「そりゃ確かに俺は海賊だ。だがよぉ、てめぇらの・・・家族?の命の恩人に対してこの扱いはないんじゃねぇの?」
ハーレムは牢屋に入れられていた。
「シンタローを助けてくれた事には感謝しよう」
とキンタローが、
「そうそう、シンちゃんを助けてくれた事には感謝してるよ~」
とグンマが言う。
だが彼らに、ハーレムを牢屋から出す気はまったくなかった。
「ちっ。器の小さいやつらだな・・・。そんで?俺様はこの後どうなるわけだ?」
最初から話がわかるとは思っていない。
ハーレムは横柄に尋ねた。
「決まっている。海賊はみな縛り首だ。明日には刑を執行する」
淡々とキンタローは言い、話は済んだとばかりにグンマと共に部屋を出て行く。
「じゃ、また明日ね~」
がしゃーん
扉は閉じられた。
ハーレムだけが残された牢屋にのんきなグンマの声が響いていた。
~Die Lorelei 2~
~なじかは知らねど 心わびて
昔の伝えは そぞろ身にしむ
波間に沈むる 人も船も
くすしき魔が歌 歌うローレイライ~
「お兄ちゃん・・・。声はキレイなんだけどね」
「コタロー!!・・・聞いてたのか;」
港を一望できる、バルコニー。
シンタローは海に沈む夕日を見ながら、なんとなく思い出したこの歌を口ずさんでいた。
「下手じゃないんだけど・・・なんだろう?たどたどしいって言うのかな?不思議な感じ」
「うっ・・・;」
(たどたどしいって・・・)
ちょっぴり傷つくシンタローだった。
「あ、そういえばさ!今日お兄ちゃんを助けたあいつ!やっぱり海賊だって!」
話題を変えようと思ったのか、コタローはグンマ達が捕まえた海賊ーハーレムの話をする。
シンタローはどこか浮かない顔で相づちをうった。
「そうか・・・」
(ならば、明日には刑が執行されるのだろう。あの海賊に同情する気じゃないが・・・気が重いな)
仮にも自分を助けてくれた相手である。
それに、コタローの事も気がかりであった。
「・・・・・・」
(・・・何もしないよりはましか・・・)
シンタローは何かを決めたように空を見上げた。
××××××××
その夜、シンタローはハーレムに会いに牢屋へ忍び込んでいた。
「・・・なんだ?命の恩人である俺を助けに来てくれたのかい?お坊ちゃん」
余裕の姿勢を崩さず、決して人が良さそうとは言えない笑みを浮かべ、ハーレムはシンタローを迎えた。
「別に助けるつもりじゃない・・・聞きたい事があったからだ」
実際、恩をあだで返したくない事も理由の一つではあった。
だがそれよりも、
(もしかしたら、コタローの事を何か知っているかもしれない・・・)
コタローは海賊の象徴とも言える髑髏のメダルを首に下げていた。
(海賊のこいつなら、コタローがどの海賊の子だということまで分かるかもしれない)
シンタローは、そんなことは嫌だったが後でグンマやキンタローにバレてからじゃ遅い。
万一の可能性に備えて、コタローを守るためにも真実を知っておきたかった。
「・・・お前が気にしてるのはあのガキの事かぁ?そいつに答えたらここから出してくれるのか?」
「!コタローを知っているのか?」
(やはりコタローは海賊の子だった!?)
こちらが話始めるより早く、ハーレムは聞きたかった事を言い当てた。
不敵にハーレムは笑ってみせると、楽しそうに言った。
「ふん・・・俺の想像どおりならな・・・あいつは大物だぜぇ?」
シンタローが愕然としたその時、
どどぉおん!!
