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a

「シンタローはんからわてにキスしてくれはったら、もう付き纏いまへんわ」

「そないな事、気色悪ぅてでけへん?」

「…せやから、シンタローはんのこと、好き」


俺から触れることの出来なかったあいつの唇が
抵抗する言葉を塞ぐ
乱れる吐息、混じりあう唾液
これは、あのときの嘘と
伸ばされた手を振りほどくことの出来なかったことへの罰

心の中でそっと呟いてはかき消される気持ちと言葉
思考がぐちゃぐちゃに溶けていって、体が火照る

せめて、自業自得なんだと思わなければやりきれねェ。

(04/06/17)

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ass

あんさんの身体を、抱きしめる。
筋肉質なそれは、わてのもんと殆どつくりは変わらへんのでしょうが
それがあんさんのもんであるというだけで、わては劣情をそそられますのや。

「シンタローはんの体、硬いどすなぁ」
総帥執務室で、愛しい人にじゃれつく。
後ろから、背の高いあんさんを抱きしめて。
「離れろバカ」
あんさんの黒い髪に顔を埋めると、うっすらとシャンプーの匂いがするような気ぃがして。
「離さへん」
恥じらいはって、わての事を拒む姿も愛しゅうて。
「ホンマに嫌なんどしたら、本気で抵抗しなはれや」
長い髪を耳にかけてやりながら、耳元で意地悪く呟いて、耳朶をひと舐め。
その感触に身体を固くするシンタローはんの胸元に手を──

「眼魔砲」

衝撃とともに、体が風を切って。
ついでに壁を一枚ぶちぬいて廊下まで吹き飛んだ。
「し…シンタローはんいきなり何しますのん!」
痛む体に無理やり力を入れて、よろりと立ち上がる。
「『本気で抵抗』。」
照れて、わざと怒っとることを見抜いて、益々愛しく思いますんや。
つり上がる凛々しい眉も、引き攣った口元も、全部演技なんはお見通しどすえ?
うっとりと見つめると、更に表情を険しくしはる。
そないに照れんでも、わてとシンタローはんの仲やないどすか!
「気ッ色悪ぃ真似してんじゃねーよ!」
わての舐めた耳朶を、ごしごしと赤いブレザーの袖で拭う。
「クソ、シャワー浴びてこよ…」
それは…それはまさか…
「わ、わても一緒にい」

「眼魔砲」

言葉半ばで更に吹き飛ばされ、衝撃がまた一枚壁を破って青い空が覗いた。
崩れた外壁の淵に着ていた制服の襟がひっかかりはって、首が絞まるもなんとか落下せずにすんだんは不幸中の幸い…いや、シンタローはんはきっとそこまで計算済みなんや!
「……惜しかったか」
ぼそりと照れ隠しにつぶやくあんさんも猛烈にかいらしいどすえ!

革靴の足音が遠ざかっていくのを聞きながら、わては思うたんや。
シャワー浴びてほんのり色づくシンタローはんの肌は、さぞかし綺麗なんやろうな。
二人で迎える夜に向けて、わざわざシャワー浴びはるなんて…

「眼魔砲」

体の中身が、支えを失ったようにふわりと浮く感覚。
それはわて自身が何もない空に投げ出されたことを意味していて。
それを理解した瞬間に、わては重力に従って落下を始めた。


「総帥、眼魔砲で本部を破壊するのは止めてください」
「いや何か寒気がしたんだよ。あっちの方角から変な電波を感じたというか」
「電波なんか受信しないで下さい。眼魔砲による本部の被害総額がいくらになっているのか事細かにお教えしましょうか?」


シンタローはんの愛情表現は強烈どすなぁ…!
幸せに浸りながら、わての意識はブラックアウトした。

(04/06/15)

a

「決して、消したりしてはあきまへんえ」
できたばかりの火傷の痕を指先でなぞって、アラシヤマはシンタローの耳元で甘く囁いた。ひり、と熱を持った痛みが、脇腹に走る。
「あ」
びくり、と小さく震えたシンタローの肩を抱きしめて、アラシヤマは耳朶に軽く唇を落とす。
「わてがどこか遠くの戦場でくたばっても、あんさんだけはわての事忘れんで」
この男は、いつもそんなことを言う。
「…死ななきゃ、いいだけだろ」
「そやかて」
シンタローを見つめる左目が、揺れる。
「わては、シンタローはんとは違いますさかいに」
戦場であっても、なくても、誰しもが明日死ぬかもしれないという可能性を持って生きていて、
それはシンタローも同じであるというのに、
「俺だって、いつ死ぬかわかんねーだろ」
「あんさんが死んだら、わても死にますさかい」
なのに、またそんな事を言うんだ。
「シンタローはんは、死ぬそのときまでわての事を覚えていてくれればええんどす
 その痕が消えないであんさんの身体に在り続けるように、
 わての事もあんさんの中に存在させておくれやす」

