「シンタローはん、わての命に重さを与えとくれやす」
直接総帥に差し出した報告書の端を掴んだまま、アラシヤマはそう言った。
いつもの事だが意味の分からない突飛な言動に、シンタローは受け取って掴んだ紙束の反対側を掴んだまま、眉を顰める。
「わてな、昔から思ってましてん…ひとって簡単にくたばりますやろ?
そないなんばかり見てると、わての命の重さも分からなくなってしまうんや」
ぐ、と力を篭めてアラシヤマが報告書を引っ張ってやると、シンタローは簡単に姿勢をよろめかせて、二人の顔が急激に距離を失い、目を細めて笑ったままアラシヤマは言葉を続けた。
「…せやけど、あんさん無事に帰って来いと言いはっとるやろ。
わてにはあんさんの任務よりわての命の方が軽う思えるんどす」
シンタローが一歩踏み出た足で堪え、また少しだけ距離を取り戻す。
アラシヤマはただ、真直ぐにシンタローに言葉を投げかけるだけで、それ以上何もしようとはしない。
「せやから…あんさんの言わはる様に、無事帰ってくるだけの理由が欲しいんどすわ」
──どうにも、コイツの視線は強すぎる。
普段人の目を見ようとしない男の視線から軽く目を逸らしてみれば、いつのまにか活字の並ぶ紙束はシンタローだけが掴んでいて、それに気が付いたとき、アラシヤマの指が顎に添えられ目線を合わせられた。
「わての命、重うしてくれへんやろか」
仕方なしにシンタローも強く視線を向け、部下に対するときのように強く自信のある声色で答えた。
「テメェがくたばればそんだけ団の戦力も減るし、任務失敗すりゃ最終的に俺にまでしわ寄せがくるんだよ」
やっとシンタローが笑顔を見せ──とは言ってもアラシヤマがシンタローに向けるような甘いものではなく、強気な俺様のそれで──それと同じく強さを帯びた声にアラシヤマはただ聞き入り、どこか蕩けた視線を見せる。
「……俺の為に、死ぬな。」
欲しかった単語の欠片もなかったその言葉の、〝俺の為に〟の響きに酔いながら、アラシヤマは深く頷いた。
(05/04/07)
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「──で。」
目の前には、茶化すこともできぬ程怒りを浮かべた笑顔の愛しい人。
「これで何度目だか分かるかな?アラシヤマ君?」
優しい口調が怖い。目も笑っていない。口の端だけを歪めてはいるものの、額に青筋が浮かんでいる。
「……四回目、どす」
ぼそりと呟くと、
「そう、四回目」
笑顔で、肩に手を置かれた。
「仏の顔も三度までって言うよな?」
「誰が仏や」というツッコミが出かけたが、喉の奥に飲み込む。
ガンマ団の制服の上から置かれた指が、肩に食い込む。
普段彼から触れてくれることなど殆どなく、喜んで抱きしめたいところだが、それを今やったら多分もう口もきいてくれなくなるだろう。
「コレ、どう責任取るつもりなのかな?」
筋肉のついた、逞しい体。その胸元の赤い痕。
それを指差して、頬の引きつった笑顔を浮かべた。
27. 炎
熱く、重く、長いアタックが実を結び、少しずつ心が開かれたらしい。
視線を向けても文句を言われない。傍にいても怒られない。
会うたびに囁く愛の言葉にも、照れたように顔を逸らす。
ついには、キスしても眼魔砲で吹き飛ばされないまでの進展を見せた。
私室に押しかけ、少しの会話の後にベッドに押し倒し、それでも眼魔砲も鉄拳もくらうこともなく、少しの罵声の後に目を逸らされたところで、耳まで真っ赤に染める姿が愛しくて、理性が飛びそうな位鼓動が高まり──
──発火した。
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリ、ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ
ガンマ団本部にその音はけたたましく鳴り響き、一室でスプリンクラーが作動した。