轟音と激しい振動が襲ってきた。
××××××××
「マジック様、船員の上陸準備が整いました」
「敵の動きは?」
「奇襲攻撃が上手くいっています。命令系統をうまく断てましたので、落とすのは楽かと・・・」
「うん。まぁ私たちが負けるわけはないけどね。一応ここはかの有名な海軍本部だ。舐めてかからない事にしよう・・・」
ごごぉん・・・
船と陸とを繋ぐ橋が架けられる。
「行けお前達!目的のものはもう目の前だ!」
「「はっ!!」」
今、海の略奪者達は解き放たれた。
「もうすぐ、会えるんだね・・・」
命令を下した男は誰にも聞こえないようにそう呟いた。
××××××××
「何だ?!この揺れは?!」
地下にある牢屋には今も断続的に爆発音や振動が伝わってくる。
「俺のお仲間かもしれねぇぜ~?」
ふざけた調子でハーレムが言った。
「海賊が?海軍本部のあるこの島に?そんなことがあるわけ・・・!」
しかし、シンタローは別の事態を想定した。
(もし、こいつの言うとおりなら・・・他にもコタローの事を知ってる海賊がいるかもしれない!?)
「・・・コタロー!」
言うが早いか、シンタローはすぐさま身を翻し牢屋から出て行く。
「!おい!俺を牢屋から出していけよ!おぉーい!!」
ハーレムは叫ぶが、すでにシンタローの姿はない。
シンタローは急いで屋敷に戻った。
××××××××
「なんということだ!」
だんっ!
激昂したキンタローは机を強く殴りつけた。
「落ち着いてよ、キンちゃ~ん。状況を報告してくれる?」
いつもとあまり調子の変わらないグンマは、窓の外を見つめながらキンタローを促す。
どぉおん・・・ごぉ・・・ん・・・
突然の襲撃。
砲撃音は今も断続的に聞こえてくる。
海軍本部最上階にある司令室からは、あちこちで火の手が上がる町が見えた。
窓の外の光景を忌々しげに睨みつけ、キンタローは報告した。
「・・・奴らは町を中心に攻撃してきている。おそらく、送電線がやられた。通信機器が使い物にならない。町に駐在する兵には連絡が取れない。今までにない事態だ、皆パニックに陥りつつある」
最後の一言は心の中だけで呟く。
(状況はかなり悪い・・・)
「・・・すぐに伊達衆を集めてもらえる?」
報告を聞き、暫く黙っていたグンマだったが、窓の外からキンタローに視線を移すと、にっこり笑ってそう言った。
「わかった、すぐに呼んでこよう」
キンタローは命令に従い、すぐに部屋を後にする。
指令室に残されたグンマは一人呟いた。
「さぁてと、どうしようかな~?」
町を見つめる瞳には静かな怒りが燃えていた。
××××××××
シンタロー達が住む屋敷は町からだいぶ離れた所にある。
馬車や馬で移動することが多いのでさほど不便な距離ではないが、今夜は早く帰り着きたいという思いからかやたらと長く感じられた。
「コタロー!!」
馬を駆り、急いで帰ってきたシンタローだったが屋敷には誰一人姿が見えない。
(いったいどこに・・・本部に非難したのだろうか?)
そう思った時、
「シンタロー様。どうなされたのですか?」
背後ろから高松が現れた。
「高松!コタロー・・・とグンマは?」
グンマは恐らく本部だろうが、確認のため聞いてみる。
「グンマ様はキンタロー様と本部におります。コタロー様は・・・」
「コタローは何処だ?!」
シンタローは掴みかからんばかりの勢いで高松に詰め寄る。
「どうしたんですか?少し落ち着いてください!」
高松の言葉にシンタローは我に返った。
何故誰一人として姿が見えないのだろう、と思ったが当り前だ。
メイド達はすでに休んでいる時刻だった。
「・・・コタロー様は自室でお休みですよ」
高松は溜め息とともにやっとそれだけ言った。
「そっ・・・そうか・・・悪いな、混乱してた・・・」
(とにかくコタローは無事だ。グンマにもばれてない・・・)
シンタローが安堵しいると、高松が真剣な面持ちで聞いてきた。
「いえ・・・、それよりも何か起きたのですか?かすかに地面が揺れているような気がするのですが・・・」
「あぁ・・・。こっちにはまだ攻撃がきてないんだな・・・敵襲だ」
「この島を?!」
高松は驚いた。
「おそらく・・・な。状況を知りたいがグンマは本部か・・・。ここまで攻撃がくるかわからんが非難した方がいいだろうな・・・」
