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ms

オリキャラ(♀)が出てきます。ご注意。





「本当は好きなくせに、曖昧な態度でいるからいけないのよ」

そんな女性の声が響いたその場所は、シンタローの自室である。
けれどそれはシンタローとの会話ではなく、部屋の隅に設置されたテレビから流れてきたものだ。
テレビの前のソファに座り、ブラウン管を眺めているシンタローの視線は、何故か真剣だ。
ちなみに映っているのは、日本で放映されているドラマである。衛星放送で、この国でも見る事が出来る。
日本では昼間の時間帯に放映されている、ドロドロの恋愛劇であるそれ。本来なら、シンタローには全く興味ない内容のものなのだが。
彼がこうして、苦虫を噛み潰したような表情で見ている理由は、出ている女優にある。
今、ブラウン管に映っているのは、二人の女優。
片方は清楚で大人しそうな雰囲気の女性で、もう片方はキツめで派手な顔立ちの美人。
その二人が言い争っている。というより、おとなしめな方は打ちひしがれた様子で、喧嘩腰なのはキツめの方だけだ。
「太郎さんはもう私のものよ」
「そんな……」
毎回ちゃんと見ているドラマではないから、細かい内容は勿論シンタローには判らない。ただ、この二人の女性が男一人を挟んだ三角関係になっている設定らしい、ということは大体判った。
諍いというよりは、男を寝取る事に成功した女の勝利宣言の場面のようだ。
まあ、大人しめの女性キャラの方がヒロインで、キツめの方は悪役のようなので、大抵男はまたヒロインの元に戻るものだが、シンタローはそんなことは知らない…というか、知ったこっちゃない。
このキツめの美人女優自身が、問題なのだ。
視界を少しずらし、部屋の反対側の隅に投げ捨てた雑誌を見遣る。
その時、その女優が高笑いしながら放った台詞が、シンタローの耳に届いた。

「好かれている事に甘えて、あなた何か努力した? 尽くされるのが当たり前だと思ってたんじゃないの? そんなだから、あの人は疲れて私を選んだのよ!」

ぐさり、と。不意打ちなその言葉に心を抉られて、思わずテレビを消してしまう。
静かになった部屋でしばらくぼーっと今の台詞を頭の中で反芻していたシンタローだが、やがてはぁっと息を吐き出し、力なく立ち上がる。
投げ捨てられていた雑誌を拾い上げ、ページを捲ると、そこには見慣れた男の写真がでかでかと載っている。
その横には寄り添うように、今のドラマに出ていた、キツめの方の美人女優の姿があった。
写真の横に記された見出しは、日本語で、『有名女優と元ガンマ団総帥、国も立場も年齢差も越えた熱愛発覚!!』などと書かれていて。
更にページを捲れば、高級そうなレストランで二人で食事をしている姿や、世界的に有名な高級ホテルのロビーに二人でいる姿とか、諸々の写真がわんさか載っているではないか。

「…ったく……日本で何やってんだあいつはァ……」

そのページを破る衝動には何とか耐えたものの、握り潰す勢いで丸められた雑誌は、シンタローの手の中でしわしわになっていた。
そりゃあ、あの父親にも、過去様々な恋愛遍歴があったことだろう。自分が生まれてからも、何かしらあったかもしれない。
しかし自分が知る限り、パパラッチに撮られ写真誌で暴露された事などなかった筈だ。
お付の秘書達は何してるんだ。こんなのが撮られる前に阻止するべきではないか。
憤懣やるせない気持ちで、シンタローは一週間後帰国予定のマジックに対してどういう態度を取るかを考え始めた。
これは何だと問い詰めるか、無視するか。
……んー、無視する方があいつには効くんだよな、必死で俺の機嫌とろうとして…。
そこまで考えて、ふとさっきのドラマの台詞を思い出した。

