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朝まで共に過ごしたことはなかった。

お互いの立場上、というか、単に眠りから覚めた瞬間に顔を合わせるのが恥ずかしいとどこかで思っていたのかもしれないが、ことが終れば、何事もなかったような顔で宿舎に戻る。

打ち合わせたわけでもないのに、それが平素。

だから。

今朝は本当に、心から驚いたのだった。



指に触れる細い糸のような感触、に、ふと意識が浮上する。

寝起きはいいほうだと自負している。

それでも連日の重労働に瞼は重く、ゆるやかにではあるが覚醒した今でも、身体を動かすことは困難だ。

なんとか指先を動かして、布団をどかそう、と。

試みた瞬間肘にぶつかる、体温。

もちろん、経験から言っても記憶から言っても、ベッドに自分以外の人間などいるわけはない。

訝しんで、やっと、うっすら瞼を持ち上げて。

今度こそ、はっきり覚醒した。

思わず飛び起きて、壁にへばりついてしまう。

「シ、シンタローはん・・?」

肌の触れあう距離でシーツに顔を埋めて眠る、ガンマ団総帥。

指に絡んでいたのは、彼の艶やかに長い黒髪で、もちろんお互いに着衣は乱れまくっている。

というか、むしろ裸。

はっと思い当たる。

確かに昨夜、彼と同衾はしたけれど、・・自分の部屋に戻った記憶は、ない。

慌てて見渡せば、確かにここは、夜にしか訪れたことのない総帥のプライベートルームであった。

壁にかかった時計が正しければ、現在時刻は午前6時。

そう、2人ともしばらく休みさえ取れなかった職務で疲れていたし、そのうえ激しい運動までしたもんだから、すっかり寝入ってしまったらしい。

「・・朝から眼魔砲はキビしいですわ・・」

恐る恐る、視線を下ろす。

規則的な寝息は、とりあえずしばらくは止みそうにない、けれど。

「かと言って、このままなにも言わずに立ち去るのも・・」

小さな独り言は、建て前かもしれない。

本心では、初めて拝んだ寝顔から目を離したくない、というのが強くて。

「しかし、・・かわええどすなあ・・」

つい口に出した途端、いきなり腕を掴まれて引き寄せられ、シーツにしたたかに顔面をぶつける。

柔らかなシーツだから、そんなに痛くはない、けれど。

「・・アラシ、ヤマ?」

(お・・っ、起こして・・!?)

寝起き特有のぼんやりした声は、それでも低い。

眉間に皺を寄せて睨まれて、とりあえず謝ってしまおうと口を開く。

でも、謝罪は許されなかった。

「寒い」

する、と。

抱き込んだ腕に、顔がすり寄せられる。

「・・も、もしかして、寝ぼけてはるんでっしゃろか」

お咎めなし、への安堵のため息と同時に、馴染む体温に自分の顔が一気に高潮する音を、聞いた。
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俺の私室の空調は、常に快適であるように保たれている。
夏の暑い日も涼しいし、冬の寒い日も暖かい。

けれどその晩は、寝苦しさに目が覚めた。額を拭うと汗が纏わりつき、腕に触れる人肌が気持ち悪い。
……人肌?
「あ、起こしてしまいました?」
ベッドに入ったときは、確かに一人だった。主にアラシヤマ対策の防犯の為にしっかりと扉もロックした。
なのに、何で俺の隣にこいつがいる?
「すんまへんな、やっぱり視線感じはりました?」
笑いながら、さも当たり前のように俺の隣に陣取っているアラシヤマを睨み付けてやると、照れたように
「静かに寝顔を眺めとったんどすけど」
と、気色悪く頬を染めて俯いた。

