~なじかは知らねど 心わびて
昔の伝えは そぞろ身にしむ
波間に沈むる 人も船も
くすしき魔が歌 歌うローレイライ~
~Die Lorelei~
霧深い海の上。
夜の闇にまだ幼さの残った歌声が吸い込まれるように消えていく。
「シンちゃん・・・船に乗ってて“船が沈んじゃう”なんて歌うのは止めた方がいいんじゃない?」
背後からかけられた言葉にシンタローは慌てて振り向いた。
「きっ・・・聞いてたのっ!!グンマッ!」
時刻はまだ夜も明けきらない早朝。
濃い霧の中を進む船の上、二人の少年が話している。
「もしかして・・・シンちゃんってば、音痴って言われたこと気にしてたの?」
金髪の少年、グンマと呼ばれた方が笑いまじりにそう答える。
「うるさいなぁ!!別に気にしてなんて・・・」
一方、先ほどまで歌を歌っていた黒髪の少年、シンタローは怒ったように声をあげた。
「じゃぁなんで真夜中に歌なんて歌ってるのさ~。」
「むぅ・・・。」
「こっそり練習してたんでしょ~?」
しっかりと図星を指されてしまったシンタローは、バツが悪いのかグンマから逃げるように船の前へと走っていく。
「あ~待ってよ~シンちゃん!別に下手じゃなかったよ?さっきの歌とっても綺麗な声だったもん♪」
「当り前じゃん!僕の声なんだから。問題は音程で・・・って、あ・・・!」
「やっぱり気にしてるじゃない。」
少し呆れたようにグンマが言うと、
「うるさい!うるさい!馬鹿グンマぁ!!」
不貞腐れたシンタローはさらに船の舳先まで行ってしまった。
「シンちゃ~ん。危ないよぉ~」
グンマが甲板から呼ぶ。
しかし、シンタローはー
「これくらい平気平気。落っこち・・・!!」
落っこちるもんか!おそらくそう言いたかったのだろう。
「シンちゃん!!!!!」
舳先から足を滑らせたシンタローは、あっという間に落ちて見えなくなった。
「シンちゃん!シンちゃん!!どうしよう!シンちゃんがッシンちゃんが~!!」
グンマはパニック状態になり、早くも目には涙が浮かんでいる。
「どうしよう!どうしよう~・・・うぇぇぇん。」
「ォーィ・・・」
泣き出したグンマに、かすかに声が聞こえてきた。
「ひっく・・・え?」
「ォーイ・・・グンマァ~・・・」
「シッ・・・シンちゃん?!シンちゃんなのっ?!」
船の下の方から聞こえるシンタローの声に、慌ててグンマは船の縁から下を覗き込む。
「あはは・・・ロープが絡まって助かった・・・。」
見ると海面すれすれのところでロープに絡まったシンタローが見えた。
「・・・グンマ~。誰か呼んできてくれない?」
「よかったぁ!!うん。今お父様達を呼んでくるよ!待ってて!」
さっきまで泣いていたのが嘘のように、グンマは笑顔で駆け出していった。
「はぁ~・・・かっこわる~い・・・。」
(グンマが助けを呼んでくるまでロープに絡まって宙吊りかぁ・・・)
辺りは霧につつまれ、シ・・・ンと静かだ。
すぐ目前にある海面は何も映し出さない深い闇。
なにか不気味なものを感じて、シンタローはきょろきょろと辺りを見回した。
すると、霧の中から、かすかな声が聞こえてきた。
「ォギャー・・・ャー・・・ォギ・・・ー・・・」
「な・・・なんだろう・・・;」
恐る恐る耳を澄ましてみる。
「オギャーオギャーオギャー・・・」
「赤ん坊の声だ!!」
シンタローは注意深く辺りをきょろきょろと見回す。
「あっ!アレだ!!」
見るとこちらに向かって小さな船のように、たらいに入った赤ん坊が流れてくる。
(助けなきゃ!!)
