「シンタローはん」
愛しい人を呼ぶ(自分の名を呼ぶその声が)
「あんだよ」
応えてくれる(気に入っている、と思う)
Nth Degree Of Hapiness
「シンタローはん」
「シンタローはん」
「シンタローはん」
「シンタローは・・・」
「だから何だよ」
先ほどから繰り返し繰り返し彼 アラシヤマの唇に乗せられている己が授かった己の名。
彼に名を呼ばれるのは嫌いではない。
本人には決して言わないが、むしろ好きの範囲に入るのだろう。
しかし物事には限度がある。
最初の内はしっかりと返事をしていた。
が。
「何でもおまへんよ」
帰って来るのはこれのみ。
いい加減に腹が立ってきた。
ガンマ団総帥に着任してからというもの、以前とは比べ物にならない程に丈夫になった堪忍袋がそろそ
ろ限界を見始めている。
「喧嘩売ってんなら買うぞコラ」
「いやどすなあ、わてがシンタローはんに勝てるわけありまへんよ」
当たり前だ、と思う。
こんなほにゃりと笑う男に負けてたまるものか。
「・・・・だったら何なんだよ、さっきから」
「幸せどすなあ」
「オイ」
脈絡がないだろう。
「たとえシンタローはんが、仕事が忙しゅうて全然会えへん恋人と折角一緒に居るのに
構ってくれなくても」
「・・・悪かったな」
けれど自分から行動に移した事など皆無に等しい。
いつも彼から行動するか、または促してくれるのだから。
今回もそれを待っていた。
今更自分からなんて、恥ずかしい事この上ない。
「だったらこれから構っておくれやすv
名前を呼んで反応があるだけで幸せ、やなあと」
「安い幸せだな」
半分以上本気でそう言う。
そんなのは共に居れば何時だって出来る。
当たり前の幸せ。
「そうどすなあ、せやけど安い幸せが大切だとわては思うんどす」
ふ、と目を細めて言葉を続けた。
「大きな幸せの前ではこんな些細な幸せは感じなくなってまう。
より大きな方に溺れてくんどすな」
まるで風の流れのようだ、と言ったのは誰だったか。
自分に他者を屠って生きる術を教えた師匠だっただろうか。
今となってはそれも遠すぎて分からない。
「それの何がいけないんだよ。人間がより良いモノを求めるのは当然だろ。
幸せでも、なんでも。
向上心を失ったらそれまでだ」
こんな風に当たり前だと、それが普通だと言える愛しい彼は、なんと暖かな処で生きてきたのか。
彼の父が何の汚いモノも見せないで育ててきたからか。
何の仇為すモノからも護って遠退けてきたからか。
「何もいけない事はありまへんよ。
ただ、無くした時の事を考えると堪らなくなるんどす。
大きなものに慣れてしもうたら小さなものは見え難うなるものでっしゃろ?
わてはそれが寂しゅうて仕方ないんどす」
きっと他の幸せなど見つけられないから。
見つけたくもないから。
「・・・・マジで何なんだよ、お前」
黙って俯いていた彼がポツリと呟いた。
自惚れではなく、自分でなければ聞き逃してしまいそうな。
「シンタローはん?」
少し戸惑いながら声を掛ける。此処でも名を呼ぶ。
途端、長い髪を瞬かせて顔を上げ、口を大きく開いた。
その大きさの口をそんなに大きく開けたりしたら、裂けてしまうんではないだろうか。
「この俺が一緒に居てやってんのに、ドコが小さいんだよこのボケッ!アホ!ふざけんな!」
興奮からか、込み上げてくるその感情からか。
彼の一族から見れば異端の黒眼が潤んで常より更に輝いていた。
「ああ・・・シンタローはん、泣かないでおくれやす。
誰もあんさんとおる事が小さいだなんて言っておりまへんがな。寧ろわいには大きすぎるわ。
頼んますから泣き止んでおくれやす。
あんさんが泣きよりますとわてまで悲しゅうなってきまんねん」
「泣いてねえ!それにお前の場合は自業自得だ!お前の所為なんだからな!!」
ぽたり、ぽたりと頬を伝って前総帥と同じ紅のブレザーに落ちる液体。
部屋の明かりに反射しては、きらきらきらきら。
「・・・・わての・・・・・・所為でっか?」
「他に誰が居んだよ!?」
「嬉しゅうおすなあ・・・」
「は・・・・!?」
精密な創りの顔が盛大に顰められ、此方を凝視する彼。
綺麗な顔をしているのに勿体無い、と思うものの、自分の発言を考えると仕方の無い事かもしれないと
も思う。
呆けだの阿呆だのと怒鳴られて嬉しいなどとのたまったのだから。
「好きな人が自分のした事で感情を返してくれはったら、嬉しゅうて、嬉しゅうて。
この気持ちを覚えておけば、シンタローはんに棄てられてもちょっとの間は生きていけます」
こうゆう事を自分の中に留めておきたい。
棄てられて、また独りになっても今度は生きていく自信はない。
師に教え込まれた術では、自分はもう生きてはいけない。
彼、という自分には過ぎた大きな幸せを覚えてしまったのだから。
だから自分は少しずつ昇華するのだ。
寒さに凍えて死にそうになったら思い出して。
総て昇華してしまったその時は、自分が死ぬ時。
「・・・棄てられたら死んじまうくらいの事、言えないのかよ」
腹の底が熱い。
胸の奥が、熱い。
目の前のにこやかに穏やかに笑っている男に体中が怒りを覚えている。
「そうなったら冗談抜きで死にとうなるんやろうけど、そしたらあんさんが気にしますえ?
