忍者ブログ
* admin *
[603]  [602]  [601]  [600]  [599]  [598]  [597]  [596]  [595]  [594]  [593
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

3
 キンタローの体がグラリと揺れた。倒れるのかとグンマは青ざめたが、その体は次の瞬間勢い良く席を立つ。
「キンちゃんッ?!」
 もの凄い剣幕でこの場から走り出したキンタローにグンマが慌てる。一瞬遅れて追いかけたが、到底追いつけるようなスピードではない。だが、感情に突き動かされた従兄弟をこのまま放っておくわけにもいかない。
 この時、幸運にもキンタローが向かった先から高松が歩いてくる姿を認めて、グンマが声を張り上げた。
「高松!!キンちゃんを止めてェェ!!」
「グンマ様…え?キンタロー様を?」
 いまいち状況が飲み込めない高松だったが、言われたとおりに走り来るキンタローを止めようと試みる。だが、黄金の獣は後見人をあっさり突き飛ばして走り去った。突き飛ばされた高松は心底驚いた。あんなに慌てたキンタローはほとんど見たことがない。キンタローは大抵のことでは感情を露わにしないからだ。例外があるとすれば───。
「グンマ様、一体何が…?」
 高松の元まで走ってきたグンマに問いかける。
「何か、テレビでね、血塗れのシンちゃんが、映ってて…」
 グンマは息を切らしながら必死に説明をする。
 グンマの台詞を聞いて高松は目を瞠った。それが本当なら一大事である。
「あ、お父様!!」
 一般団員がいるようなフロアでその姿を目にするのは非常に珍しいことなのだが、前総帥であるマジックがこちらに向かって歩いてくるのが見えた。マジックはただならぬ剣幕で走ってくるキンタローの姿を目にして驚いた。
 だが、ここは流石の前総帥。猪突猛進状態のキンタローを素早い動きで避けると、その腕を掴んで制止させた。
「キンちゃん、そんなに慌ててどうしたんだい?」
 キンタローは非常に険しい表情でマジックを見やった。数年前の荒れていた頃を思い出させるような顔であり、どこか悲痛な表情を浮かべている顔でもあった。
 マジックの質問に答えたのは、息を切らせながらそこまで走ってきたグンマである。
「お父様…ありがとう…キン…ちゃん…落ち着いて…」
「グンちゃん、大丈夫かい?一体何があったんだね?」
「今ね…テレビでシンちゃんが…」
「グンマ様!!」
 高松がグンマを制しようとしたのだが、グンマは事の次第を全て話してしまった。
 途端に、先程のキンタローと同じ様な勢いで走り出す、前総帥マジック。
「待っててシンちゃん!!今、パパが助けに行くから!!キンちゃん行くよ!!」
 二人揃って勢い良く走り出した姿を見て、グンマが嘆いた。
「えぇー?!何でそうなるのー!!」
 誰がどう考えてもそうなるのは当たり前である。マジックがシンタロー絡みで大人しくしているわけがない。黒髪の愛息に関しては、どんな小さな火種でも劫火とするマジックなのだ。シンタローが街中で負傷したとなっては、一大事である。何が大変かと言えば、その街の存続が、だ。
 だから高松はグンマを止めようとしたのだが、間に合わなかった。
 シンタロー絡みで暴走する二人を止められるのは、シンタロー本人以外いない。
 高松はグンマを宥めて休憩室に戻った。問題のテレビ画面に視線を向けると、流れている内容はウィンディアの事件だが、映像は街中のものではなかった。高松に連れ戻されたグンマは、そのテレビからの情報を一切逃さないといった様子で見入っている。
 そんな中、高松は冷静に考える。その映像自体が何か見間違いだったのではと、まず思った。ウィンディアでシンタローのような黒髪長髪の若者は珍しくないからだ。仮にその映像が本当だったとしても、シンタローのことだから命に別状があるわけではないだろうと、このドクターは確信していた。本来なら傷一つ負うはずもないはずである。それが負傷したとなると、誰かを庇ったか線が一番高い。戦地ならともかく、今回は起こった悲劇は街中だ。シンタローは、巻き込まれたのは民間人を放っておけるような性格ではない。
