「髪の色が違っても、秘石眼でなくともお前は私の息子だ」
ありがとう。
あの時俺は本当に嬉しかったんだ。
だけどそのことは未だに言えずにいる。
あれからずいぶん経ってしまったから、今更言うこともできないってこともあるけど、この先、落とすことも、拭うことも出来ないであろうと思われる染みが心にしみ込んでしまっているから。
マジックが俺の本当の親でないどころか、俺には産みの親すらいない。それはやっぱり悲しかった。存在意義を失くしてしまったような気すらした。それだけじゃない、キンタローやグンマの人生を自分が大きく変えてしまった。それが悔しい。キンタローなんて24年間、怒りと悲しみしか知らなかった。もしかしたら、その感情の名前すら知らなかったのかもしれない。グンマも入れ替えられたことがなければ、親父の愛を一心に受ける筈だったのに。俺ばかりがいい思いをしてしまっている。
あの島から帰ってきてから、ずっと心に引っかかっていたことだった。その引っかかりにいち早く気づいたのは従兄弟のグンマだった。いや、実際は親戚でもない。
「シンちゃん、どーしたの?最近元気ないよ?」
「そうか?」
上手く笑えない。そのことを忘れる為と、ガンマ団総帥成り立てで仕事ばかりで疲れていたこともあるのだろう。
「そうだよ。いつもぼーっとしちゃってさ。何かあったの?」
そんなにぼーっとしていただろうか?自覚はない。でもこいつが言うならそうなのであろう。
「何もねぇ・・けど・・」
「けど、何?」
言ってしまおうか。こいつに言ったらすっきりするだろう。だけど、言えるわけがない。考えているとグンマが顔を覗き込んでくる。
「シンちゃん?」
言葉がでない。
「シンちゃん、あの島であったこと気にしてるの?」
ズキ。心臓が痛い。心が痛い。心臓はやはり心でもあることを知らされる。
「ごめん・・」
「それは僕のプラモを壊したこと?それともシンちゃんが今、ここに存在こと?」
「どっちもだ」
グンマは微笑った。
「プラモのことは謝ってほしいけど、その次に言ったことは謝る必要ないよ」
「でも・・!!」
「でももかかしもないよ。シンちゃんが謝ることなんてないじゃない。」
「親父を取っちまってる」
少し間が空き、
「そうでもないよ」
グンマは笑った。遠くを見ながら。
「おとーさまは僕のこともコタローちゃんのことも大切にしてくれているよ」
その後に「シンちゃん程じゃあないけどね。」と言って。笑った。
何故?何故、そんなに笑えるんだ。悲しくないわけがないのに。
「グンマ・・・」
「まぁ、シンちゃんはシンちゃんで、色々大変じゃない」
「何が?」
「毎日のおとーさまの好き好き攻撃とか、夜の相手とか」
「グンマ!!」
顔が下から赤くなっていくのがわかる。
「そんなに怒鳴らなくてもいいじゃない。本当のことなんだからさ」
「本当って・・・お前ねぇー」
「じゃあ違うの?」
グンマが意地悪そうにニヤニヤと笑っている。
「何かお前だけは敵に回したくないな」
「何で?でも、僕がシンちゃんの敵に回ることは絶対にないから大丈夫だよ」
「何でだよ」
「だって僕、シンちゃんのこと好きだもん」
グンマはニコニコと笑って言った。
「シンちゃんは?シンちゃんは僕のこと好き?」
一瞬、シンタローは驚いたような顔を見せたが、直ぐに優しく笑って言った。
「あぁ。お前は大切な従兄弟だ」
「ちぇ、やっぱりシンちゃんは好きとは言ってくれないんだ~おとーさまにも言ってあげないの?」
「言えるか!おめぇらが言いすぎなんだよ、ったくそーゆうとこはお前、マジックにそっくりだぜ」
「えー素直なだけだよ。シンちゃんこそ素直になってあげなよ」
「俺はいつも素直に嫌がってる」
「も~、素直じゃないんだからー。そう言えばさっきの話キンちゃんに言ったの?」
「いや、お前が初めてだ」
「言うの?」
「どうかな・・・あいつに散々嫌われてたからな」
「きっと、僕と同じこと言うと思うよ。だってキンちゃんもシンちゃんのこと大好きだもん」
「俺がどうしたって」
カツカツと規則的な音が聞こえてくる方を向いてみると、そこには白衣を纏ったキンタローがいた。