「曖昧な態度でいるからいけないのよ」
「そんなだから、あの人は疲れて私を選んだの」

長い黒髪の綺麗な女優が、高笑いしながら言い放つ言葉は、自分へのものでは決してないのだが。
でも。しかし。
……………………………………。
暫くの沈黙の後、何かを決意したように視線を上げ、シンタローは部屋を出ていった。


「日本へ行く!」

緊急の仕事だけさっさと片付け、スケジュールを調整し、急遽僅かな休暇をもぎ取った現総帥の来日宣言が響いたのは、それから間も無くの事だった。




「シンちゃんどうしたの? この時期、日本での仕事あった?」
日本へ向かうという情報は、あっという間にマジックに伝わったようで、彼は愛しい息子を空港まで出迎えに来ていた。
だがさすがに、来日した理由までは判らなかったようで、ホテルに向かう車の中で、運転しながら尋ねてくる。それには「別に」とか、明確な答えは返さないでいたら。
「ああ判った! パパに会いたくなったんだね!!」
全開の笑顔で、でもどこか冗談を飛ばすような軽い口調でそんな事を言い出す。いつもなら全力で否定するところだが、シンタローは無言で何も反論しない。
常と違う様子を感じ取り、首を傾げるマジックから視線を逸らし、窓の外を見ていた。しかしふと、ある事に気づき、シンタローはマジックに問いかけた。
「ティラミス達は?」
本来なら、運転などは彼ら秘書がしている筈だ。なのに何故ここにいないのか。
「今回は仕事じゃなくて、プライベートで来たからね。連れてこなかったよ」
「………」
マジックの日本好きは、シンタローも知っている。時間が空くと、たまに旅行に行ってる事も。
だがしかし、今回のプライベートとは。
……もしかして、あの女優に会う為とかだったら。
ぐるぐるそんな事を考え込み、益々シンタローは貝のごとく黙り込んでしまったのだった。



やがて、車は都内のあるホテルへ到着し、扉を開けながらベルボーイが恭しく一礼する。
マジックもシンタローも日本へ来ると、よく滞在する高級ホテルだ。しかし、雑誌に載った写真では、別のホテルのロビーにいた。てっきり、そこにいると思っていたから、迎えが来なければそちらに向かおうかと思っていたのだが。
「今回泊まってるの、ここじゃねえと思ってた」
「え、何で? 仕事だと大抵ここに泊まるでしょ。うちの一族御用達だよ」
「あんた、プライベートって言ってたじゃん」
「ああ、仕事じゃなければ京都の旅館なんかにもよく行くけどね。今回用があったのは東京だから」
最上階へと向かうエレベーターでの会話である。乗っているのは二人だけで、会話には気兼ねがない。
「今回は、東京で会う約束した人がいてね」
その言葉に、シンタローは訝しさを感じてしまう。

会う約束をした人間?
……それってやっぱり?

チンと音が鳴り、エレベーターが止まる。最上階についたようだ。静かに扉が開き、マジックが先に出てゆく。
しかし。
「シンちゃん? どしたの」
なかなか降りようとしない息子を振り返り、マジックはエレベーターの「開」ボタンを押しながら、不思議そうに声をかける。
「あ………」
「あ?」
「会うのはいいけど、もっとうまくやれよッツ!」
「え?」
何かしら言いよどんでいた彼が、やっと口に出したのは、怒ったような口調のこんな言葉だった。意味が判らず、マジックは首を傾げ問い返す。
シンタローにとっては、彼のそんな態度が益々気に食わない。
「写真撮られただろうが!」
怒鳴りながらも、心の中では頭を抱えている。こんな筈じゃ、と。
能天気な父親の態度につい、こんな形で切り出してしまった。もう少し、慎重且つ冷静に探りを入れる予定だったのに。
何を言われたのかやっと判ったらしいマジックは、ああ、と頷いた。
「あー、あれね…。シンちゃん見たの? 日本でしか売ってないのに」
「団の匿名目安箱に雑誌入ってた」
「…パパ、つくづく団員の反感買ってるねえ…」
しみじみとマジックは呟く。
現総帥であるシンタローは団員に絶大な人気がある。そのシンタローにべったりのマジックに反感を持つ者が多いのは、D●本でも知られる通りである。
「え、ていうか、シンちゃんそれで日本まで来たの?」
少し驚いたように問いかけられた言葉に、シンタローは、うっと狼狽えてしまう。
「いや、違、そうじゃねェんだけどッ、……ええと、もう総帥じゃないとはいえ団の恥晒すのも何だしっ、調査しなきゃだし、父親がヘンなことしてんじゃないかって息子としては……」
反論するつもりで口を開いたのに、出てきた言葉は何だか支離滅裂だ。
「まあ、とにかく降りて。エレベーター止めてたら迷惑だし…部屋で話そう」
慌てているシンタローを制し、部屋へと促す。
まだまだいろいろ反論したいことはあるが、確かにこんな所で立ち話も何だし、内容も何だ。
シンタローは、マジックのその申し出にとりあえずおとなしく従った。