 どちらにしてもシンタローの能力を考えれば、キンタローもマジックもそのくらい判るはずなのだが、どうしても先に頭へ血が上るようだ。
『しかし、その様な映像を撮られてしまうとは、まだまだ甘いですねぇ、シンタロー様は』
 本部へ戻ってきたシンタローの傷の手当をする際に、どんな嫌味を言って差し上げましょうかなどと考える高松は、新しき総帥の力を認めているのか、単なる趣味か───。
 休憩室にある窓から、激しく揺れ動くヘリコプターが一台飛び立っていくのが見えたのだが、あっさり見なかったことにしたのであった。

 ウィンディアは突然の大事件に騒然としていた。
 偶然起きたような強盗事件が、多数の死傷者を出す大惨事へと発展したのだ。事態はかなり複雑かつ深刻なものとなっていた。
『まいったな…』
 シンタローは辺りを見回す。一段落した今は至るところに取材陣が待ち構えていて、上手く身動きがとれないのだ。
 上に着ていた白いTシャツの至るところが血に濡れて紅く染まっているのだが、この赤い色の大半はシンタローが助けた他人のものだ。素材の所為なのか必要以上に広がって染まってしまっている。見た目には相当な深手を負った人に見えた。これは助けた人の血だと言っても、それは本人にしか判らないことだ。シンタローが実際に負った傷は弾をかすめた程度の軽いもので、本人からしてみれば、かすり傷同然であった。戦場で負う傷と比べれば、つばを付けておけば治るなどと軽口をたたけるようなものなのだ。
 二度目に起きた強盗事件は、どんな作用を引き起こしたのか、ターゲットとなった宝石店を中心にあちこちで呼応するように発砲事件が起きたのだ。一転して、目の前の事件を解決すればいいという単純なものではなくなった。こうなると、偶然起きた二件目の事件は、偶然ではないようだ。
 こうして突然、この事件の不自然さが浮き彫りになった。誰かの意図を感じずにはいられないシンタローだ。
 出会してしまったのは運が悪かったのだろうけれども、誰が考えても単純な強盗事件ではないはずだ。
 だが、この街で不穏な動きがあるという報告は受けていない。ガンマ団本部からそこまで離れている街ではないのだから、何かあれば必ず報告を受けるはずである。
 事件に対して様々な疑惑が頭の中を過ぎったシンタローだが、考えながら行動をするには分が悪すぎる。どんな人間が手にしても、武器は武器で人間を傷つける。簡単に命を奪うことが出来てしまう。現に巻き込まれた民間人が次々と倒れていっているのだ。余計な思惑に捕らわれている間にも、命を落としていく人間がいる。
 被害が拡大される前に自体は収めなくてはならないと思ったシンタローは、事態収拾へ努めたのだった───が、少しばかり、いや、かなりやりすぎたようである。
 各々の犯人は統率された動きをしているわけではなく、全てが単体である。従って、誰か司令塔となる人物を叩けば事が収まるというわけではない。
 急がば回れと諦めたシンタローは、虱潰しに一人一人と対峙して倒していったのだった。
 事件発生の連絡を受けて出動したウィンディアの警官達に紛れて、明らかに常人の域を遙かに超えた漆黒の獣が、すり抜ける風のような動きで街中を飛び回る。パニックを起こした民間人も迷うことなく昏倒させて端に避けると、銃に臆することなく立ち向かっていく。また、放たれた弾に当たらないのも凄いが、相手が引き金を引く前に一撃で倒してしまう程の凄腕だ。無駄のない動きは、明らかに特別な訓練を受けた者だと印象づける。更に、相手が落としてそこいらに転がっている銃を拾い上げると、遠くのターゲットも狙い撃つ。その射撃術の神業なこと、無造作に連射したように引き金を引いたかと思えば、各々武器を持っていた手に命中する。次の瞬間既に移動しており、漆黒の獣は新たなターゲットを倒していた。
