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雨が止むまで / Side L



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 ジャングルに雨なんてのは、特別珍しいってわけじゃない。
 すぐあがるような激しいスコールは、このクソ暑い中で木々に歓喜を与えてくれる。
 それはまぁ、植物だけの話じゃなくて、動物や人間にだって言えるのだけれど……。
「っだー! 何で今降ってくんだよッ!!」
 何も今……とは俺も思う。
「まぁ少しの間っすから……」
 今回はちょうどタイミング悪く外に出ていたりして。
 俺も、隣で機嫌をすこぶる悪くしている人も、その場から動けないまま大きく息をつく。
 最初は頬にあたる程度だった雨が、激しく体に叩きつけるようになるまで、そう時間はかからなかった。
 仕方無いと、入った飛空艦の残骸の下、鉄に叩きつける雨音がうるさい。
 ああ、でも二人きりってのは、結構ラッキーなのかもしれない。
「……ぁんだよ」
「いえ、何も」
 顔がにやけそうになるのを必死でこらえて、横顔を盗み見た。
 少しだけ濡れた黒髪が、妙に艶やかで……ドキドキしてくる。
 あー、俺重症。
 雨音がバシバシうるさくて、そんな中で会話を続けるのも面倒だったんだろう、シンタローさんが黙りこんでしまったから、俺も黙るしかなかった。
 息苦しくないと言えば嘘になるけど。
 それでも何か用事とか、話すこととか、浮かんでくるわけでもなかったし、不用意に話し掛ければ「くだらないことで呼ぶな」とか言われるだけだし?
 ……前言撤回。あんまり幸運とは言えない。
 悲しすぎる……。
 どうせ自分は食物連鎖の最下層ですとも。
「……だから何々だよ」
 視線に気付いたのか、やたらと鋭い目線が向けられた。
 二回目なので流石に機嫌が悪いです。
 いや、その、すんません。もう見ません。
「いえ、何でも……」
 構って欲しいだけなのに。
 仕方なしに大人しくしていようと、小さく息をついた。
 すぐ隣にいるというのに、何も出来やしない。
 特に何かしたいのかと言えば、そういうことじゃなくて……。
 一方的なのが寂しい。
 ひたすらぐるぐると考え込んで。
 どうにもならないのは、分かっているんだけど。
 悩みこむのはガラじゃない。
 しかも他人から見ればものすごい馬鹿な悩みだと思う。
 ただ、
 こっちを見て欲しいとか、
 もっと話したいとか、
「構ってくんないのかなぁ…」
 呟いてしまってからハッとする。
 聞こえたかもしれない……!
 あのっ、今のはその……! ただちょっと遊びたい盛りの犬の気持ちというか……。
 慌てて振り返る。と……。
「シンタローさん?」
 てっきり怒られるものと思い込んでいたのに、反応は何もない。
「シンタローさん?」
「……」
 覗きこむと、聞こえてきたのは小さな寝息。
「寝てる……」
 なんて無防備な。
 この人はこの島に来てから良く寝ている。
 きっと、他のどこでそうするより安らかに。
 こうして傍で眠ってくれるのは、信頼されているのだと思ってもいいのだろうか?
 ……あ、ヤバイ。
 今。
 すげぇ嬉しかった。
 俯く横顔を見ながら、その向こうの雨が弱まってきているのに気付く。
 どうやら今回は早々と止みそうだ。
 雨が止めばいつも通りのからりとした日が射す。
 掃除、洗濯、食事の支度、やることは充分過ぎる。
 暇がない。
「……」
 上手くバランスをとる体を、少し傾けさせて自分に寄り掛からせる。
「ん……」
 起こしてしまったかと思ったが、身じろいだだけで、再び寝息が聞こえて来る。
 肩の熱に愛おしさを感じながら、一人で苦笑する。
 掃除、洗濯、食事の支度。
 やることは充分にある。
 それでも
 何を置いても優先させたいなんて言ったら、怒られるんだろうか。
「でもまぁ…」
 しばらくはこのままでもいいだろ?
 これくらいの役得は許されてもいいはずだし。
 雨が止むまで、あと少し。
「おやすみなさい、シンタローさん」







END





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後書き

私のリキシンに対する最初のイメージ。
シンタローさん良く寝てる。という妙な思い込み。
いや、島に帰ってきたばかりの頃はそうであって欲しいという、やはり思い込み。
総帥業の疲れを一気に寝だめ(笑)して回復してるシンタローさんの寝顔に、
胸キュンなリキッド。というのが最初に感じたリキシンだった気がする。
そんなこんなで初心(?)に戻ってみるリキッド誕生日記念!

2005(May)



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