死ぬ時は少し時期をずらそう思いましてなあ。
せやから大きなものだけやのうて小さなものも全部シンタローはんの事は覚えておきまんのや。
そうしたらシンタローはんを想いながら死ねるさかい。
そのくらいは、堪忍しれおくれやす?」
この男はどうして。
「アラシヤマ・・・・」
にこり。
子供のような無邪気な笑顔。
自分の前以外で彼のこんな表情は見た事がない。
「ほら、また一つ。
わて、シンタローはんの名前呼ぶのも、シンタローはんに名前呼ばれんのも好きなんどす。
棄てられてもうたらこんな事もでけへんさかい」
この男は本当にどうして。
自分が何時か彼の隣以外を望むと見当違いな未来を見ているのか。
「アラシヤマ」
今度は 自分から名を呼ぶ。
「はい」
嬉しそうに更に笑みを深くするその顔。
口には出さないが、こんなにも想っているのに伝わらないのがどうにも口惜しい。
「アラシヤマアラシヤマアラシヤマアラシヤマ!!」
「はい」
「自惚れんなよ、てめえ!」
「はい?」
ずっと微笑みに彩られた目と表情が変わったのを見た時のそれは歓喜。
彼のはにかんだ様な優しい表情は好きだが、あんな何もかもを悟って諦めたような笑みは要らない。
この自分が傍に居たいと思ってやっているのに何を諦める事があるのか。
「お前がその辺でのたれ死んで俺が気にするわきゃねーだろうが!」
「そうどすか?そないハッキリ言われますと傷つきますわあ」
「だから・・・だから、そんないつ来るか、来ないかもしれない可能性の未来の事なんか考えてんなよ。
つーかそんな暇あったら俺に棄てられないように努力してろよ。
そしたら棄てないでやらない事もねえ」
嘘だ。
何処かで自分が言う。
そんな事は言われないでも知っている。
自分が彼を離すわけがない。
そして死なせる事も。
「シンタローはん・・・・」
この人は。
「お前は先の事なんて気にしてねえで俺の有り難みを感じ入ってりゃいーんだよ」
そうして己だけを想え。
そう言っている。
「はあー・・・」
感嘆の息が漏れる。
この人はどうしてこんなにも自分を幸せにしてくれるのだろう。
繰り返し繰り返し。
あまりにも幸せをくれるものだから、己の中の容量をいつか超えてしまうのではないだろうか。
折角溜めた幸せが溢れ出て。
いつか自分はもっと、もっとと求めてしまうようになるかもしれない。
「あんだよ文句あんのかよ」
「いやあ、シンタローはんは亭主関白やなあと」
「お前がヘタレてっからだ」
「そうどすかぁ?せやったらこれから遠慮無く強気でいかせてもらいますえー」
だって解放を促したのは貴方。
我慢をするな。自分を求めろ。
そう言って扉をこじ開けた。
貴方の為に我侭は何時も自分の中に仕舞い込んでいたのに。
『貴方が欲しいんです。何時何時までも一緒にいたいんです』という想いと共に。
「あ゛?」
「可愛え可愛え恋人に、『自分だけを見てろ』言われて攻めなかったら男が廃るゆうもんでんなあ」
「言ってねえよンな事!!」
「よう覚悟しておいておくれやす」
「き・・・・っ聴けよ人の話!!!」
「あんまり叫びなはるとその口塞がせてもらいますえ?」
「・・・・・・・!(開き直ったヘタレはタチ悪ぃんだよチクショウ!」
終わりの時まで傍に立っていられるよう、精々悪足掻きさせていただくとしますえ。
往生してくれなはれ、シンタローはん?
初☆カップリング駄文です。
アラシヤマ×シンタローでお送りさせていただきましたv
ナニが書きたかったんでしょうね、私・・・・・・・・・・・・・・・。(遠目)
あ、公式の身長差なんて私の頭の中には存在してませんからv(死)
あと肌の色も。(笑)
シンタローはアラシヤマより背ぇ低いんですよ。
元は色白なんですよ。
笑って許して流してクダサイ・・・・。(汗)
そして正しい京都弁を教えてください。
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