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ぐきゅると腹の虫が鳴った。
「…腹減った」
簡潔かつ正直な一言と共に、腹を押さえてシンタローがぐったりと項垂れた。
隣でグンマも力無くぼやく。
「お昼ご飯、食べ損ねちゃったねー…」
現在時刻は既にお昼どころか、そろそろおやつの時間が近い時分である。
年甲斐もなくお昼寝などしてみたら、見事にうっかり寝過ぎた次第。
食いっぱぐれた理由が理由だけに少々情けなくもこっ恥ずかしいが、昼食抜きでこの時間というのはさすがに堪える。
寝過ぎたのと空腹とで、何だかぼうっと視線が浮いている二人だ。
廊下を歩く足取りがいささか覚束ない。
「とりあえず何か食うもの…」
回らない頭で、それでも食堂になら何かしら残っているだろうと当たりをつけて、ふらふら足を向け掛けたところで、
「おー、ここにおったんか」
聞き覚えのある声に足を止めた。
「…コージ?」
くるりと辺りを見回すと廊下の先に、すぐ目に付く大男が手を振っているのが見えた。
その隣には童顔の黒髪と金髪の美青年の二人連れ。
同時にこちらに気付いて笑顔になる。
「シンタロー!」
「ミヤギに、トットリも…?」
首を傾げたシンタローの元へ、ベストフレンドコンビが仲良く駆け寄った。
一瞬、それがゴールデンレトリバーと黒のラブラドールに見えたのはシンタローの目の錯覚だろう。
たっぷり昼寝した後だったので、きっとまだ寝惚けていたに違いない。
…などと、呑気に思いきや、
「まったく探したっちゃよー」
「主役がいないんじゃ締まらねぇだ」
駆け寄った二人に、問答無用で両脇をそれぞれ掴まえられた。
一見はかるーく腕を引っ掛けているだけのようだが、そこは腐っても軍人、何げにがっちりホールドが決まっている。
ちなみに隣では、グンマがコージに担ぎ上げられていた。いくら体格差があるとは言え、横抱きに姫抱っこされても違和感のない成人男子というのも如何なものだろう。
…ていうか、一体、何事?
もしかして、自分はまだ寝ているんだろうか、などとぼんやり考えている間に、
「来ればわかるべ」
「いくっちゃよー」
両脇を固めた二人にずるずると引き摺られて、シンタローはあっという間に連行されていった。
『 Engagement 』
.
―― 第四話。 宴の支度編 ――
「おらぁ、こんなもんじゃ酒足らねぇぞ!ボトルで何本なんて、まだるっこしいこと言ってねぇで樽で追加しろや!」
「………ハーレム?」
部屋の入り口で、シンタローはぽかんと呟いた。
問答無用で連れてこられた先、普段は会議室として使われる大部屋は、一体何が始まったのか大層賑やかだった。
中央の大テーブルの他にも幾つかのテーブルを出し、イスを部屋の端に寄せ、皿とグラスと酒瓶が部屋のそこここを行ったり来たり。
物と人が移動するたびに、声と音も賑やかに行き交う。
その中で、いつの間に生還したものやら、今朝方どこぞに吹っ飛ばした双子の叔父の片割れが、広い部屋の中央に立って威勢良く(ついでに中身も景気よく)、忙しく立ち回る周囲に向けて怒鳴っていた。
思わず名を呼んだ姪の声に、ハーレムが気付いて振り返った。
すぐに大股に部屋を横切って歩み寄ってくる。
「お、やっと見つかったか」
「何事だ、これ…」
訊くと、彼はどことなく照れ臭そうに頬を掻いた。
「…まぁ何だ。一応、祝い事だろ」
言われて、改めて部屋を見まわす。
どこからどうみても…宴会の準備?
「えっと…?」
祝い事で宴会…ということは、もしかしなくても自分たちの祝宴だろうか。
「………ぇ」
そこまで思い至って、シンタローはにわかに焦った。
予想外の事態に、意味もなく視線が宙に浮く。
…この叔父は。いつもはどうしようもないダメ人間のくせに。
こういうのは、困る。
こんな風に不意打ちで、しかも改めて、素直に礼を言うには日頃の関係が微妙な相手から、こういう真似などされてしまうと、どう反応を返せば良いものやらわからないではないか。
これでも自覚しているが、相当に天の邪鬼な性質である。グンマなどと違って素直に礼など出てくるわけがなく、
「…あんた、飲めれば何でも良いんだろうが」
結局、憎まれ口が飛び出す始末。
だが、いつものように怒るかと思った叔父は、ふんと鼻で笑っただけだった。お見通しらしい。
「キンタローに礼を言っておけよ」
「…へ?」
「先に周りを固めておくんだと。周囲に認知させて、兄貴を後に引けなくさせるつもりなんだろ。ありゃ、ちっと仕込めば良い参謀になれるぜ」
周囲に聞こえないように耳打ちし、間近に寄せた顔がにやりとする。
「…出来た相棒じゃねえか」
からかうように腹を小突かれて、シンタローが噎せた。
瞬きでやり過ごし、ゆるゆると理解が追いついてくる。
キンタローが?
