今日は私、マジックの誕生日である。
総帥であった頃は各国の現場へと忙しく飛び回っていたものだが、最愛の息子に総帥の座を譲ってからと言うものの暇な時間が増えて仕方が無い。暇つぶしに書いた本も飛ぶように売れてサイン会に各地を回る身であってもやはり暇な時間と言うものは存在していて…本日も手空きの日であり、ほう…と深く溜息を吐く。別に己の誕生日にはこだわりは無いが…
嗚呼、シンタロー…今年は私の誕生日を祝ってくれるのだろうか…
嗚呼、シンちゃん…パパは寂しくて寂しくて死んでしまいそうだよ…
だから…早くパパの所に来て、昔の様に私にとびきりの笑顔を見せておくれ…?
******************************************************
折角の休日も無駄に出来ないといそいそとデジタルカメラを取り出して大型のテレビへと接続をする。同時に取り出した大量のDVD-RAMをセットして編集を開始する。
『パパァ!僕、パパの事大好きだよ!』
『父さん…その…有難う、スゲェ嬉しいよ!』
次々に画面に現れる愛しい息子の笑顔、何度見ても良い…その笑顔をパパに滅多に向けてくれなくなったのは何時からだろうか…ああ、コタローを幽閉してからか。それ以来あの子は私の前では益々反抗ばかりするようになって…それもまた愛しかったのも事実だが。
ああ、いけないいけない。編集する時は楽しい気持ちでしなくては後ほど見返した時にも影響が残るからね。
首を軽く横に振ると気を取り直して編集を始める。視聴用・保存用・布教用・その他…沢山コピーも取らないとね。
暫く編集に没頭していたが不意に聞こえたドアを叩く音。遠慮がちなそれでも特殊なそのノックの仕方をする人物は一人しか思い浮かばず、機材の電源を切って当然の嬉しさ全開の声で歓迎する。
「シンちゃんかい?遠慮せずに入っておいで?」
少しの間があって扉が開くとその隙間から顔を覗かせた人物…ああ、シンちゃん!パパはお前を待っていたんだよ?両腕を広げて出迎える。少し大人しい態度に私を伺う表情を浮かべながら私に近づく息子…嗚呼、その初々しく幼さを感じさせる表情もまた素敵だよ!でも折角シンちゃんの為に広げた腕に飛び込む事はなく視線を知らした息子は私の少し手前で止まり、大袈裟に溜息を吐いた。
ええっ!?何、何だいシンちゃん!パパ、何か可笑しい事でもしたかい!?
「マ………えーっと、父さん…鼻血…」
その言葉と共に差し出されたティッシュの袋、ああ…可愛いシンちゃんを堪能していたから何時の間にか流れていたようだ。
鼻血を拭き取り終えると赤く染まったティッシュをゴミ箱に捨てて、再び笑顔で出迎える。
「シンちゃん…今日という日をお前と過ごせるだなんて嬉しいよ…さあ、パパの隣にでも座りなさい。ああ、紅茶も淹れようね。アップルティで構わないだろう?」
「え、でも今日は父さんの誕生日だろう?俺が淹れても良いケド」
「はは、その言葉だけでパパは充分だよ。良いから座っておいで、お前が側に居るだけで幸せなんだからね?」
その一言にそれ以上言わず戸惑い気味にソファに腰を下ろした息子を確認すると、部屋の奥に備え付けのミニキッチンで紅茶の用意をする。お気に入りのメーカーの紅茶葉を二人分に妖精さんの分をプラスしてポットに入れてお湯を注ぐと良い香りが漂い始める。鼻歌交じりにポットとカップとソーサー、それに皿に乗せたクッキーをトレイに乗せて息子の元へと戻る。ローテーブルの上に運んできた物を並べる。良い感じに蒸した紅茶をカップに注いで息子の前へと置くとシンちゃんの隣に深々と腰を掛ける。その様子に目もくれずに両手を膝の上で組んで沈黙しているシンタロー…不意に私に向けられた顔、人懐っこい柔らかい笑顔を浮かべて一言。
「父さん、誕生日おめでとう!俺に出来る事は少ないけれど…今日は父さんの為に何かしたいと思うんだ。何かして欲しい事あるか?」
プシューッ!
