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憎みたい  愛したい
 殺したい  愛されたい

 ぶつかり合う言葉
 せめぎ合う心
 そしてメビウスの輪の如くこの身体を駆け巡る

 何が正しくて何が悪いのか
 そんな事は関係が無く
 己がどうしたいか…ただそれだけ…

 「お前の好きにすれば?」

 不意に掛けられた言葉
 顔を上げれば目前にアイツが居て

 「お前にはその権利がある」

 俺の心中等知らぬ筈
 なのにまるで全てを理解している様な言葉
 愛憎どちらが勝るとも解らぬまま目の前の男の首元へと腕を伸ばす

 「キンタロー…」

 触れた手に微動だにせず
 懇願でも同情でもない眼差しを向けてくる
 その態度に苛立ちが募る
 このまま力を込めて全てを終わりにするのは簡単な事だ

 「力を貸せ」

 短く放たれた言葉
 好きにしろと言いながらもまだ未来を作る気の男
 その矛盾さに苛ただしさを押さえる事無く首に触れた指に力をゆっくりと加える
 それでも苦しさからか僅かに眉を潜めただけで身じろぐ事なく言葉を繋げた

 「…青でもなく赤でもなく、俺にしか出来ない方法で良くしていきたい」

 『何を』とも『どんな』とも言わない自分勝手な言葉
 それでも見つめる瞳は熱い決意に溢れていて…
 俺は指を解いて離した

 急に開かれた気管に流れ込む空気にむせ返る男
 何故俺は手を離した?
 情熱にあてられて…いや、違う…

 「コホッ…まあ、何だ。お前の力も必要なんだよ。四の五の言わずに貸せって。その代わり…」

 一旦途切れる言葉
 長い髪を掻き乱し逸らされた視線
 再びソレと合った時には笑みを浮かべていて

 「その代わり、ソレが終わったらこの命だろーと何だろーとお前にやるよ。しょうがねェからな」

 諦めた訳でも無く本当に『仕方が無い』と全てを受け入れた様にふっと零した笑み

 

 唐突に理解した 俺はこの笑顔が見たかったのだと

 

 包み込む様な優しい眼差し 暖かい表情
 それは一瞬で消えてしまったのだけれど…
 その温もりは確実に凍てついていたこの心を溶かして…

 「シンタロー…」

 張り付く喉から無理矢理に出した声は霞んでいる様に感じる
 初めて呼んだかつては自分の
 そして今は半身である相手の名

 「ンだよ、文句でもあるってのかよ?」

 嬉しそうに笑いながら
 でも何処か拗ねた響きを含む声で掛けられた問い
 気がつけば俺自身も笑みを浮かべていて

 「…良いだろう。その時までは俺が全力でサポートしてやる。お前を止める役所が必要だろうしな」
 「待て、止めるって…何でそーなるんだよ」
 「此処は感謝する所だぞ。血の気の多いお前を止める損な役割をしてやるんだ、素直に感謝の意を示しておけ」
 「はーいはいっと。だったらお前無しじゃ困るって言わせる位に頑張ってくれよ」
 「当然だ、俺を誰だと思っている」

 自信はあった
 これから入れなければならないであろう膨大の知識を入れる苦労も
 シンタローとなら平気な気がした

 「…凄ェ自信だな」

 目を丸くして俺を見る半身は次の瞬間に肩を揺らして笑い出す
 俺は何か可笑しな事を言っただろうか…?

 「その調子で頼むぜ、キンタロー」

 気がつけば笑いを収めた半身が俺の肩を軽く叩いていて
 俺の横を通り抜ける表情は大きな何かに立ち向かう不安…
 それを覆い隠すほどに強い意思を露わにしていた

 「行くぞ」

 背中越しに掛けられた短い言葉
 それを当然の如く受け止め後に続く
 その不思議な感覚…決して嫌ではない

 全てを終えた時本当にくれるのだろうか
 お前の命 お前の心
 お前の全てを

 「キンタロー?」

 立ち止まり不思議そうに振り返ったシンタローに何でもないと首を横に振る
 引っ掛かりを覚えた様子の相手はだがそれ以上は聞かずに再び歩き出した

 終わりまで待てるかは解らない
 けれどその時までは共に歩いていけたら…と思う

 シンタローと言う名の長く深い闇の中に見つけた一筋の光のお前と…

 

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