それこそ予想だにしていなかった。
本当に、何て期待する以上をいってくれる奴なんだか。
そう思うのはいささか身贔屓だろうか。
思わず緩む口元を誤魔化すように、シンタローは、べぇと舌を出した。
「誉めたって特戦にゃ、やんねぇからな」
「ちっ、アイツを引き込めば予算ぶん取れると思ったのに…」
「…ふふん」
残念そうに唇を尖らせたハーレムに、得意げに勝ち誇ってやる。
あれは自分のジョーカーだ。そう簡単にくれてやれる手札ではない。
「残念だったな。まー今年の予算も諦め――」
「シンタロー!」
「うっ!!?」
いきなり力任せに背後へ引きずられて、勢いよく仰け反った首が、ぐきと鳴った。
「~~ッがぁ!」
「全く、主も相変わらず水臭いのう」
首を押さえて呻くシンタローに、頭上高くからのし掛かる阿呆は全く頓着なく話し掛けてくる。
わざとじゃないが、絶対に気付いてもいないだろう。文句を言っても無駄。こいつはいつでも大雑把な奴だ。
無言でこきこきと首を回し、左右に軽く振って見て、異常なしと確かめる。
「コージ、テメェ…」
「折角のめでたい話じゃけぇ、わしらにも言うてくれれば良いものをのう」
軽口のような口調に紛れた声音に、シンタローは頭上の顔を見上げた。
図らずも生活と命運とを共にすることになった、…あの島の記憶を分かつ、ひとり。
「…悪かったな。先に一族の方で話通してから、ちゃんと言うつもりだったんだけどよ」
溜息をつき、ちらりと情報源だろうハーレムを見やる。
万年アル中の叔父は既に始める気満々の様子で片手に酒瓶を握りしめている。
あえてこちらの視線は無視しているらしい、何食わぬ顔でそらとぼける。
「正式なのはそのうち兄貴がやんだろうから、ま、今日は内輪でな」
「おい、おっさん…」
文句を言いかけたところで、今度は、がばっと何かが抱き付いた。
「シンタロー様~v」
「ぎゃーーーッ!?」
暑苦しいハグをかまされて思わず絶叫する。
顔なんぞ見なくても判る、上半身裸の筋肉兄貴のダイレクトになま暖かい体温は力一杯セクハラだ。
「離さんか、このイタリア人ーーーーーッ!!」
「女性ってわかった途端に、婚約なんて聞いてないっすよ~。どうっすか、結婚前の最後のバカンスを俺と――っ」
こっちの言葉なぞ聞いちゃいない。
目一杯くっついていた大柄な図体が、見た目を裏切る素早さで飛び退いた。
その位置の床に、団内備品のナイフとフォークが数本ざっくりと突き刺さる。
全てかわしたそれらを見て、彼はにやりと唇をつり上げた。
「っとぉ…危ねぇ。何すんですか、キンタロー様」
「…え、キンタロー?」
探すまでもなく、シンタローの眼前にずいと金髪が割り込んだ。
「煩い。こいつに近寄るな、イタリア人」
威嚇するような声が低く唸った。
殺気を剥き出しにした青い瞳に、近頃ではすっかりなりを潜めていた獰猛さで睨み付けられて、ロッドが軽く片眉を上げた。
「あン?おっかねぇなぁ…、そんなに大事なら、他の男にくれてやって良いんスかぁ?」
「…ロッド、余計なこと言うんじゃねーよ」
容赦ない殺気を無視して、ふざけた態度でにやにやと笑う。
挑発的な態度は、余裕と言うよりは性分だろう。
仕様のない部下に、ハーレムが面倒を起こすなと言いたげな渋面を作る。
キンタローが眉を寄せて睨み付けた。
「ケッコンをすればシンタローはずっと此処にいるし、そうしたら皆、嬉しいだろう?何か問題があるか?」
「………は?」
ロッドが呆気にとられたように瞬いた。
「…取られるの、悔しくないんですか?」
「何をだ?」
「シンタロー様をですよ。結婚するってことはそう言うことでしょ」
首を傾げたのはキンタローだった。
「ケッコンして、それで何故、シンタローが取られることになるんだ?シンタローはどこにも行かないと言ったぞ」
無表情に見詰められ、ロッドは返答に窮したようにこめかみを掻いた。
「…あー…つまりっすね、シンタロー様の傍に、自分以外の男が自分より近い所にいて気に入らないとか思わないんですか」
キンタローはきっぱりと言い切った。
「グンマなら、いても構わん。それに、シンタローと一番近いのは俺だ」
「……はぁ」
真剣に大真面目な顔だ。本気らしい。
開いた口の塞がらないまま、ロッドが思わずグンマを探して振り返る。
「あんなこと言ってますけど」
それまで周囲と一緒になって事態を眺めていたグンマは、ほやほやと呑気に笑った。
