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gda
RHAPSODY


注意書き


この小説にはミツマジと取れなくもない表現があります(ないといえばないですが)
ちょっとだけ、マジックが受けっぽい表現がなくもありません。(書いた本人はそのつもりではないので……

なんと言うか、なんともいえない感じなので、戸惑うなーって人は止めた方が良いかもしれません。
まぁ読んでやるよ!って人、有難う御座います。ずずい!と下にお下がりになってくださいませ!









この寒い冬の季節、何が付き物かといえば、雪でもお年玉でもみかんでもこたつでもなく、風邪だ。

貧乏人だろうが金持ちだろうが、日本人だろうが何人だろうが、風邪は皆平等に引く。
ある意味どこに居るか分からない、多宗派な神様なんかよりも、よっぽど平等だ。

御多聞に漏れずここ、ガンマ団でも風邪が蔓延の兆しを見せていた。






******






「ぶえっくしょーいい!!」


盛大なくしゃみをぶちかましたのは、ガンマ団元総帥であるマジックだ。
先日訪れた海でつい色々と薄着で頑張り過ぎたせいか、しっかりと風邪を引いてしまったらしい。

一緒に居たシンタローはコートを借りたお陰なのか、元より健康管理が行き届いているからか、風邪を貰うことはなかった。


「うぅ……やっぱり年かなぁ……あー…頭痛いぃ……おかゆ食べたいなー、フーフーしてほしいなぁ……」
「うぜぇ」


現在マジックが居るところは他でもない総帥室である。
総帥室には大きなソファが備え付けられているが、マジックは今毛布に包まりながらそこに寝転び駄々を捏ねていた。

今総帥室にはシンタローとマジックの二人しか、居ない。
常ならば頼んでも居ないのに暖めてあげる、などと世迷いごとをのたまいながらシンタローが嫌がるのも気にせずベタベタとしているが、今日は風邪を引いているからか口が煩いくらいで特にシンタローに何かをするでもなかった。

シンタローはシンタローで病人だから、と思っているからか「煩い」「ウザい」「早く寝ろ」程度しか言わず、マジックの好きなようにさせている。


「つーか、俺に伝染るだろうが、早く部屋戻って寝てろよ」
「だぁって、寂しいんだもーん」
「いい年こいたおっさんがだもんとか言うな、気色悪い」


時折鼻を啜り、喉が引っかかるのか喉元を押えながらマジックは応える。
シンタローとしてもこのままでは本当に悪化しかねないから早く帰って欲しいのだが、素直にそれを口にすることは無かった。

不意に扉が開く。秘書である二人や、報告書を持ってきた伊達衆ならば必ず先に内線で連絡が来るはずだが、それがないと言うことは……。


「シーン、ちゃーん!」
「シンタロー、……それに伯父上もいらしたんですね」


やってきたのはアフリカ一号にまたがったグンマと、なにやら分厚い報告書を片手に偉そうに歩いてくるキンタローである。


「ゴッホ……ゴホゴホ……」
「どうしたんですか、急に著名な芸術家の名前を息荒く叫んで……ゴッホ、と言うのは、いいですか?ゴッホと言うのは、本名はヴィンセント・ヴァン・ゴッホで生きているころは―――………」
「違う、違うよ、キンタロー、私はね、風邪を引いているんだ……」


風邪を引いていてもなおきちんとツッコむところはツッコミながら、マジックは少しばかり悪化したような風邪に本当に脂汗をかき始めていた。
シンタローはそんなマジックの様子を横目でチラリと確認すると、先に従兄弟をどうにかしなければ、と言うようにグンマへと向き直った。


キンタローにも声を掛け、自分のデスクの前へと来させると二人の顔を確認する。


「なんだっつーんだ、その分厚い書類は」






******






「あほか!こんなばっか高いもん許可出来るわけねーだろーが!!」
「でもでも!これがあると、クリスマスに活躍できるんだよーぅ!」


キンタローが持っていた書類、それはクリスマスに先駆け少しばかり計画しているとある乗り物だが、グンマのファンシー趣向を刺激したらしく、本物を追及する余り、材料がかなり高価なものばかりになってしまった。