白いよれたシーツの上でのやりとりは、
いつも、同じような言葉を繰り返し、
シンタローの心に、黒い痕を残す。

(04/06/13)


武器弾薬は底をつき、動ける味方は自分を含め二人だけ。
援軍がくる気配もなく──というと絶体絶命にしか聞こえないが、二人にとってはこれからが本領発揮だ。
「あんさんに背中任せるやなんて、不安でしゃあないどすわ!」
「俺だって自分より弱い奴に頼るなんて嫌だっつの!」
遠くから聞こえる銃撃音に掻き消されないように声を張り上げ、背中合わせのまま悪態を吐き合う。
アラシヤマにしてみれば折角の実地訓練だというのに組まされた相手が気に食わず、
シンタローにしてみればアラシヤマの態度や言葉が一々癇に障る。
それでもこうやって敵に囲まれてみれば、味方は互いにひとりしか見当たらず、背を守り合う形になる。
「心配せんでも、あんさんがここでくたばろうとも背中には傷ひとつ負わせんさかいに!」
「てめェが先に死んで、俺も纏めて背中からの攻撃で死ぬのは勘弁だからなッ!」
敵兵の数は少なく見積もって二十人ほどだろうか。
青白い光が炸裂して瓦礫の町を荒野へと変え、紅の炎が全てを薙ぎ倒し、それら全てを消し尽くす。


遠くから地鳴りに似た、威嚇射撃の音が響く。
それはどう聞いても──
「ほうら、敵さん戦車まで持ち出してきよったで」
「対人で大砲とかアリかよ…」
しかもそれは四方から聞こえてきて、どうやら二人を囲んでいるらしい。
改めて背を合わせ、見え始めた黒い影へと向き直る。
「しっかり半分は倒してくれよ、No.2」
「心配せんでもあんさんよりは成果上げてみせますさかいに」


空に昇る炎の鳥が目撃されたその数十分後、敵軍がガンマ団に降伏したとの知らせが、壊れかけたシンタローの通信機から聞こえてくるまで、二人は互いの背を守り続けることになる。


(05/03/28)

aaa
いやだと言ったのは、きらいだと言ったのは、自分だ。

じりじりと空気は重くのしかかってくる。

椅子に沈み込んでしまった身体。

ひたすらの沈黙、時間だけは刻々と過ぎて。

なんとか指を動かして冷めたコーヒーを飲み干せば、その苦味に、胃がさらに痛んだ。

「・・・シンちゃん、大丈夫?」

コンピューターに向かって自分の仕事をこなしていたグンマ(そう、ここはグンマの研究室であって)は、俺をそうっと窺うようにして、首を傾げた。

突然訪れた俺を(そう、俺はここに逃げてきたわけで)グンマはなにも聞かずに招き入れて、放っておいてくれた。

「わりィな。邪魔か?」

「僕は久々にシンちゃんといれて嬉しいけど」

「ああ・・久々か」

「月単位でね。でもシンちゃん、本当は僕じゃない人と一緒にいたいんじゃないの?」

「・・オマエ、どこまで知ってる?」

拗ねた子供のような口調にグンマはふっと微笑んで、おもむろに立ち上がった。

備え付けのキッチンに立ち、待つこと数分。

ふんわりと部屋中に広がる、甘い匂い。

「怒ってる時は甘いものがいいよ」

差し出されたココアは見るからに甘ったるそうで、俺を見るグンマの目も甘ったるくて、俺は心底情けなくなる。

今の俺は、正真正銘の子供だ。

そしてグンマは大人なのだ、きっと。

「怒ってなんか」

「疲れてる時も、悲しい時もね」

それ以上はもうなにも返せずに、ゆっくりとカップに口をつける。

甘くて温かな飲み物は、俺のちくちくとささくれた心に、確かに深く染み込んでいった。
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