「キンちゃんはシンちゃんの片割れだもんね。僕、無事にお墨付き貰えて良かったぁv」
嬉しそうに言う。
こちらも至って本気らしい。
実際、あの島で最初に刷り込まれたためか、キンタローはグンマに対しとても懐いている。
あの過保護な保護者を除けば、グンマを最も高く評価しているのは恐らくキンタローだろう。
「親父もお前くらい簡単に話がわかれば良いのによー…」
シンタローがしみじみとぼやいた。
「…違うと思うたい、シンタロー様…」
宴会準備の手伝いに駆り出されていたどん太が、それを聞き咎めて遠い目をした。
恐らく花婿候補がグンマ以外の誰でも、キンタローはこう物わかり良くはいかなかったに違いなかった。
それだけキンタローのシンタローに対する執着は並大抵ではない。むしろグンマの扱いが異例なのである。
…その辺、いまいち当人達に自覚がないのだが。
「それより、シンタロー。コタローに報告がまだだろう、お前らしくもない」
「ああ、連れてきてくれたんだな。サンキュ」
「あ、おと…叔父様の写真も」
「グンマにとっても父親に違いないからな」
「ありがと、キンちゃん」
嬉しそうに笑ったグンマが写真にキスを送り、写真を抱く従兄弟に抱き付く。
シンタローは、車いすに乗せられて静かに眠るコタローの頭を撫でながら優しく話し掛けた。
「コタロー、目が覚めたらきっとビックリするよな。でも、これからもずっと傍にいるからな?」
「僕、ヤキモチ妬かれちゃうかなー。コタローちゃんもシンちゃん大好きだもんね」
「…………(この一族は…)」
何だか全員で無節操にいちゃついているよーな親戚一同に、周囲が思わず遠巻きになる。
「あ~あ、グンマ博士、両手に花じゃないっすか。羨まし~」
ロッドが深々と息を吐いた。
「…シンタローが、じゃないんだか?」
「むしろキンタロー様が、だべ?」
同じく遠巻きにしているトットリとミヤギがツッコミを入れた。
生物学的には前者だろうが、絵的には何となく後者が正しそうである。
「いやぁ、…けど、あの二人ってワンセットだろ?」
ロッドが黒髪の女丈夫と背後に寄り添う金髪の偉丈夫を指さした。
外見はどこもかしこも似ていないのだが、確かに対に見えるのは、諸々の事情を知っているせいだろうか。最も…、
「花は花でも食虫植物っぽいがのう…」
「肉食獣の間違いだべ」
再度すかさず、容赦のないツッコミ。既に条件反射として刷り込まれているらしい、伊達に愉快な島暮らしを共にしていない。
ボロクソな言われようだったが、確かにどちらを見ても花なんて似合うような可愛らしげなナマモノではないのは事実である。
的確な指摘に、しかしロッドは肩を竦めただけだった。
「美人なら何だって良いって」
「本気で節操ないイタリア人っちゃね…、…?」
トットリがふと怪訝そうに耳に手を当てた。
遠くから、ばたばたと近づいてくる喧噪を拾ったのだ。
「シンちゃん!!」
「マジック様!?」
「あ。おとーさま」
「…煩せーぞ、親父…」
どうやら、今朝からの石化がやっと今頃解けたものらしい。
必死な大声に、娘が嫌そうに顔を顰めたが、泡を食って飛び込んできたバカ親は聞いちゃいない。
「シンちゃん!お嫁にいくなんてパパはやっぱり反対だよ!!早まらないで、ちょっと考え直して…」
言い終わるより早く、眼魔砲が飛んだ。
「ぐはっ!!」
「うっせぇつってんだろ!とっくに既成事実があんのに今さら考え直すもへったくれもあるか!」
「げふっ…!」
直撃を食らってマジックが倒れ伏した。最もクリティカルヒットしたのは眼魔砲よりも絶大な言葉の攻撃力だろう。
「いや~、見事な迎撃っしたね~」
「それよりも、何か今、あらぬこと口走ってなかったか…?」
ロッドが面白そうに口笛を吹き、隣でハーレムが耳をかっぽじいた。
と、そこへ更に
「…グ、グンマ様ぁ~~…」
第二陣が到来した。
呻きながら、ずりずりと床を這ってくる白衣のドクターに、運悪く近くに居合わせてしまった数人が思わず悲鳴を上げて逃げる。
鼻血の流し過ぎで血でも足りないのか、幽鬼の如き青い顔が更に不気味さを醸し出しているのが、ことさらである。
先程の総帥のよりは地味な登場だが、ある意味インパクトでは負けていない。
いっそトラウマになりそうなホラーな光景だが、当のグンマは何も気にならないらしい。これも慣れだろうか。
父娘の物騒なコミュニケーションを眺めながら平然と話し掛けた。
