雨が降っており、昼間にも関わらず辺りは暗かった。その中、遠征中であった部隊がガンマ団に帰ってきた。特に出迎えるものも無く、部隊はいつもどおり帰還後の作業を淡々とこなしていた。
夜半になっても相変わらず雨は降り続いている。
アラシヤマは、戦場とは一転して清潔そうなガンマ団内の廊下をノロノロと歩いていた。
とあるドアの前に立ち止まりドアの方に手を伸ばそうとしたが、少しためらった末、手は力なく下に下がった。そのまま踵を返し、元来た方向に足を踏み出したところ、
―――ドアが開いた。
「オマエ、ウゼーんだヨ!部屋に入るなら入る、入らねーんなら、来んな。俺は、ハッキリしねェのは嫌いだ」
シンタローは、不機嫌そうにそう言った。
アラシヤマはぼんやりと、総帥服を着ていないシンタローを見て、
「・・・あの、入ってもええんどすか?」
と聞くと、
「知るか!」
という返答が返ってきた。
部屋の中に入ったものの、アラシヤマがドア付近に突っ立っていると、
「オマエ、どーせ何も食ってねェんダロ?何か作ってやっから、座ってろ」
シンタローがそう言って、キッチンの方に姿を消そうとすると、
「シンタローはんッツ!わてもそっちに行ってもかまいまへんか?」
アラシヤマは必死な様子であった。
彼は、シンタローが、テキパキと忙しそうに立ち働く姿を食卓の椅子に座ってぼんやりと見ていた。手伝えることは、何も無いと判断されたらしい。
「オラ、残すと承知しねーからナ!」
と、アラシヤマの前に丼が置かれた。蓋を開けると卵丼である。
ガツガツと食べ始めたが、だんだんと落ち着いてきたようで、最後の一口をゆっくりと味わうように食べると、箸を置いた。
「御馳走さまでした」
「ああ。やっと正気に戻ったか」
「・・・迷惑かけて、すみまへん」
「後片付けはしておけヨ」
「モチロンどす。それにしても、シンタローはん。シンタローはんの作ってくれはったご飯を食べますと、他のは食べられまへんわ」
そう、アラシヤマは苦笑いしている。そして、何か考え込んだ様子であった。
「―――時々、ええんやろか思う時もおます」
椅子に片膝を立て、その上に頬杖を衝いて座っていたシンタローは、
「オマエがそんなことを言うなんて、いつも以上にキモイ」
と断定した。
「い、いつも以上てなんどすかッ!?もしかするとひょっとして、あんさんいつもわてのことキモイ思うてましたんッツ!?・・・ひどうおます~!わての繊細なハートが傷つきましたえー!!」
「―――どーでもいいけど、俺はもう寝っから。じゃーナ!」
「えっ?今夜は久々にわても一緒に・・・」
「眼魔砲!」
しばらくして、台所からは水音が聞こえてきた。
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