「あっ、キンちゃん。ねぇねぇキンちゃんもシンちゃんのこと好きだよね?」
「当然だ」
「ねっ?」
だから言ったでしょ?みたいな顔をグンマがしている。
「何でそんなことを聞く」
「シンちゃんがね~キンちゃんに嫌われてるんじゃないかって心配してるんだよ」
「お、おいグンマ!」
「嫌う?」
キンタローが少し考えているような顔をする。
「あの時のことを気にしてるならすまなかった」
キンタローが頭を下げる。
「なっ、何でお前が謝るんだ、頭上げろ。謝るのは俺の方だ」
キンタローが頭をあげる。
「24年間・・・お前に気づいてやれなくてごめん」
キンタローが驚いている。だけど少し微笑った。
「何を言っている、俺はお前を一度殺してるんだ。お互い様だろう・・それに俺たちは従兄弟だろ」
「だって、シンちゃん。キンちゃんは怒ってないし、お腹すいたって!」
「確かに減ったな」
時計を見ると既に12時を廻っている。
「じゃあこれから3人で飯でも食うか!」
「うん!」
グンマが明るく答える。
「ああ」
キンタローも頷く。
グンマがキンタローの腕をとって歩き出す。2人の背中を見ながら、俺は小さな声で言った。
「ありがとう」
2人には聞こえないような小さな小さな声で。
「シンちゃん何やってるのーおいてくよー」
「おう!」
2人の元へ駆け寄る。
「シンちゃん、キンちゃん、僕たちはこれからもずっと一緒だよ!」
「当たり前だ」
「ああ。一緒だ」
3人で肩をならべて歩き出す。
今日の昼食の話をしながら。
End
従兄弟’zのお話であります。これは学校でふと浮かんで授業中にひそひそと書いたものです。でも最初はマジシンを書く気だったのですがいつの間にかこの3人になってました。しかも打ち込んでる最中にキルラブの話を思い出したため微妙に最初に考えたやつと変わっています。これを書いてて気づいたことは、グンマがいると話を進めやすいってことです。きっとこれからグンマの出番が増える予感です。(2006.2.18)
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ありがとう。
あの時俺は本当に嬉しかったんだ。
だけどそのことは未だに言えずにいる。
あれからずいぶん経ってしまったから、今更言うこともできないってこともあるけど、この先、落とすことも、拭うことも出来ないであろうと思われる染みが心にしみ込んでしまっているから。
マジックが俺の本当の親でないどころか、俺には産みの親すらいない。それはやっぱり悲しかった。存在意義を失くしてしまったような気すらした。それだけじゃない、キンタローやグンマの人生を自分が大きく変えてしまった。それが悔しい。キンタローなんて24年間、怒りと悲しみしか知らなかった。もしかしたら、その感情の名前すら知らなかったのかもしれない。グンマも入れ替えられたことがなければ、親父の愛を一心に受ける筈だったのに。俺ばかりがいい思いをしてしまっている。
あの島から帰ってきてから、ずっと心に引っかかっていたことだった。その引っかかりにいち早く気づいたのは従兄弟のグンマだった。いや、実際は親戚でもない。
「シンちゃん、どーしたの?最近元気ないよ?」
「そうか?」
上手く笑えない。そのことを忘れる為と、ガンマ団総帥成り立てで仕事ばかりで疲れていたこともあるのだろう。
「そうだよ。いつもぼーっとしちゃってさ。何かあったの?」
そんなにぼーっとしていただろうか?自覚はない。でもこいつが言うならそうなのであろう。
「何もねぇ・・けど・・」
「けど、何?」
言ってしまおうか。こいつに言ったらすっきりするだろう。だけど、言えるわけがない。考えているとグンマが顔を覗き込んでくる。
「シンちゃん?」
言葉がでない。
「シンちゃん、あの島であったこと気にしてるの?」
ズキ。心臓が痛い。心が痛い。心臓はやはり心でもあることを知らされる。
「ごめん・・」
「それは僕のプラモを壊したこと?それともシンちゃんが今、ここに存在こと?」
「どっちもだ」
グンマは微笑った。
「プラモのことは謝ってほしいけど、その次に言ったことは謝る必要ないよ」
「でも・・!!」