派手な音を立てて流れる鼻血をシンタローが慌ててタオルで拭った。
シンちゃん…嗚呼、シンタロー!そんな無防備な笑顔でそんな無防備な言葉でパパを悶え殺す気かい?
「わー!ちょ…ちょっとタンマ!!」
息子の叫びに失いかけた自我を取り戻す。どうやらあまりの感動に息子をソファへと押し倒して頬擦りしていたらしい。私の下で警戒心たっぷりに私を睨み上げるシンちゃんに自我は遥か銀河の彼方へと飛ばして、シンちゃんへと手を伸ばしてゆっくりとその頬を撫でる。僅かに震える声で抗議の声を上げる息子の言葉は華麗にスルーをして額へとキスを落とす。
「…っ!?マジック…ッ!!」
「シンタロー、お前がいけないんだよ?お前がそんなに可愛い事をするから…」
「誰が可愛いっ…んっ!」
私を拒否して逃げようとした息子の唇を自分のそれで塞ぐ。尚も抵抗する彼の肩をソファへと深く押し付けると更に深く唇を奪う。自分の息子を押し倒す…常識的では有り得ないがそれ以上に愛しい存在を前に、倒錯した意識の中止める事すら諦めた。
「シンちゃん…パパから逃げられる訳がないだろう?現役を退いてもまだ、お前よりは強いんだからね?」
「そういう問題じゃないっ!大体俺は…ッ!」
再び塞ぐ唇。しっかりと顎を押さえて、空いたもう片方の手で長い黒髪を優しく梳く…何時もと何処か違う肌触りを特に気にするでもなく暫くそうしていると突然大きな音と共に扉が開いた。何事かと唇を離して上半身を起こして入り口を見る。真っ赤な軍服に綺麗な流れる黒髪を映えさせた愛しい存在がソコに立っていた。走ってきたのか大きく息を乱して私を睨む息子…ソファから降りると内心冷や汗を流しながらもそうと悟られない様に笑みを浮かべて…
「やあ、シンちゃん。お帰り…今日は帰れなかったんじゃないのかい?」
「何…やってンだよ、この馬鹿親父ッ!!」
私の問いに答える事はせず一方的に怒鳴りつける息子…嗚呼、何時もの元気が良い私のシンちゃんだ…
嬉しさに駆け寄ったパパを遠慮なく眼魔砲を炸裂させたシンタロー…パパの部屋が破壊されちゃったよ…自業自得である事を理解していても流れる涙を溢れるさせる私の横を通り過ぎてソファへと近づくシンタロー。ソファの上では先程まで私が『シンタロー』と言っていた人物が脱力したまま腰を下ろしていて、近づく息子を見上げた。
「……で、お前は何やってンだよ、チン」
「だーかーら、俺はジャンだよジャン。でも悪い…助かった。そう睨むなって、マジックさんからの依頼なんだからさー。まさか押し倒されるとは思わなかったけど…」
「…依頼?」
「嗚呼、ジャン!それは言わない約束…ッ!」
途中で口を挟んだ私ににこやかな笑顔を向けるとサクっと無視を決め込んで続きを話始めるジャン…くっ…裏切り者ッ!
「お前がさ、遠征で帰ってくるのは明日の予定だったろう?だからせめて顔の似てる俺にシンタローの代わりに誕生日を過ごしてくれってたのまれた訳」
隠す事無く話すとジャンは被っていた長髪のカツラを外し、それをソファへと置くと髪を掻き乱して立ち上がる。息子と変わらない体格、変わらない顔…いや、幾分か幼さを見せはするものの二人が並ぶとやはり似ていると実感せざるを得なかった。
「…マジックさんが一番一緒に過ごしたかったのは俺じゃなくシンタロー…お前なんだぜ?仲直りしろよ」
理由を聞いても押し黙ったままのシンタローの肩を軽く叩くと私には視線も向けずに部屋を出て行った。相変わらず押し黙ったままの息子…重い沈黙が漂う。シンちゃんと見間違うほどそっくりなジャンがいけないのだよ!等と責任転換してみてもこの状況は変わりそうに無い。床にひれ伏した重い身体を起こして息子へと近づく。
「オ・ヤ・ジ!眼魔砲ッ!」
再び撃たれた眼魔砲、二度目を受けたら流石にまずそうだ。そう思い反射的に眼魔砲で応戦する。丁度良い力加減で相殺は出来たもののやはり部屋が壊れるのには違いは無く…ティラミスやチョコレートロマンスが見れば絶叫したまま意識を手放しそうなこの部屋の状況にただ溜息を吐く。どうやらシンちゃんも同じ考えに達したらしく、にやりと笑みを浮かべると私へと身体を向けた。嗚呼、シンちゃん!ようやくパパの方を向いてくれたね!怒ってても良い、パパを見てくれるのが嬉しいんだよ!