「あ、高松?やっぱ手強そうだねぇ、お父様…。いっそのこと子供でも作っちゃえば、話が早いかなー」
…ぱたり。
「…うわぁ、トドメ刺されたべ」
「成仏するっちゃ、ドクター」
滂沱と涙を流す生ける屍を、ミヤギとトットリが気の毒そうに拝んだ。
「さてと、それよりも、みんな集まった所でそろそろ始めんかのう!」
気を取り直すように場を仕切りなおしたのは、何につけ大雑把なコージだった。
倒れている屍二つを外に摘み出して、大声で全員を呼び集める。
「当然、乾杯の音頭はぬしが取れ、シンタロー!」
グラスをひとつ取り、適当に傍にあったビールを並々と注いで押しつける。
「…え。…」
グラスを受け取ってしまって、シンタローは周囲を見まわした。
従兄弟達に叔父、未だ目覚めぬ弟。特戦部隊に伊達衆の面々。
ひとりひとりと、目を見交わす。
その誰もがシンタローを見詰めている。
今この瞬間、この場の誰もに自分が受け止められていることの証に、ひとつとして逸らされない瞳。
一度目を伏せ、しっかりとその目を上げる。
これからもきっと共に歩むだろう者たちを見回して、シンタローは笑った。
「ま、何だ。総帥継ごうが、所帯持とうが、俺は俺だ。これからもひとつ宜しく頼むぜ!乾杯!」
『乾杯!』
掛け声を口々に、高々と掲げたグラスがぶつかり合う音が賑やかに鳴り響いた。
「あれ、そういやマーカーは?」
ワインを抱えてロッドは周囲を見まわした。グラスに注ぐなんてことは面倒らしく、瓶のままだ。
今更ながらに姿の見あたらない同僚を捜す。
ずっと無言ながらそこにいたGが、さあとばかりに首を捻った。
周辺にいた面々も、てんでに首を横に振る。
ああ、と声を上げたのは、浴びるようにジョッキの生ビールを煽る上司だった。とてもとても上機嫌である。
「アイツなら、何かキノコでも生えそうに鬱々とした弟子ぶら下げて、ヤキ入れ直しにいったぜ~?」
その言葉が終わらぬうちに、どおんと、遠くで火柱が上がった。
「噂をすれば、相当こんがり焼いてるべ」
「あの人、弟子なんかいたっちゃねぇ」
「あー、いたっけ?そんなの」
しみじみ感心するミヤギに無邪気に首を傾げるトットリ。
シンタローが気のない相槌を打つ。
「昼間の花火も良いよねぇ」
「昼間から酒を飲むのは初めてだ」
楽しそうなグンマの隣で、キンタローがじっと手元のグラスを見詰める。
明るい内から酒を飲むということに違和感があるらしい。
「お前ら程々にしろよ。さーて、どうせ足らなくなんだろうから、今のうちにツマミでも作りに行ってくるか」
従兄弟達に声を掛けて、シンタローが席を立った。
すかさずグンマが手を挙げる。
「僕、もちチーズとカボチャのコロッケ食べたい!」
「…作ってやるから、お前はジュース飲んでろよ」
「はーいv」
「……」
良い子の返事で従兄弟が持ったカンパリオレンジを、シンタローは無言でその近くにあった100%オレンジジュースと取り替えた。
…当分、こいつに酒は飲ますまい。
キンタローが口を付けずに眺めていたグラスを、テーブルに戻した。
「俺も手伝おう。主賓が最初から席を外しっぱなしと言うのも何だからな」
「お、悪いな」
「構わん。ところで俺は揚げ出し豆腐と出汁巻き卵が良いんだが」
「…お前ね」
シンタローは思わず呆れた顔になった。
全くこの従兄弟は要領がいい。
「ああ、はいはい。どうせだから、みんなのリクエスト纏めて訊いて持ってこい。奥のキッチンにいるから」
「わかった」
キンタローを追い立てて、このフロア備え付けの給湯室…と言う名の調理場へ向かう。
ひと揃い、道具や冷蔵庫の中身を確認し、内線で足りない食材を運び込むよう指示を回して。
「さて」
シンタローは宴会場の方を窺った。
ざわめく喧噪がここまで伝わってくる。
元々賑やかなお祭り騒ぎは好きだし、しかも一応は自分たちのお祝いだ。
久々に腕が鳴る。
気合いを入れるように、シンタローは服の袖を捲り上げた。
「んじゃ、たまには出血大サービスと行きますかv」
宴は、まだ始まったばかりである。
NEXT
ぐきゅると腹の虫が鳴った。
「…腹減った」
簡潔かつ正直な一言と共に、腹を押さえてシンタローがぐったりと項垂れた。
隣でグンマも力無くぼやく。
「お昼ご飯、食べ損ねちゃったねー…」
現在時刻は既にお昼どころか、そろそろおやつの時間が近い時分である。
年甲斐もなくお昼寝などしてみたら、見事にうっかり寝過ぎた次第。