シンタローは近くまで流れてきた、たらいの中の赤ん坊に精一杯手を伸ばす。
「もう・・・ちょっと・・・」
たらいの縁にやっと手が届いた。
「うわぁ・・・。」
シンタローは、赤ん坊を見て感嘆の溜息を漏らした。
蜂蜜色のさらさらとした金髪。
ほんのりと赤いほっぺたは、とてもやわらかそうで頬ずりしたくなる。
そして、見つめる赤ん坊の瞳は、カリブの海を思わせるような鮮やかな青色だった。
「キレイだなぁ・・・。」
シンタローは、たらいから赤ん坊を抱き上げるとそっと胸に抱いた。
「もう大丈夫だよ。」
あやすようにそう言うと、赤ん坊がにっこりと笑う。
「可愛いっ!!」
我慢できずに、赤ん坊にすりすりと頬をよせた。
「僕が守ってあげるからね。」
赤ん坊は暖かい腕の中に安心したのか、そのまますぅすぅと寝息をたて始めていた。
すっかり赤ん坊の虜となったシンタローは、赤ん坊の可愛い寝顔を見つめていた。
そして、ふと赤ん坊の首にかけられている鎖に気がついた。
(赤ちゃんがネックレス?なんだろう?お守りかなぁ・・・)
気になったシンタローは鎖を手繰り寄せる。
「!!これって・・・」
赤ん坊の懐から出てきた物は中央に髑髏のマーク、周りに複雑な模様が掘り込まれた金のメダルだった。
(どくろは海賊のシンボル!!もしかして、海賊の子!?)
シンタローが考えを巡らせていると、
「シンタロー!大丈夫かー!!」
「シンちゃーん!!おとうさま達を呼んできたよ~!!」
「おとうさん!!グンマ!」
上からの声に、顔を上げたシンタローは、
(どうしよう!!これが見つかっちゃったら・・・!!)
シンタローとグンマの父は、海賊を取り締まるイギリス海軍の総督だ。
(この子が海賊かは分かんないけどこんなものを持っていたら・・・)
シンタローはとっさにメダルを自分の懐へと隠した。
「今引き上げるからな!じっとしてるんだよ!」
ほどなくしてシンタローは船の上へと引っ張りあげられた。
××××××××
(あれから、もう10年たつのかぁ・・・)
シンタローはベットから身を起こすと自分の胸元を見た。
夢で見た過去、自分の懐へと隠したものー。
髑髏と複雑な模様が掘り込まれた金貨は、10年前と変わらない光を放っていた。
「そろそろ・・・コタローにこれを返すべきなんだろうな・・・。」
(今の生活が壊れてしまうかもしれないけれど・・・)
窓の外に広がる街を見下ろしながらそんな事を考えていると、
「シンちゃ~ん♪入るよ~?」
能天気な声が返事も待たずに入ってきた。
慌ててシンタローはメダルを隠す。
「勝手に入ってくんなよ!グンマ。」
「だってシンちゃん、いつまでたっても起きてこないんだもん。今日は大事な式典があるんだからね~?」
そういうグンマは確かに式典用の海軍服を着ていた。
「式典?」
シンタローは訝しげに眉を寄せた。
「僕とキンちゃんの昇進式だよぉ~♪」
「昇進・・・ってまさか・・・!!」
グンマは、まるで子供の頃のように瞳を輝かせながら得意げに告げる。
「僕はイギリス海軍総督。キンちゃんは提督になるんだよ~♪」
(マジかよっ!!この目の前の能天気お馬鹿グンマがッ、海軍最強を誇るイギリス海軍の総督~?!提督になったときでさえ信じられなかったのにッ!!)
