【世間体】
ふと、いつものようにオヤツの食べながら何気なくTVをつけたらアニメの番組がやっていて
丁度、今、クラスでも大人気らしいから‘ガキくさいな’と思いながらもシンタローはそれに見入っていた。
内容は、10歳だと言うアニメの主人公が、母親と毎晩おやすみのキスをしていて
それを知った主人公の恋人の女の子が‘気色悪い!最低!’と、主人公をこっ酷くフる話だった。
咥えていたポテチが彼の口から離れて静かに床に落ちた。
シンタローも今年で10歳になる。
そして、シンタローはこの歳になって未だに・それも母親ではなく父親とおやすみのキスをしていた。
それだけじゃない。
おやすみのキスどころか、おはようのキス、おかえりなさいのキス、ただいまのキス、
何か祝い事があるとその度におめでとう、ありがとうのキス。
今の今まで周りもやっているもんだと思っていたから、そんな事、わざわざクラスメイトに聞いた事もなく
しかし先程のアニメを見て、これまたやはり誰かに聞いて確認できるものではない。と強く思う。
もしも周りがそうじゃなかったら、と思うと怖くてしょうがなくなる。
ひょっとしてひょっとしなくてもオレって異常だったのか、とシンタローは苦悩した。
こんな時は、同じく親ばかな親を持つ従兄弟に意見を求めてみようと、
シンタローはさっそくグンマに電話をかけた。
だらだらとくだらない前置きを喋り、やっと、本題の‘おやすみのキス’について話し始める。
グンマはあっさり‘するよ’と答えた。
ひとまず安心する。だよな~!とシンタローは返事をした。
「シンちゃんはしないの?」
「す、するよ。おやすみどころか、おはようも、おかえりも。」
それを聞いて‘え!’とグンマの口から驚きの声が上がった。
「シンちゃん、それ、すっごく変」
グンマの言葉がシンタローの胸をぐさーっと突き破った。
あぁ、やっぱり、やっぱり可笑しかったんだ。異常だったんだと倒れ付した。
それなのにオレってばオレってば事あるごとに父さんとキスして・・・
シンタローはショックから立ち直れず、‘オマエだってあのドクターとおやすみのキスしてるじゃんか’と
反論する事もできずに、電話を切った後は部屋に篭ってベッドに潜っていた。
夜が更けて、悩みの種が帰宅した。
マジックはシンちゃ~~んと意気揚々と名前を呼ぶ。
その声を聞くなり、シンタローはバタン!と威勢良く部屋のドアを開き、父親のいる玄関へ向かった。
「あぁ、ただいま!シンちゃん!さぁ、おかえりなさいのちゅーは?」
「父さん!」
ぎっと鋭く睨んだ。
「おかえりなさいのキスも、おやみのキスも、もうしない!父さんとキスなんかしない!」
その宣言に、マジックは一瞬顔を強張らせ、すぐに‘何で!?’と息を吹き返した。
「だって、変だ!」
「変じゃないよ!何、何?いきなりどうしちゃったんだい?」
「変だって!普通は父親とそんなにしょっちゅうキスしないもんなの!」
「他所は他所!ウチはウチ!!さぁ、パパとキスしよう、ね?」
しない!とマジックの足を思いっきり踏みつけると、シンタローは一目散に自分の部屋へ戻る。
後に残されたマジックはと言うと石になってその場に固まっていた。
頭の中はそんな馬鹿な!と言う言葉が駆け巡る。
これは、急に‘パパ’と呼ぶのを止められた時と並ぶ程の精神的衝撃であった。
いつものようにただいま~と帰宅したら、シンタローは、‘おかえり父さん’と。言うようになっていて。
その時はその場に崩れ落ちた。
こうやって人は成長していくものだと頭では解かってはいるけれど感情がついていかない。
ひたすらに悲しかった。
せめて、せめておかえりなさいのキスくらいはさせてくれたって良いのに。とさえ思う。