食いっぱぐれた理由が理由だけに少々情けなくもこっ恥ずかしいが、昼食抜きでこの時間というのはさすがに堪える。
寝過ぎたのと空腹とで、何だかぼうっと視線が浮いている二人だ。
廊下を歩く足取りがいささか覚束ない。
「とりあえず何か食うもの…」
回らない頭で、それでも食堂になら何かしら残っているだろうと当たりをつけて、ふらふら足を向け掛けたところで、
「おー、ここにおったんか」
聞き覚えのある声に足を止めた。
「…コージ?」
くるりと辺りを見回すと廊下の先に、すぐ目に付く大男が手を振っているのが見えた。
その隣には童顔の黒髪と金髪の美青年の二人連れ。
同時にこちらに気付いて笑顔になる。
「シンタロー!」
「ミヤギに、トットリも…?」
首を傾げたシンタローの元へ、ベストフレンドコンビが仲良く駆け寄った。
一瞬、それがゴールデンレトリバーと黒のラブラドールに見えたのはシンタローの目の錯覚だろう。
たっぷり昼寝した後だったので、きっとまだ寝惚けていたに違いない。
…などと、呑気に思いきや、
「まったく探したっちゃよー」
「主役がいないんじゃ締まらねぇだ」
駆け寄った二人に、問答無用で両脇をそれぞれ掴まえられた。
一見はかるーく腕を引っ掛けているだけのようだが、そこは腐っても軍人、何げにがっちりホールドが決まっている。
ちなみに隣では、グンマがコージに担ぎ上げられていた。いくら体格差があるとは言え、横抱きに姫抱っこされても違和感のない成人男子というのも如何なものだろう。
…ていうか、一体、何事?
もしかして、自分はまだ寝ているんだろうか、などとぼんやり考えている間に、
「来ればわかるべ」
「いくっちゃよー」
両脇を固めた二人にずるずると引き摺られて、シンタローはあっという間に連行されていった。
『 Engagement 』
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―― 第四話。 宴の支度編 ――
「おらぁ、こんなもんじゃ酒足らねぇぞ!ボトルで何本なんて、まだるっこしいこと言ってねぇで樽で追加しろや!」
「………ハーレム?」
部屋の入り口で、シンタローはぽかんと呟いた。
問答無用で連れてこられた先、普段は会議室として使われる大部屋は、一体何が始まったのか大層賑やかだった。
中央の大テーブルの他にも幾つかのテーブルを出し、イスを部屋の端に寄せ、皿とグラスと酒瓶が部屋のそこここを行ったり来たり。
物と人が移動するたびに、声と音も賑やかに行き交う。
その中で、いつの間に生還したものやら、今朝方どこぞに吹っ飛ばした双子の叔父の片割れが、広い部屋の中央に立って威勢良く(ついでに中身も景気よく)、忙しく立ち回る周囲に向けて怒鳴っていた。
思わず名を呼んだ姪の声に、ハーレムが気付いて振り返った。
すぐに大股に部屋を横切って歩み寄ってくる。
「お、やっと見つかったか」
「何事だ、これ…」
訊くと、彼はどことなく照れ臭そうに頬を掻いた。
「…まぁ何だ。一応、祝い事だろ」
言われて、改めて部屋を見まわす。
どこからどうみても…宴会の準備?
「えっと…?」
祝い事で宴会…ということは、もしかしなくても自分たちの祝宴だろうか。
「………ぇ」
そこまで思い至って、シンタローはにわかに焦った。
予想外の事態に、意味もなく視線が宙に浮く。
…この叔父は。いつもはどうしようもないダメ人間のくせに。
こういうのは、困る。
こんな風に不意打ちで、しかも改めて、素直に礼を言うには日頃の関係が微妙な相手から、こういう真似などされてしまうと、どう反応を返せば良いものやらわからないではないか。
これでも自覚しているが、相当に天の邪鬼な性質である。グンマなどと違って素直に礼など出てくるわけがなく、
「…あんた、飲めれば何でも良いんだろうが」
結局、憎まれ口が飛び出す始末。
だが、いつものように怒るかと思った叔父は、ふんと鼻で笑っただけだった。お見通しらしい。
「キンタローに礼を言っておけよ」
「…へ?」
「先に周りを固めておくんだと。周囲に認知させて、兄貴を後に引けなくさせるつもりなんだろ。ありゃ、ちっと仕込めば良い参謀になれるぜ」
周囲に聞こえないように耳打ちし、間近に寄せた顔がにやりとする。
「…出来た相棒じゃねえか」
からかうように腹を小突かれて、シンタローが噎せた。
瞬きでやり過ごし、ゆるゆると理解が追いついてくる。
キンタローが?
