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「シンタロー」
呼ばれた名前に顔を上げると、キンタローがまっすぐにこちらを見ていた。自分には無い青い目は、吸い込まれそうなほどだった。はっと我に帰り、なんだ、と問い返せば、キンタローは何が言いたげにこちらを見直すばかり。
「どうしたよ、キンタロー」
コーヒーを飲み、いったん空気を変える。それでキンタローが話し始めるかと思ったが、そう簡単にも行かなかった。目をしばたたかせて、キンタローは変わらずシンタローを見ている。二人の沈黙の間を、雨の音が通って行く。
「・・・?」
そこでふと、シンタローは気づく。キンタローの目線はシンタローではなく、正確にはシンタローの唇に注がれていることに。食べていたクッキーのかけらでもついているのかと思い拭うがそうではないらしい。意図の汲めない行動は、キンタローらしくない。
「シンタロー」
今度ははっきりと、名前を呼ばれる。
「キスがしてみたい」
続けて言われた言葉に、シンタローの思考は一旦停止する。キス、だって?
「キスがしてみたい、?」
オウムみたいに言葉を繰り返し、シンタローは口の中で言葉を反芻する。
キス、とは、キスのことだろうか?
「どこで知ったよ、そんなこと」
ようやく動き始めたシンタローの思考は、問題解決の糸口を求めていた。
キンタローのことだからきっと、本かなんかで手に入れた知識なんだろうが、あまりに極端だ。「口と口を合わせる行為」とかなんとか書いてあったんだろうな。
そんな簡単な行為を人は愛情表現に使っているのか!
キンタローの反応が目に浮かぶようだが、実際はそんな簡単なもんじゃないってことを教えなきゃ行けないのか誰かが。
「俺が!?」
がたん、と椅子から飛ぶように立ち上がり、シンタローはキンタローを見下ろす。
驚くキンタローの目には、それ以上に驚くシンタローの姿が映っていた。
「キンタロー、落ち着け」
落ち着くのは自分だろうがと言い聞かせながらシンタローは、もう一度椅子に座り直す。
「難しくはないんだろう?」
その、キスというものは。そうキンタローは言う。
「いや、難しいとかそう言う問題じゃなくてな・・・」
いつの間にかコーヒーをこぼしていたが、シンタローもキンタローも気づく気配がない。それほど集中する問題、だったようだ。
「キスがしてみたい」



純朴さは時に、罪だ。




キンタロー生まれて半年くらい

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