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愛しき素直さ
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気まずい。
パプワとチャッピーが出かけちまうと、不本意にもこのファンシーヤンキーと二人になる。
掃除、洗濯、食料調達、それら全ての家事的用事が終われば、はっきり言って暇だ。
いっそ出かけた二人(一人と一匹)についていこうかとも思ったが、逃げるような真似は性に合わない。
つーか俺が逃げる必要なし。
しかし、この沈黙から逃れたいのも事実で……。
……ま、何か話を持ちかける気は更々無いんだけどな。
アイツがした事を考えれば、むしろ生かしてやってるほうが不思議なもんだ。
感謝しろ馬鹿ヤンキー。
何で俺がこんな窮屈な思いしなきゃなんねぇんだ。
「あの……」
話し掛けんな。
「…………」
途中で止めんじゃねぇ。
「あの……」
ぁんだよ。
「怒って、ます?」
「怒ってねぇ」
んなに年がら年中怒ってられるか。
「…………」
「…………」
沈黙。
ああ、面倒くせぇ。
なんだってんだ。
口を開きかけては何も言わずに閉じる。
見ててムカつくんだよ!
「…………もういい」
「え、え? あの?」
俺は寝る。
起こすんじゃねぇぞ、ヤンキーが。
毎度のことだが寝てる横に居座るのも止めろ。
鬱陶しい。
「――――あのっ……!」
「……何だよ」
思い切ったような顔はいいが、耳まで赤いぞ?
恋する女子高生かお前。
…………いや、今のは自分で言ってて嫌になった。
うぇ。
「俺っ……」
だから早く言えよ。
寝るぞー、俺。
はい、後五秒。
四~三~……。
「俺、やっぱシンタローさんのこと好きです!」
――――ッ。
…………。
お前さ。
何つーか……。
恥ずかしい奴。
頬染めながら真顔で言うなよ。
気色が悪い。
男にモテてもなぁ?
俺、顔はいいからなぁ……。
「アナタが好きです」
「…………」
……見んなよ。
「俺っ、いっぱい考えたんっスけど……」
んな目で見んな。
「馬鹿だから、結局それしかなくって……」
っ……俺が困るだろ。
「だから、許してくれなくてもいいですから――――」
そんな縋るような目で見られたら。
「俺のこと、嫌わないで下さい」
放っておけないだろ?
そういう顔してる奴を。
そんなに人間できちゃいねぇ。
……甘いだとか、よく言われたもんだ。
クソっ、自分でも分かってんだよ。
「ばぁーか」
何、許可なく一人で結論出してんだ。
見た目通りに頭悪ィな、馬鹿ヤンキー。
「え……」
……俺は。
面倒なのも、
鬱陶しいのも、
気色悪ィのも、
全部気にいらねぇが。
「……嫌いじゃないぜ。素直な奴は」
嫌いな奴と暮らせるほど、聖人君主様じゃねぇ。
「え、えっ?」
ああ、嫌いじゃねぇよ。
好きじゃねぇけど。
「だから、コレで満足しろ」
「へっ……」
何っつーか……犬撫でてるみてぇ。
あー、結構触り心地良いなー。
「昼寝すっからな、起こすなよ」
本気で眠くなってきた。
首がよく鳴ってやがる。
ったく、お前のせいで変に気疲れしちまっただろーが。
「あ、ぅわぁ……」
だから、ちょっと頭撫でたくらいで顔真っ赤にしてんじゃねぇ。
ニヤけるな気色悪い。
「へへっ……。 大好きです、シンタローさん」
何度も言うんじゃねぇ。
恥ずかしい。
この馬鹿が。
END
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後書き
愛されているというのは、とても幸せなこと。
なんだこのバカップル告白話は。
この前にも話あったんですが、恥ずかしすぎてリテイク決定。
きっとその内UP予定……。
でも前の話なくても読めそうですね。
書いといてなんですが、正面切って報われてるリキッドなんてなんか違う気がしてならないんですが……!(酷)
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