それこそ予想だにしていなかった。
本当に、何て期待する以上をいってくれる奴なんだか。
そう思うのはいささか身贔屓だろうか。
思わず緩む口元を誤魔化すように、シンタローは、べぇと舌を出した。
「誉めたって特戦にゃ、やんねぇからな」
「ちっ、アイツを引き込めば予算ぶん取れると思ったのに…」
「…ふふん」
残念そうに唇を尖らせたハーレムに、得意げに勝ち誇ってやる。
あれは自分のジョーカーだ。そう簡単にくれてやれる手札ではない。
「残念だったな。まー今年の予算も諦め――」
「シンタロー!」
「うっ!!?」
いきなり力任せに背後へ引きずられて、勢いよく仰け反った首が、ぐきと鳴った。
「~~ッがぁ!」
「全く、主も相変わらず水臭いのう」
首を押さえて呻くシンタローに、頭上高くからのし掛かる阿呆は全く頓着なく話し掛けてくる。
わざとじゃないが、絶対に気付いてもいないだろう。文句を言っても無駄。こいつはいつでも大雑把な奴だ。
無言でこきこきと首を回し、左右に軽く振って見て、異常なしと確かめる。
「コージ、テメェ…」
「折角のめでたい話じゃけぇ、わしらにも言うてくれれば良いものをのう」
軽口のような口調に紛れた声音に、シンタローは頭上の顔を見上げた。
図らずも生活と命運とを共にすることになった、…あの島の記憶を分かつ、ひとり。
「…悪かったな。先に一族の方で話通してから、ちゃんと言うつもりだったんだけどよ」
溜息をつき、ちらりと情報源だろうハーレムを見やる。
万年アル中の叔父は既に始める気満々の様子で片手に酒瓶を握りしめている。
あえてこちらの視線は無視しているらしい、何食わぬ顔でそらとぼける。
「正式なのはそのうち兄貴がやんだろうから、ま、今日は内輪でな」
「おい、おっさん…」
文句を言いかけたところで、今度は、がばっと何かが抱き付いた。
「シンタロー様~v」
「ぎゃーーーッ!?」
暑苦しいハグをかまされて思わず絶叫する。
顔なんぞ見なくても判る、上半身裸の筋肉兄貴のダイレクトになま暖かい体温は力一杯セクハラだ。
「離さんか、このイタリア人ーーーーーッ!!」
「女性ってわかった途端に、婚約なんて聞いてないっすよ~。どうっすか、結婚前の最後のバカンスを俺と――っ」
こっちの言葉なぞ聞いちゃいない。
目一杯くっついていた大柄な図体が、見た目を裏切る素早さで飛び退いた。
その位置の床に、団内備品のナイフとフォークが数本ざっくりと突き刺さる。
全てかわしたそれらを見て、彼はにやりと唇をつり上げた。
「っとぉ…危ねぇ。何すんですか、キンタロー様」
「…え、キンタロー?」
探すまでもなく、シンタローの眼前にずいと金髪が割り込んだ。
「煩い。こいつに近寄るな、イタリア人」
威嚇するような声が低く唸った。
殺気を剥き出しにした青い瞳に、近頃ではすっかりなりを潜めていた獰猛さで睨み付けられて、ロッドが軽く片眉を上げた。
「あン?おっかねぇなぁ…、そんなに大事なら、他の男にくれてやって良いんスかぁ?」
「…ロッド、余計なこと言うんじゃねーよ」
容赦ない殺気を無視して、ふざけた態度でにやにやと笑う。
挑発的な態度は、余裕と言うよりは性分だろう。
仕様のない部下に、ハーレムが面倒を起こすなと言いたげな渋面を作る。
キンタローが眉を寄せて睨み付けた。
「ケッコンをすればシンタローはずっと此処にいるし、そうしたら皆、嬉しいだろう?何か問題があるか?」
「………は?」
ロッドが呆気にとられたように瞬いた。
「…取られるの、悔しくないんですか?」
「何をだ?」
「シンタロー様をですよ。結婚するってことはそう言うことでしょ」
首を傾げたのはキンタローだった。
「ケッコンして、それで何故、シンタローが取られることになるんだ?シンタローはどこにも行かないと言ったぞ」
無表情に見詰められ、ロッドは返答に窮したようにこめかみを掻いた。
「…あー…つまりっすね、シンタロー様の傍に、自分以外の男が自分より近い所にいて気に入らないとか思わないんですか」
キンタローはきっぱりと言い切った。
「グンマなら、いても構わん。それに、シンタローと一番近いのは俺だ」
「……はぁ」
真剣に大真面目な顔だ。本気らしい。
開いた口の塞がらないまま、ロッドが思わずグンマを探して振り返る。
「あんなこと言ってますけど」
