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※性描写有り 18歳未満の方は引き返して下さい




c o r d





――昔からコイツはこうだったな…。
ハーレムは目の前のソファーに身体を投げ出すシンタローを見て片頬を歪めた。
部屋の主の帰還に気付かないのか、僅かに苦しそうな顔をして眠るシンタローは起き上がらない。
真っ赤な総帥服は部屋の隅に投げ捨てられ、小山を築いている。
――またかよ。
滅多に帰らぬ自室の、己の定位置を占領する甥の顔を無遠慮に覗き込んだ。

昔からそうだった。
シンタローは己の異端さに気付いた時から、何もかもを内に抱え込み、耐えるようになった。
しかし、幼い子供が全てを昇華出来る訳は無く救いの手を求める。
己を異常なまでに溺愛する父親ではなく、サービスに。
確かにサービスはシンタローに優しかった。
そう、異常なほどに。
彼等はその異常さに気付かなかったのか、いや、意識的に目をそらしていたのだろうか。


きっかけは些細なことだった。
父親の掌の中、逃げ出そうと必死にもがく姿に、何故だか無性に腹立たしさを覚えた。
ハーレムの目には、シンタローが本気で逃げる気など無いように映ったからだった。
所詮は子供の反抗。
しかも、無菌室のような空間しか知らない子供の反抗。

気が付けば、ハーレムはシンタローを殴っていた。

甘ったれた子供の性根を叩き直してやろうという訳では無い。
目の前には、驚愕に瞳を見開くシンタロー。
何時もの小突き合いではない。
シンタローはハーレムのただならぬ振る舞いに、ただ身を竦ませた。

それ以来、何故かシンタローは事ある毎にハーレムの元を訪れるようになった。

     ◇  ◇  ◇

シンタローは昔から、人を惹き付けるものを持っていた。
勿論、彼に敵意を向ける人間もいたが、それ以上に好意を向ける人間が多かった。
シンタローは愛情に包まれていた。
青の一族の中にあって、あらゆる孤独を味わいながら、
それと同時に多くの他者の愛情を一身に受けてきた。
それらが現在のシンタローを形作っているのだろう。

けれど、それらは時として何の慰めにもならない時がある。

『いっそ皆が俺を憎んでくれれば楽なのにな』

これ以上何を望む。
血の繋がりが無いとはいえ、これまでと変わらず愛情を注いでくれる父親。
彼が信念を貫く手助けをしてくれる同志。
己の陰となり日向となり支えてくれる、もう一人の自分と言うべき存在。
皆、シンタローを愛し、信じ…。

――ああ、そうか。

シンタローが“シンタロー”に成る為には、彼を否定する存在もまた必要だったのだ。
それがまさしくハーレムだった。

愛されれば愛されるほど不安は募り、周囲の描くシンタロー像と実際の己の差に嫌悪を覚えた。

シンタローは求めていた。
己を否定する存在を。
己を貶める存在を。

     ◇  ◇  ◇

何時しか二人の関係は形を変えて、尚現在に至る。
無理矢理割り開いたのが先か、自ら足を開いたのが先か。
もはや二人共に覚えていない。

キスも抱擁も愛撫も無いまま、無理矢理に楔を打ち込むと汗ばんだ身体が跳ねる。
僅かな滑りを頼りに、性急に突き進む。
これはセックスではないのだ。
シンタローの身体を気遣う必要など無い。

時折軽く揺さ振れば、噛み殺した咽喉の奥から苦しげな息が洩れ、革張りのソファーに小さな波が寄る。
「おら、革に爪立てんじゃねぇよ」
ハーレムは尚も腰を突き上げながら、シンタローの頬を張る。
シンタローは、うっ…と小さく呻き、無意識に逃げようと身を捩るが、ハーレムは決して逃がさなかった。
「おいおい、急に締まりが良くなったぜぇ?」
ハーレムの卑猥な揶揄が聞こえたのか、シンタローは苦しい息の下、
ゆっくりとそれまで硬く閉じられていた瞳を開いた。

情欲に濡れた視線がハーレムに投げ掛けられる。

――これは俺が仕込んだものだ。

ある種の満足感がハーレムを満たす。
シンタローの黒い瞳は揺ぎ無い強い意志を湛え、常に未来を見据えている。
その瞳を貶めたことに、昏い悦びを感じずにはいられない。

楔はそのままにハーレムが身を起こすと、シンタローが向かい合わせに膝に跨る形になる。
これは合図だった。
「達きたけりゃ頑張って腰振りな」
ゆるりと腰のラインをなぞれば、シンタローがふるりと身震いする。
そして、ハーレムは投げ出した上着を引き寄せるとポケットから煙草を探り、
器用に1本引き抜いて咥えた。
「精々楽しませてくれよ」

     ◇  ◇  ◇

無防備に眠るシンタローをハーレムは見つめている。
慣れぬ激務に、隈が浮かんだその顔。
頬に掛かる黒髪をそっと払うと、僅かに身動ぎするがまだ目は覚まさない。
何時もなら無理矢理に叩き起こし、飽きるまでその身体を貪る。

しかし、出来なかった。
何故かは判らない。
単にその気になれなかっただけか、それとも他に何か理由があるか。
答えの出そうにない思考がループを始め、やがてハーレムは考えを止めた。


ハーレムがシンタローに背を向けた時、背後で気配が動いた。
「何だよ、狸寝入りかよ」
きまり悪く吐き捨てるハーレムに、シンタローは何も答えない。
ただ黙ってソファーから立ち上がると、真っ赤な総帥服を拾い上げ扉に向う。

ハーレムが振り向いた時、シンタローは扉を出て行く所だった。
決して引き止めないし、また引き止められたところでシンタローは出て行くだろう。

「残酷だな、アンタ」

ただ、出て行く間際呟いた言葉の真意が飲み込めず、ハーレムは何時までも扉を見つめていた。





e n d
copyright;三朗



◇ ◇ ◇

ハレシン


捕らえたのか、囚われたのか。
無意識に互いが互いを拘束する関係。


20040320
copyright;三朗









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