最上階スイートルームの装飾は、これでもかという程に華美なものだった。
ベッドなど、天蓋付きでやたらでかい。どちらかというとシンプル好みなシンタローにとっては落ち着かない空間だが、派手好きなマジックがここを好むのは判る。
白く大きなソファに座っていると、マジックが自ら紅茶を淹れて持ってきた。
「長旅お疲れさま」
にこやかにねぎらわれるが、シンタローにとってはそれどころじゃない。
しかし急かすのも余裕が無いように思われそうで嫌だなと、とりあえず茶に口をつける。薫り高く深みのあるその味は、家でもよく出されるものだ。マジック好みの茶葉も用意されているあたり、このホテルは本当に馴染みなんだなとシンタローは実感する。
「で、さっきの話だけど」
紅茶を味わいつつ、先程の会話についてどう切り出すかと迷っていたら、マジックの方から言い出した。
「あの雑誌は勿論嘘だし、パパが今回会う約束していた人は、あの女性じゃないよ」
「…じゃあ誰だよ」
まず最初に答えを全て口にする彼の口調は、言い訳している風でもない。
「あの女性の父親の方だよ。実は元総理大臣で、パパとは昔から交流あるんだ」
聞けば、その元総理大臣とやらも相当なダンディで、昨年度のワールドナイスミドル大会にも出場し、見事3位入賞したとか何とか。
マジックとはダンディ仲間として気も合い、日本に来るとちょくちょく酒を酌み交わす仲だったという。
その相手に急用が入り、会う約束がおじゃんになった。それを娘であるあの女優が、わざわざ謝りにきてくれたのだと言う。
ついでに、その元総理と行く筈で予約していたレストランに、キャンセルするのも何だしと食事に行き、その後女性が宿泊していた高級ホテルのロビーまで送っていったとの事だった。
「まあ、そこで迫られはしたけどね」
「何ィ!?」
「向こうはずっと付き合っていた俳優と別れたばかりらしくて、何か自棄になってたみたいで」
それだけじゃないだろう、とシンタローとしては思う。
この男は見た目的には決して悪くないし、気兼ねする妻がいるわけでもないし、世界的にも有名なガンマ団の元総帥とステイタスもばっちりだ。
遊びだろうと本気だろうと、一般的に見れば相手として不足は無いのだろうと思う。
…近くで本性を見ている自分としては、ツッコミどころは多数、ありすぎる程あるのだが。
───ああもう。なんだかな!
もやもやした思いを感じつつも、それをどう言葉にしていいのか判らず、眉根を寄せて頭を掻く。
そんな息子の様子を見ていたマジックは、嬉々として

「シンちゃん妬いてくれたの? 嬉しいなあ」

こんな台詞を言い出す。反射的にシンタローは「そんなんじゃねー!」と否定していたが、全く意に介した様子もなく、マジックは続ける。
「心配しなくても大丈夫だって、愛してる人いるからって、ちゃんと断ったから。勿論シンちゃんのことだよv あ、何ならパパの身体点検してみる?」
「っ……」
ふざけた軽い口調が気に入らない。
マジックはこういう言い方をして、自分が拗ねたり照れたり慌てたりするのを、どこか楽しんでいる節がある、と思う。
心にある、ムカムカとかモヤモヤしたものが、あの雑誌を見てから積もり積もって、たった今シンタローの中で臨界点を突破した。