窓を開けて、風を肺に飲み込む。
部屋の中の蒸し暑さが少しずつ流れ出て、代わりに冷たい空気が入ってくる。
「寝てる間までクーラーつけとったら、風邪引きますやろ。とっくに消しましたわ」
「そうじゃなくて」
窓枠に体を預けて、そのまま言葉を返す。
「まず何でお前がここにいるかが問題なんだよ」
動くのも面倒くさい。追い出すのも面倒くさい。眼魔砲も面倒くさい。
何もかもが面倒くさくて、アラシヤマとの会話を続けた。
先刻ちらりと見たら、ベッドの上で俺の枕を抱えて座って上目遣いでこちらを伺っている様子が気持ち悪かったので、視界に入れないようにしながらだが。
「シンタローはんに添い寝しとォて…」
「…だからそうじゃなくてだな」
会話が通じない。何故この部屋のカードキーを持っているのか問い質そうかとも思ったが、無駄な会話をするのも面倒くさくなって、口を閉じた。鍵は明日付け替えよう。
部屋の暑さが、行動力を奪う。あの島とは違う不快な暑さが。
「……あーッちい…汗かいちまったぜ」
窓の外へ胸から上を投げ出すようにうな垂れてた俺の体に、アラシヤマの重さが圧し掛かる。
「後で、シャワーでも浴びればええでっしゃろ」
その言葉の、「後で」に含まれた意味に少し眉を顰めたが、抗う気も起きなかった。

全ては、この暑さのせいだ。


(04/07/29)



全てが欲しい。身体も心もなにもかも。
爪先も瞳も唾液も腰も唇も肩も指も喉も血液も背も首筋も
胸板も骨も心臓も脳も髪の一筋も誰にも触れさせたくない。
愛も憎しみも怒りも悲しみも全部自分に向けて欲しい。
自分を全部捧げる代わりに、全部が欲しい。
そのためにはどうしたらいい?どこか薄暗い牢獄に閉じ込めて愛し続ければいい?
……そんな立場に甘んじる人でないことは知っている。
けれど、抵抗するならばその腕を落としてしまえばいいだけ。
逃げ出すならばその足をもいでしまえばいい。

──あまりにも醜い独占欲。
闇のようなそれに、ずぶずぶと沈むように冒されていく。


「……アラシヤマ?」
かけられた凛とした声に、意識が急速に現実に引き戻された。
闇から、引き上げられる。
ハッとして上げた顔を怪訝そうに覗き込まれて、鼓動が高鳴る。
「なにぼーっとしてんだよ」
愛しく甘い声に精神が安定していく。
…静かに、欲望が鎌首を擡げた。
彼を獲物を捉えた左目で見つめて、微笑んでみせる。
「何でもあらしまへんえ」


頭の中でその工程を描くだけで満足できるうちは、何もしはしない。
狩りにはまず、その距離を悟られないように縮めることから始めて、
闇の中から様子を窺いつつチャンスを待たなければ。
ようやく肩をならべてくれるようになったあなたを逃したくはない。
絶対に逃がしたりはしない。


アラシヤマを闇に落とすのはシンタローだ。
けれど闇から救い出すのもまた、シンタローしかいない。


(04/10/25)

ass

気に食わない。
まず、彼の態度。自分が強いことが、さも当たり前のような。
それに、彼の目つき。意志の強い黒い瞳が、全てを拒んでいて。
けれど、適当に人当たりが良くて。
総帥の息子だという立場も手伝って、彼を慕う奴や彼に取り入ろうとする奴にいつも囲まれていた。

どんなに努力しても、彼には勝つことができない。
いつかはきっと、彼が総帥の座に着き、そして自分はその下で働くことになるのだろう。もしも自分が彼を超えられたとしても、彼が総帥の息子であることには変わりないのだから。


(…あないに取り巻きはべらせて、笑顔振りまきはって)
遠目に、一団をちらりと見た。
訓練終了後、いつものように他愛の無い会話を口にする彼ら。
(やかましいわ…静かに生きれんのかいなアイツらは)
彼の笑顔が、知らぬ間に心の底の炎を燃やす。それは酷く嗜虐的で、師が時々自分を見る瞳の中に覗かせていた感情に近いものだ。
(……殺したい)
あの時のように、今度は意思と殺意を持って彼を燃やしたい。
そんなに火力は強くなくてもいい。じわじわと嬲り炙る。
悲鳴を上げるだろうか?父親に助けを求めるだろうか?許しを乞うだろうか?
薄く、口元に笑みを浮かべて、ハッと意識が現実に引き戻される。彼の黒い瞳が、人ごみの中からこちらを射抜いていた。
慌てて目を逸らすと、向こうも何事も無かったかのように視線を逸らす。
「どしたべ?シンタローさん」
「あァ、なんでもねー」
またざわめきの中に埋もれる彼の姿。
鼓動が、やけに高鳴っていた。