シンタローは「まさかグンマが頂点に立つ日が来るとは!!」と驚愕に目を見開いた。
「シンちゃんの服は僕が用意しといたから。これを着てきてね。」
驚愕で固まっている俺にグンマは服を渡してくる。
「ほんとはシンちゃんにも、僕らとおんなじ海軍服を着て欲しかったんだけどね・・・。」
ほんのすこし寂しそうにグンマは笑った。
その言葉に正気付いた俺は、呟くようにこう返した。
「・・・俺は海兵にならなかったからな。」
海軍総督の父を持ちながら、シンタローはグンマと違い海軍に入らなかった。
(もし、コタローが海賊の子だったとしたら・・・)
その思いがシンタローに海兵の道を進ませなかったのだ。
彼は刀鍛冶の道を歩んでいた。
「グンマ様~そろそろお出かけになりませんと・・・。」
「あ、高松。馬車の準備は出来てる?」
いつのまに控えていたのか、執事の高松が戸口に立っていた。
「もちろん準備できてますよ。コタロー様はもうお乗りです。」
「うん、わかった。高松、先に乗っててくれる?シンちゃんとすぐに行くから。」
グンマは高松を先に行かせると、シンタローに向き合った。
「シンちゃん・・・。」
「なんだ?」
常にない深刻なグンマの表情に我知らず緊張する。
場の空気が変わったのがわかった。
子供っぽい性格だが、今はグンマがこの家の家長なのだ。
普段は兄と言うよりむしろ弟だと感じるグンマが、真剣な表情で話をしようとしている。
「実は話をしておきたいことがあるんだけど・・・」
「・・・コタローの事か?」
静かに問えば、グンマの動揺した瞳が自分を写した。
あの事件の翌日、近くの海域でコタローが乗っていたと思われる船の残骸が発見された。
生存者はおらず、哀れに思った父が養父となりコタローは俺達の弟として育てられた。
当時、赤ん坊だったコタローは、自分が“助けられた子供”だなんて覚えていない。
俺達を血の繋がった兄弟だと思っている。
その後、別の航海中に海賊との交戦で父は銃弾を受け殉職。
今ではコタローが実の兄弟でない事を知っている者は、ほんの一握りの人間だけだった。
当然、グンマはその一人である。
「お兄ちゃんたち!!早くしないと式典に遅れちゃうよ~!!」
どれくらい沈黙していたのか、突然現れたコタローに驚いて二人して戸口を見る。
「あ・・・あぁ。ごめんごめん。今行くよコタローv」
「・・・ごめんねコタローちゃん。待たせちゃって。」
先ほどまでの重い空気を隠し、いつもの調子にもどした。
「ほら、早く。これ以上待たせたりなんかしたらお兄ちゃん達でも訴えるよ!そして勝つよっ!!」
お決まりの決め台詞を残し、コタローは先に行ってしまった。
「シンちゃん・・・今の話は、とりあえずまた後で話そうか?」
「そうだな・・・。」
コタローに聞かれていなかった事に安堵しながら、俺達は部屋を後にした。
××××××××
「ん?何の音だぁ・・・やけににぎやかだな。」
式典開始のファンファーレの音とは知らず、男は崖の上にある外壁を見上げる。
今にも沈みそうな船にその男、ハーレムは乗っていた。
黒い船長帽に、幾重にも巻かれた貴金属のネックレスや指輪などの装身具。
その割に黒くてボロボロの服、背中の長い金髪も少しぼさぼさしている。
見るからに胡散臭げな男であった。
「さてと・・・あっちに見えてんのが、世界最速の船、プリンセススワン号か・・・ネーミングもいまいちだがなんなんだあの船は・・・。」
ハーレムは目的の船をげんなりと見つめた。
全体的に白い船体だが、舳先だけは黄色でまるでアヒルのような船である。
「バカッ船・・・いや、でも世界最速なのは確かだし。頂いちまってからぬりかえればいいな。」
決して人が良いとは言えない笑みを浮かべながら、ハーレムは楽しげに呟いた。
程なくしてハーレムは岸に着いた。
それと同時に今にも沈みそうだった彼の船は海へ沈んでいった。
×××××××××
式典が終わり、人もまばらになった広場にシンタローたちはいた。
「式典も無事終わったし、みんなで食事に行こうよ♪僕とキンちゃんのお祝いってことでv」
そんなグンマの提案に、シンタローはうんざりとした視線を向ける。
「い・や・だ。」
「えぇー!!なんでさぁ!!シンちゃんは僕らの事、お祝いしてくれないの?」
すぐにグンマの非難の声があがる。
「・・・俺は先に屋敷に帰ってる。」
(別に家族で行くなら問題はない・・・問題なのは・・・)
シンタローには行きたくない理由があった。
それは、今一緒にいる男の存在だった。
「そうか・・・。ならば、俺が家まで送ってやろう。シンタロー。」
「キンタロー・・・。」
後ろから聞こえた声に、シンタローはいまいましげに振り返った。
キンタローと呼ばれた青年は、金髪に青い瞳、グンマと同様に式典用の海軍服を着ていた。
「ご機嫌斜めのようだな。シンタロー。」
言葉とともに恭しく一礼した男に、うんざりとした視線をよこしながらシンタローは答える。
「えーえー、お前が出てこなけりゃもっと機嫌よかったですよ俺は。」
シンタローが行きたくない理由とは、この男の存在だった。
「そんなに俺やグンマが、出世したのが気に食わないのか?」
「別に。そういうことじゃねぇ・・・」
「ならば祝え。食事に行くぞ。・・・じっくり話もしたいしな?」
どこか余裕の表情でキンタローは言った。
(一体何の話をじっくりとしたいのだか・・・)
「・・・お前のそういうところが嫌いだ・・・。」
「それは残念だな。俺はお前の事がー」
「わー言うなッ!!!わーった!分かったから!!」
慌ててシンタローはキンタローの言葉を遮った。
(グンマやコタローの前で何言おうとしてんだこの男はっ!!やっぱ、苦手だ・・・)
シンタローは、自分に想いを寄せているらしいこの男、キンタローのことが苦手だった。
(つーか俺ら男同士よ?!そこんとこなんとも思わんのかねこのお坊ちゃんは・・・)
軽く溜息をつきながら、コタロー達が乗った馬車に向かう。
「お兄ちゃ~ん!どうしたの?早く行こうよ~?あっ?!」
その時コタローの帽子が風で飛んだ。
「僕の帽子~!!」
慌てて馬車から追いかけようとするコタローをシンタローは止める。
「まかせろ!コタロー!お兄ちゃんが取ってきてやる。」
海に向かって飛んで行った帽子をシンタローがすぐさま追いかける。
(!早く追いつかないとこの先は崖だー)
帽子に追いつこうと走るスピードを上げる。
なんとかシンタローは、崖ギリギリのところで帽子をキャッチすることに成功した。
すんでのところで崖からは落ちなかった。
しかし、
びゅうぅうう!!
