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 ある日の昼下がり、ドウッ!!とどこかで爆発音がし、続いてガラガラと何かが壊れる音がした。
研究室でバイオフラワーの実験を行っていた高松は、それを聞き、
「あぁ、またですか。確か、ここは完全防音のはずですがねぇ・・・」と言いながら、溜め息をついた。
 その後、しばらくすると、
「コンコン」と研究室のドアがノックされ、ヒョコッと新総帥が顔を出した。
「ドクター、キンタローとグンマしらねぇ?」
「キンタロー様は、急遽調べたいことが出来たということで、アメリカの国際図書館へ、グンマ様は、新作ロボットの部品をご自分で注文すると言って出かけられましたよ」
「ふーん、なら、いいんだわ。サンキュな」
そう言って、シンタローがドアを閉めようとすると、

~「シ、シンタローは―――――ん、待っておくれやす~~~・・・」

と、遠くの方から、アラシヤマの情けない声が、かすかに聞こえてきた。
「おや、今回はアラシヤマ君でしたか」
と、思わず高松が声をもらすと、
「あんだよ。『今回は』って」
と、少々気に障ったようで、シンタローはしかめっ面をした。
「まぁ、立ち話もなんですし、中へどうぞ」
そう言うと、シンタローは、いかにも渋々と言った様子で研究室に入ってきたので椅子を勧めた。
 とりあえず、高松は、コーヒーメーカーにコーヒーが残っていたのでマグカップに入れ、それをシンタローの前に置いた。
「長話するつもりはねぇけどヨ、『今回は』ってなんだよ」
「いえね、グンマ様が以前『新総帥がガンマ団内で眼魔砲を撃つ回数に関する研究』をされていて、その統計結果を先日私に見せて下さったのですが、前総帥と彼が同率1位だったので」
シンタローは、怒っていいのか、呆れていいのか分からないような顔をした。
「で、今回は何が原因だったんですか?」
「・・・・・・」
「あぁ、もしかしてアラシヤマ君が、シンタロー様にキスをして押し倒そうとしたとか?」
一瞬、何か言おうとして言葉に詰り、一気にシンタローの顔は赤くなり、その後青くなった。
「ば、バッカ、んなわけねぇだロ!!」
「おや、違いましたか」
高松が、空っとぼけると、
「まったくよぉ、どっからそんな考えが浮かんで来るんだか・・・。今回は、でっかいハート型のペンダントを押し付けられただけだ!ホラ、2つに割れてて、それぞれにお互いの名前が入ってるやつ。2つを合わせると、1つのハートができるアレ。もちろん受け取らなかったけどヨ」
それを聞いた高松は、(自分のことは棚に上げ)少々アラシヤマのセンスを疑った。
「・・・・・。(アラシヤマ君、それって通販で買ったんですかねぇ…)」

しばし、2人の間に沈黙が続いた。
「・・・あいつ、いつも友情、友情、って言葉にこだわるけどよ、わかんねぇのかな。言葉にしなくても普通、なんとなく分かるもんだろ?俺はあの島で、あいつ等と一緒に闘った時、少なくともあいつ等のこと仲間だって思ったのに」
「うーん、難しい問題ですねぇ。ところで、ガンマ団って、女性と接する機会がほぼ皆無ですしねぇ。彼、仕官学校時代はともかく、最近は、薄々自覚しちゃったんじゃないでしょうか」
「ハァ!?何言ってんだよ?」
「どうも、新総帥が考えていらっしゃる友情とは違う感情でしょうね。私がこれ以上言うと、彼にとって不本意かもしれませんが。まぁ、その感情が何であれ、あなたと一緒に居たいのではないでしょうか」
「ふーん・・・」
なんとなく釈然としないような顔をしながらも、シンタローはそれ以上何も言わなかった。
「まっ、新総帥も色々と気をつけてくださいね。(子どもの頃からマジック様の過剰な愛情表現に慣れていらっしゃるシンタロー様にとって、マジック様と愛情表現が似ているアラシヤマ君の行動は、そう的外れなアプローチではないと思いますし。それに、マーカーに育てられたアラシヤマ君は、いくらつれなくされても多少のことではあきらめないでしょうからね)」
「何に気をつけろってんだヨ」と、シンタローは高松を睨むと、
「ドクター、邪魔したな」
そう言って、新総帥は、バンッと音を立てて研究室のドアを閉め、部屋から出て行った。

「あぁ…、研究室のドアを閉めるときは静かに閉めてもらいたいものですねぇ。バイオフラワーに悪影響が出ちゃうじゃないですか」
高松は、溜め息をつき、自分もコーヒーメーカーからコーヒーをカップに入れると、煮詰まったコーヒーを不味そうに飲んだ。
「出来れば、不毛な多角関係の、愛憎渦巻く修羅場はあまり見たいものではないですが・・・」

ふと、新総帥のために入れたコーヒーを見ると、一口も飲まれてはいなかった。



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