シンタロー総帥の私室に備え付けの電話に、内線が入る。
降り注ぐ水を受けながらコードレスの受話器を取り、慌てた様子の団員に軽く返事をする。
「ああ、ちょっとした小火。もう消えたから報知器もスプリンクラーも止めていいぜ」
悪いな、と告げ受話器を置いて、振り向けばそこには、水びたしの室内、焦げた白いシーツ、部屋の真中で正座して俯く男の姿。
「悪いのはお前なんだけどな?」
少し間をおいて、水が止まった。
最初は一週間前、二人きりの会話にドキドキして発火。カーペットの一部を燃やす。
二回目は三日前、髪をかきあげる仕草に欲情。執務室に置いてあった書類数枚が燃える。
三回目は昨日、髪の一総にキスしてシンタローの髪を一部焦がす。
そして四回目。シーツが焦げてベッドが一部炭に変わり、触れていたシンタローの胸元に火傷を負わせた。
「お前、いいかげんにしろよ」
鼻と鼻が触れそうなくらいに近付かれて、また自らの中で高ぶる炎を感じてそれを押さえつける。
「触れられる度に燃えられちゃァ、こっちの身が持たねーんだよ」
「けど」
目を合わせられないまま、反論を試み、口を開いた。
「生まれ持った体質どすから…」
「だったら」
「俺に触れるな近付くな」
照れ隠しでもなんでもなく、本当に怒っているのは火を見るより明らかだ。
──アラシヤマにとっての一番の障害は、自分自身の中にあることを自覚することになってしまった。
(04/06/24)
目の前には、茶化すこともできぬ程怒りを浮かべた笑顔の愛しい人。
「これで何度目だか分かるかな?アラシヤマ君?」
優しい口調が怖い。目も笑っていない。口の端だけを歪めてはいるものの、額に青筋が浮かんでいる。
「……四回目、どす」
ぼそりと呟くと、
「そう、四回目」
笑顔で、肩に手を置かれた。
「仏の顔も三度までって言うよな?」
「誰が仏や」というツッコミが出かけたが、喉の奥に飲み込む。
ガンマ団の制服の上から置かれた指が、肩に食い込む。
普段彼から触れてくれることなど殆どなく、喜んで抱きしめたいところだが、それを今やったら多分もう口もきいてくれなくなるだろう。
「コレ、どう責任取るつもりなのかな?」
筋肉のついた、逞しい体。その胸元の赤い痕。
それを指差して、頬の引きつった笑顔を浮かべた。
27. 炎
熱く、重く、長いアタックが実を結び、少しずつ心が開かれたらしい。
視線を向けても文句を言われない。傍にいても怒られない。
会うたびに囁く愛の言葉にも、照れたように顔を逸らす。
ついには、キスしても眼魔砲で吹き飛ばされないまでの進展を見せた。
私室に押しかけ、少しの会話の後にベッドに押し倒し、それでも眼魔砲も鉄拳もくらうこともなく、少しの罵声の後に目を逸らされたところで、耳まで真っ赤に染める姿が愛しくて、理性が飛びそうな位鼓動が高まり──
──発火した。
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリ、ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ
ガンマ団本部にその音はけたたましく鳴り響き、一室でスプリンクラーが作動した。
シンタロー総帥の私室に備え付けの電話に、内線が入る。
降り注ぐ水を受けながらコードレスの受話器を取り、慌てた様子の団員に軽く返事をする。
「ああ、ちょっとした小火。もう消えたから報知器もスプリンクラーも止めていいぜ」
悪いな、と告げ受話器を置いて、振り向けばそこには、水びたしの室内、焦げた白いシーツ、部屋の真中で正座して俯く男の姿。
「悪いのはお前なんだけどな?」
少し間をおいて、水が止まった。
最初は一週間前、二人きりの会話にドキドキして発火。カーペットの一部を燃やす。
二回目は三日前、髪をかきあげる仕草に欲情。執務室に置いてあった書類数枚が燃える。
三回目は昨日、髪の一総にキスしてシンタローの髪を一部焦がす。