「え?」
まるで何かに吸い寄せられるように海に向かって風が吹いた。
(落ちるー)
「だっはー?!」
シンタローは叫びながら、まっさかさまに海へと落ちていった。
「シンタロー!!」「シンちゃん!!」「お兄ちゃん!!」
ほぼ同時に3人が叫ぶ。
どぼーん!!
激しい水しぶきと音を上げ、シンタローは海に沈んでいった。
×××××××××
「さてどうやってあの船に入り込むか・・・」
岸壁に沿って船の近くまでハーレムは来ていた。
(しっかし・・・近くで見れば見るほどバカッ船だな・・・)
ハーレムがまじまじと船を見ていると頭上から叫び声が聞こえた。
「シンタロー!!」「シンちゃん!!」「お兄ちゃん!!」
声にハーレムは顔を上げると、
「なんだぁ?!」
(空から人が降ってきやがった!?)
どぼーん!!
すぐそばに激しい水しぶきが上がる。
「お兄ちゃん!!」
ハーレムは、どうしたものかと上から聞こえる声に再び顔を上げると、
(あの面はっ?!)
必死の形相で声を上げる金髪の少年、コタローを見たハーレムは何かを決めたようにすぐさま海へと飛び込んだ。
「ちっ!!」
ざばーん!
空気の泡を作りながら海底へ向かって泳ぐとすぐに黒髪の青年、シンタローを発見した。
(ちっ気を失ってやがる。早く海面へ・・・)
ハーレムはシンタローを片腕に抱くとすぐに海面へむけて泳ぎ始める。
(ん?これは・・・)
その時、ハーレムの目にきらりとしたものが映った。
(ーなんで、こんなもんがこんなところに?アイツのか・・・?)
それは、シンタローが首に下げていた金のメダルだった。
ごぼっ
(まずい。息がつづかねぇ!早く海面に!)
ハーレムはひとまず考えるのを止め、再び海面へと泳ぎだした。
「ぶはぁっ!!」
海面にでると思いっきり酸素を吸う。
すぐにハーレムは岸へと泳いだ。
「おいっ!!大丈夫かよ?生きてっかぁ?」
「・・・。」
ハーレムは声をかけるがシンタローの反応はない。
「ちっ!息してねぇ!・・・しかたねぇなッ!」
(本当は男相手にこんなことやりたくねぇんだけどな。いろいろと聞きてぇ事があるし・・・)
ハーレムは、シンタローの鼻をつまみ顎を上向かせると、唇に自分の唇を押し付ける。
(こいつ男だよなぁ・・・なんでこんな唇がやわらかいんだ・・・?)
あわせた唇の思わぬやわらかさにそんなことを考えながら、肺に息を吹き込んだ。
吹き込み終わると、息継ぎにシンタローの唇を離す。
顔を離した事でハーレムの目に目を閉じたままのシンタローが映った。
艶やかな黒髪、端正な顔、均整の取れた体つきー
ごくっ
我知らずのどがなったことに気づく。
(はっ!!俺とした事が、男なんかにっ・・・?!)
ハーレムが悶々としていると、
「シンタロー!!」
「ぐふぉお!!!」(キンタローに突き飛ばされた。)
ざっぽーん!