 そうやって街中を飛び回ったシンタローが事態を収めた頃には、当たり前だが大注目を浴びていたのだった。
『あちゃー…やりすぎちまった…』
 やっと終わったと思ったときには、自分も終わっていたのだ。警官達の畏怖敬遠する視線が非常に痛い。
 シンタローは曖昧な笑みを浮かべると、まだ混乱している民間人の群に紛れて逃げた。そうこうしている内に、銃声が響かなくなり静かになった街の様子をもう安全だと判断したのか報道陣が押し掛けてきて、身動きがとれなくなってしまったのである。
 更に、凄惨な街の様子をカメラで映し出している中、シンタローの姿も撮られてしまい、違った意味で最悪な状況になった。一瞬とはいえ、非常によろしくないことである。
『こんなはずじゃなかったんだけど…』
 何とかここから離れて本部へ戻りたいのだが、如何せん邪魔が多すぎるのだ。どこかに紛れて移動できないかなと思ったシンタローに、負傷者を運び出している救急隊員が声を掛ける。病院に行ったら行ったで面倒が起きるかなと思ったシンタローは「あ、これ殆ど俺の血じゃないんで大丈夫です」と言って丁重にお断りした。じゃぁ誰の血だよ、と相手を固まらせてから失言に気づき、ますます居場所がなくなっていくのだった。つくづく隠密に行動が出来ない人間である。
 そんな中、部下を何人か引き連れた男がシンタローへ近寄ってきた。肉付きがよい小太りした初老の男で、仕立ての良いスーツを身につけていた。後ろに従っている部下の様子からも身分が高い者であることは一目瞭然だ。普段なら威風堂々とした立ち振る舞いなのだろうが、シンタローを前にして、非常に恐縮したように顔面蒼白である。
 シンタローはこの男の顔を知っていた。ウィンディア街警のトップだ。
 さすがに街警のトップとなれば、目の前にいる黒髪長髪の青年が何処の誰だか判るのであろう。顔面蒼白の理由も半分はこれのようであった。
 シンタローは苦笑をもらすと、自ら声を掛ける。これは好機が訪れたと思ったからだ。この男と話せば上手くこの街から出ていくことが出来る。
「災難だったな」
「はい…それは、もう…」
 流れ落ちる冷や汗をハンカチで拭きながら何とか応対しているような口調だ。
「結構な騒ぎになってるけど、被害は?」
「今、調べているところでございます…」
 己の半分程しか生きてきていない青年に向かって敬語である。流石に気の毒に思ったシンタローだった。これでは部下の前で示しがつかないだろう。
「そんな腰を低くしなくてもサ…」
「いえ、あの……はぁ…」
 相変わらず苦笑を浮かべたままのシンタローだったが、このガンマ団総帥の友好的な態度に少し気を緩めたのか、街警のトップは一歩近寄って口を動かした。
「お体の方は…」
「あぁ、これは大丈夫だ。俺よりも被害にあった民間人の方を…」
「救急隊をフル活動させています」
「酷い事件だよな…」
「はい。まったくもって…」
 二人は何気なく会話をしていたのだが、街警トップと話す青年の姿にだんだんと周囲の視線が集まりだした。これ以上注目の浴びようがないシンタローだが、今は早くここを去りたい。事件については今判っている範囲でも詳細を知りたいのだが、周囲を見る限りそんな余裕もなさそうだ。
「ウチも何かあったら全面的に協力をする───ってわけで、悪い…派手に動いて注目を浴びてるから一旦本部へ戻りたいんだけど…」
「判りました。直ぐに手配いたします」
 ガンマ団総帥が直ぐにこの場を去ってくれるということに安堵したのか、街警トップは背後に控えていた部下に指示を出す。部下は直ぐに無線でどこかへ連絡をしてくれたようであった。
 これで何とかなった、とシンタローと街警トップが共に胸を撫で下ろそうとしたときである。
 遠くの方から何か音がした。それはだんだんと近づいてきているようだ。一体何かと思えば音の正体はヘリコプターであった。