そして四回目。シーツが焦げてベッドが一部炭に変わり、触れていたシンタローの胸元に火傷を負わせた。
「お前、いいかげんにしろよ」
鼻と鼻が触れそうなくらいに近付かれて、また自らの中で高ぶる炎を感じてそれを押さえつける。
「触れられる度に燃えられちゃァ、こっちの身が持たねーんだよ」
「けど」
目を合わせられないまま、反論を試み、口を開いた。
「生まれ持った体質どすから…」
「だったら」
「俺に触れるな近付くな」
照れ隠しでもなんでもなく、本当に怒っているのは火を見るより明らかだ。
──アラシヤマにとっての一番の障害は、自分自身の中にあることを自覚することになってしまった。
(04/06/24)
小さく音を立てて扉が閉まれば、部屋はまた元の暗さを取り戻す。
そのまま電気も点けずに革靴を脱いで、奥の部屋へと手探りで転がるように駆け込んだ。
アラシヤマに宛がわれた部屋は二間にキッチン、バストイレ付きで、それは団員の中でも優遇された環境だ。
その二つの部屋の奥の方、寝室として使っている六畳ほどの部屋のガンマ団開発のOSの入ったパソコンは、電源を入れればすぐに起動が完了する。ぼんやりとデスクトップ・ウィンドウに照らされて、壁一面に元の壁紙が見えないほどの数の写真が浮かんだ。
「…只今無事に帰りましたえ、シンタローはん」
一枚一枚に写る、それぞれの〝シンタロー〟にゆっくりと視線を向けて、嬉しそうに呟く。
マウスでカーソルを動かして目的のフォルダを開き、ダブルクリックすると、一秒程間を置いて音声が流れる。
「……アラシヤマ」
かちり、とまた別のファイルをいくつも開く。
「アラシヤマ」
「…アラシ、ヤマ…」
鼓膜を震わす愛しい声に熱い吐息を漏らして、それと同時に床の上に崩れ落ちる。
パソコンからは同じテンポで同じ声が、延々とアラシヤマを呼んでいた。
「アラシヤマ」
「シンタローはん」
「アラシヤマ」
「シンタローはん」
「アラシヤマ」
「シンタローはん…」
「アラシヤマ」
「アラシヤマ」
「アラシヤマ」
それに答えるようにぼんやりと声を返しながら、改めて部屋中を見渡す。
殆どの写真は横顔で、時折上からだったり下からだったり、怒っていたり笑っていたり、どれも目線はこちらに向いていない。
「……そろそろ、写真も張替え時どすなァ」
ふらふらと疲れきった体でまた立ち上がり、大きなアルバムを棚からいくつか取り出す。
青白い光に照らされたアラシヤマの顔はずっと穏やかに微笑んだままで、スピーカーから零れ続けるBGMを聞きながら、これはちと遠すぎるだとか、この目線が艶やかやだとか、独り言を呟きながら写真を選ぶ。
選り分けた写真の山の中に、一枚だけ真直ぐ視線を投げかけ、微笑むシンタローの姿があった。誰かと一緒に写っていた写真を失敬したもので、それを壊れ物でも扱うように優しく手に取る。
自分の名を呼ぶ声に優しくもう一度答えて、その笑顔をじっと見詰めた。
「…こないな、インクの配列やのうて」
座り込んだまま、何度も何度も繰り返し再生される声を眺めるように、光源へと視線を向ける。
「電子音でものうて」
ゆっくりと、もう一度部屋中に広がる〝シンタロー〟を見回す。
「生身の、シンタローはんが」
一本の細く黒い煙が、天井へと昇る。それが視界の隅に映り、アラシヤマは手元の写真に火が点き始めていたことにようやく気がついた。
「……あかん。気ィついたら部屋全焼なんて洒落にならんわ」
橙や黄や赤が、隅から侵食を始め、少しずつシンタローに近付いていく。
「わてはシンタローはんの一番使えるシンタローはんに一番近いシンタローはんに一番大事にされとる部下なんや…問題起こす訳にはいかへん」
ぱらぱらと墨と化した、シンタローの隣に写っていた人物の肩が床へ落ちていく。
「…シンタローはんに触れたい」
炎に嬲られるシンタローの笑顔にそっと口付けて、その唇の纏う火によって写真は燃え尽き崩れてしまった。
「アラシヤマ」
「アラシヤマ」
「アラシヤマ」