(といっても本部はダメか・・・もしもコタローが海賊の子と知れたらマズイ)
シンタローが考えていると、高松が何事か呟いた。
「きっとねらいはコタロー様だ・・・」
「!!?」
シンタローは高松の呟きを聞き逃さなかった。
「どういうことだ!」
瞬間、高松はしまった!という顔をしたがもう遅い。
「なぜコタローが狙われなきゃならねぇ!!お前・・・何か知っているのか?!」
シンタローは今度こそ高松に掴みかかった。
苦しげに高松が答える。
「・・・それは・・・あなたもご存知なのでは?」
「!!」
シンタローに先程の会話が蘇る。
『あいつは大物だぜぇ?』
「・・・」
シンタローは暫く押し黙ると、決心したように高松を見上げた。
「高松・・・コタローを頼む!」
「!?どうするつもりですか?」
俺はコタローの寝室へと急いだ。
「コタロー・・・」
コタローは眠っていた。
起こさないようにそっとコタローを布団ごと抱き上げる。
(守ってやるからなコタロー)
言葉をかける代わりに、きゅっとわずかに強く抱きしめた。
「ココに隠れてるんだ。ほとぼりが冷めたら助けを呼べ」
俺は高松と眠っているコタローを階段わきにある地下の物置部屋に押し込んだ。
「シンタロー様?!」
バタン!がちゃっ・・・
外から鍵をかける。
(目的がコタローなら、屋敷は攻撃はされずに、じきここに海賊達がやっってくるだろう。その前に・・・)
俺は次の行動に移った。
どぉん!どぉん!
いまだに攻撃は続いているらしい。
美しかった町からは煙が上がっている。
(早く何とかしなければ・・・)
俺は海岸へと急いだ。
××××××××
目を閉じ、神経を集中させる。
(こちらにやってくる・・・)
「・・・反応が強くなってきている。こちらに近づいているようだ」
豪華な船室で男が側近に告げた。
「作戦が上手くいっているのでしょう」
側近の男は作戦の確実性を主に述べた。
「だといいが・・・」
失敗すれば命はない。
言葉の裏にそんな脅しが隠されているような男の呟き。
金髪に冷たく青い瞳を持った男ーマジックは、船室の窓から見える月に目をやった。
冷え冷えとした蒼い月の光さえも、男のもつ瞳には敵わない。
「マジック様」
そこへ別の側近が入ってきた。
「なんだい?チョコレートロマンス。ノックもなしに」
「はっ!申し訳ありません。実はマジック様に会いたいと言う者が来たのですが・・・」
「私に?この島の者かい?」
「はい。本人はそう言っております。それで・・・目的の物を持って来たなどと言ってるのですが、どうしますか?・・・かたづけますか?」
チョコレートロマンスと呼ばれた男は平然と不穏な事を言った。
「まぁ、待ちなさい。・・・ふむ」
マジックはしばし考えると、再び目を閉じ神経を集中させた。
(反応がさっきより強くなっている・・・)
「来た者の外見は?」
「は、ええと・・・黒髪で・・・整った面立ちをしておりました。年は・・・十代後半かと」
マジックはまたしばし考えるとチョコレートロマンスにこう言った。
「よし。ここへつれておいで。あぁ、手荒な事はしなくていいよ」
「はっ!」
主の命を受けチョコレートロマンスは部屋を出て行く。
「マジック様・・・」
初めから部屋にいた側近の男ーティラミスは控えめに主に声をかけた。
「まだ、わからないけどね。反応は強くなっている。その子が”目的の物”を持ってるのは間違いないよ」
不適に笑ってみせる男にティラミスはそれ以上何も言わなかった。
◇あとのあがき◇
パイレー○オブカリビアンを元にした長編パラレル2話目。
やっと、マジックパパの登場です。(微妙に出番少ない?)
次の話からシンちゃんとパパが行動を共にするんで、沢山出てくる予定です。
乞うご期待!
・・・とかいいつつ、この話以降から会話文のみでしか構成考えてなかったり・・・(爆)
次回更新はかなり遅くなると思います。き・気長にお待ち下さいませっ(汗)
そして、毎度の事ですが文章変です。でたらめです。
特に今回場面切り替えが多いんで、混乱する事うけあい(おい)
・・・
文才ないんだよぅ!(叫)
ツッコミは真摯に受け止めたいと思います。
2006.11.11
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