ゴキゲン
「はぁ~いここからは、エロエロティック・タイムでェす」
「埋めてやるから死んでくれ」
「え~いいじゃないか~。遊ぼうよ」
「仕事中」
「だってもうこれ一つで終わりだろう?」
「…アンタなあ、本気で俺に引き継ぐ気ィあんのか? サポートするっつーからここん所ずっと一緒にいるけど碌に仕事しねェじゃねーか!」
「SMごっこをしよう!」
「………」
「うんあの頸椎ヒットは痛めかななんてはっはっは。シンちゃんがSでいいヨ!」
「あぁ?」
「シンタローのSはサドのSでしょ。パパのMはマゾのMでしょ。ホラぴったり!」
「SはMを埋めてもいいのか?」
「はいはいシンちゃんパパのお膝に座って~! 人間椅子だよ!」
「聞けヨ」
「肉椅子! 家畜人ヤプー! あ、ヤプーだとシンちゃんがMになっちゃうね!」
「……」
「ヤプーってねー未来の話でねー。日本人が白人美人の、んーなんて言うのかな…ぶっちゃけ性隷? こう色々肉体改造とかしちゃってねーェ」
「知ってるよ気色の悪ィ……。アンタの本棚なんなんだ」
「おや、どうしてパパのコレクションをシンちゃんが知ってるのかなァ?」
「う。ッ…不本意ながら。ガキん時に単なる興味で親父の本棚見たんだよ!」
「はっはっは。シンちゃんたら・エッチ★」
「…やってやろうじゃねェの。縛って叩いて磔か? どれからだ?!」
「だ・か・ら。はい膝の上! よぉーしパパ頑張っちゃうゾー」
「…はー………仕事するんだから喋るなよ。黙ってろよイス!」
「わーいv」
*****
「親父…あのさあマジな話、」
「んー?」
「本気で意味がわからない」
「んー♪」
「単にソファに座ってるアンタの上に座ったこれの、どッこがSMなんだよ! もっとこー器械体操のピラミッドの体勢とか、あンだろ乗られて苦しい格好がよ!」
「んっふっふー♪」
「しゃ・べ・れ。コノヤロウ」
「酷いなァ。黙れって言ったのはシンちゃんじゃないか~。仕事は? いいの?」
「あー……も・いいや。方針は決めたから、どっちにしろ明日キンタローたち招集して草案練るしな……親父も責任とって叩き台の3つや4つ、根性で出せヨ!」
「OK! パパはシンちゃんの責任だったら幾らでもとるさ! じゃあまず結婚しようか!」
「じゃあの意味がわからない。つーか普通のイスにシートベルトはアリマセン。手ェど・け・ろ・よ! この、馬鹿力!」
「え~だって、仕事終わったんでしょ?」
「チッ…………SMぅう~~~?」
「まあまあ。そんなイヤそうな顔しないで。シンちゃんの好きなようにしていいからさv ね?」
「~~~~手、どけろって。… そっち、向くから」
2003.12.20. BGM:マジックの憂うつ
シンちゃんは幼少パパの蔵書を読みかけましたが
きもち悪くなってやめました。不審感つのるつのる。
「……ご主人さま、」
ソファの上で、マジックの両脚を跨ぐようにして俺が見下げた光景。
顔を近づけてほんとうにギリギリのところで熱っぽく呟いたマジックの唇が、俺の唇をちらりと掠めたのに、うわ、と思いながらキスをした。
初めて呼ばれるその響きに、ぜんぜん慣れていなくて、一気に熱があがった。
こういう、ちょっとしたところで煽るの巧いよなァ。
何だか口惜しい思いでゆるりと開いて待っていた口中に舌を伸ばして触れても絡めてこない舌先に、あ、ホントにマグロだ。と思う。
…Mってマグロの事だったか? ホントにってなんだよ。
つか、俺主導のキスって。
これもあんまり、ない。つーか、ない? え、なかった? いやまさかンな事。
変なところで男の沽券にぐるぐるしてしまう。まだキスの途中だ。
「……俺の好きなように、って?」
唇を離すと目を合わせるのが忌々しくて、ぎゅ、と強く首に腕を回して確認する。
…あんまり抗わないから、このまま絞めてしまえるんじゃないかとさえ思った。
「うん」
頷く感触に、ぞくりと肌が粟立った。ああこのひとが好きだ。
理窟なく、埒外に。唐突に思う。
好きなようにって、何だ。好きなのと好きなようにと違うのか。それって俺が今まで好きなようにやってきてないって事なのか。好きな気持ちと好きな行為は違うのか。俺だってちゃんと好きなようにやって、
っいやいやいや待て待て何だその恥ずかしい考えはッツ!
