愛の日
以外にもバレンタインに、元総帥がシンタローにチョコを強請ることはない。
「だって私イギリス生まれのイギリス育ちだよ?好きな人にチョコを送るって言うのは、日本だけの風習だからねぇ」
疑問に思った直属の部下達がこれまた直球で聞けば、穏やかに笑って返された。
確かにそうだったと納得しかかるものの、それでは彼に行動に説明が付かない。
「じゃあ総帥、なんでチョコレートケーキなんてつくっとりますのん」
「私は妻が日本人だからね。彼女はそういうイベント事好きだったし、大切な人に贈り物するのはこっちでも同じだし」
私もいつの間にか、チョコ関連するようになってたなぁ。
にこにこ笑いながら泡立て器をカシャカシャ言わしている。
ほわほわとふんわりオーラを出している元総帥は、本当に元総帥とは思えないほど気が抜けていた。
「……なんやマジック様落ち着いたべなぁ」
「そうっちゃね。元々シンタローにだけは甘い方だったけど……」
機嫌がいい、それだけでは説明の付かない元総帥。
エプロン付けてキッチンに立って。
うきうきと料理をする様は手際もよろしく見事なものだ。
まぁそれは以前から見慣れたものであったけど。
「君達暇なの?」
「暇というかこれが仕事というか……」
「シンちゃんに頼まれたの?」
じーっとキッチンを見つめる八つの瞳。
それに臆することはないが、なんで此処にいるかという疑問はある。
当然の質問に、彼らは顔を見合わせた。
「そうじゃけぇ、ワシたちの存在は気にせんといてください」
「信用無いなぁ…まぁ別に良いけど。あ、そうだ半分に別れて高松のとこ行ってくれるかな」
三人の逡巡も知らず、あっさりとコージが口を開く。
けれど元総帥は気にした様子もなく、軽く肩を竦めるとすいっとヘラをコージ達に向ける。
ざくっと縦に切って、ドアへヘラを流す様子はコージ達に拒否権がないことを示していた。
「なんでまた…?」
「多分キンちゃんは高松の言うこと聞いちゃってチョコ上げるんだろうけど、やっぱり高松も用意してるだろうし。可愛い息子と甥の身は心配なんだよね……変なモノ混ぜそうだから見張っててよ。手間は一緒でしょ?」
私見張ってるのも高松見張ってるのも。
クリームを混ぜながら、リキュールの瓶を傾ける。
思わず四人が凝視すれば、元総帥はそのまま瓶を放り投げて来た。
トットリが慌ててキャッチすれば、こちらに視線も向けずに口を開く。
「ただのコアントロー。飲んでみれば?変な味しないし」
「………すいません」
思わず謝ってしまうが、元総帥は特に機嫌を損ねたワケじゃないらしい。
鼻唄交じりに泡立て器にまた持ちかえて、軽い手首のスナップを披露する。
かっしゃかっしゃと小気味いい音をしばらく聞きながら。
四人は再度顔を見合わせて頷いた。
「じゃあ総帥、ワシ等ドクターんところ行ってきますわ」
「あれ。全員で行くの?」
コージが改めて声をかければ、元総帥はようやくこちらに顔を向ける。
四人揃ってドアを潜ろうとするのに問うてきた。
それにひらひらと手を振るコージはへらっと笑う。
「シンタロー怒らしても平気ですけど、総帥怒らしたら無事でいられる自信ありませんわ」
言い逃げるように扉を閉めた部下達。
元総帥はぽかんとそれを見送って、次には笑いを零していた。
「別に怒りなんかしないのに」
確かにいっつも下心がないかと言われれば云とは言えないが。
シンタローが心配するのも仕方ないと思っているが。
この日に、不純物を混ぜようとは思わない。
「ちいさいシンちゃんが、一生懸命くれたの嬉しかったしねぇ……」
見返りもないのによくやるなと。
あの四人が来る前に来ていた弟。
彼らしい言葉に、そのときは何も返さなかったけど。
「こんなにのんびり、上げた事なんてなかったし」
愛してるよと伝えられる日。
勿論それは息子にだけでなく。
今日という日に生まれた双子にも、向けているものなのだけど。
「愛って言うのはね、見返りはいらないんだよ」
そう言うマジックの呟きは。
オーブンで膨らむケーキだけに、向けられていた。
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少々遅くなりまして、バレンタインモノです。
トップ画変えているときにばーっと思いついたのでそのまま書いてみたのですがまとまりわろし…。
折角書いたんでアップしてみましたが、その内下げるかも知れません。(ならアップするなって感じなんですがね!(苦笑)
最初と最後の言葉が書きたかったんですが描きだしているうちに朧気に。(駄目駄目じゃん)
最近総帥とシンちゃんとキンちゃんが好きすぎてやばいですよ…!
すっかり父親な総帥しか書いてない気がします…。
06/02/19
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