シンタローの、アラシヤマを呼ぶ──二ヶ月程前に、無理難題を押し付けようとしたときの──甘い声が、仄暗い空間に充満する。
アラシヤマは、一番求めているものの形を暗闇に投影して、その輪郭線を指先でなぞりながら、もう一度その声に答えた。
「シンタローはん」
(05/04/17)
「…と、こないなもんやろか」
すっかり戦意を喪失した、この国をつい先程まで治めていた男を見下ろして、アラシヤマは安堵の溜息を漏らす。今回の任務は元々彼の担当するエリア外の国でのことだが、侵略先の公用語が話せる幹部、ということでアラシヤマが派遣され、現在に至る。先発部隊を突入させ、その隙に上層部に侵入する後発の部隊の中に彼はいた。
降伏声明は公式に発表させたし、殺し屋軍団ではなくなったガンマ団の仕事は──アラシヤマに課せられた任務は、これで終わりだ。
褒めてくれまではしないだろうが、報告をすれば少しくらい笑顔を見せて貰えるかもしれない、と愛しい人を思い浮かべ、帰艦する為に足元の男に背を向ける。
その瞬間、衝撃と熱と乾いた破裂音がアラシヤマの左腕を掠めた。振り返ればだらしなく腰を抜かしたままの男が銃口をこちらへ向け、引き攣った笑顔で笑い声になりかけたものを口から漏らしていた。
〝この期に及んで、まだ足掻きはるん?〟
アラシヤマがこの国の言葉で、そう呟く。
軽く男の手元を指差してやると、一瞬火花が散り、男は熱さに拳銃を手放す。地に落ちたそれを軽く蹴飛ばして、アラシヤマが嗤った。
〝負け犬が必死にならはったところで、今更何や守るもんでもあるんどすか?〟
可笑しそうにアラシヤマが言うと、直後通信機からノイズ混じりに暗号で先程の銃声はどうしたか訪ねられ、小さく暗号でなんでもない、と返し、再び戦意を失い青ざめた男と視線を合わせるためにしゃがみ込んだ。
〝負けて、あんさんのしょうもないプライドも折れて、それで何をしはるて?〟
細めた右目が長い前髪の合間から覗いて、両目で射抜くように視線を向ける。
〝…無様どすなァ。わてやったら自爆してでも相手を巻き込むか、若しくは舌を噛んで自ら死にますえ〟
指先に炎を灯し、それでそっと男の服に触れた。ちりちりと焦げ、小さく煙を上げる。
〝今からでもそうしなはれ。後で後悔しとぉあらへんのやったら〟
指先が、喉元へと伸びる。触れたくもないので撫でるだけだが、それは十分な熱を持っていて、ひ、という音がその喉から漏れた。影を帯びた笑顔が、一層負の感情を纏う。
──楽しゅうて、仕方あらへんわ
そうアラシヤマが心中で呟いたとき、それを遮るように背後の木製のドアが大きな音を立てて開かれた。
アラシヤマがゆっくり視線を向ければ、そこにはシンタローが右手で扉を開き左手に眼魔砲を構えて息を切らしていて、丁度アラシヤマと目線がかち合う。
「殺すなよ」
「……殺さへんて。ちぃと仕置いとっただけどすわ」
水気を切るように手を振って炎を消して、男の腕を後ろへ捻り上げながら、アラシヤマはとぼけた笑みで言葉を返す。シンタローの掌の光球も空気に溶け、消えた。
「それより、もうそちらは終わりはったんどすの? こない早ぉ来てくれはるやなんて」
「俺が来なかったら、お前何する気だった?」
返された言葉を遮るように言えば、さも不思議そうな表情を作ってみせるアラシヤマに、シンタローは眉を顰める。アラシヤマは他人との距離を置くことになれているせいか、とぼけることだけは知っている──そうシンタローは認識していて、実際何かを誤魔化そうとするとき、アラシヤマはよく笑うのだ。
「知ってんだろ、今のガンマ団の方針。昔のやり方は通用しねェんだよ」
困惑気味に、それでもシンタローとの会話が嬉しいのが笑んだまま、アラシヤマは用意してあったロープで男を強めに縛り上げる。男が自国語で何やら喚くが、シンタローにはその意味は解らなかった。
「せやから、ちぃと仕置いとっただけやて。せやかてコイツにわて、何て言われたと思います?