それまで周囲と一緒になって事態を眺めていたグンマは、ほやほやと呑気に笑った。
「キンちゃんはシンちゃんの片割れだもんね。僕、無事にお墨付き貰えて良かったぁv」
嬉しそうに言う。
こちらも至って本気らしい。
実際、あの島で最初に刷り込まれたためか、キンタローはグンマに対しとても懐いている。
あの過保護な保護者を除けば、グンマを最も高く評価しているのは恐らくキンタローだろう。
「親父もお前くらい簡単に話がわかれば良いのによー…」
シンタローがしみじみとぼやいた。
「…違うと思うたい、シンタロー様…」
宴会準備の手伝いに駆り出されていたどん太が、それを聞き咎めて遠い目をした。
恐らく花婿候補がグンマ以外の誰でも、キンタローはこう物わかり良くはいかなかったに違いなかった。
それだけキンタローのシンタローに対する執着は並大抵ではない。むしろグンマの扱いが異例なのである。
…その辺、いまいち当人達に自覚がないのだが。
「それより、シンタロー。コタローに報告がまだだろう、お前らしくもない」
「ああ、連れてきてくれたんだな。サンキュ」
「あ、おと…叔父様の写真も」
「グンマにとっても父親に違いないからな」
「ありがと、キンちゃん」
嬉しそうに笑ったグンマが写真にキスを送り、写真を抱く従兄弟に抱き付く。
シンタローは、車いすに乗せられて静かに眠るコタローの頭を撫でながら優しく話し掛けた。
「コタロー、目が覚めたらきっとビックリするよな。でも、これからもずっと傍にいるからな?」
「僕、ヤキモチ妬かれちゃうかなー。コタローちゃんもシンちゃん大好きだもんね」
「…………(この一族は…)」
何だか全員で無節操にいちゃついているよーな親戚一同に、周囲が思わず遠巻きになる。
「あ~あ、グンマ博士、両手に花じゃないっすか。羨まし~」
ロッドが深々と息を吐いた。
「…シンタローが、じゃないんだか?」
「むしろキンタロー様が、だべ?」
同じく遠巻きにしているトットリとミヤギがツッコミを入れた。
生物学的には前者だろうが、絵的には何となく後者が正しそうである。
「いやぁ、…けど、あの二人ってワンセットだろ?」
ロッドが黒髪の女丈夫と背後に寄り添う金髪の偉丈夫を指さした。
外見はどこもかしこも似ていないのだが、確かに対に見えるのは、諸々の事情を知っているせいだろうか。最も…、
「花は花でも食虫植物っぽいがのう…」
「肉食獣の間違いだべ」
再度すかさず、容赦のないツッコミ。既に条件反射として刷り込まれているらしい、伊達に愉快な島暮らしを共にしていない。
ボロクソな言われようだったが、確かにどちらを見ても花なんて似合うような可愛らしげなナマモノではないのは事実である。
的確な指摘に、しかしロッドは肩を竦めただけだった。
「美人なら何だって良いって」
「本気で節操ないイタリア人っちゃね…、…?」
トットリがふと怪訝そうに耳に手を当てた。
遠くから、ばたばたと近づいてくる喧噪を拾ったのだ。
「シンちゃん!!」
「マジック様!?」
「あ。おとーさま」
「…煩せーぞ、親父…」
どうやら、今朝からの石化がやっと今頃解けたものらしい。
必死な大声に、娘が嫌そうに顔を顰めたが、泡を食って飛び込んできたバカ親は聞いちゃいない。
「シンちゃん!お嫁にいくなんてパパはやっぱり反対だよ!!早まらないで、ちょっと考え直して…」
言い終わるより早く、眼魔砲が飛んだ。
「ぐはっ!!」
「うっせぇつってんだろ!とっくに既成事実があんのに今さら考え直すもへったくれもあるか!」
「げふっ…!」
直撃を食らってマジックが倒れ伏した。最もクリティカルヒットしたのは眼魔砲よりも絶大な言葉の攻撃力だろう。
「いや~、見事な迎撃っしたね~」
「それよりも、何か今、あらぬこと口走ってなかったか…?」
ロッドが面白そうに口笛を吹き、隣でハーレムが耳をかっぽじいた。
と、そこへ更に
「…グ、グンマ様ぁ~~…」
第二陣が到来した。
呻きながら、ずりずりと床を這ってくる白衣のドクターに、運悪く近くに居合わせてしまった数人が思わず悲鳴を上げて逃げる。
鼻血の流し過ぎで血でも足りないのか、幽鬼の如き青い顔が更に不気味さを醸し出しているのが、ことさらである。
先程の総帥のよりは地味な登場だが、ある意味インパクトでは負けていない。