 もの凄い音を発しながら、シンタロー達の上空で止まる。
「ヘリなんか呼んだのか?」
「いえ、そんな指示は出していませんが…」
 二人揃ってヘリを見るやいなや、
「シンちゃんッ!!!パパだよ!!!助けに来たよ、マイハニー」
 ド派手なピンクのスーツで全身を包んだ男が、耳を疑いたくなるような台詞を叫んで上空から降ってきた、もとい、飛び降りてきた。そんな高さから飛び降りたら死ぬだろうという勢いで落下してきたマジックガンマ団前総帥は、落下地点に激突する前に眼魔砲を地面に向かって放ち、己の体をフワリと浮き上がらせると優美に着地した。
 マジックが目の前に現れるやいなや、シンタローは顔を引きつらせ街警トップは傾倒した。部下が慌ててその体を支える。だが、更に───。
「シンタローッ!!!」
 ヘリから下ろした梯子に掴まり、爆風を全身で浴びながらハリウッド映画の男優さながら美形の青年が、今正にヒロインを助けに来ましたといった風貌で現れたのだった。
 ヘリを可能な限り下降させると、そこから一気に飛び降りる。
 その一連の動作の格好良さと美しさと言ったら、その場にいた者の目を奪うのに充分だったのだが、激しく場違いなことこの上ない。
「シンちゃん!!大丈夫?!」
「シンタロー!!大丈夫か!?」
 口々に喚き立てる身内の暴走に、シンタローはブチ切れた。
「お前等まとめて逝きやがれェェーッ!!!!」
 ガンマ団新総帥の激しい怒声は、辺り一面にこだましたのであった。

 ガンマ団本部へ戻って、場所は総帥室。血塗れて汚れた服を着替えることもせずに、現総帥であるシンタローはドカリと席に座っていた。目の前にいる二人を嶮しい目で睨み付けると、激しい怒り声が響き渡る。
「何考えてんだよ!!」
「だってシンちゃんが怪我して血塗れだったって聞いたから、パパいてもたってもいられなくてね」
 すかさず反論してきたのは、シンタローのご立腹になれている父親のマジックであった。どれだけ嶮しい目で見られようと、怒声が響き渡ろうとも、全く気にしない父親マジックの精神的タフさは素晴らしいものがある。対するキンタローは黙ったままシンタローを見つめていた。
「あんな登場の仕方があるか!!一発で何処の誰だかバレルわッ!!」
「そんなこと考えている暇なんてないくらい心配したんだよ!!」
「嘘つけェェーッ」
 これが世界に畏怖されたガンマ団前総帥の所行かと疑いたくなる。考えている暇がなかったなんて、それがあの切れ者と言われた覇王が口にする言い訳かと言わずにはいられない。
「それにお前に何かあったら、グンちゃんも悲しむし、コタローが目を覚ましたとき、パパ何も言えなくなっちゃうよ…家族が悲しむ姿を見るなんて…そんなのパパは…」
 麗しい家族愛の台詞であるが、シンタローはそんなものに誤魔化されない。これこそシンタローの弱みにつけ込んで怒りを封じようとしているのであった。
「親父、お前「マイハニー」とか叫んでたよな?」
「パパの愛は昔から変わらないヨ」
 何愛だと突っ込む前に、怒りの頂点に達したシンタローは遠慮なく眼魔砲を放ったのであった。瓦礫に埋もれて逝ってしまえと思ったのだが、見事に避けられていたようで、横から声を掛けられる。
「あはは。シンちゃん、短気は損気だぞ!」
『ムカツクッ!!!!』
 どんどん顔が鬼の形相になっていくシンタローだった。
「キンタロー、お前も何で止めないで一緒になってきやがったッ」
「シンちゃん、最初に走り出しのはキンちゃんだよ」
「はあぁ?!お前が先陣切ったのかよ?!」
 黙ったままの半身に、シンタローは心底呆れた声を出した。ストッパーとなるはずの従兄弟が最初に走り出したら、後は続くのみとなる。これでは暴走が止まるわけない。
「お前を心配したからに決まっているだろう」
「そんなに俺は信用ないわけ?」
 シンタローはジィッとキンタローを睨み付けた。若干拗ねているような視線が含まれている。
