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作・斯波

ほんとはとっても
きみがすき
いわないけどね



A.S.A.P.



終業時刻まであと五分。
未決書類を持って来ようとしたティラミスを追っ払う。
「それは明日でもいんだろ?」
「しかし総帥」
「明日やれることは今日やらないってのが俺のポリシーだから」
「しかし―――」
「はーいはいはい、もう定時だからね~、みんな帰ろうね~。てゆーか帰らせてお願い!」
あと、三分。


キンタローが入ってきた。何か言いかけるのを手で制する。
「仕事の話なら明日にしてくれ」
「何を急いでいる。今夜は会食の予定も入っていなかっただろう」
「いいの、俺は今日は雨が降ろうと槍が降ろうと定時であがるんだよ!」
携帯が鳴る。液晶の番号通知を見るなり切った。
(あの馬鹿親父の話につき合ってる暇はねェ)
「ちょっといいかシンタロー、その言い回しには大きな疑問がある。雨はともかく槍が降ってくるなんて光景を俺は生まれてこのかた見たことがな」
「じゃあな、キンタロー!」
終業のチャイムが鳴るなり部屋を飛び出し、廊下を足早に歩き出す。
「総帥―――」
「ちょっとお話が―――」
声を掛けてくる部下を全て無視してエレベーターに乗った。


部屋に一人残されて首を傾げるキンタローのもとへグンマがやってきた。
「キンちゃん、シンちゃんのOKは出た~?」
「それが、何やら急いで帰っていった」
「へえ~・・・」
「今日は豆が降ろうと瓜が降ろうと定時で帰ると言ってたな」
「何か違うような気がするよキンちゃん」
「ん? 亀が降ろうと蟻が降ろうと・・・だったか?」
「どんどん遠ざかっていってるよキンちゃん」
「とにかく飛んで帰ったな」
「へえ―――ああ、そうか」
にっこりしたグンマにキンタローが訝しげな顔を向ける。
「どうした?」
「そりゃ急いで帰るよ」
「えっ? 理由を知ってるのか?」
驚いたように眉を上げる従兄弟にもう一度ニコッと笑う。
「だって、ほら―――」


専用車を1ブロック手前で止めさせた。
「ここでいい。じゃあまた明日頼む」
走り去る車を見送って歩き出す。
「あ―――・・・どんな顔すりゃいいんだ・・」
ショーウインドに映った顔をチェックする。

適度に不機嫌そうな表情を作れているか。
意に反してだらしなく緩んだ顔はしていないか。

(・・ったく、何でこんな緊張してんだよ、自分ちに帰るだけだってのに)

でも、そこにはあいつがいる。
これからは毎日、あいつが俺を出迎えてくれる。
俺の帰りを待っている笑顔がある。
ただそれだけのことなのに、俺は何でこんなに浮かれちまってるんだろう。


「引っ越して初めての帰宅だからだと!?」
「だって今まで一人の部屋に帰るだけだったのにさ、今日からは待ってる人がいるんだよ? そりゃあ誰だって、一刻も早く帰りたいじゃーん♪」
「鮫が降ろうと針が降ろうと俺は帰るとあいつが言い張った理由はそんなことか・・・全く、馬鹿馬鹿しい!」
「馬鹿はおまえだろ」
「えっ?」
「んーん、何でもなーいv」


ドアノブに手をかけようとして、数秒躊躇った。
ごほんと咳払いをひとつ。
大きく息を吸い込んだ時、ガチャっと中から扉が開いた。
「お帰りなさい、シンタローさん!」
今にも飛びついてきそうな笑顔に、完璧だった筈のポーカーフェイスは一瞬で剥がれ落ちた。

「・・・ただいま。―――」


キッチンからは秋刀魚を焼くいい匂いがしている。


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何かシンリキっぽい…?
いえ、リキシンです。リキシンなんです。
容赦ないグンマ推奨しまくってます。

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