いっそトラウマになりそうなホラーな光景だが、当のグンマは何も気にならないらしい。これも慣れだろうか。
父娘の物騒なコミュニケーションを眺めながら平然と話し掛けた。
「あ、高松?やっぱ手強そうだねぇ、お父様…。いっそのこと子供でも作っちゃえば、話が早いかなー」
…ぱたり。
「…うわぁ、トドメ刺されたべ」
「成仏するっちゃ、ドクター」
滂沱と涙を流す生ける屍を、ミヤギとトットリが気の毒そうに拝んだ。
「さてと、それよりも、みんな集まった所でそろそろ始めんかのう!」
気を取り直すように場を仕切りなおしたのは、何につけ大雑把なコージだった。
倒れている屍二つを外に摘み出して、大声で全員を呼び集める。
「当然、乾杯の音頭はぬしが取れ、シンタロー!」
グラスをひとつ取り、適当に傍にあったビールを並々と注いで押しつける。
「…え。…」
グラスを受け取ってしまって、シンタローは周囲を見まわした。
従兄弟達に叔父、未だ目覚めぬ弟。特戦部隊に伊達衆の面々。
ひとりひとりと、目を見交わす。
その誰もがシンタローを見詰めている。
今この瞬間、この場の誰もに自分が受け止められていることの証に、ひとつとして逸らされない瞳。
一度目を伏せ、しっかりとその目を上げる。
これからもきっと共に歩むだろう者たちを見回して、シンタローは笑った。
「ま、何だ。総帥継ごうが、所帯持とうが、俺は俺だ。これからもひとつ宜しく頼むぜ!乾杯!」
『乾杯!』
掛け声を口々に、高々と掲げたグラスがぶつかり合う音が賑やかに鳴り響いた。
「あれ、そういやマーカーは?」
ワインを抱えてロッドは周囲を見まわした。グラスに注ぐなんてことは面倒らしく、瓶のままだ。
今更ながらに姿の見あたらない同僚を捜す。
ずっと無言ながらそこにいたGが、さあとばかりに首を捻った。
周辺にいた面々も、てんでに首を横に振る。
ああ、と声を上げたのは、浴びるようにジョッキの生ビールを煽る上司だった。とてもとても上機嫌である。
「アイツなら、何かキノコでも生えそうに鬱々とした弟子ぶら下げて、ヤキ入れ直しにいったぜ~?」
その言葉が終わらぬうちに、どおんと、遠くで火柱が上がった。
「噂をすれば、相当こんがり焼いてるべ」
「あの人、弟子なんかいたっちゃねぇ」
「あー、いたっけ?そんなの」
しみじみ感心するミヤギに無邪気に首を傾げるトットリ。
シンタローが気のない相槌を打つ。
「昼間の花火も良いよねぇ」
「昼間から酒を飲むのは初めてだ」
楽しそうなグンマの隣で、キンタローがじっと手元のグラスを見詰める。
明るい内から酒を飲むということに違和感があるらしい。
「お前ら程々にしろよ。さーて、どうせ足らなくなんだろうから、今のうちにツマミでも作りに行ってくるか」
従兄弟達に声を掛けて、シンタローが席を立った。
すかさずグンマが手を挙げる。
「僕、もちチーズとカボチャのコロッケ食べたい!」
「…作ってやるから、お前はジュース飲んでろよ」
「はーいv」
「……」
良い子の返事で従兄弟が持ったカンパリオレンジを、シンタローは無言でその近くにあった100%オレンジジュースと取り替えた。
…当分、こいつに酒は飲ますまい。
キンタローが口を付けずに眺めていたグラスを、テーブルに戻した。
「俺も手伝おう。主賓が最初から席を外しっぱなしと言うのも何だからな」
「お、悪いな」
「構わん。ところで俺は揚げ出し豆腐と出汁巻き卵が良いんだが」
「…お前ね」
シンタローは思わず呆れた顔になった。
全くこの従兄弟は要領がいい。
「ああ、はいはい。どうせだから、みんなのリクエスト纏めて訊いて持ってこい。奥のキッチンにいるから」
「わかった」
キンタローを追い立てて、このフロア備え付けの給湯室…と言う名の調理場へ向かう。
ひと揃い、道具や冷蔵庫の中身を確認し、内線で足りない食材を運び込むよう指示を回して。
「さて」
シンタローは宴会場の方を窺った。
ざわめく喧噪がここまで伝わってくる。
元々賑やかなお祭り騒ぎは好きだし、しかも一応は自分たちのお祝いだ。
久々に腕が鳴る。
気合いを入れるように、シンタローは服の袖を捲り上げた。
「んじゃ、たまには出血大サービスと行きますかv」
宴は、まだ始まったばかりである。
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