「でももくそもあるか!こんなたっけーもん、俺たちの金からじゃ出ねぇぞ!ガンマ団の資金使うわけにはいかねーんだから!」


ヒートアップする二人の言い合い、デスクが揺れ、机上に置かれた分厚い書類が音を立て床に落ちた。
その書類はマジックの目に見える範囲に落ちた。どうやらそれは、企画書のようである……


[Project-X-](決して某テレビ番組ではない)
内容は激戦区とされる紛争地帯の非戦闘員である国民に、支援物資を配給すること、また、近くクリスマスにその国の子供達にささやかではあるがプレゼントを贈ろう。と言う内容のようだ。

ガンマ団が出張れば内戦自体は簡単に終わるだろうが、それは本当の解決でないことをマジックは知っていた。そして何よりも、戦争を経験した子供達に何かをしたいのであろう。
そう分かるとマジックは緩やかに微笑んだ。

そして更に下にページは続く。どうやら先程から言い合っている内容はこれのようである……


[トナカイ型ソリ付き移動ロボット材料費用概算]


どうやら、シンタロー、キンタロー、グンマ、そして巻き込まれた伊達衆他の人材がサンタに扮し、トナカイ型ソリ付きロボットでプレゼントを配る、と言う内容のようで、材料を見れば確かに本物を追求すれば必要であろうものばかりだが、
如何せん、高い。流石に本物のトナカイの毛皮を使うわけにもいかない為、その道のプロに概観の依頼をしたりと金は止め処なく掛かっているようで、その概算費用はシンタロー、キンタロー、グンマのポケットマネーでは足が出てしまうのだ。

自分の趣向だけではない、子供達の為に本当のサンタになりたい、そのグンマの思いも痛いほど分かる。
マジックは小さく溜息を着くとソファから立ち上がり、三人に向かい言葉を発した。


「追求すれば、果ては無いよ、グンマ。シンタロー、本当は資金さえあれば、君もグンマの意見に同意なんだろう?」


マジックの言葉に三人は視線を寄越す。ピンク色の愛らしいパジャマで立つその男は持っていた携帯で何か調べ始める。


「キンタロー、予算はあとコレぐらいあれば足りるのかな」


そう言って携帯画面を見せる。そこには費用で足の出た分くらいが表示されており、キンタローは深く頷いた。


「そうか……よし、じゃあ、私も費用を出すよ。参加させてくれないかい?」
「!親父……!」


心底驚いたような表情をマジックに向けるシンタローに、マジックは苦笑いを浮べ、瞳を向ける。


「私も、子供達の為に何かしてあげたいんだよ、シンタロー」


その言葉が差す子供達、が内紛に苦しむ子供達なのか、そんな子供を助けたい我が子と我が子同然の子供なのかは分からなかったが、グンマ、キンタローの嬉しそうな表情を見て、決心がついたらしくシンタローは表情を崩した。


「願ってもねぇ、ありがたい言葉だな。人も少なかったし……サンキュー親父、感謝する」


シンタローは悪戯にニヤリと笑った。建前じゃなく本当に、マジックの言葉が嬉しかったのは、他でもないシンタローなのだから。






******






「おとーさまぁ!すごいよすごよー!僕見直しちゃったぁ!」
「俺もです、伯父上。感謝します」


グンマは嬉しそうにアフリカ一号と飛びはね、キンタローは恭しく頭を下げた。そんな二人にマジックは優しく微笑んだ―――………


「親父!」


シンタローの叫びを最後にマジックの世界は暗転とした。






******






「シンタロー、伯父上の様子はどうだ」
「ん?風邪が悪化したんだろ、とりあえず仮眠室に放り込んどくから、高松以外のドクターを呼んできてくれないか?」


シンタローがそうお願いをすると、キンタローは頷き医者を呼びつけた。

ここは、シンタローが控えている総帥室のすぐ隣にある仮眠室で、扉は総帥室にしかないので事実上総帥専用の仮眠室となる。
あるのはベッドと冷蔵庫と簡易キッチン程度でとても殺風景である。