あぁ、そう言えばお風呂もちょっと前までは一緒に入ってたのに突然‘嫌だ’と言い始めたな。
男同士なんだから成人するまで、いや成人してからだって一緒に入っても良いんじゃないの?と考えた、が
直ぐに‘お父さんとお風呂に入るのは恥ずかしいから嫌’なシンタローに激しく興奮を覚えた。ので
それはまぁそれで・・・良いか。と彼は勝手に納得した。しかし何年か後にはすぐにその考えを撤回するようになる。
このままいつかはシンタローは恋人をつくって、結婚して、私の傍から離れてしまうのだろうか。
まだ遠い先の未来を想像してじわ~っと涙でマジックの目が滲んだ。
物凄く辛い未来だ・・・
あぁ、シンちゃん、シンタロー
一生小さいままでいて欲しい。
いつまでも小さいままの、パパの可愛いシンちゃんでいて欲しい。
しかし、成長したシンタローも見たい。
今も充分可愛いけれど、成長したらさぞ可愛さにぐっと色気がプラスされるに違いない。
私はどうしたら良いんだ!と叫ぶと、その声に近くにいた側近がビクリと怯えた。
いつから口に出してたかな?とマジックが尋ねると
側近は、せめておかえりなさいのキスくらいはさせてくれたって良いのにの辺りから
だんだん声が大きくなっていきました・・・と、目を背けながら正直に答えた。
広い家のせいかまだ自分の部屋に辿り着いていなかったシンタローの耳にも勿論届いていて
廊下の奥の方から‘父さんの変態!!!’と、怒鳴り声がした。
未だに玄関で靴もコートも脱いでいない、帰って来た時の姿のままでマジックは
‘だってシンちゃんが悪いんじゃないか!’と勝手な事を言う。
シンちゃんが、可愛いからいけないんだよ!とも言った。
「おかげでパパはオマエの事ばっかり考えてる!どうしてくれるんだい?」
その、‘どうしてくれるんだい?’にシンタローは知らないよ!と叫んだ。
ふと、いつものようにオヤツの食べながら何気なくTVをつけたらアニメの番組がやっていて
丁度、今、クラスでも大人気らしいから‘ガキくさいな’と思いながらもシンタローはそれに見入っていた。
内容は、10歳だと言うアニメの主人公が、母親と毎晩おやすみのキスをしていて
それを知った主人公の恋人の女の子が‘気色悪い!最低!’と、主人公をこっ酷くフる話だった。
咥えていたポテチが彼の口から離れて静かに床に落ちた。
シンタローも今年で10歳になる。
そして、シンタローはこの歳になって未だに・それも母親ではなく父親とおやすみのキスをしていた。
それだけじゃない。
おやすみのキスどころか、おはようのキス、おかえりなさいのキス、ただいまのキス、
何か祝い事があるとその度におめでとう、ありがとうのキス。
今の今まで周りもやっているもんだと思っていたから、そんな事、わざわざクラスメイトに聞いた事もなく
しかし先程のアニメを見て、これまたやはり誰かに聞いて確認できるものではない。と強く思う。
もしも周りがそうじゃなかったら、と思うと怖くてしょうがなくなる。
ひょっとしてひょっとしなくてもオレって異常だったのか、とシンタローは苦悩した。
こんな時は、同じく親ばかな親を持つ従兄弟に意見を求めてみようと、
シンタローはさっそくグンマに電話をかけた。
だらだらとくだらない前置きを喋り、やっと、本題の‘おやすみのキス’について話し始める。
グンマはあっさり‘するよ’と答えた。
ひとまず安心する。だよな~!とシンタローは返事をした。
「シンちゃんはしないの?」
「す、するよ。おやすみどころか、おはようも、おかえりも。」
それを聞いて‘え!’とグンマの口から驚きの声が上がった。
「シンちゃん、それ、すっごく変」
グンマの言葉がシンタローの胸をぐさーっと突き破った。
あぁ、やっぱり、やっぱり可笑しかったんだ。異常だったんだと倒れ付した。