「…この部屋の修理代とあの二人にしかられる役は親父だけで宜しく。それで許してやるよ」
しょうがない、と苦笑いを浮かべたシンちゃんが纏う空気は優しくなっていて…シンちゃん、もう怒ってないのかい?
「あ、怒ってないって言えばウソだからな。今日という日を考慮して早めに片付けて即行で帰って来た俺が馬鹿みたいじゃねーかよ。アンタの誕生日だから特別に許してやるんだからな」
そうブツブツ呟くその姿すらも愛しく、抱きしめ様とした瞬間に方向転換をしてソファへと腰を下ろしてパパを見上げる。
「取り合えず、この用意した茶菓子を片して俺の為に暖かーい紅茶と美味い茶菓子を用意してくれよな。そうそう、俺ってば帰ったばかりで疲れてるから甘いのが良いな」
長い髪を鬱陶しそうに後ろへと跳ねると背もたれに背中を預けてゆったりとソファへ身を沈めたシンタロー。
「うん、任せておいて。パパはシンちゃんの頼みなら何でもござれだよ!」
慌しくローテーブルの上を片付け始めた私にシンちゃんがとても嬉しい言葉をくれた。
「………えーっと…プレゼントは今持ってないから明日にでも持ってきてやるよ。代わりに…今日は日付が変わるまでは側に居てやる、有りがたく思えよな?それと…誕生日、おめでとう父さん…」
シンちゃん!!ありがとう…やっぱり顔が似て様が誰だろうがパパはお前に言われるのが一番嬉しいみたいだよ…
愛してるよ私の可愛いシンタロー…紅茶を用意したらパパと沢山語り合おうね。
総帥であった頃は各国の現場へと忙しく飛び回っていたものだが、最愛の息子に総帥の座を譲ってからと言うものの暇な時間が増えて仕方が無い。暇つぶしに書いた本も飛ぶように売れてサイン会に各地を回る身であってもやはり暇な時間と言うものは存在していて…本日も手空きの日であり、ほう…と深く溜息を吐く。別に己の誕生日にはこだわりは無いが…
嗚呼、シンタロー…今年は私の誕生日を祝ってくれるのだろうか…
嗚呼、シンちゃん…パパは寂しくて寂しくて死んでしまいそうだよ…
だから…早くパパの所に来て、昔の様に私にとびきりの笑顔を見せておくれ…?
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折角の休日も無駄に出来ないといそいそとデジタルカメラを取り出して大型のテレビへと接続をする。同時に取り出した大量のDVD-RAMをセットして編集を開始する。
『パパァ!僕、パパの事大好きだよ!』
『父さん…その…有難う、スゲェ嬉しいよ!』
次々に画面に現れる愛しい息子の笑顔、何度見ても良い…その笑顔をパパに滅多に向けてくれなくなったのは何時からだろうか…ああ、コタローを幽閉してからか。それ以来あの子は私の前では益々反抗ばかりするようになって…それもまた愛しかったのも事実だが。
ああ、いけないいけない。編集する時は楽しい気持ちでしなくては後ほど見返した時にも影響が残るからね。
首を軽く横に振ると気を取り直して編集を始める。視聴用・保存用・布教用・その他…沢山コピーも取らないとね。
暫く編集に没頭していたが不意に聞こえたドアを叩く音。遠慮がちなそれでも特殊なそのノックの仕方をする人物は一人しか思い浮かばず、機材の電源を切って当然の嬉しさ全開の声で歓迎する。
「シンちゃんかい?遠慮せずに入っておいで?」
少しの間があって扉が開くとその隙間から顔を覗かせた人物…ああ、シンちゃん!パパはお前を待っていたんだよ?両腕を広げて出迎える。少し大人しい態度に私を伺う表情を浮かべながら私に近づく息子…嗚呼、その初々しく幼さを感じさせる表情もまた素敵だよ!でも折角シンちゃんの為に広げた腕に飛び込む事はなく視線を知らした息子は私の少し手前で止まり、大袈裟に溜息を吐いた。
ええっ!?何、何だいシンちゃん!パパ、何か可笑しい事でもしたかい!?