「シンちゃん!!何?その目。パパと随分対応が違うと思うんだけど!!」
「ウルセー、黙れ」
 違った論点で横から喚き立てるマジックを一言で黙らせる。視線はキンタローへ向けたままだ。
「信用していないわけじゃない。お前の暴走は今に限ったことではないからな」
「暴走言うな」
「違わないだろう?ただ───血塗れはよくない…テレビ画面でお前の姿が一瞬映ったとき、俺は心臓が止まるかと思った…」
 キンタローは重々しく言葉を吐き出す。マジックのようなノリと違ってこのように真面目に切り返されるとシンタローは大人しくなってしまう。更に、キンタローは本当に思ったことしか言わないので、本心をこの様に言われるとばつが悪い。キンタローの言葉でシンタローの怒りの勢いが半減する。
「そりゃ…心配をかけたのは悪かったけど……って親父、何してる?」
「ん?シンちゃんメモ。キンちゃんみたいに対応すればシンちゃんは大人しくなるのかと思って」
 どこまでも場を台無しにしてくれるマジック前総帥であった。
 本日二発目の眼魔砲が盛大に放たれたが、またしもヒットはせずに涼しげな父親の顔を見る羽目になったシンタローであった。
「そこまで元気なら本当に大丈夫だね、シンちゃん。安心したよ」
 殺気立っている息子に穏やかな笑顔を向ける父親。これを大人の余裕と言っていいものか何なのか。
 だが、ここいらが潮時と思ったのか、マジックは今までと打って変わった真面目な口調で、
「シンタロー、お前は私が現役だったときと全く違うのだから、傍にいる者や待っている者へ心配をかけるようなことをするのはなるべく控えるようにしなさい」
と言ったのであった。突然の真面目な台詞にシンタローは言葉に詰まる。そんな息子にマジックはいつもと変わらない笑みを浮かべた。
「今日はシンちゃんの大好きなカレーを張り切って作っちゃうからね!それから、ちゃんと高松のところへ行って傷の手当はしておくんだよ」
 そうしてマジックは大人しく引き下がっていったのであった。
 無茶苦茶なように見えた一連の言動をまとめてみると、本当にシンタローのことを心配していただけということがよく判る。無事が判り、いつも通りシンタローだと納得すればきちんと引いていくのだ。
 何だか親に負けたような気持ちになったシンタローは、深い溜息をついてしまった。
「シンタロー…傷の手当だが…」
「ん?あぁ、今高松ンとこへ行くよ」
 そういって怠そうに席を立つ。
「違う。そうではなくて、俺が手当を…」
 キンタローの台詞にシンタローはピタっと止まった。そして半身の端正な顔を見つめたが、総帥室の扉へ向かって歩き出した。
「ヤだ。お前、俺の血ィ見ると興奮して食らいついてくるから」
 そう言ってベェっと舌を出すと、総帥室を出ていった。
 一人残されたキンタローは、シンタローが残していった台詞に思わず固まった。色々と反論の台詞が浮かんできたのだが、当の本人はもうここにはいない。
「何の話だ、シンタロー…」
 キンタローには該当する記憶がない。まだ、シンタローを殺そうと執拗に狙っていたときのことなのだろうか。あの時は確かにシンタローの血を見たがって追いかけ回していたような気はする。
 シンタローが残していった台詞をどう捉えればいいのかも全く判らず、そのまま暫く一人呆然と立ち尽くしたキンタローだ。暫く立ち尽くした後、どっと疲労が押し寄せてきたような気がしたのであった。

PR
BACK HOME NEXT
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
最新記事
as
(06/27)
p
(02/26)
pp
(02/26)
mm
(02/26)
s2
(02/26)
ブログ内検索
忍者ブログ // [PR]

template ゆきぱんだ  //  Copyright: ふらいんぐ All Rights Reserved