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余計な鎖


You're so fucking special
I wish I was special








 Tokyoに初めて来た時の事だ。
 その頃の俺はシンタローと分化して暫くというぐらいで、シンタローの内に抑圧されていた時のような、シンタローというフィルター越しの世界と違う、よりリアルで新しい“体験する事”を新鮮に感じていた。
 回数は、まあ多くはないが少なくもない程度に、請われれば。その程度だ。

 ただマジックを交えて、というのは初めてだった。プレジデンシャルスイートの密室で初めて3人で、初めてづくしで東京の思い出にはなるな、と頭の隅で思っていた。…こういう時は善し悪しは別として、と加えておくのが文法上正しいか?
 否マジックを交えて、というのは誤謬かもしれない。マジックがいればシンタローはマジックとやる、俺が二人の行為に交じるのが初めて、それが正しい。
 シンタローが俺と欲を吐き出すのは大抵、マジックがいない時。シンタローのパターンだと、ある程度の回数のうちに俺はそれを理解していた。

 未分化時の俺をどう表現すればいいのだろう。
 多重人格者の説明のように、ステージに出たり引っ込んだり、というのは分かりやすい表現だ。真っ暗な世界の中、スポットライトで一点だけ照らされた、丸く光で切り取られたかのような人格のステージ。そこに二十数年立ち続けたシンタローと、シンタローの演技を闇から見続けた、永遠に出番の回ってこないバイプレイヤーでもありオーディエンスでもある俺。ステージ上のシンタローが語り、感じ、どう行動するか、シンタローを見てシンタローの世界を推測し理解する、それの繰り返し。だからこそ俺は、唯一の存在だったシンタローをただ憎んだ。俺達の状態を仮に“ステージ”と言ってのけるとしたらそういう事だ。シンタローと俺が共有している部分を、こころと称してしまえば確かに分裂しているのだろう。
 そして真実俺達は永遠に分かたれた。Till death do us part,死が2人を別つまで、なんて道徳的な誓いを立てた事もこれから立てる気も一切ないが、兎に角俺達は生きて俺達になり、取り敢えず今は道徳観念からかけ離れた一室にいる。