いつからか、何度も思い描いていた姿。
怯える彼の制服を焼き、肌に火傷の痕を残し、足を開かせて、犯す。涙を流し、総帥の名を呼び、助けを求め許しを乞って歪める顔を、白く精液で汚す。快感を覆い消し去るほどの痛みに、また涙を流す彼に罵声を浴びせて。両手で首を絞めながら、彼の体を焼いて、水分を失いながら果てていく体の中に欲望を放つ。
そんな叶わない──今のところ実行する気もない妄想を浮かべて、性器を扱く。
左掌に吐き出された熱に、熱い吐息を漏らして、ティッシュ・ボックスに右手を伸ばす。シーツにも、白い飛沫が飛んでいた。洗わなくてはならないだろう。
殺意は、それに似た熱い暴力的な感情に変わり、その炎は心を焦がした。
師にあれだけ、如何なるときも冷静であれと言われていた筈だが、絶対である筈のその言葉は薄れ、熱情が己を突き動かす。
強くなるということに、初めて、理由が生まれた。
(シンタロー、あんさんは)
戦場で生き残る以外の理由が。
(わてが殺したるわ)


慌てるように、足早に去る複数の人影を見た。
上級生だろうか…見覚えが無い、否、覚える必要も無いと思っていただろう雑魚が6人。ニヤニヤと下卑た笑いを浮かべて、士官学校の廊下を歩くそいつらが、ふと目に付いた。
普段より幾分潜められている様な会話の中に、「シンタロー」の名を聞きつけて。
(…陰口にしちゃあ、随分と楽しそうなこって)
彼等が現れた廊下の角を曲がり、普段使われていない薄汚れた倉庫に向かう。使い古されたトレーニングマシーンが埃を被って転がっているこの倉庫は、この人の多いガンマ団士官学校の数箇所ある一人きりになれるスポットのひとつで、その薄暗さがアラシヤマにとって居心地がよく、とても落ち着く場所だった。
その扉は珍しく開いており、来訪者がいるのかと軽く舌打ちする。
そっと隙間から中を覗くと、ぼんやりと窓からの小さな光の筋に照らされて、人影が見えた。
──彼だった。座り込んだまま、肌蹴た制服を手繰り寄せ、何か小さく呟いている。
「俺は、負けられない、泣けない、強くなければならない」
外気に触れている肌には、大小様々な打撲の痕や、切り傷、煙草か何かを押し付けられたのだろう小さな火傷の痕。
「俺は、親父の──マジックの息子だ」
それは、幾度も屈服させたいと夢見た彼の、自分以外のものに暴行を受けた姿。
「俺は……俺はッ」
彼は、放心しているのかと思えば、瞳はいつものように強く輝いていて。けれど、肩が小さく震えていた。
ふっと、彼が視線を上げてこちらを、見る。
「…誰だッ!!?」
声を上げられたのと同時に、地を蹴って、走る。
何を逃げることがあるのだろう、と疑問にも思ったが、一度駆け出した足を止める理由にはならない。数分走って、やっと立ち止まる。別に、追ってはこないだろうけれど、それでも周囲の視線が気になって、周りを見回した。


今、自分はどんな顔をしているだろう?
殺したいとも、犯したいとも思えなかった。
ただ、声をかけてやりたかった。何を言うかなんて、思いつきもしないのに。
どんな顔で、そんな阿呆らしい事を考えているのだろう?

