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美しかった港町ー
修行を積んだ鍛冶屋の小屋ー
華々しい式典が行われた広場も、今や火の海と化しているー

「なんとかしなければ・・・」

混乱し逃げ惑う人々の間を逸る気持ちで駆け抜けた。


~Die Lorelei 3~


それは深海の闇を思わせるような黒い船だった。

(未だ屋敷への攻撃はない・・・奴らはどこまで情報をつかんでいる?)
シンタローは夜の闇に身を隠し、接岸した略奪者達の船を見上げる。
火の手が上がり明るくなった町とは反対に、海辺の闇は暗く静かだ。
船からは灯りが漏れている。
月明かりだけでは見えずらかったが時折船のまわりに人影が見えた。
(・・・おそらくこの船に海賊どもの船長がいるはずだが、どうする?)
シンタローはしばらく思案したが、意を決すると船へ向かった。


+++++


贅を尽くした豪華な船室には3人の男が居た。
「マジック様」
今しがた音もなく部屋に入って来た赤毛の青年。
「なんだい?チョコレートロマンス。ノックもなしに」
マジックと呼ばれた男は、青年を咎めるわけでなく楽しそうに返事をした。
「はっ!申し訳ありません。実はマジック様に会いたいと言う者が来たのですが・・・」
気にした風もない主に、それでも非礼を詫びながら彼は報告する。
「私に?この島の者かい?」
「はい。本人はそう言っております。それで・・・目的の物を持って来たなどと言ってるのですが、どうしますか?・・・かたづけますか?」
チョコレートロマンスは平然と不穏な事を言った。
もう一人、マジックの後ろに控えていた金髪の青年が腰に帯びた得物に手を移す。
しかし、続く主の言葉に姿勢を戻した。
「まぁ、待ちなさい。・・・ふむ」
マジックは、しばし考えるように目を閉じるとこう言った。
「来た者の外見は?」
「は、ええと・・・黒髪で・・・整った面立ちをしておりました。年は・・・十代後半かと」
マジックはまたしばし考えるとチョコレートロマンスにこう言った。
「よし。ここへつれておいで。あぁ、手荒な事はしなくていいよ」
「はっ!」
主の命を受けチョコレートロマンスは部屋を出て行く。
「マジック様・・・」
後ろに控えていた金髪の青年ーティラミスは控えめに主に声をかけた。
「まだ、わからないけどね。反応は強くなっている。その子が”目的の物”を持ってるのは間違いないよ」
不適に笑ってみせる主にティラミスはそれ以上何も言わなかった。


+++++


赤く、赤く燃える町ー
今も激しい爆破音が振動と共に本部の塔を揺らす。
最上階から見える光景は正に地獄絵図だった。

「グンマ、奴らの手口が判明した。」
島の中枢、一切を取り仕切る最高司令室。
そんなものものしさなど微塵も感じさせないこの部屋の主ーグンマは窓の外の光景から目を離すと報告に戻ったキンタローを振り返った。
「キンちゃん、ご苦労さま~。」
こんな状況下に有りながらも、彼の表情は変わらず穏やかだ。
いや、むしろ楽しんでいるようにすら感じられるほどに笑顔だった。
「・・・敵は2組、島の南側ー町の近くと・・・やや離れた位置にもう1隻。主に攻撃して来ているのは南側の船だけで、離れた位置にいる船に動きは見られない。だが、どうやら動きのない船にはほとんど人が乗っていないようだ。上陸してきた奴らが乗ってきた船だと思われる・・・」
グンマは一通り報告を聞くと、にっこりと笑った。
「伊達衆のみんなも迅速に動いてくれてるみたいだね。」
「あぁ、だが・・・1つ気になる報告が上がっている・・・」
言いよどむキンタローに、しかしグンマは変わらぬ笑顔でこう言った。
「上陸した海賊達があり得ないくらい“頑丈”だって話?」
目を見張るキンタローにさらにグンマはこう告げた。
「問題ないよ。いくら頑丈でも捕まえてしまえば何も出来ないでしょ?」
「そんなに簡単にいくだろうか?」
「・・・簡単にいかなくても、僕達には守る者があるんだ。やるしかないよ。」
強い光を秘めた青い瞳は、挑むように窓の外を振り返る。

「さぁ、反撃開始だよ。」


++++


細い通路ー
照らし出す灯りは波に揺れー
ここは闇色の船の中ー

(正直、ここまで案内されるとは思っていなかったな・・・)
前を行く赤毛の男ーティラミスの後ろに付いていきながらシンタローは考えていた。
(高松はコタローが狙われていると言ったが・・・だとしたら何故俺を船に乗せる?やはり・・・)
船に乗り込む際、シンタローは見張りの海賊に「目的の物を持って来た」と言った。
当然、シンタローはコタローを連れてなどいない。
目的がコタローならこの言葉はもちろん嘘であり、海賊がシンタローを案内する理由が分からない。
しかし、やって来た海賊は「船長の元へ案内する」と言った。
(やつらの狙いはコタローじゃない?高松が嘘を?いや、あんな状況で高松が嘘を言う事に意味はない・・・やはり狙いはコタロー・・・?しかし・・・)
薄暗い通路はまだ続く。
シンタローは無意識に胸元へと手をやった。
「!」
カチリと何かが嵌る音が頭の中で聞こえた。