「でももかかしもないよ。シンちゃんが謝ることなんてないじゃない。」
「親父を取っちまってる」
少し間が空き、
「そうでもないよ」
グンマは笑った。遠くを見ながら。
「おとーさまは僕のこともコタローちゃんのことも大切にしてくれているよ」
その後に「シンちゃん程じゃあないけどね。」と言って。笑った。
何故?何故、そんなに笑えるんだ。悲しくないわけがないのに。
「グンマ・・・」
「まぁ、シンちゃんはシンちゃんで、色々大変じゃない」
「何が?」
「毎日のおとーさまの好き好き攻撃とか、夜の相手とか」
「グンマ!!」
顔が下から赤くなっていくのがわかる。
「そんなに怒鳴らなくてもいいじゃない。本当のことなんだからさ」
「本当って・・・お前ねぇー」
「じゃあ違うの?」
グンマが意地悪そうにニヤニヤと笑っている。
「何かお前だけは敵に回したくないな」
「何で?でも、僕がシンちゃんの敵に回ることは絶対にないから大丈夫だよ」
「何でだよ」
「だって僕、シンちゃんのこと好きだもん」
グンマはニコニコと笑って言った。
「シンちゃんは?シンちゃんは僕のこと好き?」
一瞬、シンタローは驚いたような顔を見せたが、直ぐに優しく笑って言った。
「あぁ。お前は大切な従兄弟だ」
「ちぇ、やっぱりシンちゃんは好きとは言ってくれないんだ~おとーさまにも言ってあげないの?」
「言えるか!おめぇらが言いすぎなんだよ、ったくそーゆうとこはお前、マジックにそっくりだぜ」
「えー素直なだけだよ。シンちゃんこそ素直になってあげなよ」
「俺はいつも素直に嫌がってる」
「も~、素直じゃないんだからー。そう言えばさっきの話キンちゃんに言ったの?」
「いや、お前が初めてだ」
「言うの?」
「どうかな・・・あいつに散々嫌われてたからな」
「きっと、僕と同じこと言うと思うよ。だってキンちゃんもシンちゃんのこと大好きだもん」
「俺がどうしたって」
カツカツと規則的な音が聞こえてくる方を向いてみると、そこには白衣を纏ったキンタローがいた。
「あっ、キンちゃん。ねぇねぇキンちゃんもシンちゃんのこと好きだよね?」
「当然だ」
「ねっ?」
だから言ったでしょ?みたいな顔をグンマがしている。
「何でそんなことを聞く」
「シンちゃんがね~キンちゃんに嫌われてるんじゃないかって心配してるんだよ」
「お、おいグンマ!」
「嫌う?」
キンタローが少し考えているような顔をする。
「あの時のことを気にしてるならすまなかった」
キンタローが頭を下げる。
「なっ、何でお前が謝るんだ、頭上げろ。謝るのは俺の方だ」
キンタローが頭をあげる。
「24年間・・・お前に気づいてやれなくてごめん」
キンタローが驚いている。だけど少し微笑った。
「何を言っている、俺はお前を一度殺してるんだ。お互い様だろう・・それに俺たちは従兄弟だろ」
「だって、シンちゃん。キンちゃんは怒ってないし、お腹すいたって!」
「確かに減ったな」
時計を見ると既に12時を廻っている。
「じゃあこれから3人で飯でも食うか!」
「うん!」
グンマが明るく答える。
「ああ」
キンタローも頷く。
グンマがキンタローの腕をとって歩き出す。2人の背中を見ながら、俺は小さな声で言った。
「ありがとう」
2人には聞こえないような小さな小さな声で。
「シンちゃん何やってるのーおいてくよー」
「おう!」
2人の元へ駆け寄る。
「シンちゃん、キンちゃん、僕たちはこれからもずっと一緒だよ!」
「当たり前だ」
「ああ。一緒だ」
3人で肩をならべて歩き出す。
今日の昼食の話をしながら。
End
従兄弟’zのお話であります。これは学校でふと浮かんで授業中にひそひそと書いたものです。でも最初はマジシンを書く気だったのですがいつの間にかこの3人になってました。しかも打ち込んでる最中にキルラブの話を思い出したため微妙に最初に考えたやつと変わっています。これを書いてて気づいたことは、グンマがいると話を進めやすいってことです。きっとこれからグンマの出番が増える予感です。(2006.2.18)
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