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A
珍しい類いの表情に感じられた。

落ち着いた、冷静な、と言えば聞こえはいいけれど、それよりは・・沈んだ、に近い。

しかし沈んだ表情にしては、苛立ちの色が目立ちすぎていた。

「総帥」

恐る恐るの呼びかけに対する反応は、まったくない。

代わりに、横にぴたりと張り付いていた人間が、その強張った肩を叩いて。

ようやく視線が交わった瞬間、複雑な表情の中に、小さな驚きが新たに浮かび上がった。

邪険にされるとわかりながらもわざわざ出迎えたのは、近日中にサインが必要な書類があるから。

・・という建て前の元、久々に本部に戻ってきた総帥の姿を拝める事実に感謝していた。

でも、喜んでいる場合じゃなく、こんなのは明らかに様子がおかしすぎる。

説明を求めるより早く、キンタローが口を開く。

「一時的な聴覚障害だ」

「・・・は?」

「突然、シンタローの横で爆発が起きた。怪我はなかったが、瞬時に聴力が低下した」

「・・そ、れ、大事ないんどすか」

「時間の経過と共に回復する、・・らしい」

なんで組織のトップがそんな目にあうのか、と言い募ろうとして、・・やめた。

本人よりもたぶん、きっと、狼狽しているのは周囲だ。

場が急に静まり返る。

「アラシヤマ」

時間にして数秒程度の、それでも十分重い沈黙を破ったのは、声量こそ大きいものの妙に張りのない、おかしな調子の自分の名前だった。

「はい」

聞こえないとわかっていても答えてしまうのは、条件反射としか言い様がない。

「・・ついて来い」

低く細い命令の、抜群の威力。
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