「・・・着きましたよ。」
気付くと赤毛の青年がこちらを振り返っていた。
「言っておきますが、主の前で妙な事はなさらないようお願いいたします。」
するどく睨まれ、すぐに視線を外される。
開かれた扉から眩しい光が溢れた。
目が眩む程の光のあとに豪華な室内が視界に入る。
部屋の奥、窓を背にして豪奢な椅子に座る金髪の男に目を奪われた。

「船長はお前か?」
案内の男にも思った事だが、椅子に座る男からは海賊らしからぬ品の良さが感じられる。
椅子に座る男はかるく微笑むと口を開き、そしてー

「そのとおり!ようこそ!ブラック☆パール号へv私が船長のマジックだよv」

男ーマジックは何がそんなに楽しいのか喜色満面と言った声で話し始めた。

「・・・お・思ったよりふざけた野郎だな・・・。」
先刻まで緊迫していた空気は男の発したふざけた声音に吹き飛んでしまった。
(こ・こんな奴が海賊っ!しかも船長ぉ!?)
一瞬、目的を忘れる程の脱力感が駆け巡ったものの、ココに来た目的を思い出した俺は男の目の前まで行くと声を張り上げた。

「今すぐ帰れ!そして二度と来るな!!」
「おやおや、ずいぶん嫌われたみたいだね私は・・・でもそれは出来ない相談だね。私たちは海賊だもの。誰の命令も受けない。欲しいモノは奪うまでだよ。」
怒りにまかせ放った言葉に、男は冷笑を浮かべながら答える。
その笑みに寒気さえ覚えながら、しかし俺は引かなかった。
「欲しいもの・・・目的は何だ?」
「おや?キミは届けに来てくれたんだろう?私の探し物を・・・ネv」
男はどうやら俺の「目的の物を持って来た」という言葉を信じているらしい。
だが、
「探し物ってのはなんだ?それがこの島にあるっていう確かな根拠はあるのか?」
挑発するように言うと、背後の気配ー赤毛の男から明確な敵意を感じる。
俺は隠していたナイフに手を伸ばそうとしたが、目の前の男は笑みを深くすると軽く手を挙げ背後の青年を押しとどめ椅子から立ち上がった。
端正な男の顔が見下ろすように俺を覗き込む。
「根拠ね・・・。」
覗き見る男の青い瞳が近づいてくるのに、金縛りにあったように動けない。
男の手が俺の胸元へ触れる。
「我々は呼び合っているんだよ・・・こんな風にねっ!」
言いざま男は俺の服を勢い良く引きちぎった。
「なっ!」
乱暴に暴かれた胸元から光が溢れる。
(っ!やはり本当の目的はー!)
光の発生源はあのメダルだった。
今までずっと身につけてきたが、それは初めて目にする光景だった。
「やはりね・・・。」
男は愛しそうにメダルを撫でている。
「っ!離せっ!」
メダルを隠すように手で胸元を遮ると、男から距離を取ろうともがく。
だが、背後には赤毛の青年がすでに得物を手に立ちはだかっていた。
「ふふふ・・・。今のが証拠になったかな?」
あっさりとメダルから手を離すと男は楽しげに嗤った。
とたんメダルは煌煌とした光を失い、いつもの鈍い光を弾くだけの金属にもどっていく。

(逃げ道は・・・ない・か・・・)
「キミの名前は?」
観念した俺に男は名を訪ねてくる。
とっさに俺はこのメダルの本来の持ち主の名を口にした。
「・・・コタロー。」
「!」
口にした名前にわずかに男は反応を見せた。
(やはり奴らはコタローを知っているのか?ならば・・・)
もはや逃げ道のない俺は賭けに出る事にした。

「お前らのねらいはこのメダルと・・・俺だろう?たのむ、街からは手をひいてくれ!!」

この海賊達がどれほどの戦力を有しているかは知らないが、奇襲を賭けて来た事から見て海軍と長く渡り合う程の戦力はないはずだ。
目的を達すれば速やかに手を引いてくれるかもしれない。
「おとなしく付いてくるってことかい?ふむ・・・」
男はしばらく考えるように俺を眺めると満足げ笑いながらこう告げた。
「いいだろう、目的は達した。お前の望みのままにしてやろう。撤収するぞ!」


闇色の船は滑るように島を離れた。

 

つづく

 


◇あとのあがき◇
パイレー○オブカリビアンを元にした長編パラレル3話目。
やっとこマジック様とシンちゃんご対面!
会話文だけからここまで文章起こすのは正直めんどk・・・(強制終了)
えー巷ではシリーズ3部作最終章が上映開始されましたね~♪
早く観に行きたいデス♪
・・・別にそれで「あ!パラレルもの続きupしなきゃ!」って思い出した訳じゃないですよ!
ちゃんと覚えてましたよ!アセアセ;(疑わしい)
実に2話目から半年以上が経ってしまった・・・(滝汗)
亀の歩み寄りさらに遅いですがまだまだ続きます。


2007.05.26

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