四角く切り取られた空に白い煙
略奪達の宴はようやく終わり、新たな日が空に昇る
美しかった港町に大きな傷跡を残してー
~Die Lorelei 4~
「おい!わんこう!こっちだ!こっちにこいっての!」
ハーレムが牢屋に入れられ、はや1日が過ぎようとしていた。
急がなければならない、残された時間はわずかしかないのだからー
「ほ~らほら、うまそうな骨だろ?たのむからこいよ~」
いったいどこに持っていたのか、骨を片手に首から鍵を下げた茶色い犬に必死で訴えかけている。
街を襲う攻撃の音は今も聞こえている、だがー
(襲撃が始まってかれこれ・・・2・3時間くらいか?そろそろ潮時だぞ・・・)
明日には刑を執行すると言っていた。
そこにこの襲撃さわぎ、逃げるなら今しかない。
しかし、一向に犬はこちらに近づこうともしない。
「えぇい!ちくしょーめ!出たら絶対にお前を丸焼きにして食ってやっからな!」
ついにやけくそ気味にそう叫ぶと、ハーレムはこれまたどこに持っていたのか煙草を取り出し鉄格子に背を向け寄りかかると燻らせ始める。
騒がしい宴は終わり、静かに夜が明けようとしていた。
+++++
「やられたな・・・完全に俺達の負けだ。」
焼き切れた沢山のロープを目にキンタローは苦々しげに呟いた。
「う~ん、ちょっと甘く見てたかな?」
同じ光景を目にしながらもグンマはのんびりと答えた。
そこは街の中心近くにある広場。
昨夜の傷跡が最も多く残っているであろう場所だった。
「手足を拘束してこの場に捉えていたはずなのだが・・・」
眉間に深いしわを刻みながらキンタローは考えを巡らせる。
いくら”頑丈”といえど手足の自由を奪い襲撃の中心であったこの場に捉えていたのだ。
なのにー
「よっぽど彼らは頑丈だったってことだねぇ~」
グンマはのほほんとそんな事を言った。
「・・・これからどう動くつもりだ?」
「そうだね~、まずは・・・情報を整理しなくちゃ・ねv」
茶目っ気たっぷりに笑うグンマにキンタローはやれやれと言った顔で応じる。
「グンマ様、キンタロー様!」
そんな2人の後ろに伊達衆の1人、ミヤギが走ってきた。
「た・大変なことになったべ!シ・シンタロー様が・・・!」
笑っていたグンマの顔は驚きに変わっていった。
+++++
清潔に保たれた白いシーツ、ふかふかのベッドー
枕元にはお気に入りのぬいぐるみー
窓から入るさわやかな海風と鳥達が鳴き交わす声ー
ダイニングに準備されている朝食のクロワッサンとカフェオレの香りー
次第に浮上する意識に、しかしいつもと同じ朝の感覚はなかった。
ごつごつで生暖かい感触ー
顔のあたりにかかるこれまた生暖かい風ー
閉め切られているのか、ほこりっぽいこもった空気ー
何かが焦げたようなすすけた匂いと・・・これはー
「・・・加齢臭?」
いつもと違う感覚に訝しみながら、意識を浮上させると目の前にはー
「・・・失礼ですね、まだ若いですよ私」
「うっぎゃぁあああああ!!!!」
鼻血をたらした高松がいた。
「へ・変態!いくら僕が可愛いからって、こんな暗がりにつれこんで何するつもりだったの?!」
「は?私は何も・・・」
「うるさいよ!訴えるよ!勝つよ!その鼻血がなによりの証拠だよ!」
「いえ、これは・・・シンタロー様に無理矢理押し込まれた時に顔を打っただけで・・・」
「僕のお兄ちゃんがそんなことするわけないだろ!この嘘つき!変態医者!」
狭い物置部屋で暫し言い争う(主にコタローが)2人だったが、ふいに上から声が聞こえてきた。
「シンタロー!おい!いるなら返事をしろ!」
「シンちゃんっ!・・・コタローちゃん!いるなら返事してぇ!」
「!グンマお兄ちゃん達だ!」
身内がきた事に安堵したのかコタローが嬉しそうに声を上げた。
「・・・そのようですね、助けを乞いましょう」
「一応言っとくけど、さっきの事はちゃぁんと言いつけてやるんだからね!」
「あぁもう、好きになさって下さい・・・」
程なくして2人のいる地下の物置部屋に光が差し込んだ。
+++++
「じゃぁ・・・シンちゃんが2人を物置部屋に閉じ込めたって言うんだね?高松」
詳しい事情を聞く為に移動した本部の一室。
「申し訳ありません、・・・私にはとめることができませんでした」
「相手はシンちゃんだからね、止められなかったのは・・・まぁ、しかたないよ」
俯く高松にグンマは責めるでもなくそう言った。
「しかし、困った事にはなったな・・・」
責めているつもりはないのだろうがキンタローが重々しく呟いた。
「一体どういう経緯でそうなったのかは不明だが、シンタローが海賊に連れ去られたという報告が上がっている」
「!お兄ちゃんが?!何で?!」
キンタローの言葉にそれまでの話に入れないでいたコタローが反応した。
「高松、シンちゃんは2人を閉じ込めたとき何か言ってなかった?」
「・・・コタロー様を頼む、とそれだけ」
床に視線を落としたまま高松がそう答えた。
「そう・・・わかった」
グンマは高松からキンタローに視線を移すと、心得たようにキンタローは部屋から出て行く。
「お兄ちゃん・・・」
自分の身を案じてくれた兄を想い、今にもコタローは泣きそうな声で呟いた。
つづく
◇あとのあがき◇
パイレー○オブカリビアンを元にした長編パラレル4話目。
シンちゃんとパパを絡ませ・出したかったのに・・・
今回まるで出番なしです(爆)
しかも、今までの中でも1番文短いし(滝汗)
いや、言い訳さしてもらえるならちょっとキリが悪かったんもんで・・・
ここで切らないとだらだら長くなりそうだったんです
そして、毎度の事ですが文章おかしいです
つうか、書く度に表現かわってる気が・・・(汗)
誤字・脱字なんかを発見された方っ!教えて頂けるとありがたいです
2007.09.11
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