「……………点検、したろーじゃないか」
「え?」
「て・ん・け・ん。何かヤバイ証拠あったら殺す」



言い放った彼の目は、完全に据わっていた。











「シンちゃん?」

マジックからすると完全に予想外の答えが返ってきた為、確認するかのように名を呼んでみるが。
「あんだよ」
対して返事するシンタローの据わった目が、「あんたが言い出した事だろ」とばかりに自分に向けられている。
こっちももしかして自暴自棄かねぇ、とマジックは考えるが、このサプライズはなかなか面白い。
「いや、何でも。どうぞお好きに。…で、どうやって点検してもらうのかな」
「服、脱げ」
質問に対する今度の答えは、予想通りのものだ。
わーシンちゃんてば積極的!と口に出したいが、臍を曲げて逃げてしまう可能性が高いので止める。そもそも、マジックはまだシンタローの真意を測りかねていた。
まあ、あの雑誌のせいで疑われているのだろうとは思うが、シンタローならこちらが嘘を言っているかどうかは判るだろう。こちらは騙す気など無いし、相手も勘が鋭い子だから。
じゃあ、わざわざ「点検」すると言うのは何故なのか。
「点検でもする?」という、こちらのからかったような言い方で、逆に天邪鬼な性格が刺激されたか。

…それはそれで楽しいんだけどね。

頬が緩みそうになるのを耐え、言われた通りにスーツの上着を脱ぎ、シャツのボタンを外し素肌を顕わにしてゆくと。脱いでる本人ではなく、脱がせる命令をした側の人間が、落ちつ着かなげに視線を泳がせ出した。
目線を空に彷徨わせるシンタローの頬が、少し朱に染まっている。
その様子を横目で見つつ、「可愛いなあ」などとマジックは思うが、いつもと違うこの空気が新鮮で、壊さない為にやはり口に出さないでいた。
ズボンにも手をかけ脱ごうとすると、ベッドに移動するよう指示される。
あくまで優位な立場を保ち命令を下すシンタローなのに、やはり視線は微妙にこちらを向いていない。
それで点検ってどうやるんだろう、とマジックは状況を楽しみつつ思う。
ベッドに腰掛けつつ、ズボンも下ろし下着姿になった所で、うろうろと視線を移動させつつ、暫く葛藤していたらしいシンタローが、気合を入れるかのように一つ大きく息をつき、ベッドのすぐ傍へとやってきた。
「横になった方が点検しやすいかな?」
問うと、シンタローは頷く。
「さあどうぞ。存分にご検分を」
シンタローと親子の域を超えて関係を持ち、もう数年経つが、こちらが先に脱いで見下ろされるというのは、初めてのシチュエーションかもしれない。
などと思うマジックは、それでも照れるでもなく余裕を持っている。これが年の功というものか。
対して、シンタローの方は心中穏やかではない。というか必死だ。
うろたえたら負けだ、そんな感覚のみで行動していた。
マジックの素肌が見えている部分に、怪しげな痕などは無い。見下ろす相手はまだ下着はつけている。所謂、ぱんつ一丁姿。
身体を点検すると言ったのだから、そこも対象箇所なんだろう。とは思うものの。
「…………」
マジックの下着を手ずから脱がせるという行為に、これまた激しい葛藤で、背に汗すら流れそうだった。
照れやら羞恥やらで怯みかける心を無理矢理奮い立たせ、がっと下着のゴムを引っ張り、一気に下ろす。いっぱいいっぱいのシンタローは、「色気の無い脱がせ方だなあ」というマジック側の内心の僅かな不満など知る由も無い。
「う……」
顕わになった下肢を、やはり直視するのは難しかった。
見慣れてる筈なのに、何故か妙に恥ずかしい。
いや、見慣れてるようで実は見慣れていない。コレに散々啼かされてはいるが、受け入れる時も促されるまま口に含んだ時だって、目は逸らしてたり閉じてたり。思えばまじまじと見た事なんかない。
…自分のとは結構、大きさとか角度とか違うな、などと。やっと視線を向けつつ観察して。
でもやっぱり気恥ずかしくて、乱暴に腿やあちこちに手を這わせながら、「点検」を始める。
「シンちゃんに視姦プレイされる日が来るとはなぁ」
マジックの方はといえば、相変わらず照れた様子もなく、むしろ感動すら感じているようで、しみじみと呟いている。
「ちがう!!」
真っ赤になって怒鳴りつけながら、シンタローは気力を奮い立たせて、内腿まで点検し探っていた。
時折マジックは「くすぐったいよ」などと笑ったりするものの。

