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静まり返った空港、珍しく2人きりで、並んでソファに座っている。

数時間前に遅れると連絡があったきり、迎えの飛空艦からはなんの音沙汰もない。

「ちょっと休む」

ふいにそう小さく呟いて、多忙の新総帥はわずかに首を傾げ、目蓋を落とした。



思えば島から戻って以来、幾度となく同衾したにもかかわらず、ほとんど寝顔を拝んだことがないのだった。

改めて気付かされた悲しい事実にうっかり凹みかけて、すぐに、そんな場合じゃないと気持ちを立て直す。

なんたって。

今現在、つい肩先には、その稀少価値の魅惑的な寝顔、が。

寝息なんかも必然的に聞こえちゃったりして、むしろ聞き耳たてないわけがないって状況なわけで。

ごくり、と喉が鳴った。

こんな機会なのだから、どんなに見つめたって悪くはないはず。

常に存在を誇示している眉間の深い皺が消えると、外見に現れた4年という短くはない時間の経過が、妙に目立つ。

「働き過ぎやさかい、明らかに」

まあ、どんなにくたびれていようとも、愛しい(改めて言うと照れますなぁ・・)ことに代わりはないのだけれど。

(カメラ持ってへんのが悔やまれるわ)

試しに、ついと指を伸ばしてみる。

爪先に触れた漆黒の髪の、さらさらした感触に、胸が高鳴った。

一旦触れてしまえば、自然と身体は抗えない力で引き寄せられてしまうもの。

(さすがに・・それはあかんやろ・・とわかっていながらも押さえられないのが人の欲望)

少し痩せたような頬に手のひらを添え、おそるおそる撫でてみる。

起きない。

思いきって頬に口付けようとすれば、やはり悪い企みはそうそう成功しないということなのか、あと数センチの距離で突如、鋭い眼差しに射竦められて。

慌てて身を引こうとして、しかし、それを止めたのは。

「シ、・・シンタローはん・・?」

据わりきった眼の中に映る自分は、当然、怯えている。

しかし、妥当に眼魔砲、運がよければ鉄拳だと覚悟を決めるよりも早く、どっちにしろ予想を裏切る行動によって、思考は強制ストップをかけられた。

とりあえず、口唇を奪われて。

口内で舌が蠢いたりして。

そのまま体重をかけられて。

まだ熱烈なキスは続いて。

ぎゅうと抱きしめられて。

まだまだ熱烈なキスは続いて。

絡み合う視線。

惜しいことにゆっくり離れていく、未だ半開きの口唇が、とてつもなく艶かしい。

「・・アラシヤマ・・・・」

吐息混じりに囁かれ、うっとりと頷いてみせる、と。

「・・寝惚けた、わりぃ」

「はああいっ!?」

再び、なにごともなかったかのように元通りの体勢に戻られてしまえば、それ以上なにか言えるはずもない。

「・・なんや、めっちゃ複雑な気分どす・・シンタローはん・・・」
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