頭の中でぐるぐるしすぎて親父を抱きしめたままでいると、俺のとっくに張りつめてしまった部分を一度だけ、撫ぜられた。
うっわ俺、段取り悪ぅー。
「触れよ」
しなきゃそれ以上動かなそうだったので、憮然として命令を、した。
…されたほうは命令だかゴネられたんだか、どう受け取ったかは知らねェけど。
「Sir.Yes.Sir.」
軍隊なんか統率した事はあっても入った事なんかないだろうに、そう嘯く親父に、ヂ、とファスナーを下ろされて解放され。
「ッ……ゥ…」
つ、と親指が先端を縁取り撫ぜていく。
身体の芯の、腰のところ。にぶく重くなるような。
直接キた快感に眉を寄せた。
どうされても気持ち良く弄られている自分をうっとり眺めていたのに、視線を感じて顔をあげると嬉しそうな眼があって、瞬間、瞳を伏せた。
「…見てんじゃねぇよ」
親父の余裕に対して、こっちはなんだかものすごく分が悪い気がする。
視線を遮るように膝立ちして、マジックのさらさらの金髪を抱えて、唇を合わせた。最中いつもされているみたいなキスじゃなく俺の好き勝手に、キス。
静かだなあと思うのは、やってる時にいっつも親父が色んな事囁いてくるからだろう。なんて言うか、アイシテルとかスキダとか、親父みたいな事は絶対言いたくない俺主導だと黙々とただ単にやりたい情動だけでやってるだけ、みたいな感じでちょっと複雑な気持ちになった。
…言葉責めがイイって話じゃないんだが。
舌にやわく噛みついて引っ張りし出してみたり、唇を重ねるだけだったり。
ずっと舌を絡めているような濃厚なのじゃない、遊びのようなのを繰り返すのは、俺が子供っポイっていうんじゃなくて。
ずっとなんてしてたら息が苦しいからであって。
キスの合間に息をする。
その間に親父の瞳を至近から覗き込むと、まばたきの先には欲情の色しか見えなかった。煽る手の動きと、キスと、呼吸と、キスを重ねる毎にリズムが重なってきているから、きっと向こうから見ても自分の瞳も同じように欲情しか映していないんだろう。
そういうキスを繰り返す間に親父は俺の腰が上がっているのを良い事に、下を全部脱がしてしまった。
「 」
蕾に直に触れられて、すぐ近くの予兆に身奮いしたのに、マジックの指は犯す事なく入り口を行き来する。
「どれが、」
「あ…?」
「どの指入れて欲しい?」
「…! このっ…言、えるかよッ……」
欲しくて疼くのは確かだけれど。言いたくないものは言いたくない。
「ちゃんと教えてくれないとパパ分からないなー?」
くそ、好きなようにしていいって言った癖に! 嘘つき親父めっ!!
親父の揶揄に頭に来て、今まで寄せていた身体をがばっと起こして蕾を玩ぶ手を引きはがした。腹が立つセリフにすら頭がジンジンする。
「~~~っ俺の好きにしてイイんだろっ!?」
言い放って中指の爪先に齧りついた。
マジックが痛みに顔を鹿爪るのを様ァ見ろとしっかり見届けてから飲み込む。爪に喉の手前を引き掻かれて少しだけえずいたが気にしない。続けて人差し指にも噛みついた。
マジックの眉根の皺が強くなる。
「まったくもって沈黙は金、だねェ。……2本も欲しいんだ?」
それなのに楽しそうな声音でずばりと指摘されて頬が熱くなった。
む、ムカつく…!!
「大体てめえがムリ言うから…ッツ!」
身包み剥いで喰い尽くしてしまいたくなった。
感情に任せて勢い引っぱると2人でソファから転がり落ちて、乗り上がる。
ベッドまでなんて、とてもじゃないが遠すぎて気持ちが間に合わない。
生憎、ひどく気分が高揚していた。
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