……なんなの、何なんだよ、コイツ。

シンタローとしては納得がいかず、内心で不満を漏らし始める。
これだけあちこち弄ぐってるのに、マジックの中心に全く反応は無い。表情も余裕で、面白がっているような様子さえある。
そりゃ直にモノに触れてるわけではないのだが。もしこんなこと、自分がされたら。
───服を剥がれ指を這わされただけで、きっと身体は反応してしまう。
例え、性感帯に直に触れられなくてもだ。

「あームカつく!」
「え、なに? 何かあった?」
「何ってなにが!」
「何がって、調べてるんでしょ。キスマークとかあるかどうか。え、無いよね??」
心当たりが全く無いマジックとしては、そんなものは身に付いている筈がないという確信はあるものの、シンタローの奇妙な反応につい確認してしまう。
「ああ無いさ。なーんも無い! だから何だってー!?」
「無ければいいんじゃないのかい? シンちゃん、わけ判んないよ」
横になった状態から、肘で僅かに上半身を持ち上げ、小首を傾げ不思議がるマジック。そんな様子にシンタローはまた腹が立つ。

俺がこんなに近くで、それもベッドで、あんた裸で、見て、触って。
なのに何でそんな冷静なんだ!?


シンタローとしては、元々先程の会話で、写真の件は潔白だろうと納得していた。
この「点検」は、ささやかな意趣返しとでもいうところか。それに加え、ベッドへ追いやった時点で、半ばやけくそ気味に誘っているつもりだった。
いや、誘うというには色気が足りないのは自覚があるので、仕掛けるという単語の方が適当かもしれない。
しかし。
それでも。
この自分がベッドに誘ってるというのに(というのは語弊があるかもしれないが)、今のところマジックの方は何も反応していない。
ここまでしているのに、まだ曖昧だというのか。
もっとストレートに、言わないと駄目なのか。
ええと何だ、「×××しよう」とか「○○○○したい」とか…………
……………………
………………………………………………。

「言えるかああ!!!!!」
「な、何どうしたの!?」

突然、その場にちゃぶ台があれば引っくり返しかねない勢いで叫んだ相手に、マジックも驚き尋ねる。
「シンちゃん?」
その問う声を無視し、シンタローは突如相手の足の上に跨るように圧し掛かった。
そして反応していないマジックの性器を、色気もなくむんずと手に取り。
少し躊躇った後に、その中心へと顔を寄せ舌を這わせた。
言葉で言うよりは行動の方がまだ出来る気がして、試してみたのだが。

