忍者ブログ
* admin *
[713]  [712]  [711]  [710]  [709]  [708]  [707]  [706]  [705]  [704]  [703
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

m
「シンタロー、すまないコレを………」
「あ"」


大事な取引の最中、軽いノックと共に開けられたドアから覗いた人物が固まる。
取引最中だった総帥も固まる。


「アラ……ここまで見たいね?」


固まった空気の中、動いたのは一人の女性のみ。
寄せていた腕を放し、デスクの上から封筒を取り上げその赤い唇をにっこりと上げる。




「じゃあ今度また機会があったら」




そう言って、軽い足取りで総帥室を去っていった。
残されたのは口元に赤い跡を残した総帥と、書類を届けようとした男。






「…………………今のは、何の取引だったのかな?」
「投資金について、かな……………?」








今日はもう仕事になりそうもない。
そう思ったシンタローは大きく溜息を付いた。











紫陽花話。











「何も職務中に……色仕掛けで取り引きしなくたって商談ぐらいまとめられるだろーに、いつからシンちゃんはそんなトップになっちゃったのかなぁ」
「…………………脅しかけるよりマシだと思うけどな」
「へーぇ?」
「ああもう悪かったって言ってるだろッ!ンナ目で見るなっ!!」



怒るなら怒るでもっとはっきりしてくれればいいのに。
先程からぶつぶつと恨み言を繰り返してはいじいじと部屋の隅に小さく(それでも十分でかいんだけど)まとまっている父親を見ながらシンタローはつくづくそう思った。
正直鬱陶しいだけだ。
こちらの言い分は全く聞いてくれないのだから手に終えない。
言い寄ってきたのはあっちで、まさかあそこで断ってはまとまる物もまとまらないだろう。
確かに美人で、随分と手慣れたようであったし。
さらに言うならシンタローは決して動いてはいない。
ただ抵抗はしなかっただけだ。
それなのに延々と浮気だの何だのと繰り返すガンマ団元総帥。
この男だってそれぐらい繰り返してきたろーに。
第一取引最中にいきなり来るこの男も悪い。
そりゃ肝心な書類だったけど。
マジックも面識のある(と言うかむしろマジックが)女性だったし。
大体こちとら健全な二十台の男子。
親とそう言う風になっている方が非常識だろう。



「……………はぁ」
うんざりという風に息を吐き出したシンタローは、怒るのもバカらしいと持ち出してきたノートパソコンに電源を入れた。
自室に仕事を持ち込むことは割とある。
と言うか多い。
最低限必要なものは全て揃っているので本棚からファイルを取りだして、開きながら立ち上がった画面にパスワードを入力。
本格的に仕事の体制に入ったシンタローにマジックは、切れた。(誰が見ても逆切れという部類であろう)


「全然悪いと思ってないじゃないかッ!!」
「ソノトオリデス」
声だけは返って来たが、視線はパソコン画面を見つめたまま。
その声すら投げやりな感じがする。


「…………シンちゃんの馬鹿ッ!!!」
(…………グンマとこいつってやっぱ親子だなぁ口調そっくりじゃん)
かたかたと少しばかりぎこちない音は途切れることなく部屋に響く。
全く相手にされていない。


あんなに私の後ばかり付いてきていた天使は一体どこにっああもうでも仕事する横顔も可愛いと思ってしまう自分が切ないというか愛しいというかムリヤリ勢いに任せて押し倒してしまおうかでもそうすると後のことがえらく大変になるし最近変な知恵が付いてきてぼろ泣きするんだこの子はそれが征服欲そそるときもあるんだけどもう流石に良心が痛むというかそんな泣き方してしまうモノだから後味悪すぎるし決まってその後の皆の視線が痛い痛すぎるグンちゃんやキンちゃんにすらあんな目をされると流石の私でも辟易するって言うかだからこの際はッ!!