シンタローは、マジックが倒れた際、抱え上げここに運んできたのだ。
(運び方は所謂お姫様抱っこと言うやつで、マジックが実際起きていたら嬉しそうにはしゃいだであろうことは想像に難しくない)

誰も居なくなったこの部屋で、シンタローはマジックの額に触れた。
自分の手が特別冷たいわけではないが、マジックの体はひどく熱く、流石のシンタローも心配になってきたのである。

簡易キッチンに立ち、ボウルに氷水を張るとタオルを取り出し水に浸した状態で、ベッド脇に立ち、サイドテーブルへとそれを乗せた。
首筋に触れれば、扁桃腺も腫れている様子で、シンタローは溜息を吐く。


「……あとで代えのパジャマ持ってくるか……」


小さく零すと水に浸したタオルを取り、しぼると額に乗せる。
それだけでも多少は和らぐのか、マジックの表情の強張りが少しばかり、解けた気がし、シンタローは幾分伸びたマジックの髪を撫でるように解き梳いた。


「シンタロー、連れてきたぞ」


キンタローの声に触れていた手を素早く引っ込め、シンタローは向き直った。






******






「診察してみたところ、まぁ風邪でしょうなぁ……ただ、少しばかり熱が高すぎる気もしますので、充分に注意してみてください。今回は解熱剤を置いていきますので」


老齢の医師は使った道具をしまいながらキンタローに話す。診断結果は風邪で、兎に角変な病気でないことに三人は安堵した。
医師は鞄の中から三日分ほどの薬と、もう一つ、と声を出し少しばかり形の違う解熱剤をキンタローに渡す。


「38度5分を超えるようでしたら、投与してあげてください」


キンタローは老齢の医師を見送った後で、シンタロー、グンマに向き直った。


「なぁ、シンタロー、これはなんだ」


そういって見せてきたのは弾丸のような形をした、例のアレである。


「あー……座薬か……」


まいったな、シンタローは呟いて頭を掻いた。入れること自体はまぁ良いにしても、相手は父親で50代男性である。
本人が嫌がるだろうな、とシンタローは思っていた。


「座薬?」
「座薬って言うのはねー、解熱剤・吐き気止め・抗けいれん薬とかを肛門から挿入して使う薬のことでぇ、成分が直腸の粘膜から直接吸収されるから、飲み薬に比べて利き目が早いし高いんだよぉ」
「なるほど……そうか、座薬は初めてみたぞ」
「大人は滅多に使わないからね」


そうか、と最後に返事をし、キンタローは暫く座薬を凝視していた。このままではマジックを実験体に入れてみよう、などと言い出しそうである。
流石にそれは大人と言うか男の沽券に関わりそうだ、とシンタローは苦笑いを浮かべた。

さて、と前置きをして、シンタローは総帥室へと戻る。まだまだ業務は残っているのだ。


「僕たちも研究室戻って頑張らなきゃ!おとーさまが応援してくれてるんだもん!」
「そうだな、よし、伯父上の為にも頑張るぞ、グンマ」
「うん!」

「そうだ、シンタロー、本来ならば俺が入れてあげたいのだが、どうにも無理そうだ。これを頼む」


そういってキンタローが渡したのは解熱剤に、座薬である。シンタローは一瞬表情を曇らせながらもそれを受け取るとまた机の上の書類に没頭し始める。
まだ山とある作業に少しばかり辟易としながら……。そんなシンタローをグンマは優しげな表情で見やり、キンタローの手を引き総帥室の扉へと向かう。


「シンちゃん、おとーさまをよろしくね」


扉を開け、体を廊下へと出し、グンマはシンタローにそう言う。グンマはちゃんと気付いていたのだ、きっとシンタローが今書類に没頭するのは、後にマジックを看護するためだという事を。
だから邪魔をしないように、キンタローを連れ外に出たのだ。そして、そんなグンマの思いをシンタローもちゃんと分かっていた。だからグンマたちが扉を出る寸前、こんな風に声を掛けた。


