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雨が止むまで / Side S
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スコールなんてついてない。
出先ででくわして、立ち往生を強いられて、仕方なく雨が止む迄と入った飛空艦の残骸。
しかも今回ヤンキーと一緒かよ。
……状況的にため息をつきたくなるのは、仕方がないだろ。
ああ、洗濯物がやり直しだな……面倒くせぇ、とか。
ヤンキーの視線がウゼェ、とか。
いつまで降ってんだよ、とか。
降り止まない雨を見ながら、そんなことを考えていたら。
「……」
「……」
いつの間にか寝てしまったらしく……。
目が覚めると、随分とおかしな状況にあった。
「……」
正面に、顔がある。
やたらと幸福そうな顔。
「……起きたっすか?」
笑って話しかけるそれ……を。
ゴッ!
多少加減して(少なくとも俺はしたつもりだ)殴りつけた。
「何するんっすかー!」
「お前こそ何する気だっ! いや、まさかもうしたのか?!」
何で俺がお前に寄りかかって寝てんだよ!
道理で、この雨の中寝てたってのに寒くなかったはずだ。
殴られたことに抗議の声を上げる相手を、無視して睨みつける。
不覚だ……マジで。
何かしてやがったら殺す。
「な、何もしてませんっ……! ただ、鉄よりは、マシかなって……」
寄り掛かる前までもたれていたであろう外装は、確かに冷たく硬そうだったが……。
「余計な事すんな」
普段無下にしている人間にもたれて、全く気付くことなく眠っていたなんて。
誰が許しても俺自身は許さない。
「すんません。……良く寝てたから……」
起こしたくなくて……と言葉を続ける。
だから、無意識にそういう顔をするから嫌いなんだよ。お前は。
「どれくらい寝てた」
「まだ五分と経ってないっすよ。小降りになったけど、まだ雨降ってますし……疲れてるんっすよ」
「違ぇよ」
言われた言葉を即座に否定する。
そりゃ、気候に体が慣れないとか、生活リズムがずれてるとか、そういうのはあるんだろうが……。
そんな事で疲労する程やわな作りじゃねぇ。
そんなもんとっくに直した。
俺はただ眠かっただけだ。
「いいっすよ、寝てても。別に急いでるわけじゃないんだし」
「違ぇって」
「ちゃんと起こしますから」
「……」
人の話なんて聞いちゃいねぇ。おそらく俺を優先してくれているのだろうその好意に、素直に甘えることもできない自分……。
しかたねぇだろ? 俺はこいつみたいに馬鹿正直に生きちゃいねぇ。
……それでも。
「……シンタローさん」
厄介なことに相手は以外と頑固者で。
「……シン」
「あぁ! くそ! わかったよ!」
結局、最後で折れてしまう。
不服に思うがどうしようもない。
「……肩貸せ」
「へ……」
「お前のせいで壁じゃ寝心地悪ぃんだよっ」
一旦覚えた暖かな感覚は、なかなか忘れられるものでもなく。
「……はいっ」
悪態めいた呼び掛けにすら、笑って応えるその顔が、何だかやたらにイラついて。
だから、
「……おやすみ」
「はい」
心地良いなんて、絶対言ってやらない。
END
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後書き
まただいぶ短くなってしまいました。
ちょっと両想い的雰囲気で。
どうもシンタローさん目線が難しいのです。
やはりシンタローさんに恋するリキッドと同じ目線だからでしょうか(は?)
そんなこんなで結局シンタローさんが好き!なシンタロさん誕生日記念!
2005(May)
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