「私も浮気してやる―――――――ッ」
「お――頑張ってこい」
事もなさげに返された声を背に、マジックはシンタローの部屋を飛び出していった。











被害者その1


「と、言うわけで浮気をしようハーレムッ!!」

プッヒュームッ。
飲んでいたお茶が目の前にいた高松に掛かろうとハーレムに罪はない。
珍しく和やかにお茶の時間を過ごしていた二人であるが、そんな奇異な時間は闖入者によって潰された。
「きったないですねハーレムッ!!」
「あんなこと言われて普通でいるなお前はっ!!」
「私に関係ないですし」
「ほーぉ?」
ガラス張りの温室。
生長している植物もさわやかに光が注ぐうららかな午後。
一転して険悪ムードが広がっていく。
「良しじゃあ行くぞハーレム」
「うわこら離せいったい何なんだよッ!」
そんなハーレムと高松のやり取りもまったく気にしていない、ドアをぶっ壊して入ってきたマジックはハーレムの腕を取り立たせようとする。
慌てたハーレムの言葉にマジックは眉を顰めた。
「お兄ちゃんにそんな言葉遣いしない!全くいくつになってもハーレムは……」
「それいうなら弟に浮気求めるんじゃねーよッ!!冗談じゃねぇ!!!」
「息子に手を出している人にそんなこと言うのも無意味な気がしますが」
「ん?高松でもいいよ私は」
「丁重にお断り申し上げます」
にこやかに会話が交わされる。
他の人が聞いたらとんでもない内容だったりするが。


「嫌かいハーレム?」
「あんた了承すると思ってたんかい」少しばかりむっとした顔で腕を離したマジックに、ハーレムは脱力する。
どこの世界に実の兄から浮気をしようと誘われてそうですねと手を取る弟がいるというのか。
「ルーザーあたりならオーケーしてくれそうだけど」
「人の思考を読むなって言うかその名前出すな!」
「………ルーザー様とマジック元総帥ってまさか」
「ん――?いやそんなこと無いけどね。あっはっは実の兄弟でそんな非生産的な!」
「あんたが言うかそれを今!!」
これこそ舌の根も乾かぬ内にと言うのであろう。
非生産的ってそれならあんたが息子にしてることは何なんだよとか言っても軽く返されるかあの鋭い目で睨まれるかのどちらかだ。
妙に疲れたハーレムはぐったりとテーブルに伏す。
「どうしんたんだいハーレム?」
「何でもない………」
どこまでもマイペースなゴーイングマイウエイな男に勝てるのはその息子達ぐらいなものだろう。
と、そこで高松は気が付いたように声をかけた。


「……………でも何でいきなり総帥そんなこと言いだしたんです?日頃いつもウザいぐらいにシンタロー様への愛を公言してはばからなくて見てるこっちとしてもいい加減にしろよテメェと言いたくなるくらいの貴方がまさかハーレムに浮気を申し込むだなんて」
「高松もしかして辛いことでもあったのかい?ルーザーに会いたいというのなら手伝ってあげるよ?」
「物騒なことさらりといってんなよ………つーか大方シンタローと喧嘩でもしたんだろ?聞くまでもねーじゃん」
ハーレムの言葉にマジックの顔がへにゃりと歪む。
本当にコレがあの世界最強の殺し屋軍団と恐れられていたガンマ団元総帥ですか。
「…………絶対浮気するって決めたんだ」
「……………そうかよ。まぁせいぜい頑張れや」
なんだか強い決意をした目をしているが、その決意内容が何とも情けない。
右から左にマジックの話しを聞き流しつつ、ハーレムは注ぎ直したお茶に口を付けた。



「じゃあお邪魔したね、あ、ハーレムここのドア直しといて。シンちゃんにばれると怒られそうだし」
己の壊したドアを指さし、マジックは来たときと同じように足早に去っていった。
粉砕されたカップの残骸を、高松は見なかったことにした。











被害者その2


「チョコレートロマンス私と一緒に寝ないかい?」

ばさささささー。
持っていた多量のファイルを廊下にぶちまけようと彼に罪はない。
いつも通りの職務。
特に大きな支障もなくスケジュール通り進んでいたときに現れた。
本部ガンマ団の通路の真ん中。
勿論行き交う人がいないわけはなく、固まってしまったチョコレートロマンスは団員の視線に晒される。
ひゅうっとどこからか風が入り込み、書類の一枚を攫った。


