目の前には何故か、幼くなった親父がいた。
もう少し見渡せば獅子舞や美貌の叔父様まで小さくなっていた。
何だ?夢か?
まったく奇想天外な夢を見せるよな、オレの脳みそも。
12、3歳くらいのマジックはオレを見るなり、拙い日本語で
好きだ!と愛を語り始めた。どうやら一目惚れらしい。
とても親父とは思えない程初々しく、そして可愛らしい。
思わず「オレも」と答えそうになる。
すると遠くの方から足音が聞こえて、ちょっと待ったー!!とストップがかかった。
声の主は親父よりも少し背は低めで、目つきはやや悪いが聡明な顔立ちをした金髪美少年だった。
『僕の可愛い兄さんに手を出そうだなんて、そんな事は断じてこの僕が許しません!』
距離を縮めていたオレとマジックの間を遮るように割り込むその少年は、
よく見ればどことなくキンタローに似ていた。
『ルーザー!』
『兄さん!こんな男の何処がそんなに良いって言うんですか!
僕がいて、ハーレムがいて、サービスがいて、それだけじゃダメなんですか?!』
『だって僕はシンタローが好きなんだもの!』
綺麗な発音の英語でマジックはそう言い切った。
『兄さんどうして…
兄さんは、ずっと一緒にいた実の弟の僕よりも、この得体の知れない男の方が大事だって言うんですか?!』
白熱した兄弟愛に圧倒される。
ルーザーの自分に向ける視線には兄を奪われた事への憎しみの念が込められているのが手に取るように解かった。
申し訳なさそうに身を引くと、マジックはルーザーを押しのけてオレの首へと飛びついた。
192センチのオレの首に手を回すマジックはとても華奢で細くて、
子供の割には背は高いがそれでもやはり地面から足が浮いてしまう。
いつかはオレよりデカくなっちまうのにな…。
オレは親父の小さな身体を落とさないようにしっかりと抱きかかえた。
「シンタロー、僕は キミを とても愛している。
ずっと傍にいて…」
片言の日本語でゆっくり囁かれるピュアな告白は強烈に心に響いた。
頬を両手で包まれて、口付けを交わす。
触れるだけの、けれどとても甘いキスに眩暈がした。
そこで目が覚める。
何だよ…。
最後まで見させろよオレの脳!
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