それなのにオレってばオレってば事あるごとに父さんとキスして・・・
シンタローはショックから立ち直れず、‘オマエだってあのドクターとおやすみのキスしてるじゃんか’と
反論する事もできずに、電話を切った後は部屋に篭ってベッドに潜っていた。
夜が更けて、悩みの種が帰宅した。
マジックはシンちゃ~~んと意気揚々と名前を呼ぶ。
その声を聞くなり、シンタローはバタン!と威勢良く部屋のドアを開き、父親のいる玄関へ向かった。
「あぁ、ただいま!シンちゃん!さぁ、おかえりなさいのちゅーは?」
「父さん!」
ぎっと鋭く睨んだ。
「おかえりなさいのキスも、おやみのキスも、もうしない!父さんとキスなんかしない!」
その宣言に、マジックは一瞬顔を強張らせ、すぐに‘何で!?’と息を吹き返した。
「だって、変だ!」
「変じゃないよ!何、何?いきなりどうしちゃったんだい?」
「変だって!普通は父親とそんなにしょっちゅうキスしないもんなの!」
「他所は他所!ウチはウチ!!さぁ、パパとキスしよう、ね?」
しない!とマジックの足を思いっきり踏みつけると、シンタローは一目散に自分の部屋へ戻る。
後に残されたマジックはと言うと石になってその場に固まっていた。
頭の中はそんな馬鹿な!と言う言葉が駆け巡る。
これは、急に‘パパ’と呼ぶのを止められた時と並ぶ程の精神的衝撃であった。
いつものようにただいま~と帰宅したら、シンタローは、‘おかえり父さん’と。言うようになっていて。
その時はその場に崩れ落ちた。
こうやって人は成長していくものだと頭では解かってはいるけれど感情がついていかない。
ひたすらに悲しかった。
せめて、せめておかえりなさいのキスくらいはさせてくれたって良いのに。とさえ思う。
あぁ、そう言えばお風呂もちょっと前までは一緒に入ってたのに突然‘嫌だ’と言い始めたな。
男同士なんだから成人するまで、いや成人してからだって一緒に入っても良いんじゃないの?と考えた、が
直ぐに‘お父さんとお風呂に入るのは恥ずかしいから嫌’なシンタローに激しく興奮を覚えた。ので
それはまぁそれで・・・良いか。と彼は勝手に納得した。しかし何年か後にはすぐにその考えを撤回するようになる。
このままいつかはシンタローは恋人をつくって、結婚して、私の傍から離れてしまうのだろうか。
まだ遠い先の未来を想像してじわ~っと涙でマジックの目が滲んだ。
物凄く辛い未来だ・・・
あぁ、シンちゃん、シンタロー
一生小さいままでいて欲しい。
いつまでも小さいままの、パパの可愛いシンちゃんでいて欲しい。
しかし、成長したシンタローも見たい。
今も充分可愛いけれど、成長したらさぞ可愛さにぐっと色気がプラスされるに違いない。
私はどうしたら良いんだ!と叫ぶと、その声に近くにいた側近がビクリと怯えた。
いつから口に出してたかな?とマジックが尋ねると
側近は、せめておかえりなさいのキスくらいはさせてくれたって良いのにの辺りから
だんだん声が大きくなっていきました・・・と、目を背けながら正直に答えた。
広い家のせいかまだ自分の部屋に辿り着いていなかったシンタローの耳にも勿論届いていて
廊下の奥の方から‘父さんの変態!!!’と、怒鳴り声がした。
未だに玄関で靴もコートも脱いでいない、帰って来た時の姿のままでマジックは
‘だってシンちゃんが悪いんじゃないか!’と勝手な事を言う。
シンちゃんが、可愛いからいけないんだよ!とも言った。
「おかげでパパはオマエの事ばっかり考えてる!どうしてくれるんだい?」
その、‘どうしてくれるんだい?’にシンタローは知らないよ!と叫んだ。
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