「マ………えーっと、父さん…鼻血…」
その言葉と共に差し出されたティッシュの袋、ああ…可愛いシンちゃんを堪能していたから何時の間にか流れていたようだ。
鼻血を拭き取り終えると赤く染まったティッシュをゴミ箱に捨てて、再び笑顔で出迎える。
「シンちゃん…今日という日をお前と過ごせるだなんて嬉しいよ…さあ、パパの隣にでも座りなさい。ああ、紅茶も淹れようね。アップルティで構わないだろう?」
「え、でも今日は父さんの誕生日だろう?俺が淹れても良いケド」
「はは、その言葉だけでパパは充分だよ。良いから座っておいで、お前が側に居るだけで幸せなんだからね?」
その一言にそれ以上言わず戸惑い気味にソファに腰を下ろした息子を確認すると、部屋の奥に備え付けのミニキッチンで紅茶の用意をする。お気に入りのメーカーの紅茶葉を二人分に妖精さんの分をプラスしてポットに入れてお湯を注ぐと良い香りが漂い始める。鼻歌交じりにポットとカップとソーサー、それに皿に乗せたクッキーをトレイに乗せて息子の元へと戻る。ローテーブルの上に運んできた物を並べる。良い感じに蒸した紅茶をカップに注いで息子の前へと置くとシンちゃんの隣に深々と腰を掛ける。その様子に目もくれずに両手を膝の上で組んで沈黙しているシンタロー…不意に私に向けられた顔、人懐っこい柔らかい笑顔を浮かべて一言。
「父さん、誕生日おめでとう!俺に出来る事は少ないけれど…今日は父さんの為に何かしたいと思うんだ。何かして欲しい事あるか?」
プシューッ!
派手な音を立てて流れる鼻血をシンタローが慌ててタオルで拭った。
シンちゃん…嗚呼、シンタロー!そんな無防備な笑顔でそんな無防備な言葉でパパを悶え殺す気かい?
「わー!ちょ…ちょっとタンマ!!」
息子の叫びに失いかけた自我を取り戻す。どうやらあまりの感動に息子をソファへと押し倒して頬擦りしていたらしい。私の下で警戒心たっぷりに私を睨み上げるシンちゃんに自我は遥か銀河の彼方へと飛ばして、シンちゃんへと手を伸ばしてゆっくりとその頬を撫でる。僅かに震える声で抗議の声を上げる息子の言葉は華麗にスルーをして額へとキスを落とす。
「…っ!?マジック…ッ!!」
「シンタロー、お前がいけないんだよ?お前がそんなに可愛い事をするから…」
「誰が可愛いっ…んっ!」
私を拒否して逃げようとした息子の唇を自分のそれで塞ぐ。尚も抵抗する彼の肩をソファへと深く押し付けると更に深く唇を奪う。自分の息子を押し倒す…常識的では有り得ないがそれ以上に愛しい存在を前に、倒錯した意識の中止める事すら諦めた。
「シンちゃん…パパから逃げられる訳がないだろう?現役を退いてもまだ、お前よりは強いんだからね?」
「そういう問題じゃないっ!大体俺は…ッ!」
再び塞ぐ唇。しっかりと顎を押さえて、空いたもう片方の手で長い黒髪を優しく梳く…何時もと何処か違う肌触りを特に気にするでもなく暫くそうしていると突然大きな音と共に扉が開いた。何事かと唇を離して上半身を起こして入り口を見る。真っ赤な軍服に綺麗な流れる黒髪を映えさせた愛しい存在がソコに立っていた。走ってきたのか大きく息を乱して私を睨む息子…ソファから降りると内心冷や汗を流しながらもそうと悟られない様に笑みを浮かべて…
「やあ、シンちゃん。お帰り…今日は帰れなかったんじゃないのかい?」
「何…やってンだよ、この馬鹿親父ッ!!」
私の問いに答える事はせず一方的に怒鳴りつける息子…嗚呼、何時もの元気が良い私のシンちゃんだ…
嬉しさに駆け寄ったパパを遠慮なく眼魔砲を炸裂させたシンタロー…パパの部屋が破壊されちゃったよ…自業自得である事を理解していても流れる涙を溢れるさせる私の横を通り過ぎてソファへと近づくシンタロー。ソファの上では先程まで私が『シンタロー』と言っていた人物が脱力したまま腰を下ろしていて、近づく息子を見上げた。
「……で、お前は何やってンだよ、チン」
「だーかーら、俺はジャンだよジャン。でも悪い…助かった。そう睨むなって、マジックさんからの依頼なんだからさー。まさか押し倒されるとは思わなかったけど…」
「…依頼?」
「嗚呼、ジャン!それは言わない約束…ッ!」
途中で口を挟んだ私ににこやかな笑顔を向けるとサクっと無視を決め込んで続きを話始めるジャン…くっ…裏切り者ッ!