鼓動が高鳴る。短い距離ではあるが全力疾走をしたせいだろうか。
アラシヤマの複雑な心中は置いてけぼりに、士官学校の陽は沈んでいくところだった。


(04/07/14)


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どうにも俺は、泣き落としというものに弱いらしい。
コイツが柄にもなく弱気な表情でしがみ付いてきやがるから、どうにも振り払うタイミングも逃し、俺の胸でいきなり泣き出したアラシヤマを、どうすることもできずに見下ろしている。
「…シンタローはん、わては、わては」
苦しそうなくらい表情を歪めて、俺を見上げる。
いつもみたいに強気なアラシヤマなら簡単にあしらえるのに、こんなツラされちゃ誰だって怯むだろ。
「わては、あんさんを憎んどるのかもしれへん」
言葉を紡ぐことすら辛いのか、自分の気持ちを口に出すだけで傷付いているような、そんな表情で必死に俺に縋りつく。
「そないなことあらへんって、どないしたら証明できるん?」
辛そうに、それでも目線を逸らすことだけはせずに向けられる瞳が痛々しい。
人を殺すときだってこんな顔はしないくせに、なんてそんなことばかり目に付いてしまう。
「結局、昔の、あんさんを憎んどったときと何ひとつ変わってへんのどす」
そんな風に言いながら、何を死に物狂いになってるんだ?
俺の軍服を跡が残りそうなくらいに握り締めて、俺が逃げないように、自分が逃げ出さないように?
「せや、まず愛情と憎悪の差ァが分からへんのや。わてのこの誰より強い想いはどちらなん?
 どっちも他人に強く執着して…わてのこの想いはどっちなのか分からなくなってもうたんや」
他人とのコミュニケーション能力が欠如したコイツには、そんなことも理解できないらしい。道徳やら倫理やらなんてガンマ団の士官学校では教えないし、それ以前にもそんなことを教わる機会もなかったんだろう。
「…わてはずっとあんさんを愛しとるつもりやった。せやけどほんまは憎んどったんやろか」
別段俺の返事を待っている訳でもなく、ただ自分の心情を吐露したいだけのようなので何も答えず、ただじっと見詰めてやる。意外と冷静なのか燃え上がる様子もない。
「全部復讐やったんやろか…あんさんの優しさに付け入って、縛り付けて…」
瞳が、揺らいでいる。
情けなく涙を零して、鼻を啜り上げて、それでも真直ぐ俺を見上げて。
「ひとの感情の中で一番強いのは憎悪でっしゃろ? わてのこれもそうなんやろか」
自分に対しての哀しみなのか、俺に対しての哀れみなのか、悲しそうに俺を掴む。目も逸らせないし手も振り払えず、何も言えず、俺は掴まれるがままだ。
「ずっとずっとあんさんを苦しめる為に抱いとったんやったら…わては」
──そんな訳ないだろ。
「わてのこのどうしようもない殺意はなんなんでっしゃろ」
──それは只の、行き過ぎた独占欲だ。
「やっぱり、わてはあんさんのこと嫌いなままやったんやろか」
──あんなに嬉しそうに笑いかけといて、本当にそう思うのかよ。
「愛しさも憎しみも、あんさんが教えてくれはってん…今の気持ちは、どっちなんやろか」
──本当は、そんな答えなんかとっくに分かってるんだろう?
何かを言う気も起きずに、ただ心の中で答えを言う。
そっと背に腕を回して、軽く抱き締めてやれば、腕の中に納まったアラシヤマの体がびくりと強張る。
「…なして、そない優しいんどすの…わては、あんさんをきっと」
どうせ誰かの胸で泣いたこともないんだろう。
仕方なしに俺の胸を貸してやってるんだから、素直に泣いておけばいいのに。
「きっと……憎んどるのに」
耐え切れなくなったのか、そのまま俯いて、俺の胸元に顔を押し付けてしゃくりあげる。
俺はといえば、自分の中で出る結論を無視して、俺の答えを待つコイツの言葉なんか聞きたくもなくて、ただアラシヤマの髪の流れを眺めてみたりしながら、
──それくらい自分で考えろよ。いくらでも待っててやるから。
そんな優しい言葉をかけてやりたくもなくて、目線で訴えてみたりしていた。



(05/03/28)

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