「頑張れよ、応援してる……ありがとうな」


そんなシンタローの素直な一言に、キンタロー、グンマは目を合わせ、嬉しそうに微笑むのだった。






******






時間は丁度街では夕食時、と言った時間であろう。
シンタローは時計を見つめ一息吐くために背伸びをした。ぎしり、と音がしたのはシンタローの凭れる椅子の背ではなく、すぐ傍の扉から発せられた音だった。


「親父、まだ寝てろよ。………腹減ってんのか?」


そこに立っていたのは顔を赤くしたマジックである。
先程変えたばかりのパジャマはもう汗か何かでよれており、シンタローは熱が上がったんじゃないかと心配した。

椅子から立ち上がるとマジックに近づく。そんなシンタローに安心したのか、ゆるやかに微笑むが、それはどこか痛々しい。
シンタローはマジックの前に立つと額に手を当てた。


「お前の手はひんやりとしているね……大人になったからかな」

「あんたのデコが熱すぎんだよ。つーか俺はとっくに大人だ」


やはり先程よりも大分上がったな、シンタローは心中一人ごち、マジックにはバレないように小さく溜息を吐いた。当のマジックは、シンタローの手が気持ち良いのか身をゆだねるように瞳を閉じている。
シンタローはマジックにぶつからない様に仮眠室の電気を付け、中に入るよう促した。


「あんた、腹は?」
「減ってない、とは思うけれど、薬を飲まなくては駄目なんだろう?食べるよ」


そう、結局腹に多少何かが入っていなくては薬は投与できないのだ。シンタローは多めに置いておいた乾いたパジャマをマジックに渡し、粥を作る間に着替えるように指示をした。
簡単な下ごしらえも済み、あとは煮立つまでと言うところまで準備を終えるとシンタローはマジックに向き直る。


「……着替え、してねぇのかよ……」


ベッドに横倒しになり、マジックは瞳を閉じていた。どうやら熱は思った以上に高く、座っているのも辛いようである。
かと言って、濡れたパジャマを着させるわけにも行かない。シンタローは出来る限り揺らさないように瞳を閉じるマジックの服を脱がせ始めた。


「はは……情熱、的、だね……シンタロー……」
「軽口叩く暇あったら自分で着替えろよな……」


着替えさせるだけでは、と汗にタオルを当て簡単に拭いていく。それがどうやら気持ち良いらしく、マジックの表情は少し和らいだ。軽口を叩くことは出来るものの、シンタローの言葉に返す言葉はない。
波でもあるのか、時折一層眉間の皺を深めることがあるようで、シンタローの目に少しばかり痛ましく映った。

着替えを終えると、シンタローはまたキッチンに立つ。丁度良い頃合に煮立ったその粥に、卵を落とし、刻んだ鮭も加えまたベッドに戻る。


「ほら、親父、一口でいいから食えよ、あとは薬飲んで寝ればいいから」


とは言うものの、先程座るのすらきつかったマジックが起き上がれるはずもなく、クッションと枕を何段か重ね、マジックを座らせるとベッドに腰掛シンタローはマジックに粥を少し持ったスプーンを差し出した。


「ほれ、口開けろ。食わせてやっから」


くい、と手首を動かせば少し瞼を持ち上げ、マジックが口を開いた。
大目に作ってはみたものの、多分半分も食べることはないだろうが、とりあえず何口かは食べさせなければ、とシンタローは何度かスプーンを運んだ。

途中までは背を張り、体を起こしていたマジックが重ねた枕に身を預けたのはもう食べられない、とのことだろう。
シンタローはスプーンと皿を置き、今度は薬を取り出した。座薬ではなく、普通のカプセルである。


「こういう時、口移しが普通なんじゃないのかい……?」
「風邪伝染ったらどーすんだよ」

「……そっか……」


マジックは簡単に納得すると、ゆっくりとした動作でカプセルを受け取り、水を含み嚥下した。
コレで仕事は終えたとばかりに、すぐにベッドの枕の重なっていないスペースへと身を沈め、ぐったりとし始める。シンタローはコップや皿を片付けてから、用意しておいた氷嚢に氷水を入れまたベッドサイドへと戻る。