「んっ……んっ…んっ…んうっ」
 突き上げられる快感は、俺の身体にも残っている。シンタローを追い出す前からこの身体は、今同じベッドにいる血縁のこの男に、とっくに穿たれているからだ。これは分裂と並べた表現では事足りぬ感覚だろう。…ああ、やはり違うな、人格のステージなんて表現では言い切れない感覚もあるか。そう、確かに共有もしていた。主人格だからという問題ではなく、お互いが覚えている。否、共有している事もある。…面倒な。
 くぐもったシンタローの喘ぐ声は後ろから責めたてる俺の律動に揃えてあがる。
 シンタローが喘ぐのは俺も責任の一端ではあるが、その声がくぐもっているのは俺のせいではない。
「苦しいようなら、こっちは少し休もうか? シンちゃん」
「んっ。…や・ぁっ!」
 早速とした息苦しさに笑ってマジックが怒張する自分自身を口に銜えこんだシンタローの顔をあげようとしたが、唇から離れようとするそれにシンタローは頑是なく追いすがった。
 再び深く銜えられ、これでもかというばかりに、ぢゅッ、と音を立ててきつく吸い上げられて思わずマジックも息をのむのが分かる。そんな2人を間接照明の薄暗さは俺の目の前に淫靡に映しだしている。
「いつも、こうなのか?」
 腰の動きを休めず俺が訊くと、マジックも欲情したまなざしのままで笑って見返してきた。
「いや、3人でなんて初めてだよ。随分…シンちゃんはお気に入りみたいだけど。…キンちゃんとはいつも3人で?」
「いや、俺も初めてだ。…俺が訊いたのは、シンタローが伯父貴とする時はいつもこんなに興奮しているのかという事だ」
「フフッ…君らのいつもっていうのがどんなのか、聞いてみたいねぇ」
「ん…そうだな…」
 いつもの感覚を思い出せるように、動きを止めてみると、シンタローの舌の動きだけが部屋に響いた。
「さして、自慰と違いはないだろう。独りでもやれるが身体が2つあるんならお互いで吐き出したほうが感度が増すだけ手っ取り早い」
 言うとマジックは少し呆けた顔をした。
「だからこんな風に貪欲なシンタローは初めて見る」
 俺が生真面目に正直な感想を言うと、シンタローはヒクリと少し反応しただけで押し黙ったまま、マジックは少しだけ我慢をしてすぐに堪えきれずに肩を震わせて笑った。
「…他には?」
「……あんまり熱中しすぎてイク時には目を閉じて『父さん』って言ってる」
「! ンな事っ……ぐッ!」
 これには異議ありだったのか、シンタローが抗議の声をあげようとしたがマジックに頭を抑えこまれて思い切り喉をついたようだ。
「それはそれはそれは…いー事を聞いたv」
「あとは……酔った拍子に俺は男でも女でも金髪碧眼としかやったことがないとか何とか。随分と自慢気に喋ってたな…。代償行為だと俺は分析しているんだが」
「    !     ッッ!」
「そうなんだ? ところでシンちゃんはキンちゃんに動いて欲しいみたいだねェ」
「そうか? やはりいつもと違うな」
 俺の下で暴れるように藻掻いているシンタローの意図をマジックに言われて成程と納得すると、俺は途中だった自分の快感に再び没頭し始める。
「嬉しいよ」
「うる…っへ…! あ、は……んん!」
「ね…、キスしよっか? シンちゃん。…ん?」
 俺とシンタローの荒い吐息にマジックの睦言が続く。シンタローの形にならない抵抗も、煽るだけだとどうやら2人とも、シンタローさえも理解しているようだった。口淫をキスに変えて、悔しげに言葉を紡いでは喘ぐシンタローの狂態と、更に更にと煽っていくマジック。
 異様に興奮している2人の様は、段々と俺の理性をも侵してくる。
 慣れた、上りつめる感覚。
「   うアッ!」
 先にイッたのはシンタローだった。いつもより早い絶頂の、ひどい痙攣じみた締めつけに俺の視界がざらつく。…やばい。
 やはり、いつもよりも何と言うか     色々と、凄い。
 思った瞬間、呻いて一気にシンタローの中に吐精した俺は、汗だくの身体をベッドから引き離してふらりと窓際のソファに沈む。
 火照った体が自然と涼を求めていた。
「おや、続けないのかい? 3人揃うなんて折角の、滅多にないシチュエーションじゃないか」
「いい。少し   見ている」
「そう? じゃ、見えるように?」
 汗に濡れてぐったりしているシンタローの背を抱えると、マジックは自分の膝の上に引きあげた。シンタローの背中といたずらに笑っているマジックの胸がぴったりと重なる。
 ああとても楽しそうだ、俺は息を整える。
 マジックがちらりとこちらを見て、両手でシンタローの腿に触れて脚を開かせた。
「…シンちゃん。パパだよ」
「……あ、…ァ…」
 瞳を閉じたまま、囁かれてシンタローが眉を寄せる。触れてもいないのにあっという間に再び熱を持ち始めるのが此処からでも見てとれて、先ほどの興奮が醒めてしまった俺は呆れて、そして感心した。
「…すごいな」
「ん?」
 自分では知らず呟いていたようで、その呟きに快感に耐えているシンタローに降るようなキスを与えるマジックが答えを返してくる。聞かれているとは思わなかった。蕩けきったシンタローに比べてマジックの方はまだ余裕という事か。
「いや…すごい反応だな、と。……伯父貴に囁かれただけで勃つ、シンタローのそれは一体なんだろう、本能とでも言うやつか?」
 もしくはPavlov's dogs。条件反射。理性で抑えられぬ犬のそれと同じ調教か。
 探求心むき出しの俺の言葉に、何故かマジックは幾分表情を和らげた。
 それから汲み取れる感情を言葉にするなら、切ないとか、哀しそうな、が適当だろうか。または憐憫。…誰に? 俺に対する?
「そうだね。…でも、」
「んっ…ッ」
 ひとつ、唇を重ねた。余裕もなくシンタローの腕がマジックに絡みつく。
「…愛だといいなと、私は思うよ」
 そう言った後にマジックがシンタローの耳元で囁いた言葉は聞こえなかった。
 けど、続いたシンタローの反応でなんとなくわかったような気になる。
 多分、いいことなんだろう。



 俺にもこんな、どうしようもない部分でまで愛せる誰かができればいい。
 思って、ふと窓の外を見た。

 孤独とはこのようなものかな、初めて思った。


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