、何でベルトまで外そうとしてたんだヨ?」
 「や、やっぱり、触っただけやのうて実際に見てみんと、ようわからんかなぁ?なんて…」
 「で、覚悟はできたか?」
 「あの、これだけは言わせておくれやす!わて、“チカン、あかん”推進派どすさかいー!!」
 「眼魔砲ッツ!!」
 黒焦げになって倒れているアラシヤマを蹴り飛ばし、シンタローは部屋を出た。
 廊下を歩いていると、
 「シンちゃーん!!どこ行ってたの??パパ、すっごく探したんだヨ!?あっ、黒猫耳すっごくかわいいネvもっとよくパパに見せ」
 「眼魔砲!」
 シンタローは、パンっと手をたたき、床に倒れているマジックを見て
 「ったく、最初っから、こーしとけばよかったゼ」
 と言って自室に戻った。


 後日、シンタローの元にティラミスが、
 「苦情です」
 と言って山のように抗議書を持ってきた。
 一つ抜き出して読んでみると、
 『10月31日、某幹部に脅されて菓子をカツアゲされました。今後、このように迷惑なことが二度とおこりませんよう、総帥からきつく言っておいてください』
 と書いてあった。
 「あー、苦情をよこしたヤツラに適当に菓子を配っといて。代金は、全部アラシヤマの給料から引くように」
 「わかりました。他の書面もお読みになられますか?」
 「いや、いい」
 「それでは、失礼いたします」
 一礼後、ティラミスは部屋から出て行った。
 シンタローは、机の上に飾られていたパンプキンの置物を掴むと、ゴミ箱目がけて放り投げた。













沖の灯 / 勘菜

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