「ほら、親父、氷嚢……頭持ち上げるぞ」


言いながらマジックの頭を持ち上げ、枕を敷いてその上にタオルで包んだ氷嚢を乗せ、そこにゆっくりとマジックの頭を横たえる。
そしてもう一つ用意した桶入っているタオルを絞ると今度は額に置いた。その頃には、薬が聞き始めたのか荒い息は随分と抑えられ、ぐっすりと眠っているように見える。
シンタローはここで初めて心配そうに表情をゆがめたのである。


「あほ……あんたが俺にさえコート渡さなきゃ、風邪引かなかったんだぞ……?もう若くねぇのによー……」


素直じゃない物言いだが、シンタローなりに心配しての台詞である。
先日のことを思い出すと、他の事まで思い出してしまうのか、シンタローは長い髪を揺らし首を振ると、最後にマジックの頭を撫でてから仮眠室へと出て行く。
出る間際、おやすみ父さん、そんな声が聞こえたのは、マジックの夢かもしれない……






******






執務も終わりに近づき、時間はもう子供は眠る時間へと差し掛かっていた。時折マジックの唸り声が聞こえたり、定期的に氷嚢やタオルの交換に行ったりとしたが、仕事もようやく片付く目処が見えた。
さて、もうひと踏ん張り、の前にシンタローは今度はしょっちゅう様子を見れない事を考え、マジックの元へと向かった。


「親父!?」


先程(とは言っても30分程前ではあるが)は、唸ることもなく静かな寝息を立てていた筈のマジックが、今荒い息を吐き苦しそうにしている。悪い夢でも見ているのか?シンタローは急いでマジックに近づき緊急事態だと無理やりその体を起こす。


「っ……!」


目を勢い良く開いたマジックはシンタローの方を見ると何事か呟いたようだが、その呟きはシンタローに聞こえなかった。次いではっきりと意識が戻ってきたのか、安心したようにシンタローにしがみつき息を吐いている。触れる体はとても熱く、シンタローは体温計を取り出すとマジックの耳に当てた。
耳温計は数秒で熱を正確に測れる優れものであるが、その体温計が示す数値は39度に近く、大人が稀に発熱する体温としては相当高い。

どうしたものかと焦るシンタローの瞳に映るのは、ベッドサイドに置かれた弾丸状の薬。ごくり、と唾を嚥下する。
覚悟を決めるときが来たようだ。

シンタローはマジックを辛いだろうが我慢してくれ、と呟きつつ、うつ伏せで寝かせると力が入らずちゃんと立たない膝を立たせ、臀部を自分の方に向かわせた。
せめてもの情けと電気を消し、バスタオルを掛けてある。

たとえ恋人と言う肩書きを持っていても、臀部を晒すのは嫌だろう、シンタローは本当に我が事を思い出し深く頷いた。
パジャマのズボンを少しばかりずらし、下着をのぞかせた状態で、少しばかり揉んでみる。


「(流石に細いつったって、慣らさずにつっこんだら痛いよな……なんか潤滑するもん使ってもいいけど、効力なくなっても困るし……)」


そう思いながらぐにぐにと親指の腹で解す。本当にこんなことで解れるとは思えないが、注射と同じで一定時間圧力を掛ければ多少痛みも麻痺するだろう、と思ってのことだ。
どこで得た知識とは言いたいが、解すことに関しては我が身と知れることである。シンタローは少しだけ泣きたくなっていた。


「こんなもんか……」


そういいながらタオルに隠れた下着をずり下ろす。少しばかりどんなものか見たい気もするが、やはり可哀想だな、と思い諦めてシンタローは座薬を取り出すとゆっくりとそこに差し込んでいった。
と、その時、先程まで眠っていたはずのマジックがついに唸り声を上げ始めた。流石にこの状態で起きられたら何を言われるか分かったものじゃないとシンタローは焦るが、この指を離すわけにもいかず、取り越し苦労であってくれ、と祈る。