「おっと……、駄目だよ書類なくしちゃあ。揃ってなくて叱咤を受けたいのかい?」
飛ばされるところをマジックが掴み、書類をチョコレートロマンスに差し出した。
元々マジック付きの秘書であり、仕事にミスがあると勿論怒鳴られたものだ。
至極もっともな台詞と差し出された書類にチョコレートロマンスはようやく我に返った。
「はっ、はい、ありがとうございますッ」
ああさっきの台詞は聞き間違いだったのだろうか。
そういえば寝不足でもあるし、疲れていたのかなぁと思いつつチョコレートロマンスはお礼を述べ、書類を受け取った。
散らばった書類を拾い集めようとして、また固まった。



「―――――――で?どう?今夜あたり暇かな、別に今からでもいいんだけど」



寝るってやっぱり一緒にお昼寝とかじゃないですよねお父さんが子どもと一緒に寝るの寝るじゃなくってやっぱりそっちの意味なのでしょうか何で私?私何か怒らせるようなことしましたかただ挨拶しただけですよねと言うか何故本部に貴方がいやいるのおかしくなんかないのですけど先程シンタロー様と自室に向かうのを見ましたってか私これから書類を届けにシンタロー様のところ行くんですけど。



くらっとしながらチョコレートロマンスは意識を飛ばすのをかろうじて堪えた。
気を失った方がどんなに楽か分からないが、目が覚めたときが怖い。
起きたらそこは自分の部屋でなくてふと隣を見て裸のマジック元総帥がおはようvなんて言ってにっこり微笑んだりでもしたら多分自分は心臓が止まるであろう。

「しょ、職務中ですのでッ」
「あ、構わないよ」
「私が総帥にお叱りを受けますッ!!」
「じゃ今夜かな?」

ざ――――――――ッ。
季節外れの大雪ブリザードがチョコレートロマンスには見えた。


「わ、私には荷が重すぎますぅ――――――――――――ッ!!」


脱兎というのはまさしくこのことだろう。
目撃者は後で語る。
あっという間に姿の見えなくなったチョコレートロマンス。
一方残されたマジックと言えば。


「……駄目じゃないかチョコレートロマンス、書類放ったまま。ここが本部と言えども散らばすのは危険だろう。ああ、しかもこれシンちゃんに届ける書類じゃないか?なってないな全く。私の教育がなってなかったと思われるじゃないか、後できつく言わないと……」


何で貴方そんなに普通なんですか。
廊下で始終を見ていた団員たちは内心でツッコミを入れる。


被害者その3


「あ、ティラミスいいところに」
「元総帥、どうしたんですか?」
「うん、チョコレートロマンスが書類を置いて何処か行っちゃったんだよ。これシンタローに届けてもらえるかな」
「ええ?あいつ一体何やってるんだ………わかりました、責任を持ってお届けいたします」
マジックが廊下に散っている書類を拾うかと思ったときに、チョコレートロマンスの去った方向と反対からもう一人の総帥付きの秘書、ティラミスがやってきた。
足下に散らばった書類を見つけるとマジックと共に屈んで拾い集める。
揃っているかチェックをしてマジックから書類を受け取った。
相方が犯した失態に疑問を抱きつつ、彼はその理由をすぐ身をもって知ることになる。


「で、ティラミス一つ頼みがあるんだが」
「なんでしょうか?」
「私と浮気をしよう」
ばっさ――――――。
拾い集めたばかりの書類は、またもや廊下に散らばった。






















「シンタロー様………」
「なんだ?」
「あの」

『マジック「元総帥」をどうにかして「下さい」』だろ?」

力無く部屋をノックする音。
開いている意を教えれば、ティラミスが相方よりはしっかりした様子で入ってきた。
手にはチョコレートロマンスに頼んだファイル。


「あー、もうさっきから苦情来てるんだよね。チョコレートロマンスにも聞いたし」
その言葉に部屋を見渡せば確かにへたれたチョコレートロマンスがシンタローの仕事をしている机横にうずくまっている。
シンタローの台詞からするとティラミスがここに着くまでに手当たりしだい声をかけているようだ。
笑いが混じった声。
視線はパソコンに注がれたままである。
少し不慣れなようにキーボードを叩くシンタローにチョコレートロマンスが復活を見せた。