「…っ」

マジックにとっては予想外の行動だったのだろうか。舌が触れた瞬間、呼吸が微かに乱れた。
その小さな吐息を耳にし、シンタローの心に奇妙な勢いがつく。勢いのまま半ばまで口に含むと、それは漸く反応を見せ始めた。
芯を持つように、徐々に硬く、熱くなってゆく。
口内から感じる生々しいその感触に、シンタローの方も煽られる。
「…シンちゃん………」
名を呼ぶ声が僅かに上ずっているように思えるのは、気のせいだろうか。
しかし、続いた言葉が実によろしくない。
「もしかして欲求不満?」
「違っ」
「ッ!」
とんでもない質問に、モノを口に含んだまま反論したら、うっかり歯を立ててしまった。
さすがのマジックといえど、これには相当な痛みを感じたようだ。見上げた視線に、苦痛に顰めた表情が映る。
「…あ、悪い」
若干自業自得だと思う気持ちが無いでもないものの、この痛みは相当だろうと想像がつくので、歯を立てた箇所を謝罪の意を込めて柔らかく舐め上げる。暫くそうして舌を這わせていると、大きな手に頭を緩やかに撫でられた。
不思議なもので、その手の動きに、荒れていた心まで宥められていく気がする。
心の中にずっと在った不満とか、不安とか。

自分の知らない所で、別に浮気なんかじゃなくても、あんな写真を撮られていたこと。
それを知らされたのが、マジック本人からじゃないこと。
会話からすると、あの記事についてマジック自身は、大した事でもないとばかりにこちらに言うつもりすらなかったらしいこと。
わざわざ傍に来たのに、腹立つぐらい、いつもと変わらない態度で。
その上、どんな相手なのかとつい見てしまったドラマは、あんな調子で。
何もかもが面白くなくて、気づいたらこんな状況になっていたけれど。

「…イイよ、シンタロー」

そんな言葉と掌の接触に、何故か心が熱くなる。
口の中で、今や完全に張り詰めているマジックのものの感触にも煽られ、身体も反応し出す。
決して欲求不満なんかで、こんなことを仕掛けたわけじゃないけれど。
不満があったのは、強いて言えば身体じゃなくて心の方であったのだし。
それなのに、こうして舌で舐り、吸い上げ愛撫していると、どんどん息が荒く熱くなってゆく。
触れられていないシンタローの中心は、その吐息よりももっと、篭もる熱を持って立ち上がっていた。
「パパばっかりしてもらうのは、悪いよね…」
そんな状況を判っているらしいマジックの方も、シンタローの頭を撫でていた手を頬へ、そこから首筋へ、そして胸へと移動させてゆく。服の上からでも判るほど、硬く存在を主張する突起を摘まむように触れ、指の腹で柔らかく擦ると、シンタローの肩が跳ね小さな声が漏れた。
「…ぁ、……」
「シンちゃんは…どこに、どう、触って欲しい?」
そんな風に問われ、熱くなり始めた頭で、シンタローは思う。
───ああ、そういや
この男は行為の最中、やたらいろいろ煽る言葉を発し、そしてこっちにも言わせたがる。
こちらから接触を望むような、卑猥で具体的な要求を言わせようと、焦らしたり様々な悪戯を仕掛けたりしてくる。
「どうしてほしい?」
そう聞かれると、今までは限界まで耐えて、無言で首を横に振っていたけれど。
……そりゃそうだ恥ずかしい。簡単に言えるか。
シンタローとしては、そう思うものの。
一応、聞かれた内容について考える。どこに触れてほしいか、とか、どうしてほしいのか。
答えはいつも性的な欲求だけじゃない。それをマジックは判っているだろうか。

「………なあ…」

吐息と共に濡れた唇から零れるような、シンタローの小さな呼びかけに、マジックは頬を撫で先を促す。
視線が合う。
熱っぽく見つめてくるその視線が、他の人間に向くなど考えた事もなかった。
あの雑誌の写真を見た時に、その事について初めて考えてみた。そうして生まれた不安という感情。