〝ガンマ団はこんな化物まで作り上げていたのか〟やて。わて生体兵器扱いどすえ」
確かにそうも言われはしたが大して気にしてはいないのに、理由をでっちあげてシンタローに告げてみれば、シンタローはそれに、あからさまに辛そうに顔を歪める。
「そら怒ってもしゃあないでっしゃろ? それでもわて、殺さへんかったどすえ」
「…………それは」
「それより、ここでの仕事は終わりましたさかい、人呼んでわてらは帰艦せな」
腰を上げ、軍服に付いた埃をぱんぱんと払って、アラシヤマが自分の腕の傷をやっと思い出したかのようにそこに視線を向けた。
「…それに、傷負うてもうたんや。シンタローはんが治療してくれはると嬉しいなーなんて」
「そんだけ言えりゃ今すぐの処置は必要ねーだろ」
やっとシンタローが唇の端を吊り上げ、軽く笑ってみせる。
日本語が理解できないらしく、転がされたままの男が不安気に二人を眺めていて、それが視界に入りアラシヤマはそちらに向けて笑顔を作ってやった。
〝──確かに化物かもしれへんわ。
人間のふりをしてガンマ団に混じり、ただ一人につけいるために、何もかも燃やしてきたんやさかい〟
小さく何かを語りかけたアラシヤマに、通信機で連絡を取っていたシンタローが何事かと目線をやると、アラシヤマは何でもない、と手を振ってみせた。
(05/04/03)
わての事、好きって言うて」
そないな言葉で甘やかされるんやったら、わてはあんさんの奴隷になります。
「はァ?」
あんさんの為やったら、何でもします。
「嘘でも、ええから」
誰でも殺せますし、誰でも抱けますし、誰にでも抱かれたってええ。
「…お前、それで満足なのかよ」
何やったらあんさんに殺されたってええし、あんさんを殺す事だってできます。
「あんさんの気持ちが本気か嘘かなんて、あんさんにしかわからしまへんやろ?
せやったら、嘘でもホンマでもわてには変わりあらへん」
せやから時々、叫ばなくてええから、囁いて。
「安い想いだな」
愛してるなんて言わなくてええから、好きや言うて。
「だったら言ってやるよ。好きだぜ、アラシヤマ」
最期の時まで、囁いておくれやす。
23. 甘やかして
「わての事、好きって言うて」
いきなり、何を言い出すんだこの馬鹿は。
「はァ?」
わけわかんねェよ。あくまで、友達で、親友で、それ以上じゃねーだろ。
「嘘でも、ええから」
俺はお前なんか嫌いなんだよ。わかんねーんだろうけどさ。
「…お前、それで満足なのかよ」
俺がお前のどこが嫌いなのかなんて、考えたこともないんだろ?
「あんさんの気持ちが本気か嘘かなんて、あんさんにしかわからしまへんやろ?
せやったら、嘘でもホンマでもわてには変わりあらへん」
俺の事を考えないこと、自己中なこと、時々、そんな表情をすること。
「安い想いだな」
どこを取っても嫌いなんだよ、お前のことは。
「だったら言ってやるよ。好きだぜ、アラシヤマ」
しょーがねーからせめて最期の時まで、いくらでも利用してやるよ。
そないな言葉で甘やかされるんやったら、わてはあんさんの奴隷になります。
「はァ?」
あんさんの為やったら、何でもします。
「嘘でも、ええから」
誰でも殺せますし、誰でも抱けますし、誰にでも抱かれたってええ。
「…お前、それで満足なのかよ」
何やったらあんさんに殺されたってええし、あんさんを殺す事だってできます。
「あんさんの気持ちが本気か嘘かなんて、あんさんにしかわからしまへんやろ?
せやったら、嘘でもホンマでもわてには変わりあらへん」
せやから時々、叫ばなくてええから、囁いて。
「安い想いだな」
愛してるなんて言わなくてええから、好きや言うて。
「だったら言ってやるよ。好きだぜ、アラシヤマ」
最期の時まで、囁いておくれやす。
23. 甘やかして
「わての事、好きって言うて」
いきなり、何を言い出すんだこの馬鹿は。
「はァ?」
わけわかんねェよ。あくまで、友達で、親友で、それ以上じゃねーだろ。
「嘘でも、ええから」
俺はお前なんか嫌いなんだよ。わかんねーんだろうけどさ。
「…お前、それで満足なのかよ」
俺がお前のどこが嫌いなのかなんて、考えたこともないんだろ?
「あんさんの気持ちが本気か嘘かなんて、あんさんにしかわからしまへんやろ?
せやったら、嘘でもホンマでもわてには変わりあらへん」
俺の事を考えないこと、自己中なこと、時々、そんな表情をすること。
「安い想いだな」
どこを取っても嫌いなんだよ、お前のことは。
「だったら言ってやるよ。好きだぜ、アラシヤマ」
しょーがねーからせめて最期の時まで、いくらでも利用してやるよ。