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冬の灯2










「雪ですねぇ」


高松のそんな言葉に、シンタローは手元の書類から視線を外にと移した。

ふわりふわりと落ちてくる淡い光。
夜の闇の中、はっきりとわかるそれにシンタローは窓元にまで近寄っていく。
はめ込み式の窓は開かない。

けれど手をつけば、外の冷気が伝わってくる。






「今年、初めてだな」
「そうですね」
「やっぱキンタロー連れてくるんだった。一緒に見ようって、言ってたのに」




シンタローの言葉に、高松が僅かに目を見開いた。
つまらなそうに外を見やるシンタローの隣にと、高松は足を進める。


「それはすいませんね。私で」
「うん」
「……キンタロー様といつそんなことを?」

悪びれもなく、さらりと肯定されて高松はため息をついた。
こういうとき、やはり親子だと思う。



「ん、雨降ったときにな。キンタローがやけに真剣に見てるもんだから声かけてみたらさ」



『これが雨、か?』

と、いつものあの口調で。
濡れるのも構わず手を伸ばして、雨に触れて。
冷たいなと。
どこか楽しげに。

あの薄い金色に滴を纏わせたキンタローが。
やたらに。
可愛く思えて。



『もっと寒くなると、これ雪になるんだぞ』
『ゆき?』
『ああ。多分今年は早くに雪降るだろうから、一緒に見ような』



「約束ってほどでもねぇんだけど、こうして降ってみると割りと楽しみにしてたのかも」
「まぁとりあえずは私で我慢してくださいよ。初雪を一緒に見ようといったわけでもないんですから」
「でもさぁキンタローにとっては正真正銘の初雪だぜ?ちょっと残念かもなーと思って」



少しすねた様子のシンタローに高松は苦笑する。
ないものねだりなど、今さらだと分かっているのに。

シンタローの気持ちはわからないでもない。
むしろ分かりすぎるほど分かって、高松だって悔しい限りだ。



「そういや高松は覚えてるのかな」
「何をですか?」
「俺が雪はじめてみた時、こっちは素直に綺麗だって感動してんのにお前は雪というのは空中の塵を核にして…なんて理屈こね始めて」
「……ああ、理屈をこねたわけじゃ有りませんよ。ただ本当のことを言っただけです」
「ガキにんなことわかるか」
「ルーザー様の大事なご子息には、ぜひそういう知識も覚えていて欲しかったんですよ」


さらりと言われて思わず聞き逃しそうになるが、慌ててシンタローは高松を振り返った。
高松はいつもと変わらない、人の悪い笑顔を浮かべてシンタローを見やっている。



「あんたが、事の元凶だもんなぁ……」
「サービスもですよ」
「そっかだからだよな。あんた俺のことすんげぇ優しい目で見ると思った」


今度は軽くシンタローに流されて。
なんだか妙に納得した様子に苦笑する。



「コージとかには変な事するのに、俺にはしなかったもんな」
「グンマ様にもなにもしてないですよ」
「……………」


高松のその言葉に、シンタローが眉を顰めた。
言葉を選んでいる。
それがありありとわかる様子に、高松は笑いながら口を開く。


「私のグンマ様への想いも、本物ですよ」
「………………」
「確かにルーザー様を死に追いやったマジック様は憎かった。けれどルーザー様が唯一尊敬していたのもあの方なんです」


めずらしく茶化さずに本音を零す高松。
高松の輪郭が、雪明りで淡く彩られている。



「それに小さなグンマ様にずっとお仕えしていたんです」
「ああ………」
「可愛いと思うのは、大事にしたいと思うのは当然でしょう?」



その余裕な笑みが、まだまだですねと言っていて。
シンタローは不快感に深く眉を寄せた。
そんなシンタローに、高松は笑みを深める。



「貴方の事も、勿論今でも大切です」
「…………………」
「あなた方従兄弟の幸せを、祈っていますよ」



その口調こそ妙におどけているのに。
シンタローを見やる表情はひどく優しくて。

返す言葉が見つからず、顔が赤くなるのだけを自覚する。




「積もりそうですね」



何事もなかったかのように外を見やる高松を軽く小突いて。
シンタローは、その場をあとにするのだった。










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元日記SS2。
同じタイトルのマジ+キンと対な感じで。

ちょっと書きたかったネタを中途半端に書いてみた話。
シンちゃんVerのはずだったのに、見事に高松メインです。あれー?
高松はシンちゃんのことルー兄の子どもだと思っていて、グンちゃんのことはマジックの子どもだってわかっていたんですよね。
その辺小さいときになんかなかったのかな―って思って。
グンちゃんが無意識にシンちゃんに嫉妬しててもいいよな―とか。
そんなことを思いながら書きました。(思ってただけか)
またもやまとめられてないまま終!

06/04/05(06/01/04)


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