───欲しいものは何なのか。言ったら全部くれるのか。
過去も現在も未来も、その存在の全てを。
全部、この手に与えてくれればいいのに。

「………欲しい」
そう感じた瞬間、ねだるように口から零れた小さな声。
どーも状況がよくないというか、今まで口腔で愛撫していたソレにまだ指は触れたままで、位置的にも頬擦り出来るような所に顔があるせいで、マジックにはまさに「コレ」が欲しいと取られるだろうけど。
真実の要求はもっと欲深いものだから、誤解されてもまあいいかと諦める。本当の意味など、どうせ口には出来ない。意地っ張りな性格は嫌という程自覚している。
淫乱とか思うなら勝手に思え、などと自棄気味に考えていると、マジックが体勢を変えてきた。
抱き寄せられ、そのまま身体を反転させ押し倒される。
からかわれる事を覚悟していたのに、マジックは何だか嬉しそうに微笑んで自分を見つめていた。
秘石眼と呼ばれる、その青の瞳。
深いその色に、己の全てを委ねたくなる。そんな感覚に耐えられず、シンタローは目を閉じた。

全てを欲して。その分、全てを与えて。
多分望みは尽きないまま、それでもずっと傍にいるのだろう。

「愛しているよ」
そう耳元で言われた後、その唇は肌へと直に降りてくる。
触れてくるマジックの手に与えられるのは、激しい快楽と優しい温もり。
余裕など消えるぐらい、相手にも全てを求められたいと願い、精一杯の表現としてその背に腕を回し抱き締めた。





「積極的なシンちゃんも可愛いかったーv」
「……うるさい」
「ヤキモチも可愛いねッv パパ凄く嬉しかったよ!」
「黙れその口」
「あれ、もういつものシンちゃん?」
情交の後にはいつもだるさを感じるが、今日は何だか常よりも数倍の疲労感がある。
ぐったりとベッドに横たわったシンタローの身体には、まだマジックの腕が絡みついていた。
まだ汗が完全には引かない素肌を、緩やかに辿っている掌。しかしその動きは煽るものではなく、むしろ宥めるかのように軽く撫で摩るものだった。
その行為は事後のアフターケアというより、単にシンタローを離すのが惜しくてのものだったが、いつもなら大抵鬱陶しがられる。しかし今日は、言葉では生意気な事を言いつつもあまり嫌がる様子はない。それがマジックにはまた嬉しくて、寝転がる相手を深く腕に抱き込んだ。
「このくっつき魔」と不平を口にしたシンタローに、大好きだよ、などとまた甘ったるい言葉が返ってくる。
溜息をつきつつ、抱き込まれた胸に額を当てる。くっついたり、甘やかしたりするのが本当に好きな男だと、つくづくシンタローは思う。
ふと、あのドラマの台詞が脳裏に蘇る。

好かれている事に甘えて、あなた何か努力した? 
尽くされるのが当たり前だと思ってたんじゃないの?

愛されていて、当たり前。
物心付く前、それこそ生まれた時からそうだったのだから、この意識は今更変える事は難しい。コタローの件で対立した時も、自分に向けられるその愛情を疑った事などはなかった。
やたら溺愛され、口では反発しまくった。そりゃそうだろう、こちらから同等の愛情を態度で示せば、ただの迷惑なバカップルが完成するだけだ。
しかし、自然に存在する空気のように、自分にとっての「当たり前」なもの。それを失う事を想像した時の不安感は、思いがけず大きくて。
今、こうして触れている温もりが消えるなど、考えたくもない。
その為なら、多分何でも出来るのだろうと感じた。それも努力と言えるだろうか。

……それにしても。
温もりと疲労に意識が微睡みへと傾くのを感じつつ、シンタローは思う。
なんか、やたら恥ずかしいことをしまくった気がする。多分、後で滅茶苦茶後悔するんだろう。
ただ、自分の行動で相手が段々煽られていく様子は、少し優越感を持てて悪くはないなと思ったし、こちらが珍しく積極的だっだせいか、マジックは何だか嬉しそうだった。
その分、結果的にいつもより激しく抱かれた気がして結局疲労困憊なのもどうか、などと葛藤もしつつ。


抱き締められた温もりに溶けるかのように、シンタローの意識は眠りへと落ちて行った。




えろがえろくない。その上うっかり
途中で逆転しかけ…いえ何でも(◎△◎;)
襲い受は加減が難しいですねい…。
UPはパパ誕生日。おめでとうございます。
シンちゃんとお幸せにー+

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