「……ぅ……ぃ、…。…嫌、だ、……ミツヤ………」





涙交じりのその眼が胡乱下に動きシンタローを捕らえたようにも見えたが、まだ熱に浮かされているらしく、マジックは小さく誰かの名前を呟いたのだ。


『ミツヤ』と。


「(ミツヤ?!ミツヤって誰だよオイ!)」


突っ込みながらも指を推し進め、きっちり入ったところで両脇から臀部をぎゅう、と押し中にさらに入るようにやる。一度手を離してから出てこないことを指先で確認すると下着を上げ、パジャマを直してシンタローはキッチンに手を洗いに向かう。


「(ミツヤ……?……1.格言、2.サイダー、3.三谷とかって苗字、4.誰か知らないやつ)」


シンタローの知らない名前がマジックから飛び出した。正直驚きである。と、言うか状況が状況だけに更混乱は増す一方である。


「(なんで座薬突っ込んでる時に名前が出るんだよ……親父に座薬を突っ込んだ奴がいるっつーことか……?ん?待てよ?もしかしたら親父のケツに何か突っ込んだ奴がいる!ってことかもしんねーぞ?!どこの誰だよ!シンタローにだったら私のバージンを……とか気色悪い事抜かしてた奴はよー!!思い出したら腹立ってきた!くそ!くそ!!)」


苛々は収まらない、けれど収めないと仕事が待ってる。シンタローは総帥室から急ぎ足で外へと出ると、空に向かって最大マックスの眼魔砲をぶちかました……それは人々の目には人魂だ!UFOだ!と騒がれたがそれはまた本筋とは関係ないので置いておこう。






******






そして次の日、薬が効いたのか、はたまたぐっすり眠ったからなのか、あるいはその両方なのか、マジックは熱もすっかりと癒え、多少だるい程度でほぼ回復していた。
爽やかな表情をしてベッドから立ち上がると、総帥室の扉を開けた。
そこに居たのは………


「シ、シン、ちゃん……?」


どうやら、あの後一晩中悶々としてしまい、結局一夜仕事をして過ごしたのである。しかも………


「ねぇ、シンちゃん……あの、どうして、上は裸なの、かな……」
「あぁ?」


これは、と言うのも雑念が雑念が、と深夜の力なのかなんなのか、考えが下に行きまくってしまったため、それを取り払うために自ら上半身を冷やした、と言うのである。
下半身は流石に誰か入ってきた時言い訳が出来ないとはいているのだが、正直総帥室にすぐに下半身は見えないので、見る人が見たら真っ裸で仕事をしているようにしか見えない。
そんなことに気がつかないほど、シンタローはパニックを起こしてしまっていたのである。
そして、やはりと言うかなんというか。





「ぶわっくしょい!」





ずるり、と垂れ下がる鼻水。要するに、風邪を引いてしまったのだ。
無論、この風邪はマジック同様、悪化の一途をたどり、シンタローはマジックに甲斐甲斐しく世話をされることとなるのだが……それはまた機会があったら。






******






最後になるが、シンタローは風邪が回復しても尚、ミツヤと言う人物を気にしていた。
だが、某叔父に話を聞いたところ何かのトラウマスイッチを押してしまったらしく、一言ゲームが……と呟くとどんよりとしてしまい、余計にマジックに聞くのを躊躇ってしまったのだ。
―――いつかは、いつかは…!!!―――
その想いを胸に、クリスマスに向けてシンタローたちの仕事は続く。





終 / 070208


終わった…やっと終わった!!!かき始めた当初と全く違う話になってしまいました。
でも楽しく書けてよかったですー!
ちなみにミツヤとのことは特になにもなくて、風邪を引いたマジックの尻に座薬入れようとして本気で殴られた、とかその程度です。笑
あ、あとクリ子ちゃんは…?とか言うのはなしの方向で……笑
では、ここまで読んでくださって有難う御座いました!!!


マジシン好きに15のお題[03:薬]


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