崖から落ちてしまったシンタローを追って、キンタロー、グンマ、コタローがやってきた。
「シンタロー!!しっかりしろ!!」
少しパニックになっているのか、キンタローはシンタローの襟元をつかむとがくがくと揺さぶった。
「キンちゃん代わって!こういう時は人工呼吸だよッ!!」
パニック状態のキンタローを制して、冷静にもグンマが救命措置をとろうとする。
「!分かった、グンマ。俺がする!」
グンマの言葉に冷静を取り戻したのか、言うとおり人工呼吸をしようとしてー
「てんめぇ!よくもやりやがったなー!!」
「ぬぁっ!!?」(ハーレムに蹴り飛ばされた)
じゃっぱーん!
先程キンタローに海に突き飛ばされたハーレムが、今度はキンタローを蹴り飛ばす。
「あぁぁ!!キンちゃーん!!」
キンタローが海に沈みグンマもパニック状態に。
「うわぁぁぁん!おにいちゃんが死んじゃうよー!!」(パニック)
やはり、パニック状態のコタローが叫んだ。
「お前?!」
ハーレムがコタローを凝視しているとー
「けふっ!ごほっごほっ!!」
シンタローが息を吹き返した。
「シンタロー!!」「シンちゃん!!」「おにいちゃん!!」
ようやく気がついたシンタローに駆け寄ると、皆一様に安堵した。
パニック状態の4人(キンタロー・グンマ・コタロー・ハーレム)をよそに、高松だけが一人冷静に対処していた。
「まったく・・・みなさん、もうすこし落ち着いてくださいよ。」
「あ・・・?高・・・松?」
朦朧としているのだろう、発した言葉は途切れ途切れでおぼつかない。
「シンタロー様、大丈夫ですか?」
高松はシンタローを腕に抱き抱えた。
「あ、あぁ・・・大丈夫だ・・・。」
キン・グン・コタ「よかった・・・」
それでもまだ一人では立てないのだろう。
そのまま高松がシンタローを、横抱き(いわゆるお姫様抱っこ)で運んでいった。
「キンタロー様!グンマ様!」
そこへ、海兵のミヤギ、トットリ、コージ、アラシヤマの4人が駆けつけた。
「シンタロー様は無事だっちゃか?」
「町の人さ聞いで、心配したっぺ!」
「あぁ。問題ない。高松が馬車へ運んでいった。」
「それはなによりどした~。」
「大事なくてよかったけんのぉ!」
「・・・・・・・・・」
(まずいな・・・)
ハーレムはやってきた兵達を見た。
(いろいろ聞きたい事があったが・・・海兵なら俺の顔を知ってるかもしれネェ・・・ここはひとまず)
こっそり抜き足・差し足・忍び足で逃げようとするハーレムだったがー
「何処へ行く気だ?」
「そーだよ。まだ、名前も聞いてないしお礼も言ってないんだよ~?」
キンタローとグンマに呼び止められてしまった。
内心「まずった・・・」と思っている事などおくびにも出さず、ハーレムは2人の方を振り向いた。
「名乗るほどもねェよ。礼なんて・・・ま、貰えりゃ嬉しいけどよ。さっさと逃げた方が良さそうだしなっ!!」
言うが早いか、ハーレムはその場から離れようとした。
「!その男を捕まえろ!!」
キンタローは鋭い声をあげる。
伊達集4人『はっ!!』
気合一声、4人はすかさずハーレムを取り囲む。
先程シンタローを助けるために海に飛び込んだのだ。
衣服は水を吸い重たくなっている。
多勢に無勢と言う事もあり、ハーレムは連行される事になった。
つづく
◇あとのあがき◇
パイレー○オブカリビアンを元にした長編パラレル話。
ちなみにおおまかな配役としては・・・
シンタロー&コタロー→ウィル・ターナー?エリザベス?(どっちがどっちだか)
ハーレム→ジャック・スパロウ
グンマ→スワン総督
キンタロー→ノリントン提督
マジック→キャプテン・バルボッサ
っというとこでしょうか?
あくまでパイレーツにあてはめたらなんで、設定は多少違います。
(管理人にとっては)長い話になる予定~。
当然マジシン!かと思いきや、シンちゃんモテモテ~な話になる予感です。
マジシンが基本ってとこは変わらないと思いますがね!
あ、タイトルのDie Loreleiは曲名からとってます。
die=死ぬ の意ではありませんので~・汗
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