「お前がさ、遠征で帰ってくるのは明日の予定だったろう?だからせめて顔の似てる俺にシンタローの代わりに誕生日を過ごしてくれってたのまれた訳」
隠す事無く話すとジャンは被っていた長髪のカツラを外し、それをソファへと置くと髪を掻き乱して立ち上がる。息子と変わらない体格、変わらない顔…いや、幾分か幼さを見せはするものの二人が並ぶとやはり似ていると実感せざるを得なかった。
「…マジックさんが一番一緒に過ごしたかったのは俺じゃなくシンタロー…お前なんだぜ?仲直りしろよ」
理由を聞いても押し黙ったままのシンタローの肩を軽く叩くと私には視線も向けずに部屋を出て行った。相変わらず押し黙ったままの息子…重い沈黙が漂う。シンちゃんと見間違うほどそっくりなジャンがいけないのだよ!等と責任転換してみてもこの状況は変わりそうに無い。床にひれ伏した重い身体を起こして息子へと近づく。
「オ・ヤ・ジ!眼魔砲ッ!」
再び撃たれた眼魔砲、二度目を受けたら流石にまずそうだ。そう思い反射的に眼魔砲で応戦する。丁度良い力加減で相殺は出来たもののやはり部屋が壊れるのには違いは無く…ティラミスやチョコレートロマンスが見れば絶叫したまま意識を手放しそうなこの部屋の状況にただ溜息を吐く。どうやらシンちゃんも同じ考えに達したらしく、にやりと笑みを浮かべると私へと身体を向けた。嗚呼、シンちゃん!ようやくパパの方を向いてくれたね!怒ってても良い、パパを見てくれるのが嬉しいんだよ!
「…この部屋の修理代とあの二人にしかられる役は親父だけで宜しく。それで許してやるよ」
しょうがない、と苦笑いを浮かべたシンちゃんが纏う空気は優しくなっていて…シンちゃん、もう怒ってないのかい?
「あ、怒ってないって言えばウソだからな。今日という日を考慮して早めに片付けて即行で帰って来た俺が馬鹿みたいじゃねーかよ。アンタの誕生日だから特別に許してやるんだからな」
そうブツブツ呟くその姿すらも愛しく、抱きしめ様とした瞬間に方向転換をしてソファへと腰を下ろしてパパを見上げる。
「取り合えず、この用意した茶菓子を片して俺の為に暖かーい紅茶と美味い茶菓子を用意してくれよな。そうそう、俺ってば帰ったばかりで疲れてるから甘いのが良いな」
長い髪を鬱陶しそうに後ろへと跳ねると背もたれに背中を預けてゆったりとソファへ身を沈めたシンタロー。
「うん、任せておいて。パパはシンちゃんの頼みなら何でもござれだよ!」
慌しくローテーブルの上を片付け始めた私にシンちゃんがとても嬉しい言葉をくれた。
「………えーっと…プレゼントは今持ってないから明日にでも持ってきてやるよ。代わりに…今日は日付が変わるまでは側に居てやる、有りがたく思えよな?それと…誕生日、おめでとう父さん…」
シンちゃん!!ありがとう…やっぱり顔が似て様が誰だろうがパパはお前に言われるのが一番嬉しいみたいだよ…
愛してるよ私の可愛いシンタロー…紅茶を用意したらパパと沢山語り合おうね。
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