「………分かっているのでしたら行かれたほうが…。総帥が本気だというのは分かりましたけど」
「シンタロー様のぬいぐるみを手に抱いていては信憑性は薄いかと」
「アホだな本当に」

ククッと肩を震わせながらやはりシンタローは意に介さない。
それどころかこの事態を本気で楽しんでいるようだ。


「―――――シンタロー様、ほんとによろしいので……?」
そんなシンタローにチョコレートロマンスがおずおずと声をかける。
心配そうなその声にシンタローはまた一つ笑って、ようやく画面から目を離した。


「いいんだよ別に」
「でも………」
「『浮気してやる』って宣言してる辺りで負けなんだから」
「???」


疑問を飛ばす二人にシンタローは、出来上がったばかりのデータをロムに保存しながらまとめ終わった資料をチョコレートロマンスに手渡す。
「片づけといてくれ、今度は置いてくなよ?」
「―――――……はい」
「そんな顔するなよ~、悪いのはお前じゃないってのは分かってるから」
先程のことを少し揶揄するとめそりと泣き顔になったチョコレートロマンスにシンタローは苦笑する。
保存し終わったロムを取りだし、パソコンの電源を切ったシンタローは立ち上がりドアへと足を向けた。
そのシンタローの後を慌てて二人は追う。


「浮気ねぇ………」
ドアを後ろ手に閉めながらポツリと零すシンタロー。
呟きを耳にした二人はシンタローにと視線を注ぐ。



「結局俺のところに戻ってくるってことだろ?別に悔しくないんだよね」
ましてや嫉妬させようと思ってのことだし。


満面の笑みで言い放ったシンタローに、二人は拍手を送った。

「―――――――ま、ガンマ団内治安維持のためにもそろそろ釘を刺しに行くか」

やっぱりこの人最恐だと思いつつ、ガンマ団の行く末が安泰なのだか暗雲立ちこめているのか考えてしまった二人だった。






















「浮気しても良いけどちゃんと俺んとこ戻って来いよ?」
「――――――――――シンちゃ――――んッ!!」
この台詞に驚喜乱舞し調子に乗ってしまったマジック元総帥が怒髪天を突いたシンタロー総帥にガンマ砲でぶっ飛ばされるのは数分後のことである。












--------------------------------------------------------------------------------

新奴里妃様に捧げる524リク小説でしたッ。お題に沿っているんでしょうか……微妙な線ですか?(汗) 私の書く物としては珍しくシンタローさんが余裕綽々。
自信たっぷりです。
お誕生日番なのでたまにはと思いました。(たまにかい)
タイトルの「紫陽花話」は、浮気→移ろい気?→移り気→紫陽花の花言葉と言う連想で。
適当じゃないのですよー、ない頭絞ってるんですよーコレでも。
割と文学作品では使われているそうなのでわかりやすいか…な?

没にしたもう一バージョンがあります。
普通にアップ予定。(待て)
途中まで全く一緒ですが話しの流れが苦しく、人様には捧げられないと思ったソレでも愛しい子なのですッ!
それではでは、新奴里妃様524ヒットありがとうございました♪





Back

広告 「空いた時間」×「情熱」=「人生が変わる?」 通販 花 無料 チャットレディ ブログ blog

PR
BACK HOME NEXT
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
最新記事
as
(06/27)
p
(02/26)
pp
(02/26)
mm
(02/26)
s2
(02/26)
ブログ内検索
忍者ブログ // [PR]

template ゆきぱんだ  //  Copyright: ふらいんぐ All Rights Reserved