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作・渡井


   ラズベリー・ラプソディ

面白くない。
「じゃあコタロー、寝る前にはちゃんと歯を磨くんだぞ」
おにいちゃんは膝に手をつき、僕と目線を合わせて笑う。
横ではキンタローおにいちゃんがファイルをきっちりと揃えている。今日のお仕事は終わりみたいだ。
「明日は朝から会議が入っている。遅れるなよ」
「はーいはいはい」
ひらひらと手を振って、おにいちゃんは廊下へと消えていく。
と思ったら、扉の向こうで何だか破壊音がした。しばらくしてから「うるせえバカ親父!」というおにいちゃんの怒鳴り声が聞こえてくる。
ああ、またパパと喧嘩してる。
「だって酷いよ、勝手にお嫁に行っちゃうなんて!」
「テメー頭わいてんのか!?」
キンタローおにいちゃんがため息をついて、仲裁に出て行った。
ほんと、面白くないよ。

前まで、今日みたいにお仕事が早く終わった日は、おにいちゃんがご飯を作ってくれた。
寝る前は本も読んでくれた。
どんなに忙しくても、うちに帰ればいつだって僕がおにいちゃんの一番だったんだ。
なのに今では、おにいちゃんは車に乗って行ってしまう。家政夫が待ってる部屋が、おにいちゃんの帰るとこになってしまった、らしい。
だからこうやって僕がおにいちゃんに会いに来るんだけど―――そんなに急いで行かなきゃ駄目なのかな。
家政夫は僕の友達だけど、アイツにおにいちゃんはもったいない。
てか、生意気。

「あはは、向こうも同じこと思ってるよ、きっと」
グンマおにいちゃんがパフェのミントの葉をよけながら笑った。
今日はパパもキンタローおにいちゃんも用事があるから、グンマおにいちゃんと2人でご飯だ。どうせならって近くのファミレスでハンバーグを食べた。
外食は楽しいけど、おにいちゃんが作ってくれた方が絶対に美味しい。
「だって釣り合ってないよ。何で僕のおにいちゃんをあげなきゃいけないのさ」
にこにこしてるグンマおにいちゃんに噛み付いてやった。

グンマおにいちゃんもキンタローおにいちゃんも、僕に負けないくらいおにいちゃんが好きなくせに、2人はなぜかとっても協力的だった。
おんおん泣くパパを毎日のように宥めてるのはグンマおにいちゃんだし、キンタローおにいちゃんはお引越しの手伝いまでしてた。
「まあまあ、コタローちゃんもパフェ食べようよ。ラズベリーが美味しいよ」
「凍ってるよ」
「それが口の中で溶けるのが美味しいんだって」
すごく嬉しそうに教えてくれて、僕は渋々ラズベリーを口に入れる。
あ、本当に美味しい。
「ここのパフェ、よく食べに来るんだ」
そういえばグンマおにいちゃんは甘いお菓子が大好きなんだった。よくおにいちゃんが呆れてたっけ。
「コタローちゃんと食べに来ようって思ってたんだよ」
「そうなの?」
おにいちゃんとグンマおにいちゃんとキンタローおにいちゃんは同い年で、僕だけずっと年下だ。話題も毎日の過ごし方も全然違うから、ときどきちょっと寂しくなることがある。
だけどみんな、いつでも僕のこと気にかけてるって、こんな風に何気なく伝えてくれるんだ。
こういうときは1人だけちみっ子なのも悪くないかなぁと思う。
「コタローちゃんが嬉しそうだと、僕も嬉しくなるんだよ。だから美味しいものを食べたら一緒に食べようって思うんだ」

ああ…それは、目の前の光景を見たら分かるよ。
グンマおにいちゃん、甘いものを食べてるときすごく幸せそうだもん。
「僕もグンマおにいちゃんが嬉しいと嬉しいよ」
見てるこっちまで幸せな気分になる。
少し驚いた顔になって、それからグンマおにいちゃんはにっこりと笑った。
「それと一緒だよ。僕とキンちゃんが、お引越しに賛成な理由は」

「…知ってたの?」
「だってコタローちゃん、最近ずっと拗ねてたから」
赤ちゃんみたいに言わないで。恥ずかしいよ。
おにいちゃんが引っ越してから、僕はそんなに分かりやすく機嫌が悪かったのか。もしかしてハンバーグとパフェは、慰めてくれてたのかな。
「おにいちゃんは、家政夫といて嬉しいの?」
「だと思うよ」
「だからグンマおにいちゃんとキンタローおにいちゃんも嬉しいの?」
うん、と大きく頷いてグンマおにいちゃんは最後のラズベリーを口に入れた。
「ご馳走様。もーおなかいっぱい」
そう言いながらお腹を撫でる仕草は満足そうで、僕は思わず声に出して笑った。

ファミレスからの帰り道、僕はグンマおにいちゃんと手を繋いで歩いた。
僕はグンマおにいちゃんが好きだし、キンタローおにいちゃんが好きだ。パパも、サービス叔父さんも、ハーレム叔父さんも好き。
そしておにいちゃんが大好き。
面白くないけど、家政夫といておにいちゃんが嬉しいなら、それもいいや。


だけどまだまだ釣り合うなんて思ってないからね。
うんと大切にして、幸せにして、いっぱい嬉しい思い出を作って。

―――そしたらシンタローおにいちゃんとのこと認めたげてもいいよ、リキッド。

明日は僕がパパを宥めてあげようかな?


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修業前のイメージです。
コタローもかなりのブラコンだと嬉しい。

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